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夜、開店時間になるとマルコさんたちがぞろぞろとやって来た。
「お、今年はちゃんといるな」
「その節はどーも」
去年は誕生日に来なかったことをまた持ち出されて笑うしかない。
「ほらよ、プレゼントだ」
次々に手渡されるプレゼント。でもそれは
「いや、これ大根じゃないですか!こっちは鍋、これは魚!?」
「大根も立派なプレゼントだろーが!」
プレゼントと言って次々に手渡されるのはきっと自分の店の商品だったり会社で扱っているものだろう。なんとも雑なプレゼントだ。
「まぁありがたいです。ニコラに料理してもらいます」
「そりゃあいい!俺たちも楽しめるしな!」
ほんとに豪快な人たちだ。
大テーブルはすぐに埋まって、そこにニコラがどんどん料理を持ってきてくれる。それは俺の好物ばかりだ。
「ニコラお前さん気合い入ってんなー」
感心とからかいを混ぜて言うおっさんたちにニコラがしれっと
「恋人の誕生日ですから」
と返す。それにまたやんやと沸くおっさんたち。
「だってよチハルー!お熱いねー」
もう俺も学習した。恥ずかしがると逆に喜ぶだけだこの人たちは。
ニコラに習ってしれっとしているのが一番。
「熱いのなんか当たり前じゃないですか。恋人ですもん」
「ほぉー。あ、そのピアスはニコラからプレゼントか?」
「…目敏いですね」
「アメジスト。へぇー誕生石か。あいつも気障だね」
「アメジストの意味ってあったっけか」
「あるある。えーっとなー」
「お、思い出さなくていいです!」
会話の流れがもう非常に恥ずかしくて、とうとう止めてしまった。なんでこのおっさんたちは宝石の意味とか知ってるんだよ!
はっ、と我にかえれば皆にやにやと笑っている。やられた!からかいに乗ってしまった。俺より何枚も上手なおっさんたちに遊ばれてしまった。
「ニコラ!強い酒!」
そう叫んだ俺にどっと笑いが起きる。
「飲んでもいいけど飲み過ぎないでよ」
ニコラも苦笑してワインを渡してくれた。
その後もからかわれつつ、夜は更けていった。
日付が変わる頃、マルコさんたちは腰上げた。
「俺はここらへんで帰るわー」
「あ、俺も」
一人が席を立つと皆ぞろぞろと続いて帰り出した。
「今日はありがとうございました」
「おうよ!楽しかったぜ」
「またな!」
お礼を言って皆を見送った。
外は冷え込んでいてものすごく寒い。でも、今は隣にニコラがいる。その分だけ温かい。
ふと、去年のことを思い出した。
「去年もこうやって皆を見送ったよな」
「そうだねー懐かしい」
隣に立って俺の腰に手を回しながらニコラが言う。違うのは俺のニコラの距離だけ。
「でさ、こう聞いたよな『ニコラの誕生日はいつ?』って」
「あー聞いたねー」
「ニコラはあの時『秘密』って答えた。今年は教えてくれないの?」
そうだ、俺はニコラの誕生日を知らない。なんであの時秘密にされたのかも謎のままだ。
「あー、じゃあ言うけど…怒らないでね?」
ニコラが困ったように目を逸らしながら言った。なんで俺が怒るんだ?疑問に思いながらも頷いておく。
するとニコラは躊躇いがちに口を開いた。
「誕生日は、んー、今日っていうか昨日?」
「ん?昨日って…え、まさか」
微妙な言い方に少し考えを巡らせて、辿り着いた答えは
「俺と同じ!?」
思わず大きな声で言うとニコラがまだ微妙に目をそらして肯定した。
「え、同じって、え!?何で言ってくれなかったんだよ!」
「来年は言うつもりだったんだよ?ただ今年はチハルの誕生日を祝いたくて…」
「俺だってニコラの誕生日祝いたいよ!ニコラのばか!」
やっぱり怒るじゃん~と情けなくニコラが言っているのを尻目に俺は店の中に入った。当たり前だ!そりゃ怒るわ!
「お、今年はちゃんといるな」
「その節はどーも」
去年は誕生日に来なかったことをまた持ち出されて笑うしかない。
「ほらよ、プレゼントだ」
次々に手渡されるプレゼント。でもそれは
「いや、これ大根じゃないですか!こっちは鍋、これは魚!?」
「大根も立派なプレゼントだろーが!」
プレゼントと言って次々に手渡されるのはきっと自分の店の商品だったり会社で扱っているものだろう。なんとも雑なプレゼントだ。
「まぁありがたいです。ニコラに料理してもらいます」
「そりゃあいい!俺たちも楽しめるしな!」
ほんとに豪快な人たちだ。
大テーブルはすぐに埋まって、そこにニコラがどんどん料理を持ってきてくれる。それは俺の好物ばかりだ。
「ニコラお前さん気合い入ってんなー」
感心とからかいを混ぜて言うおっさんたちにニコラがしれっと
「恋人の誕生日ですから」
と返す。それにまたやんやと沸くおっさんたち。
「だってよチハルー!お熱いねー」
もう俺も学習した。恥ずかしがると逆に喜ぶだけだこの人たちは。
ニコラに習ってしれっとしているのが一番。
「熱いのなんか当たり前じゃないですか。恋人ですもん」
「ほぉー。あ、そのピアスはニコラからプレゼントか?」
「…目敏いですね」
「アメジスト。へぇー誕生石か。あいつも気障だね」
「アメジストの意味ってあったっけか」
「あるある。えーっとなー」
「お、思い出さなくていいです!」
会話の流れがもう非常に恥ずかしくて、とうとう止めてしまった。なんでこのおっさんたちは宝石の意味とか知ってるんだよ!
はっ、と我にかえれば皆にやにやと笑っている。やられた!からかいに乗ってしまった。俺より何枚も上手なおっさんたちに遊ばれてしまった。
「ニコラ!強い酒!」
そう叫んだ俺にどっと笑いが起きる。
「飲んでもいいけど飲み過ぎないでよ」
ニコラも苦笑してワインを渡してくれた。
その後もからかわれつつ、夜は更けていった。
日付が変わる頃、マルコさんたちは腰上げた。
「俺はここらへんで帰るわー」
「あ、俺も」
一人が席を立つと皆ぞろぞろと続いて帰り出した。
「今日はありがとうございました」
「おうよ!楽しかったぜ」
「またな!」
お礼を言って皆を見送った。
外は冷え込んでいてものすごく寒い。でも、今は隣にニコラがいる。その分だけ温かい。
ふと、去年のことを思い出した。
「去年もこうやって皆を見送ったよな」
「そうだねー懐かしい」
隣に立って俺の腰に手を回しながらニコラが言う。違うのは俺のニコラの距離だけ。
「でさ、こう聞いたよな『ニコラの誕生日はいつ?』って」
「あー聞いたねー」
「ニコラはあの時『秘密』って答えた。今年は教えてくれないの?」
そうだ、俺はニコラの誕生日を知らない。なんであの時秘密にされたのかも謎のままだ。
「あー、じゃあ言うけど…怒らないでね?」
ニコラが困ったように目を逸らしながら言った。なんで俺が怒るんだ?疑問に思いながらも頷いておく。
するとニコラは躊躇いがちに口を開いた。
「誕生日は、んー、今日っていうか昨日?」
「ん?昨日って…え、まさか」
微妙な言い方に少し考えを巡らせて、辿り着いた答えは
「俺と同じ!?」
思わず大きな声で言うとニコラがまだ微妙に目をそらして肯定した。
「え、同じって、え!?何で言ってくれなかったんだよ!」
「来年は言うつもりだったんだよ?ただ今年はチハルの誕生日を祝いたくて…」
「俺だってニコラの誕生日祝いたいよ!ニコラのばか!」
やっぱり怒るじゃん~と情けなくニコラが言っているのを尻目に俺は店の中に入った。当たり前だ!そりゃ怒るわ!
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