バースデーソング

せんりお

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あれは2月のことだった。

俺の誕生日は2月の中旬だ。24歳になった。
その日はセルジオや知り合いたちが企画してくれた誕生会があり、俺はそれに参加した。
だから俺がLumeに行ったのは誕生日の次の日だった。




いつも通りドアを開けて中に入ると、マルコさんたち常連が勢揃いしていた。  

「こんばんはー。なに?どうしたのみんないつもより時間早いのに」

不思議に思ってそう言うと、みんなにじとっとした目を向けられた。えっ、とたじろぐ。ん!?俺なんかしたのか??

「付き合いがあるのはわかるが薄情じゃねーか!せめて終わってからでも顔出せ!」

マルコさんがそう言いながら自分の隣の空いている席をバンバン叩いた。そこは店の真ん中の大テーブルで、どうやらそこに座れと促されているらしい。

「付き合い?薄情?」

よく状況が飲み込めず、戸惑ったままとりあえず示された席に腰を下ろす。

「俺なんかしました?」

恐る恐るそう訊ねる。何か知らないうちに気に障るようなことをしてしまっただろうか。

「いやーチハルは悪くないぜ?」

「そうだそうだ、気にすることねぇよ」

「マルコが勝手に拗ねてるだけだからよ」

腕を組んでそっぽを向くマルコさんに代わって回りの人たちがそう言った。

「拗ねてる?」

聞き返すとみんな苦笑しながらうんうんと、頷いている。それに首をかしげる。

「しょうがないって言ったのにね。チハルも毎日来てる訳じゃないんだし。それに何も言ってなかったんだし」
 
後ろからニコラの声が聞こえてきて俺は振り向いた。そこには料理の乗った皿を持ったニコラが苦笑しながら立っていた。

「何も、言ってない?」

「そう。何も言ってなかった。驚かそうと思って」

意味がまったくわからない。ますます頭に疑問符を浮かべる俺の前にニコラが皿を置いた。

「おおー!ステーキ!」

それは分厚いステーキだった。ミディアムレアに焼かれたそれは見た目からして柔らかそうで、思わず唾が出てごくんと飲み込んだ。そんな俺にニコラはくすっと笑った。

「召し上がれ」

「いただきます!」

気になっていたことなんかすっかりぶっ飛ばしてナイフとフォークを勢いよく手に取り俺はステーキにかぶりついた。熱々の肉汁にはふはふ言いながら咀嚼する。ガーリックがきいたソースがいい感じに美味しい。

「うっま何これ!え、めっちゃ高級!?」

口の中ですぐに蕩けるような柔らかい肉は高級そのもの。

「まあね。はい、他にもまだまだあるよ」

高級どうのこうのはさらっと流して、ニコラは新たな皿を俺の前に次々と置いていく。パスタにフリット、ピザ、サラダが二種類に中華料理のエビチリまである。

「え、え!?何これ?」

「好きなだけどうぞ」

ニコラがさも当然というように微笑んでいて当惑する。

「好きなだけって…この量を俺が1人で?しかも俺の好物ばっかりじゃん」

更に状況が飲み込めなくなって俺は眉を寄せた。と、隣でピザを摘まんでいたマルコさんも怪訝そうに眉を潜めた。

「そりゃお前の好物しかないだろうよ。なんたってお前の誕生祝いなんだからよ」

誕生祝い…誕生…

「あ!誕生日か!え、これ誕生日パーティーなの!?」

「なんだぁ?気づいてなかったのかよ!」

ニコラも報われないぜ、とマルコさんが大袈裟に肩を竦めた。

「誕生日だからご馳走振る舞おうと思ってね。誕生日には来なくても、3日以内には来てくれるだろうと思って用意してたんだよ」

ニコラがそう言う。そうかだからこの量の俺の好物、か。

「俺が準備してたらマルコさんたちに目敏く見つかって。説明したら皆一緒に祝ってくれるって言ってくれたんだ」

あー、だからマルコさんは拗ねていたのか。全てに合点がいって俺はほうっと息をついた。まさか俺のために皆が待っていてくれたとは。

「皆ありがとう」

改まってそう言うと、口々に

「おうよ!おめでとう」 
「チハルおめでとう!」

と返してくれる。ピザを頬張っていたマルコさんも

「おめでとさん」

と口をもごもごさせながら言ってくれた。
来るか来ないかわからないのに、俺のためにこんな席が用意されていたと知って少し申し訳なくなった。でもそれと同時になんとなく背中がむずむずするような嬉しさも感じていた。

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