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「美味しかったー!」
わいわい言いながら美味しい料理をきれいに完食した。普段なら絶対食べない量を食べてしまって少しお腹が苦しい。
「相変わらずここの料理は絶品だぜ」
誰かが言った言葉に全員で賛同する。
「お褒めいただき光栄です。」
おどけた調子で言いながらニコラがカウンターから出てきた。その手には大きな皿があった。
「でもこっちが今夜のメインなんだけどね」
なになに?と手元を覗き込むとそれは、バースデーケーキだった。定番の白い生クリームの上にはいちごだけでなく、いろんなフルーツがのせられている。ブドウにメロン、リンゴにオレンジ、さくらんぼにキウイ…盛りだくさんだ。とても大きなホールケーキで、それに見合う大きさのチョコプレートにはTanti auguri a te(誕生日おめでとう!)ときれいな飾り文字で書かれている。
「チハル、誕生日おめでとう」
ニコラが言ってくれた。それに続いて口々に俺へのお祝いの言葉が飛んだ。
ビジネスとかそんなんで開かれた会じゃなくて、皆が自主的に集まってくれた誕生日会。一人一人の言葉や表情が温かかった。
俺は嬉しくて少し泣きそうになった。
セルジオへの失恋でちょうど心が弱っていた時期だった。
それに、こんな好物ばかりのご馳走や、手作りのホールケーキなんか両親が死んで以来だ。
「ほんとにありがとう」
俺は精一杯の笑みを浮かべてそう言った。感謝が伝わりますように、そう意味を込めて。
そして、それはちゃんと伝わってくれたようだった。
ニコラが優しく微笑んでいる。
「いいってことよ」
マルコさんが肩をバシバシ叩いてきた。
「チハルー早く蝋燭消せよ!ケーキが焦げるぞ」
「あ、ごめんごめん」
言われて、ふーっと息を吹きかけた。それは一発では消えなくて2度息を吹いた。
「お前そこは一発だろー!願い事叶わないぞ」
マルコさんが言う。
「んー、それでもいいかな。だって今凄い楽しいし」
俺がそう言うと今度は背中を思いっきり叩かれた。
「言ってくれるじゃねぇの」
げほっと咳き込む俺に、にやっと笑うマルコさん。俺も同じように口角を上げてみせた。
「あー!」
と、ニコラが突然大声を上げた。
「うわっ、何!?」
「おい、なんだよ!」
驚いて聞くと、ニコラは軽く顔をしかめて言った。
「バースデーソング歌うの忘れてた!」
突然の大声に、何事か!と身構えていた俺たちは拍子抜けした。
「お、おぉ…そういやそうだな」
「今からでも歌えばいいだろ!おい、そこのギターとってくれ」
1人が言った言葉にギターの近くにいたおっちゃんが反応して、ギターが手渡された。そして人を経由してそれは、俺に手渡された。
「よし。歌うぞ。せーの」
「ちょ、ちょ、待って待って」
皆が平然と息を吸い込んだのを俺は慌てて遮った。
今から歌うのはバースデーソングで、それは俺に向けてのはずで、
「俺が弾くの?」
当然の俺の疑問は
「お前以外に誰も弾けない」
という実に簡潔な言葉で肯定された。
あ、そうですね、と俺も真顔で返す。ニコラが苦笑して、ごめんねと言った。俺はそれに笑い返した。ま、いっか。楽しけりゃよし!だ。
「よし、弾きますよー」
ギターを構えて声をかける。前奏を軽く入れて弾くと、皆声を合わせて入ってきてくれた。自分のバースデーソングを自分で弾くのはなんとも不思議な気分だけど、俺の出す音に皆が乗っかってきてくれるのが楽しかった。そういや俺、こんな風に皆で歌うとかしたことなかったっけ。
「ちょ、待てチハル!プロの本気アレンジするな!ついていけない!」
楽しくてつい、ノリノリで弾いてしまった俺だった。
わいわい言いながら美味しい料理をきれいに完食した。普段なら絶対食べない量を食べてしまって少しお腹が苦しい。
「相変わらずここの料理は絶品だぜ」
誰かが言った言葉に全員で賛同する。
「お褒めいただき光栄です。」
おどけた調子で言いながらニコラがカウンターから出てきた。その手には大きな皿があった。
「でもこっちが今夜のメインなんだけどね」
なになに?と手元を覗き込むとそれは、バースデーケーキだった。定番の白い生クリームの上にはいちごだけでなく、いろんなフルーツがのせられている。ブドウにメロン、リンゴにオレンジ、さくらんぼにキウイ…盛りだくさんだ。とても大きなホールケーキで、それに見合う大きさのチョコプレートにはTanti auguri a te(誕生日おめでとう!)ときれいな飾り文字で書かれている。
「チハル、誕生日おめでとう」
ニコラが言ってくれた。それに続いて口々に俺へのお祝いの言葉が飛んだ。
ビジネスとかそんなんで開かれた会じゃなくて、皆が自主的に集まってくれた誕生日会。一人一人の言葉や表情が温かかった。
俺は嬉しくて少し泣きそうになった。
セルジオへの失恋でちょうど心が弱っていた時期だった。
それに、こんな好物ばかりのご馳走や、手作りのホールケーキなんか両親が死んで以来だ。
「ほんとにありがとう」
俺は精一杯の笑みを浮かべてそう言った。感謝が伝わりますように、そう意味を込めて。
そして、それはちゃんと伝わってくれたようだった。
ニコラが優しく微笑んでいる。
「いいってことよ」
マルコさんが肩をバシバシ叩いてきた。
「チハルー早く蝋燭消せよ!ケーキが焦げるぞ」
「あ、ごめんごめん」
言われて、ふーっと息を吹きかけた。それは一発では消えなくて2度息を吹いた。
「お前そこは一発だろー!願い事叶わないぞ」
マルコさんが言う。
「んー、それでもいいかな。だって今凄い楽しいし」
俺がそう言うと今度は背中を思いっきり叩かれた。
「言ってくれるじゃねぇの」
げほっと咳き込む俺に、にやっと笑うマルコさん。俺も同じように口角を上げてみせた。
「あー!」
と、ニコラが突然大声を上げた。
「うわっ、何!?」
「おい、なんだよ!」
驚いて聞くと、ニコラは軽く顔をしかめて言った。
「バースデーソング歌うの忘れてた!」
突然の大声に、何事か!と身構えていた俺たちは拍子抜けした。
「お、おぉ…そういやそうだな」
「今からでも歌えばいいだろ!おい、そこのギターとってくれ」
1人が言った言葉にギターの近くにいたおっちゃんが反応して、ギターが手渡された。そして人を経由してそれは、俺に手渡された。
「よし。歌うぞ。せーの」
「ちょ、ちょ、待って待って」
皆が平然と息を吸い込んだのを俺は慌てて遮った。
今から歌うのはバースデーソングで、それは俺に向けてのはずで、
「俺が弾くの?」
当然の俺の疑問は
「お前以外に誰も弾けない」
という実に簡潔な言葉で肯定された。
あ、そうですね、と俺も真顔で返す。ニコラが苦笑して、ごめんねと言った。俺はそれに笑い返した。ま、いっか。楽しけりゃよし!だ。
「よし、弾きますよー」
ギターを構えて声をかける。前奏を軽く入れて弾くと、皆声を合わせて入ってきてくれた。自分のバースデーソングを自分で弾くのはなんとも不思議な気分だけど、俺の出す音に皆が乗っかってきてくれるのが楽しかった。そういや俺、こんな風に皆で歌うとかしたことなかったっけ。
「ちょ、待てチハル!プロの本気アレンジするな!ついていけない!」
楽しくてつい、ノリノリで弾いてしまった俺だった。
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