24 / 53
23
しおりを挟む
ヨーロッパから始まる世界ツアー。それはとても楽しいものだった。
最初に行ったのは隣接するフランス。初めて行ったその国は言葉こそわからないものの、街並みは美しいし、まさに芸術の国だった。本当に他国に俺たちのファンなんかいるのかとどこか疑っていた俺の不安は見事に取り払われ、熱狂的なファンがたくさん待っていてくれた。
初日のライブを終えた夜。セルジオと俺は二人で祝杯をあげた。
「「かんぱーい!」」
同時にぐいっと酒を煽る。
「いやー今俺ほんとに感動してる」
セルジオが言う。俺もその言葉に深く頷いた。
「世界ツアーが出来るんだって今やっと実感した」
ほんとにな、とセルジオも頷く。
そこから俺たちの会話は自然と今日の反省会になった。世界に進出したはいいけれど、まだまだ直せなければならないところはたくさんある。
「2曲目の入りちょっと音外れたの悔しい。修正するわ」
「頼む。後、あの曲のサビ前はライブだしもうちょっとタメ作ってもいいかもな」
「あーいいかも。どうせならその曲のチハルのボーカル部分アカペラにするか?」
「俺のとこより、ハモりのとこは?」
こんな会話が延々続いた。気づけば一時間なんかとっくに過ぎていた。俺もセルジオもこうやって音楽について話してるのが楽しいのだから全く問題ないのだけれど。
ふと会話が途切れてグラスに口をつけた。散々話して渇いた喉を潤す。
隣で同じようにしていたセルジオがそういや、と切り出した。
「お前、ツアー前1週間くらいまた悩んでたろ」
確信を持った言い方。グラスを傾けていた形そのままでぴたっと固まる。
「…なんで!?」
なぜわかったのかと純粋に驚いた。確かに悩んでいたのはそうだが、今回はわかりやすく落ち込む案件ではなかったのに。
「長い付き合いだろー。お前のことはだいたい分かる」
セルジオがくいっとグラスを傾けて飲み干した。カランと高い音で氷が鳴る。そうしてこちらを向いたセルジオはにやっと笑った。
「他の人にはたぶんバレてないと思うぜ」
「…だったらなんでお前がわかるんだよ!他の人の俺への評価聞いたことあるか?ミステリアスだぞ!」
「俺にとってはお前はわかりやすいだだ漏れ野郎だな」
ますます得意気ににやつくセルジオ。なんか腹が立って軽く肘鉄を食らわせた。
大袈裟にぐおっと痛がって見せながらもなおセルジオはにやにやして言う。
「どーれ、お兄さんに話してごらん?坊やは何で悩んでいるの?」
じとっとした目で俺は今度は割りと本気で手刀を叩き込んだ。
最初に行ったのは隣接するフランス。初めて行ったその国は言葉こそわからないものの、街並みは美しいし、まさに芸術の国だった。本当に他国に俺たちのファンなんかいるのかとどこか疑っていた俺の不安は見事に取り払われ、熱狂的なファンがたくさん待っていてくれた。
初日のライブを終えた夜。セルジオと俺は二人で祝杯をあげた。
「「かんぱーい!」」
同時にぐいっと酒を煽る。
「いやー今俺ほんとに感動してる」
セルジオが言う。俺もその言葉に深く頷いた。
「世界ツアーが出来るんだって今やっと実感した」
ほんとにな、とセルジオも頷く。
そこから俺たちの会話は自然と今日の反省会になった。世界に進出したはいいけれど、まだまだ直せなければならないところはたくさんある。
「2曲目の入りちょっと音外れたの悔しい。修正するわ」
「頼む。後、あの曲のサビ前はライブだしもうちょっとタメ作ってもいいかもな」
「あーいいかも。どうせならその曲のチハルのボーカル部分アカペラにするか?」
「俺のとこより、ハモりのとこは?」
こんな会話が延々続いた。気づけば一時間なんかとっくに過ぎていた。俺もセルジオもこうやって音楽について話してるのが楽しいのだから全く問題ないのだけれど。
ふと会話が途切れてグラスに口をつけた。散々話して渇いた喉を潤す。
隣で同じようにしていたセルジオがそういや、と切り出した。
「お前、ツアー前1週間くらいまた悩んでたろ」
確信を持った言い方。グラスを傾けていた形そのままでぴたっと固まる。
「…なんで!?」
なぜわかったのかと純粋に驚いた。確かに悩んでいたのはそうだが、今回はわかりやすく落ち込む案件ではなかったのに。
「長い付き合いだろー。お前のことはだいたい分かる」
セルジオがくいっとグラスを傾けて飲み干した。カランと高い音で氷が鳴る。そうしてこちらを向いたセルジオはにやっと笑った。
「他の人にはたぶんバレてないと思うぜ」
「…だったらなんでお前がわかるんだよ!他の人の俺への評価聞いたことあるか?ミステリアスだぞ!」
「俺にとってはお前はわかりやすいだだ漏れ野郎だな」
ますます得意気ににやつくセルジオ。なんか腹が立って軽く肘鉄を食らわせた。
大袈裟にぐおっと痛がって見せながらもなおセルジオはにやにやして言う。
「どーれ、お兄さんに話してごらん?坊やは何で悩んでいるの?」
じとっとした目で俺は今度は割りと本気で手刀を叩き込んだ。
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
僕の、しあわせ辺境暮らし
* ゆるゆ
BL
雪のなか僕を、ひろってくれたのは、やさしい男の子でした。
ふたりの、しあわせな辺境暮らし、はじまります!
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
ちゃんちゃら
三旨加泉
BL
軽い気持ちで普段仲の良い大地と関係を持ってしまった海斗。自分はβだと思っていたが、Ωだと発覚して…?
夫夫としてはゼロからのスタートとなった二人。すれ違いまくる中、二人が出した決断はー。
ビター色の強いオメガバースラブロマンス。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる