紫音の少女

柊 潤一

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ゼルダの部屋で

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    ザイールに戻った三人は、紫音の所で遅い昼食をとり、それぞれ自分の部屋へ戻っていった。

 紫音は自分の部屋でお茶を飲みながら、今日の治療の記録を書いていたが、ふとハシバ国王の侍従医のハウラの事が頭に浮かんだ。

 初めてこの城に来た日以来会っていないが、あの時自分を見た目に憎しみがこもっているのが気になっていた。

 しかし、ここに移ってきた忙しさにかまけて忘れて
いたのだった。

 紫音はハウラの様子を調べようと思った。

 そして目を閉じ城の中に入り、あの日に見たハウラが出すエネルギーの色と彼のイメージを思い浮かべながら、部屋から部屋へ風のように移動していった。

 ハウラの部屋はすぐに見つかった。

 壁をすり抜け中へ入ったが、ハウラはいなかった。

 部屋の中を調べてみたが、別段変わったものもなく、外に出てふとゼルダ王子の部屋へ行ってみようと思った。

 ゼルダ王子の部屋にきて中へ入ってみると、ゼルダ王子は昼食の後の午睡をしていた。

 紫音はそばに近寄り顔を覗き込んだ。

 普段の男らしい顔つきが、目を閉じて寝ている今は、あどけない子供のようだった

 紫音はクスリと笑った。

 とたんにゼルダ王子が目を覚ました。

「紫音殿・・・あれ?おかしいな。夢か?」

 紫音はぎくりとしてその場に固まった。

 紫音は今、意識だけの存在だったからゼルダ王子には見えない筈だったが、どうやら紫音がいることに気づいた様子だった。

「紫音殿!いるんでしょ?」

 ゼルダは目を凝らして、何もない空間に紫音の存在を感じ取ろうとしていた。

 紫音は仕方なくゼルダに返事をした。

(いるわよ)

「え?どこにいるのですか?」

(私の部屋です。意識だけゼルダ様の部屋にきて、寝顔を見てました。それにしてもゼルダ様も感が鋭いわ。せっかくこっそりと見ていたのに)

「ハハハ・・・いつも紫音殿の事を考えていますからね。夢うつつでなんとなく気配がしました。それにしても・・・あなたの声はここまで届くんですね」

(ゼルダ様の頭の中に直接話しかけていますからね。ゼルダ様も声を出さずに私を思い浮かべて話してみて)

(えっと・・・こうですか?聞こえます?)

(聞こえるわよ。よく出来ました)

(ハハ・・・・褒めて頂いて光栄です。でも、これって便利ですね。これからこうやって話しかけてもいいですか?)

(いいわよ。忙しいときはお相手できないでしょうけど、それでよければ)

(もちろんかまいません。でも嬉しいなぁ。これでいつでも紫音殿と話ができます)

(ふふ・・・私にとっても便利だからいいですけど。用事ばかりを言いつけるかもしれなくてよ)

(いいですよ。紫音殿の為なら喜んで)

(じゃあ・・・さっそく、今日の夕食後にお庭のこの間のベンチに来てもらえますか?お見せしたいものがあります)

(わかりました。いきます。)

(ではまた夕食後に)

 紫音は目を開けた。

 そして、今日の夜に連れて行く場所でゼルダ王子が驚く様子を想像して微笑んだ。
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