紫音の少女

柊 潤一

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ゼルダの変化

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(ゼルダ様はどうされたのかしら・・・・)

 紫音がゼルダを宇宙へ連れて行った日から二日が経ち、今日で三日目だったが、その間ゼルダは顔を見せず、直接話しかけてもこないことが紫音は気になっていた。

「どうしたんじゃ、浮かぬ顔をして」

「え?・・・」

 一日の診察が終わり、シュリ婆とお茶を飲んでいた紫音は、ぼんやりとゼルダの事を考えていた。

「心ここにあらずといった顔をしておったぞ。ゼルダ王子がここ二日ほど顔を見せぬが、喧嘩でもしたのかぇ?」

「いや、そんなんじゃないの・・・」

 紫音は、ゼルダと宇宙へ行ったことをかいつまんでシュリ婆に話した。

「私は彼に、もっと大きな人間になって欲しかったの。でも・・・彼にはまだ早かったかしら?」

「ふむ・・・少しショックを受けただけじゃろ。ゼルダ王子も器は大きいとわしは思っとる。
 まだまだ子供のところはあるが、そろそろ自分の道を真剣に考えてもええ頃じゃないかぇ?」

「うん、私もそう思ったの。あの光景を見せもしたか
 ったし。お婆さんも今度行きましょうね。」

「いんや、わしゃええだ。世の中の事はある程度わか
 っとるし、こんな年じゃから、死という事も考えておった。じゃがな・・・・考えるのはもう止めた。
何事もあるがままに受け止めようと決めたんじゃ。
 わしゃいままで誰にも恥じぬように生きて来たつもりじゃ。
 死んだ亭主にも尽くしてきたし、息子夫婦が死んだときは、何故こんな目にあうのかとも思うたが、エリカがおってくれたからのぉ。あの子のおかげでやってこれたわ。それに、お前さんとも出会えたしのぉ」

「人生の晩年でこんな面白い事に出会うとは思うても
見なかったわ。紫音や、わしゃお前に出会えて感謝しとるんじゃ。わしゃいつ死んでも悔いはないぞえ」

「お婆さん・・・」

「まぁ、ゼルダ王子の事はしばらくそっとしておくが
ええだ。
惚れたお前さんの不思議な力を見ても、びくともせん所なぞは並みの人間ではあるまい。
 きっと紫音の期待通りになってくれるに違いないぞぇ」

「はい。私もそう信じています」

 そこへ突然ハシバ国王が入ってきた。

「失礼して宜しいですかな?おくつろぎの所を申し訳
 ないが・・・」

「あ、これは国王様。どうぞどうぞ、おかけになって下さい。いまお茶を入れますから。」

「おお、それは申し訳ない。紫音様にお茶を入れても
 らえるとは光栄ですな。」

「からかっちゃ嫌ですわ、国王様」

 紫音は奥へ入っていき、ティーポットとカップを持って戻ってきて、ハシバ国王のカップにお茶を注いだ。

「はいどうぞ。私の入れたお茶が国王様のお口に合い
ますかしら?」

「ええ、そりゃあもう・・・」

 ハシバ国王はお茶に口をつけた。

「うむ、美味い。やはり紫音様に入れて頂くお茶は味
が違いますな」

「わしの入れるのでは、国王様はお気に召さぬと見え
る」

 そういいながらシュリ婆は笑っていた。

「なんの。シュリ婆の入れるお茶は、年の功でまた格別の味じゃろうて」

「おやまぁ、国王様にお世辞を言わせてしもうたわい」

 ハシバ国王も笑っていた。

「ところで、わしはここに来るのは初めてだが、もう
落ち着かれたようですな」

「ええ、おかげさまで気持ちよく使わせていただいて
おります」

「うむ、それは良かった。ところで・・・今日来たのは他でもないゼルダのことなのだが」

「あら・・・ゼルダ様がどうかされたのですか?」

「実は昨日の朝わしの所へやってきおってな、国の治
め方を教えてくれと言いいおった」

「まぁ・・・」

「わしの所へ来たときの顔つきが別人のようじゃった。一人前の男の顔になっておったわ。
 それまであいつはどうも国政のことには無関心でな。無理に教え込むのも逆効果とも思い、ほっておいたのだが、あんなに短い間で変わったのにはわしも驚いた。
それで紫音様が何かご存知ではないかと思ったのじ
 ゃが・・・」

「ゼルダ様はご立派な方ですわ。私はゼルダ様が持っ
てらっしゃるものを自覚できるように、お手伝いをさせていただいただけです」

「ふむ、やはりそうであったか・・・」

「あいつは母親っ子でな。母親が生きておったころには、あの年になっても甘えておった。
 それが、去年亡くなった時にはわしも辛かったが、あいつには余程こたえたのだろう。しばらく口もきかずに部屋に閉じこもりっきりであった。
 今年になってやっと元気になったんじゃが、紫音様がこられてからは益々明るくなってきおった。」

「紫音様、親ばかと笑ってくだされ。あいつは不肖の
息子じゃがわしにとっては大事な息子じゃ。
贅沢は言わぬ。紫音様の出来る範囲でかまわぬから面倒を見てやって欲しいのじゃ。」

「わかりました。出来る限りの事はさせていただきま
す」

「おお、そう言っていただけるとありがたい。この通りお願い致します」

 国王は紫音に深々と頭を下げた。
 それは子供を思う父親の愛情に溢れたものであった。

「ご馳走になりました。それではこれで失礼いたしま
す」

 ハシバ国王は紫音と共に建物の出口まで出て挨拶をし、城へ戻っていった。

 それを見送る紫音の胸には、暖かいものが宿っていた。
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