妄想のメシア

柊 潤一

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ボスを目指して

サエちゃんの仇討ち

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 しばらくして、あつしと凪沙さんが追いついて来た。

「あいつや」

「うん。俺が左目を潰してやったやつだ」

「あいつが、憎いサエちゃんの仇なんや。トドメは俺にやらしてや。それから、俺が仕掛けるまで弓は使ったらあかんで」

「ちょっと待って」

 俺が行こうとすると、それまでじっと魔物を観察していた凪沙さんに止められた。

「武器をこっちに、そう、そうやって水平に持っててね」

 凪沙さんは刀に手をかざして何やらやっていたが

「うん。これでいいと思うわ」

 と言った。

 俺は

「いったい、何なん?」

 と言って刀を見ると、薄氷で表面がキラキラしている。

「おお?これって・・・」

「そう、氷の属性を付けたのよ。あいつ、どうも冷たさに弱そうだからね。うまく出来るかどうか分からなかったけど、やってみるもんだね」

「凄いやん。凪沙さん」

 凪沙さんは、えへへ、と言いながら照れている。

「じゃ、僕のにも付けてよ」

「うん。弓を貸して」

 凪沙さんは弓を手に取りじっと見つめた。

「これで、つがえる矢にも氷の属性が付くはずよ
 」

 そう言って凪沙さんがあつしに手渡した弓を見てみると、キラキラと細かく氷が浮いている。

「よしっ!行くで!」

 センタはスタスタと歩きだした。

 あつしは、事もなげに魔物に向かって歩いて行くセンタを、後ろから見ていた。

 センタの体からは殺気はまったく感じられず、まるで知り合いに挨拶をしに行くような気楽さが漂っていた。

 あいつ、凄いやつだな、とあつしは呟いた。

 センタに気付いた魔物は、不思議そうな目をして近付いてくるセンタを見ている。

 やがて、魔物の目の前まで行ったセンタは身構えることなく、だらりと右手に持っていた刀を、すっと左上に切り上げた。

「グァ!・・・」

 刃がキラリと煌きらめき、虚をつかれた魔物は、体を斜めに切られていた。

 が、致命傷にはなっていない。

 センタは刀を振り上げると同時に、右後方へ飛んでいる。

 あいつ、動きが上手い!

 矢を射る邪魔にはならない位置に飛んでいる。おまけに魔物は潰れた右目で俺の方は見えていない。

 あつしは渾身の力で弓を引き絞った。

 その弓に、番つがえられた氷の矢が現れ、ひょう、と放たれた矢は唸りをあげて魔物の右胸を貫いた。

 と同時に、センタは魔物の頭上目がけて飛び上がり、魔物の頭から一直線に下まで、ありったけの力を込めて切り裂き、着地した。

 仁王の形相で、シコを踏んで着地したまま刀を持ち、魔物を睨むセンタの目の前で、魔物の体が左右に別れて倒れ、やがて消えていった。

 緊張を解いて立ち上がったセンタは、魔物の消えた場所を見ながら

「サエちゃん、仇はとってやったで」

 と、呟いた。


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