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第七章 甘い誘惑
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「――あのぉ、どういう意味ですか?」
こそっと乙女が丸子に耳打ちすると、丸子は「それはね」と説明する。
「知る人ぞ知るですが、月華の君は西之国のお姫様に恋心を抱いていらっしゃるそうですよ」
なんと! 乙女のビックリ眼が丸子を見返す。
そう言えば、と綾鷹の言葉を思い出す。『その内分かる』みたいなことを言っていた……と。
なるほどそうだったのか、あのお菓子を勧めたのはそのお姫様?
美味しそうに食べていた月華の君の姿を思い出し、クスッと乙女は笑う。
「綾鷹様もご一緒に行かれたのでしょう?」
糸子が遠慮がちに訊く。
「はい。一週間のご予定だそうです」
「まぁ、それはお寂しいわね」
苺の言葉に全員が頷く。
「――あのぉ……月華の君の恋心って、それ反逆行為ですよね?」
なぜ皆、そこのところをスルーするのだろう、と乙女は不思議に思いながら尋ねる。
「あんな規則ナンセンス!」
「そう、このお茶会は正直な気持ちを話すところ」
「ここはストレス発散の場なんですよ」
蘭子、桔梗、桐子が次々に発言する。
「ご存じかしら? チェリー・ブロッサムという作家のこと」
丸子の言葉にドキンと乙女の心臓が跳ね返る。
「えっと……彼女の著書は禁書ですよね……?」
「あら、やはりご存じなのね」
「私たち彼女の大ファンなの」
苺が嬉々と言いながらハンドバッグの中から一冊の本を取り出した。
乙女の新刊だった。赤面しそうになるのを乙女はグッと堪える。
「私、こんな恋がしたかったなぁ」
「あら、小岩井公爵としているじゃない!」
ニヤニヤ笑いながら丸子が言う。
「じゃなくて! 旦那様とお見合いじゃなく、こんな風に」と苺が本の表紙を撫でながら「偶然の出会いで会いたかったの!」言う。
「私もチェリー・ブロッサムが書く、男女の出会いに憧れるわ」
皆が口々に肯定的な言葉を発する。
読者の反応をじかに聞くことのなかった乙女は、嬉しさに頬を上げ、ありがとう、と心の中で感涙する。
「お茶会はいかがでしたか?」
玄関で乙女を出迎えたミミが早々に尋ねる。
「もう、すっごく楽しかった!」
チェリー・ブロッサムが褒められたのよ、とすぐにでも報告したかったが、周りに人がいたので我慢した。
「それはようございました。とても心配しておりましたのよ」
「私が何か失敗するとでも?」
当然、というようにミミが頷く。ムッとしながらも乙女は足早で自室に戻る。そして、入ったが早いか機関銃のように話し始めた。
「お嬢様、もういいです。分かりました! そうですか、そんな奇特な方々がいらしたのですね」
ミミはそう言いながらも、これで作家活動続行じゃない! 余計なことを、と心の中で舌打ちする。
「それからね、蜜子様がこのお洋服のことを褒めていらしたわ。彼女、マダム・メープルが貴婦人のドレスばかり作っていないって知ってらしたわ。流石ね」
「へーっ、そうなのですか。私、高位の奥方は皆様はマダム・メープルの行為を知れば、否定されるとばかり思っておりました。色眼鏡で見ていたのは私の方だったのですね。反省です」
「私もお茶会に行くまでは怖い人ばかりだと思っていたわ」
「思い込みで人を判断してはいけない、ということですね」
「そうね」
乙女とミミは顔を見合わせ、しみじみと頷き合う。
「お着替えが済み次第、リビングに参りましょう。紅子さんがウズウズしていらっしゃいます」
きっとこれね、とカメラを取り出す。
「お集まりの皆様のお写真、撮ってきたわよ」
「どれどれ」とミミが覗き込む。
「うわっ! この方が蜜子様ですか? ものすごく美人じゃないですか!」
「でしょう。実物はもっと美しいわよ」
「この小学生みたいな子も既婚者ですか?」
苺を指差しミミが尋ねる。
「私と同じ年ですって」
「嘘っ! 私より年上ですか? ベリーベビーフェイス!」
「実物はもっとお子ちゃま顔だったわよ」
「オー、ジーザス!」
ミミは天を仰ぎ、芝居がかった溜息を吐き、「羨ましい」と呟いた。
乙女が笑いながら画面をタップすると「あら?」とミミが一点を食い入るように見つめ、「糸子様?」と顔を上げ乙女を見た。
こそっと乙女が丸子に耳打ちすると、丸子は「それはね」と説明する。
「知る人ぞ知るですが、月華の君は西之国のお姫様に恋心を抱いていらっしゃるそうですよ」
なんと! 乙女のビックリ眼が丸子を見返す。
そう言えば、と綾鷹の言葉を思い出す。『その内分かる』みたいなことを言っていた……と。
なるほどそうだったのか、あのお菓子を勧めたのはそのお姫様?
美味しそうに食べていた月華の君の姿を思い出し、クスッと乙女は笑う。
「綾鷹様もご一緒に行かれたのでしょう?」
糸子が遠慮がちに訊く。
「はい。一週間のご予定だそうです」
「まぁ、それはお寂しいわね」
苺の言葉に全員が頷く。
「――あのぉ……月華の君の恋心って、それ反逆行為ですよね?」
なぜ皆、そこのところをスルーするのだろう、と乙女は不思議に思いながら尋ねる。
「あんな規則ナンセンス!」
「そう、このお茶会は正直な気持ちを話すところ」
「ここはストレス発散の場なんですよ」
蘭子、桔梗、桐子が次々に発言する。
「ご存じかしら? チェリー・ブロッサムという作家のこと」
丸子の言葉にドキンと乙女の心臓が跳ね返る。
「えっと……彼女の著書は禁書ですよね……?」
「あら、やはりご存じなのね」
「私たち彼女の大ファンなの」
苺が嬉々と言いながらハンドバッグの中から一冊の本を取り出した。
乙女の新刊だった。赤面しそうになるのを乙女はグッと堪える。
「私、こんな恋がしたかったなぁ」
「あら、小岩井公爵としているじゃない!」
ニヤニヤ笑いながら丸子が言う。
「じゃなくて! 旦那様とお見合いじゃなく、こんな風に」と苺が本の表紙を撫でながら「偶然の出会いで会いたかったの!」言う。
「私もチェリー・ブロッサムが書く、男女の出会いに憧れるわ」
皆が口々に肯定的な言葉を発する。
読者の反応をじかに聞くことのなかった乙女は、嬉しさに頬を上げ、ありがとう、と心の中で感涙する。
「お茶会はいかがでしたか?」
玄関で乙女を出迎えたミミが早々に尋ねる。
「もう、すっごく楽しかった!」
チェリー・ブロッサムが褒められたのよ、とすぐにでも報告したかったが、周りに人がいたので我慢した。
「それはようございました。とても心配しておりましたのよ」
「私が何か失敗するとでも?」
当然、というようにミミが頷く。ムッとしながらも乙女は足早で自室に戻る。そして、入ったが早いか機関銃のように話し始めた。
「お嬢様、もういいです。分かりました! そうですか、そんな奇特な方々がいらしたのですね」
ミミはそう言いながらも、これで作家活動続行じゃない! 余計なことを、と心の中で舌打ちする。
「それからね、蜜子様がこのお洋服のことを褒めていらしたわ。彼女、マダム・メープルが貴婦人のドレスばかり作っていないって知ってらしたわ。流石ね」
「へーっ、そうなのですか。私、高位の奥方は皆様はマダム・メープルの行為を知れば、否定されるとばかり思っておりました。色眼鏡で見ていたのは私の方だったのですね。反省です」
「私もお茶会に行くまでは怖い人ばかりだと思っていたわ」
「思い込みで人を判断してはいけない、ということですね」
「そうね」
乙女とミミは顔を見合わせ、しみじみと頷き合う。
「お着替えが済み次第、リビングに参りましょう。紅子さんがウズウズしていらっしゃいます」
きっとこれね、とカメラを取り出す。
「お集まりの皆様のお写真、撮ってきたわよ」
「どれどれ」とミミが覗き込む。
「うわっ! この方が蜜子様ですか? ものすごく美人じゃないですか!」
「でしょう。実物はもっと美しいわよ」
「この小学生みたいな子も既婚者ですか?」
苺を指差しミミが尋ねる。
「私と同じ年ですって」
「嘘っ! 私より年上ですか? ベリーベビーフェイス!」
「実物はもっとお子ちゃま顔だったわよ」
「オー、ジーザス!」
ミミは天を仰ぎ、芝居がかった溜息を吐き、「羨ましい」と呟いた。
乙女が笑いながら画面をタップすると「あら?」とミミが一点を食い入るように見つめ、「糸子様?」と顔を上げ乙女を見た。
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