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第八章 スキャンダラスな失踪
4.
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「ありがとうね……全く、そういうところが可愛いって言うんだよ」
龍弥は独り言ち、部屋を後にする。
バタンとドアが閉まる音を聞き、乙女は薄く目を開ける。そして、誰もいないのを確認すると全開にした。
「私って女優にもなれるわね」
まだ頭が痛いが、フラフラするほどではない。
「どうにかしてここから逃げ出せないかしら……」
乙女はソッとソファーから立ち上がると、抜き足差し足で窓の方に向かい外を見る。
「二階……」
大きな夕焼けがもう少しで地平線に沈みそうだ。オレンジ色の世界は美しいが……今は感動している場合ではない。
「飛び移れるような大きな木はないし……運動音痴の私がここから飛び降りたら、きっと捻挫では済まないだろうな……」
どうしたものかと考えながら部屋の中を見て回っていると……ん……? 人の声が聞こえてきた。
どこからだろう、と耳を澄ますと火の気のない暖炉からだった。
通気口が一階の暖炉と繋がっているらしい。
『娘は?』
『眠ったようですよ、今さっき龍弥から電話がありました』
声は二つ。どちらも籠もったような声だが龍弥ではないようだ。
『龍弥という男、大丈夫なのだろうな? 御前にご迷惑がかかると面倒だぞ』
『金が命の男。与えた分はしっかり仕事をしますがそれ以外のことはしない男です』
龍弥の言葉通りだった。
『まぁ、いい。奴も全てが済んだら……』
『これ、ですね』
小説家だけあって、乙女には二人の様子が手に取るように想像できた。
『これ』と言いながら、男の手が自分の首を真横に切るシーンが浮かび、乙女は両手で口を押さえる。
アイツら龍弥を……いや、“も”と言った、ということは……私を亡き者にするつもりだ!
どうしよう……と乙女はズキズキする頭を捻りながら、「まず龍弥に知らせなきゃ」と呟きドアをノックする。
すぐに反応があり、「どうした?」と龍弥が顔を出す。
乙女はシッと口元に人差し指で置き、クイッと顎で『おいで』と合図する。
何事だと怪訝な顔をする龍弥を暖炉の側に連れて行く。
『――それで、決行は?』
声が一段と低くなり聞こえなくなる。
その後、バタンとドアが閉まる音が聞こえた。どうやら男たちが部屋を出て行ったようだ。
「聞こえた?」
「ああ」
龍弥が応える。
「今の声は俺の雇い主、蘭丸の声だった」
「もう一人は?」
「知らない。聞き覚えのない声だ」
「私たち殺されるみたい」
はぁ? 龍弥が間抜けな顔になる。
「さっき、もう一人の男がそう指示をしていたの」
「俺もか?」
「そう、全てが終わったらと言っていたから、私を亡き者してからだと思うけど」
「マジか」
龍弥は額を押さえ天井を仰ぐ。
「永瀬蘭丸の奴、相当なワルだと思っていたが、それ以上だったな。根性腐ってやがる」
「蘭丸じゃない男が“御前”って言ったの、あの二人の陰に大物がいるみたい」
「御前?」龍弥が首を捻る。
「ねぇ、とにかく、ここから逃げた方がいいと思わない?」
「うーん」と龍弥が唸る。
「分かった。俺の仕事はお前を見張ることだけだ。『携帯を貸すな』とは言われていない」
「ほら」と乙女に自分の携帯を投げて寄越す。
「それで助けを呼べ。それなら俺が逃したことにならず、返金しなくてもいい」
ある意味仕事に忠実だが……徹底した守銭奴だな、と乙女は改めて感心する。
「助けが来る前に俺は逃げる。お前、義理と人情に厚いよな?」
「言わないよ。貴方のことは」
「サンキュー」
乙女は早速覚えている電話番号に電話をする。
何度もかけている國光の番号だ。
《もしもし……》
電話の向こうから警戒する声が聞こえた。
見知らぬ番号だったからだろう。
「國光さん?」
《その声は、乙女様!》
國光が声を上げる。
途端に電話の向こうでざわめきが起こる。
「至急、国家自衛隊に連絡して、化け物屋敷と呼ばれている鏡夜露卿のお屋敷に向かうよう言って下さい。私はそこにいます」
国家親衛隊の動きは乙女の予想以上に早かった。
龍弥は独り言ち、部屋を後にする。
バタンとドアが閉まる音を聞き、乙女は薄く目を開ける。そして、誰もいないのを確認すると全開にした。
「私って女優にもなれるわね」
まだ頭が痛いが、フラフラするほどではない。
「どうにかしてここから逃げ出せないかしら……」
乙女はソッとソファーから立ち上がると、抜き足差し足で窓の方に向かい外を見る。
「二階……」
大きな夕焼けがもう少しで地平線に沈みそうだ。オレンジ色の世界は美しいが……今は感動している場合ではない。
「飛び移れるような大きな木はないし……運動音痴の私がここから飛び降りたら、きっと捻挫では済まないだろうな……」
どうしたものかと考えながら部屋の中を見て回っていると……ん……? 人の声が聞こえてきた。
どこからだろう、と耳を澄ますと火の気のない暖炉からだった。
通気口が一階の暖炉と繋がっているらしい。
『娘は?』
『眠ったようですよ、今さっき龍弥から電話がありました』
声は二つ。どちらも籠もったような声だが龍弥ではないようだ。
『龍弥という男、大丈夫なのだろうな? 御前にご迷惑がかかると面倒だぞ』
『金が命の男。与えた分はしっかり仕事をしますがそれ以外のことはしない男です』
龍弥の言葉通りだった。
『まぁ、いい。奴も全てが済んだら……』
『これ、ですね』
小説家だけあって、乙女には二人の様子が手に取るように想像できた。
『これ』と言いながら、男の手が自分の首を真横に切るシーンが浮かび、乙女は両手で口を押さえる。
アイツら龍弥を……いや、“も”と言った、ということは……私を亡き者にするつもりだ!
どうしよう……と乙女はズキズキする頭を捻りながら、「まず龍弥に知らせなきゃ」と呟きドアをノックする。
すぐに反応があり、「どうした?」と龍弥が顔を出す。
乙女はシッと口元に人差し指で置き、クイッと顎で『おいで』と合図する。
何事だと怪訝な顔をする龍弥を暖炉の側に連れて行く。
『――それで、決行は?』
声が一段と低くなり聞こえなくなる。
その後、バタンとドアが閉まる音が聞こえた。どうやら男たちが部屋を出て行ったようだ。
「聞こえた?」
「ああ」
龍弥が応える。
「今の声は俺の雇い主、蘭丸の声だった」
「もう一人は?」
「知らない。聞き覚えのない声だ」
「私たち殺されるみたい」
はぁ? 龍弥が間抜けな顔になる。
「さっき、もう一人の男がそう指示をしていたの」
「俺もか?」
「そう、全てが終わったらと言っていたから、私を亡き者してからだと思うけど」
「マジか」
龍弥は額を押さえ天井を仰ぐ。
「永瀬蘭丸の奴、相当なワルだと思っていたが、それ以上だったな。根性腐ってやがる」
「蘭丸じゃない男が“御前”って言ったの、あの二人の陰に大物がいるみたい」
「御前?」龍弥が首を捻る。
「ねぇ、とにかく、ここから逃げた方がいいと思わない?」
「うーん」と龍弥が唸る。
「分かった。俺の仕事はお前を見張ることだけだ。『携帯を貸すな』とは言われていない」
「ほら」と乙女に自分の携帯を投げて寄越す。
「それで助けを呼べ。それなら俺が逃したことにならず、返金しなくてもいい」
ある意味仕事に忠実だが……徹底した守銭奴だな、と乙女は改めて感心する。
「助けが来る前に俺は逃げる。お前、義理と人情に厚いよな?」
「言わないよ。貴方のことは」
「サンキュー」
乙女は早速覚えている電話番号に電話をする。
何度もかけている國光の番号だ。
《もしもし……》
電話の向こうから警戒する声が聞こえた。
見知らぬ番号だったからだろう。
「國光さん?」
《その声は、乙女様!》
國光が声を上げる。
途端に電話の向こうでざわめきが起こる。
「至急、国家自衛隊に連絡して、化け物屋敷と呼ばれている鏡夜露卿のお屋敷に向かうよう言って下さい。私はそこにいます」
国家親衛隊の動きは乙女の予想以上に早かった。
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