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第十章 化け物屋敷
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「とにかく、これは決定事項だ。紅子もその旨を桜小路家に伝えているはずだ」
乙女はハッとして綾鷹を見上げる。
もしや、これは私のためでもあるが、ひとえに母たちを安心させるため……?
「明日その二人に会わせる」
「――二人も!」
私ごときのために……と途端に乙女は申し訳なくなる。
「ちなみに二人とも女性だから」
「えっ! 女性って……」
乙女の妄想が炸裂する。
「今流行のガールクラッシュな女ということですよね?」
「ガール……何だそれは?」
「同性である女性が惚れてしまうような女性を言います!」
ドヤ顔で説明をする乙女を綾鷹はまじまじと見遣り、眉間に皺を寄せるとその腰をさらにキュッと抱き寄せた。
「まさか君もそんな女性が好きなのか?」
「当然です。カッコイイ女性は好きです。私も類に漏れずです」
「何ということだ! 私のライバルはよりにも寄って女性だったとは」
真っ青な顔でトンチンカンなことを言い出す綾鷹に乙女は笑い出す。
「綾鷹様、誤解しないで下さい。恋愛対象はあくまで男性です」
「本当に?」
乙女の返事に綾鷹はホッと安堵の息を吐き、怒ったように言う。
「五階も六階もない! 言っておくが君の恋愛対象は私だけだ」
恥ずかしげもなく全くこの男は……と羞恥で顔を赤らめながらも乙女の口角が自然に上がる。
「綾鷹様って……意外に子供っぽいですね?」
ムッとふて腐れたように「君に対してだけだ」と言う綾鷹を、乙女は不覚にも可愛いと思ってしまった。それを誤魔化すように、「そろそろ離れて頂けませんか?」と小さく睨む。
「うむ」と言いながら、なかなか離れようとしない綾鷹だが、流石にこのままでは埒が明かないと思ったのか、「名残惜しいが」と言いながら乙女から手を放すと暖炉の方に足を進めた。
「声が聞こえてきたというのはここからだったね?」
「はい、くぐもった声が確かに聞こえました」
乙女は綾鷹の隣に並ぶと腰を屈め暖炉の内側を覗き込んだ。
「この部屋の真下はダイニングだ」
綾鷹が胸ポケットから四つ折りの用紙を取り出し広げる。
「それは……?」
腰を伸ばすと、今度はそれを覗き込む。
「屋敷の見取り図だ。部下が調べて描いてくれた」
その図面はとても緻密に描かれていた。
「私たちが今いるのは、ここだ」
綾鷹が二階と書かれた部屋の一つを指す。
「そして、その真下がここ」
綾鷹が言った通りだ。そこに『ダイニング』の文字があった。
「行ってみましょう!」
「その前に」と綾鷹が隣の部屋に続くドアを開ける。
「この部屋に龍弥がいたんだね」
「ええ、そうです」
乙女も綾鷹の脇から部屋を覗き見、訊く。
「ここは……?」
「おそらく控えの間だ」
奥行きはこちらの部屋と変わりないが、幅は……壁までの距離が二メートルもない。そこに三人掛けのチェストと本棚が置かれているだけの小部屋だが、窓があるからかそれほど圧迫した感じはしない。
「ウォークインクローゼットのようにも思えるが違う。ほら、廊下に続くドアがある」
なるほど、「では、私がいた部屋は……」と改めて乙女は広々とした部屋の中を見回す。
「この図面から言えば、主賓室みたいだね。鏡卿の部屋だったのだろう。見取り図を見ても分かるように、この階で一番広い部屋だ」
それに、と綾鷹が付け足す。
「どうやら鏡卿は猜疑の塊のような男だったみたいだ」
「どうしてそんなことが分かるのですか?」
綾鷹が顎で暖炉を指す。
「暖炉?」
「そう、そこから聞こえる声を聞いていたのだろう?」
「――もしかしたら暖炉が盗聴器の役割をしていたとか?」
「流石だね。そんなところだろうね」
二人はひとまずダイニングに向かう。
「ここがダイニング?」
乙女が目を疑うのも無理なかった。
「どう見ても、ここはキッチンですよ」
こぢんまりとした部屋にコンパクトに収められたキッチン台と食器棚、そして、木製の粗末なダイニングテーブルが有るだけの部屋だった。
「ここは使用人のキッチン兼ダイニングだったのだろう。ほらここに」
綾鷹が見取り図の一点を指す。
「メインダイニング?」
それはここよりずっと広い間取りだった。
ああ、と乙女が手を打つ。
「なるほど、猜疑の男……丸聞こえですね。ここなら使用人たちの話が」
暖炉に目を向けながら乙女が言う。
「想像だが、使用人たちに盗み聞きを知られないように控えの間を作り、彼らを決して部屋に入れなかったのだろう」
なるほど、と乙女が頷く。
乙女はハッとして綾鷹を見上げる。
もしや、これは私のためでもあるが、ひとえに母たちを安心させるため……?
「明日その二人に会わせる」
「――二人も!」
私ごときのために……と途端に乙女は申し訳なくなる。
「ちなみに二人とも女性だから」
「えっ! 女性って……」
乙女の妄想が炸裂する。
「今流行のガールクラッシュな女ということですよね?」
「ガール……何だそれは?」
「同性である女性が惚れてしまうような女性を言います!」
ドヤ顔で説明をする乙女を綾鷹はまじまじと見遣り、眉間に皺を寄せるとその腰をさらにキュッと抱き寄せた。
「まさか君もそんな女性が好きなのか?」
「当然です。カッコイイ女性は好きです。私も類に漏れずです」
「何ということだ! 私のライバルはよりにも寄って女性だったとは」
真っ青な顔でトンチンカンなことを言い出す綾鷹に乙女は笑い出す。
「綾鷹様、誤解しないで下さい。恋愛対象はあくまで男性です」
「本当に?」
乙女の返事に綾鷹はホッと安堵の息を吐き、怒ったように言う。
「五階も六階もない! 言っておくが君の恋愛対象は私だけだ」
恥ずかしげもなく全くこの男は……と羞恥で顔を赤らめながらも乙女の口角が自然に上がる。
「綾鷹様って……意外に子供っぽいですね?」
ムッとふて腐れたように「君に対してだけだ」と言う綾鷹を、乙女は不覚にも可愛いと思ってしまった。それを誤魔化すように、「そろそろ離れて頂けませんか?」と小さく睨む。
「うむ」と言いながら、なかなか離れようとしない綾鷹だが、流石にこのままでは埒が明かないと思ったのか、「名残惜しいが」と言いながら乙女から手を放すと暖炉の方に足を進めた。
「声が聞こえてきたというのはここからだったね?」
「はい、くぐもった声が確かに聞こえました」
乙女は綾鷹の隣に並ぶと腰を屈め暖炉の内側を覗き込んだ。
「この部屋の真下はダイニングだ」
綾鷹が胸ポケットから四つ折りの用紙を取り出し広げる。
「それは……?」
腰を伸ばすと、今度はそれを覗き込む。
「屋敷の見取り図だ。部下が調べて描いてくれた」
その図面はとても緻密に描かれていた。
「私たちが今いるのは、ここだ」
綾鷹が二階と書かれた部屋の一つを指す。
「そして、その真下がここ」
綾鷹が言った通りだ。そこに『ダイニング』の文字があった。
「行ってみましょう!」
「その前に」と綾鷹が隣の部屋に続くドアを開ける。
「この部屋に龍弥がいたんだね」
「ええ、そうです」
乙女も綾鷹の脇から部屋を覗き見、訊く。
「ここは……?」
「おそらく控えの間だ」
奥行きはこちらの部屋と変わりないが、幅は……壁までの距離が二メートルもない。そこに三人掛けのチェストと本棚が置かれているだけの小部屋だが、窓があるからかそれほど圧迫した感じはしない。
「ウォークインクローゼットのようにも思えるが違う。ほら、廊下に続くドアがある」
なるほど、「では、私がいた部屋は……」と改めて乙女は広々とした部屋の中を見回す。
「この図面から言えば、主賓室みたいだね。鏡卿の部屋だったのだろう。見取り図を見ても分かるように、この階で一番広い部屋だ」
それに、と綾鷹が付け足す。
「どうやら鏡卿は猜疑の塊のような男だったみたいだ」
「どうしてそんなことが分かるのですか?」
綾鷹が顎で暖炉を指す。
「暖炉?」
「そう、そこから聞こえる声を聞いていたのだろう?」
「――もしかしたら暖炉が盗聴器の役割をしていたとか?」
「流石だね。そんなところだろうね」
二人はひとまずダイニングに向かう。
「ここがダイニング?」
乙女が目を疑うのも無理なかった。
「どう見ても、ここはキッチンですよ」
こぢんまりとした部屋にコンパクトに収められたキッチン台と食器棚、そして、木製の粗末なダイニングテーブルが有るだけの部屋だった。
「ここは使用人のキッチン兼ダイニングだったのだろう。ほらここに」
綾鷹が見取り図の一点を指す。
「メインダイニング?」
それはここよりずっと広い間取りだった。
ああ、と乙女が手を打つ。
「なるほど、猜疑の男……丸聞こえですね。ここなら使用人たちの話が」
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「想像だが、使用人たちに盗み聞きを知られないように控えの間を作り、彼らを決して部屋に入れなかったのだろう」
なるほど、と乙女が頷く。
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