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第十章 化け物屋敷
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「廊下側もしっかり見ましたよ」
「もう一度見取り図をよく見てご覧。違和感はないかい?」
そう言いながら綾鷹が「ほら、ここだよ」と指を差す。
そう言えば……と乙女は見取り図と実際の壁を見比べながらアッと気付く。
「窓側の壁が分厚い!」
「そういうこと。それに窓側なのに窓がないのは不自然じゃない?」
「リアルに部屋を見ると不自然さに気付かないが、見取り図と比べると一目瞭然、その不自然さが浮き彫りにされてよく分かるだろう?」
「綾鷹様の部下って優秀なんですね」
「当然だろ、私が御大なのだから」
いけしゃあしゃあと言う綾鷹に、乙女は呆れながらも反論はしなかった。
「で、隠し扉はどこにあるのですか?」
その代わり話の先を催促した。
「これについては部下たちも随分手こずったよ」
綾鷹は勿体ぶったように肩を竦め、足元を見る。釣られて乙女も下を見る。
「幅木が見えるだろ?」
壁と床とが接する部分に設けられた横板を綾鷹の靴先がコツコツと指す。
「ほら、私と同じようにやってご覧」
乙女が言われた通りにすると……。
「あらっ?」
一箇所だけ明らかに音も足触りも違う箇所があった。
「そこを今度は三回続けて突っついてご覧」
また言われた通りにする。すると壁の奥からカチャと微かに鍵の開く音が聞こえた。
「開いたよ、壁を押してみて」
まさか、と思いながら乙女が押すと、壁の一部が回転式のドアになっていた。
「よくこんな隠し扉を見つけましたね」
乙女が心底感心していると、「部下の一人がね」と綾鷹がおかしそうに笑う。
「忍者映画が大好きで、その研究を始めたんだ。で、趣味が高じて自分の屋敷を忍者屋敷に改造してね、その研究の成果が今回の発見に繋がったというわけだ」
隠し部屋の全てを見つけたのが、その部下だそうだ。
「それ、趣味の域を超えていますね」
「確かに。一定のレベルを超えるものは趣味というよりもプロの技だね」
綾鷹に背中を押され中に入るが扉は閉まり真っ暗だ。すぐさま手にあるペンライトをオンにする。
「この廊下の先が部屋になっている」
綾鷹に手を取られ奥へと進むと広いスペースに出る。
だが、そこで目にしたのは……。
「これ……マジックミラーですか?」
先程、四つの部屋のドアを綾鷹が開け放した理由が分かった。
ドアから差す日の光で微かにだが各部屋の様子が見て取れた。
「そう、各部屋にかなり大きめの鏡があったろう?」
「まさか、鏡卿って、覗きが趣味だったとか?」
「そのまさかだと思うよ」と綾鷹が笑う。
「但し、君が思っているような卑猥なことではないだろうがね」
「ひっ卑猥って、そんなこと思っていません!」
「どうだろうね」と口角を上げながら綾鷹がペンライトの先をカチャ回す。すると四つの窓から音が聞こえてきた。
「これ、何なんですか?」
「各部屋に超小型DAP(デジタルオーディオプレイヤー)を置いてきた」
それをペンライトから遠隔操作してスイッチをオンにしたらしい。
「いつの間に……もしかしたら隠し部屋にはマジックミラーだけではなく、隠しマイクも仕込んであったのですか?」
無言で綾鷹が頷く。
「暖炉同様、ここから使用人の様子を伺っていたのですね」
鏡卿の異常な行動に乙女はゾッとする。
「この小部屋は防音室になっているらしく、ここの音が外に漏れることはないようだ」
「物凄く粘着質な厭な感じ……」乙女は自分の身を守るように腕をクロスする。
「鏡卿はこうやって自分の身を自分で守っていたのだろう」
「でも……殺されてしまった」
「その話なのだが……」と綾鷹が少し言い淀み、続きを口にする。
「一説に、殺されたのは替え玉だという説がある」
「鏡卿のですか? なら、本物はどこにいったのですか?」
「それは今以て分からない」
それにしても……と乙女は改めて思う。鏡夜露が悲話の主人公となったのは二十五年前。当時、鏡卿はまだ八歳だったはず、こんな大仕掛けの隠し部屋を彼が作った?
「――もしかしたら、鏡卿って天才だったのですか?」
「ああ、僅か八歳で既に大学に入れる能力を持っていたらしい」
聞けばIQが200近くあったそうだ。
「もう一度見取り図をよく見てご覧。違和感はないかい?」
そう言いながら綾鷹が「ほら、ここだよ」と指を差す。
そう言えば……と乙女は見取り図と実際の壁を見比べながらアッと気付く。
「窓側の壁が分厚い!」
「そういうこと。それに窓側なのに窓がないのは不自然じゃない?」
「リアルに部屋を見ると不自然さに気付かないが、見取り図と比べると一目瞭然、その不自然さが浮き彫りにされてよく分かるだろう?」
「綾鷹様の部下って優秀なんですね」
「当然だろ、私が御大なのだから」
いけしゃあしゃあと言う綾鷹に、乙女は呆れながらも反論はしなかった。
「で、隠し扉はどこにあるのですか?」
その代わり話の先を催促した。
「これについては部下たちも随分手こずったよ」
綾鷹は勿体ぶったように肩を竦め、足元を見る。釣られて乙女も下を見る。
「幅木が見えるだろ?」
壁と床とが接する部分に設けられた横板を綾鷹の靴先がコツコツと指す。
「ほら、私と同じようにやってご覧」
乙女が言われた通りにすると……。
「あらっ?」
一箇所だけ明らかに音も足触りも違う箇所があった。
「そこを今度は三回続けて突っついてご覧」
また言われた通りにする。すると壁の奥からカチャと微かに鍵の開く音が聞こえた。
「開いたよ、壁を押してみて」
まさか、と思いながら乙女が押すと、壁の一部が回転式のドアになっていた。
「よくこんな隠し扉を見つけましたね」
乙女が心底感心していると、「部下の一人がね」と綾鷹がおかしそうに笑う。
「忍者映画が大好きで、その研究を始めたんだ。で、趣味が高じて自分の屋敷を忍者屋敷に改造してね、その研究の成果が今回の発見に繋がったというわけだ」
隠し部屋の全てを見つけたのが、その部下だそうだ。
「それ、趣味の域を超えていますね」
「確かに。一定のレベルを超えるものは趣味というよりもプロの技だね」
綾鷹に背中を押され中に入るが扉は閉まり真っ暗だ。すぐさま手にあるペンライトをオンにする。
「この廊下の先が部屋になっている」
綾鷹に手を取られ奥へと進むと広いスペースに出る。
だが、そこで目にしたのは……。
「これ……マジックミラーですか?」
先程、四つの部屋のドアを綾鷹が開け放した理由が分かった。
ドアから差す日の光で微かにだが各部屋の様子が見て取れた。
「そう、各部屋にかなり大きめの鏡があったろう?」
「まさか、鏡卿って、覗きが趣味だったとか?」
「そのまさかだと思うよ」と綾鷹が笑う。
「但し、君が思っているような卑猥なことではないだろうがね」
「ひっ卑猥って、そんなこと思っていません!」
「どうだろうね」と口角を上げながら綾鷹がペンライトの先をカチャ回す。すると四つの窓から音が聞こえてきた。
「これ、何なんですか?」
「各部屋に超小型DAP(デジタルオーディオプレイヤー)を置いてきた」
それをペンライトから遠隔操作してスイッチをオンにしたらしい。
「いつの間に……もしかしたら隠し部屋にはマジックミラーだけではなく、隠しマイクも仕込んであったのですか?」
無言で綾鷹が頷く。
「暖炉同様、ここから使用人の様子を伺っていたのですね」
鏡卿の異常な行動に乙女はゾッとする。
「この小部屋は防音室になっているらしく、ここの音が外に漏れることはないようだ」
「物凄く粘着質な厭な感じ……」乙女は自分の身を守るように腕をクロスする。
「鏡卿はこうやって自分の身を自分で守っていたのだろう」
「でも……殺されてしまった」
「その話なのだが……」と綾鷹が少し言い淀み、続きを口にする。
「一説に、殺されたのは替え玉だという説がある」
「鏡卿のですか? なら、本物はどこにいったのですか?」
「それは今以て分からない」
それにしても……と乙女は改めて思う。鏡夜露が悲話の主人公となったのは二十五年前。当時、鏡卿はまだ八歳だったはず、こんな大仕掛けの隠し部屋を彼が作った?
「――もしかしたら、鏡卿って天才だったのですか?」
「ああ、僅か八歳で既に大学に入れる能力を持っていたらしい」
聞けばIQが200近くあったそうだ。
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