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第十二章 対決
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チカチカと乙女の頭の中で危険信号が点滅する。
考えなしだった。今さら反省しても遅いがと思いながら、乙女はこの成り行きをどう切り抜けようかと思案する。
「黙り? 陰気な子ね。お相手をさせられる綾鷹様が本当にお気の毒だわ」
おまけに罵詈雑言の数々を浴びせられ……それが当たらずとも遠からずで……乙女の心はちょっと凹んでいた。
黒棘先蘭子と出会ったのは、彼女が言うように本当に偶然だったようだ。彼女自身相当驚いていたからだ。あれが演技だったら、毎年、北之国で開催される有名な演技の祭典のノミネート、否、演技大賞ものだ。
あのとき乙女を見咎めた蘭子は、驚きながらも空席となった向かいの席に『座ってもいいかしら?』とも尋ね、返事も聞かずに腰を下ろした。
『ちょうどよかったわ。貴女に話があったの』
『私にはありませんが』
蘭子を威嚇するように背筋をスッと伸ばす乙女に蘭子は構わず、『別に貴女の都合など聞いていないわ』と言った。
自分中心に地球が回っていると思っている自己中心的な女だと乙女は蘭子を凝視した。こういうときは視線を外した方が負けると知っていたからだ。
『ここでは話せないわ。ついてきて』
『どちらへ? 行きたくありません』
キッパリ断ると蘭子は忌々しそうに顔を歪めフンと鼻を鳴らした。
『そんなぞんざいな口を利いていいと思っているの?』
『意味が分かりません』
『まぁ! 何様?』
そう問いたいのは私の方だと乙女は思った。
『知っているのよ。貴女が禁書を書いていることぐらい』
『あっ』と目を見開くと、蘭子は『勝った』というような顔で『ここで大声で言ってもいいのよ?』と真っ赤な唇を端を上げる。
『そうなると貴女はたくさんの人に迷惑をかけることになるわね』
その通りだった。恥ずべき行為をしているつもりはないが、禁書と言われる物を書く以上、やはり世間から見れば犯罪者だ。
『自分の立場がやっと分かったみたいね』
勝ち誇った笑みを浮かべると、蘭子はバッグから携帯電話を取り出して電話をかける。相手は運転手のようだ。
蘭子と共に裏口に向かうと、案の定だった。そこに黒塗りの車が停まっていた。
――そして……今に至るという訳だ。
「どこに行くつもり?」
車窓を流れる景色がドンドン辺鄙になっていく。
「別荘よ」
「誰の?」
蘭子の尖った視線が隣に座る乙女に向く。
「貴女、私のことを馬鹿にしているの? 黒棘先の別荘に決まっているじゃない!」
今では黒棘先も公爵家の一つだが元は貧乏男爵家。それを思い出すと乙女はフッと皮肉な笑みを浮かべる。
「何が可笑しいのよ!」
「ええ、可笑しいです。考えれば考えるほど変ですね」
乙女は蘭子をギロリと睨み付ける。
「別荘? どのようなマジックを使われたのですか?」
「どういう意味!」
蘭子の顔が鬼の形相になる。
「美しい顔が台無しですよ」
開き直った乙女は怖いもの知らずだ。何よりも怖い存在となる。
「あのですね、知っているんですよ。黒棘先の面々が不正を働いていること」
「そんなことあるわけないじゃない!」
蘭子のキツイ声が反論する。
「遡ること三十年分の収支を密かに調べたそうですよ。国家親衛隊サイバー犯罪課が。勿論、黒棘先家のです。で、バランスが取れていないことが分かったんですって」
ギョッと蘭子は視線を泳がしながらも「そんなの嘘よ!」とわめく。
確かに乙女の言葉は嘘だった。だが、乙女は蘭子の反応で分かった。それが真実だと。
「悪いことは出来ませんね。全ての罪状が明らかになるのももうすぐみたいです」
ワナワナと唇を震わせ聞いていた蘭子がインターフォンを押す。そして、「行き先をあちらのお屋敷に」と震える声で告げた。
運転手にはその言葉だけでどの屋敷か分かったようだ。広い道に出ると綺麗にUターンする。
「あら? 今度はどちらに?」
「お黙り! 貴女は人質なのよ」
「いつの間にそんなものになったのですか? 話をしたかっただけなのでは?」
「煩い! 黙れ!」
淑女にあるまじき言葉遣いだが、乙女は口では負けない。
考えなしだった。今さら反省しても遅いがと思いながら、乙女はこの成り行きをどう切り抜けようかと思案する。
「黙り? 陰気な子ね。お相手をさせられる綾鷹様が本当にお気の毒だわ」
おまけに罵詈雑言の数々を浴びせられ……それが当たらずとも遠からずで……乙女の心はちょっと凹んでいた。
黒棘先蘭子と出会ったのは、彼女が言うように本当に偶然だったようだ。彼女自身相当驚いていたからだ。あれが演技だったら、毎年、北之国で開催される有名な演技の祭典のノミネート、否、演技大賞ものだ。
あのとき乙女を見咎めた蘭子は、驚きながらも空席となった向かいの席に『座ってもいいかしら?』とも尋ね、返事も聞かずに腰を下ろした。
『ちょうどよかったわ。貴女に話があったの』
『私にはありませんが』
蘭子を威嚇するように背筋をスッと伸ばす乙女に蘭子は構わず、『別に貴女の都合など聞いていないわ』と言った。
自分中心に地球が回っていると思っている自己中心的な女だと乙女は蘭子を凝視した。こういうときは視線を外した方が負けると知っていたからだ。
『ここでは話せないわ。ついてきて』
『どちらへ? 行きたくありません』
キッパリ断ると蘭子は忌々しそうに顔を歪めフンと鼻を鳴らした。
『そんなぞんざいな口を利いていいと思っているの?』
『意味が分かりません』
『まぁ! 何様?』
そう問いたいのは私の方だと乙女は思った。
『知っているのよ。貴女が禁書を書いていることぐらい』
『あっ』と目を見開くと、蘭子は『勝った』というような顔で『ここで大声で言ってもいいのよ?』と真っ赤な唇を端を上げる。
『そうなると貴女はたくさんの人に迷惑をかけることになるわね』
その通りだった。恥ずべき行為をしているつもりはないが、禁書と言われる物を書く以上、やはり世間から見れば犯罪者だ。
『自分の立場がやっと分かったみたいね』
勝ち誇った笑みを浮かべると、蘭子はバッグから携帯電話を取り出して電話をかける。相手は運転手のようだ。
蘭子と共に裏口に向かうと、案の定だった。そこに黒塗りの車が停まっていた。
――そして……今に至るという訳だ。
「どこに行くつもり?」
車窓を流れる景色がドンドン辺鄙になっていく。
「別荘よ」
「誰の?」
蘭子の尖った視線が隣に座る乙女に向く。
「貴女、私のことを馬鹿にしているの? 黒棘先の別荘に決まっているじゃない!」
今では黒棘先も公爵家の一つだが元は貧乏男爵家。それを思い出すと乙女はフッと皮肉な笑みを浮かべる。
「何が可笑しいのよ!」
「ええ、可笑しいです。考えれば考えるほど変ですね」
乙女は蘭子をギロリと睨み付ける。
「別荘? どのようなマジックを使われたのですか?」
「どういう意味!」
蘭子の顔が鬼の形相になる。
「美しい顔が台無しですよ」
開き直った乙女は怖いもの知らずだ。何よりも怖い存在となる。
「あのですね、知っているんですよ。黒棘先の面々が不正を働いていること」
「そんなことあるわけないじゃない!」
蘭子のキツイ声が反論する。
「遡ること三十年分の収支を密かに調べたそうですよ。国家親衛隊サイバー犯罪課が。勿論、黒棘先家のです。で、バランスが取れていないことが分かったんですって」
ギョッと蘭子は視線を泳がしながらも「そんなの嘘よ!」とわめく。
確かに乙女の言葉は嘘だった。だが、乙女は蘭子の反応で分かった。それが真実だと。
「悪いことは出来ませんね。全ての罪状が明らかになるのももうすぐみたいです」
ワナワナと唇を震わせ聞いていた蘭子がインターフォンを押す。そして、「行き先をあちらのお屋敷に」と震える声で告げた。
運転手にはその言葉だけでどの屋敷か分かったようだ。広い道に出ると綺麗にUターンする。
「あら? 今度はどちらに?」
「お黙り! 貴女は人質なのよ」
「いつの間にそんなものになったのですか? 話をしたかっただけなのでは?」
「煩い! 黙れ!」
淑女にあるまじき言葉遣いだが、乙女は口では負けない。
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