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第十二章 対決
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「もしかしたら、例の化け物屋敷に、また連れ込むつもりかしら?」
ヤマ感だった。だが、当たったようだ。蘭子が気味悪そうに「どうして分かったの?」と呟く。
「だって、この前の誘拐も首謀者は貴女方家族だったんでしょう?」
蘭子がホッと息を吐き、開き直る。
「そうよ、綾鷹様とのお見合いをぶち壊すために仕組んだのよ。でも……」
クッと片唇を上げた蘭子が醜く微笑む。
「私たちのバックにはもっと大物がいるの」
「それって、例えば……鏡夜露卿とか?」
「えっ!」と蘭子が目も口も大きく開ける。かなり驚いているようだ。
「鏡卿は生きていた。そして、彼を匿ったのは黒棘先夜支路。貴女のお爺様……ってとこですかね?」
まさかそこまで調べられていたとは思わなかった蘭子は、「どうしてそれを!」と思わず叫び、乙女は「やっぱり」と深く頷いた。
「作家ってね、“もしも話”が好きなんです。そして、いろいろ妄想するんです。ヤマ勘でしたが当たって嬉しいです」
綾鷹が聞いたら、『全部また聞きじゃないか!』と叱られそうだが、蘭子はそんなことは知らない。フェイクに乗ってしまった、と悔しそうに唇を噛む。その横で乙女はうーんと伸びをする。
「あのお屋敷ならまだ時間が掛かりそうですね。昨日、プロットを練っていて寝不足なんです。ちょっとひと眠りさせて頂きますね」
乙女はそう言うと窓の方を向き目を閉じた。そして、考える。
逃げる? 逃げない? だが、今逃げたとしても鏡卿を放っておくわけにはいかない。どうすれば……と。
「ちょっと、起きないさいよ!」
ユサユサと揺すぶられ乙女は飛び上がった。
「なっ何事?」
だが、運悪くそこに蘭子の顎があり、乙女の頭は蘭子の顎に激突する。
「貴女、私に恨みでもあるの!」
涙目の蘭子が鬼の形相で乙女を睨み付ける。
恨みならたくさんある、と乙女は心の中で肯定する。
「着いたんですか?」
「だから起こしたんでしょう!」
「素直に『着いた』と言えないんですか?」
あー言えばこー言う。本当に負けず嫌いのお嬢様だと乙女が溜息を吐いていると、同じような台詞が蘭子から返ってくる。
「とにかく、ほら、さっさと降りなさい!」
蘭子が乙女の腕を乱暴に引っ張る。
「別にそちらから降りなくても……」
ドアは左右にあるのだから、と思いながらも蘭子に続き、同じドアから車外に出る。
そして、目前にある訪れたばかりの化け物屋敷を溜息交じりに見上げる。
威風堂々とした佇まいは相変わらずだが、不気味さが増したように感じるのは蘭子と一緒だからだろうか、と乙女は綾鷹を思う。
彼と一緒のときは夏の風物詩でもある“お化け屋敷”に来たようなワクワク感があったのに……。
「何よ、その残念そうな顔は!」
乙女の微妙な顔に気付き、蘭子が苛立たしそうに入り口のドアを開ける。
だが、先日綾鷹と入ったドアではない。
「そんなところに!」
蘭子は玄関に続く階段の下から三段目に立ち止まると、ツタが絡まる手摺りの下に手を入れた。すると、階段脇にあった銅像が横にスライドしてポカリと穴を開けた。穴には地下へと続く階段があった。
「さぁ、入って!」
呆気にとられた乙女は、もしかしたら先日見た隠し部屋は全てフェイクで、ここが本当の隠れ部屋なのかもしれないと思った。
「早く!」
蘭子に押され穴に入り、階段を降りる。
三段目に足を下ろすと、また銅像がスライドする。ガチャンと出入り口が完全に閉じると、代わりに照明が点った。そういうシステムになっているのだろう。
階段は三十段ほどで、トンと降りた床はレンガが敷き詰められていた。そこから左右に横穴が伸びている。閉塞感はなく、ゆったりとした空間に綾鷹でも背を縮めることなく進めるなぁと乙女がボンヤリ思っていると、「左に進んで」と蘭子が乙女の背中を突つく。
「この先に何があるの?」
「行けば分かるわ」
「答えてくれないのなら行かない」
「ここまできて、何を駄々こねているの! 貴女、子ども?」
乙女がその場に座り込むと、蘭子は呆れたような顔で乙女を見下ろし、ヤレヤレと首を振りながら答えた。
「お爺様と鏡卿がお待ちなの」
「黒棘先夜支路が!」
鏡卿は頭にあったが、夜支路のことは全くなかった乙女は思わず声を上げた。
ヤマ感だった。だが、当たったようだ。蘭子が気味悪そうに「どうして分かったの?」と呟く。
「だって、この前の誘拐も首謀者は貴女方家族だったんでしょう?」
蘭子がホッと息を吐き、開き直る。
「そうよ、綾鷹様とのお見合いをぶち壊すために仕組んだのよ。でも……」
クッと片唇を上げた蘭子が醜く微笑む。
「私たちのバックにはもっと大物がいるの」
「それって、例えば……鏡夜露卿とか?」
「えっ!」と蘭子が目も口も大きく開ける。かなり驚いているようだ。
「鏡卿は生きていた。そして、彼を匿ったのは黒棘先夜支路。貴女のお爺様……ってとこですかね?」
まさかそこまで調べられていたとは思わなかった蘭子は、「どうしてそれを!」と思わず叫び、乙女は「やっぱり」と深く頷いた。
「作家ってね、“もしも話”が好きなんです。そして、いろいろ妄想するんです。ヤマ勘でしたが当たって嬉しいです」
綾鷹が聞いたら、『全部また聞きじゃないか!』と叱られそうだが、蘭子はそんなことは知らない。フェイクに乗ってしまった、と悔しそうに唇を噛む。その横で乙女はうーんと伸びをする。
「あのお屋敷ならまだ時間が掛かりそうですね。昨日、プロットを練っていて寝不足なんです。ちょっとひと眠りさせて頂きますね」
乙女はそう言うと窓の方を向き目を閉じた。そして、考える。
逃げる? 逃げない? だが、今逃げたとしても鏡卿を放っておくわけにはいかない。どうすれば……と。
「ちょっと、起きないさいよ!」
ユサユサと揺すぶられ乙女は飛び上がった。
「なっ何事?」
だが、運悪くそこに蘭子の顎があり、乙女の頭は蘭子の顎に激突する。
「貴女、私に恨みでもあるの!」
涙目の蘭子が鬼の形相で乙女を睨み付ける。
恨みならたくさんある、と乙女は心の中で肯定する。
「着いたんですか?」
「だから起こしたんでしょう!」
「素直に『着いた』と言えないんですか?」
あー言えばこー言う。本当に負けず嫌いのお嬢様だと乙女が溜息を吐いていると、同じような台詞が蘭子から返ってくる。
「とにかく、ほら、さっさと降りなさい!」
蘭子が乙女の腕を乱暴に引っ張る。
「別にそちらから降りなくても……」
ドアは左右にあるのだから、と思いながらも蘭子に続き、同じドアから車外に出る。
そして、目前にある訪れたばかりの化け物屋敷を溜息交じりに見上げる。
威風堂々とした佇まいは相変わらずだが、不気味さが増したように感じるのは蘭子と一緒だからだろうか、と乙女は綾鷹を思う。
彼と一緒のときは夏の風物詩でもある“お化け屋敷”に来たようなワクワク感があったのに……。
「何よ、その残念そうな顔は!」
乙女の微妙な顔に気付き、蘭子が苛立たしそうに入り口のドアを開ける。
だが、先日綾鷹と入ったドアではない。
「そんなところに!」
蘭子は玄関に続く階段の下から三段目に立ち止まると、ツタが絡まる手摺りの下に手を入れた。すると、階段脇にあった銅像が横にスライドしてポカリと穴を開けた。穴には地下へと続く階段があった。
「さぁ、入って!」
呆気にとられた乙女は、もしかしたら先日見た隠し部屋は全てフェイクで、ここが本当の隠れ部屋なのかもしれないと思った。
「早く!」
蘭子に押され穴に入り、階段を降りる。
三段目に足を下ろすと、また銅像がスライドする。ガチャンと出入り口が完全に閉じると、代わりに照明が点った。そういうシステムになっているのだろう。
階段は三十段ほどで、トンと降りた床はレンガが敷き詰められていた。そこから左右に横穴が伸びている。閉塞感はなく、ゆったりとした空間に綾鷹でも背を縮めることなく進めるなぁと乙女がボンヤリ思っていると、「左に進んで」と蘭子が乙女の背中を突つく。
「この先に何があるの?」
「行けば分かるわ」
「答えてくれないのなら行かない」
「ここまできて、何を駄々こねているの! 貴女、子ども?」
乙女がその場に座り込むと、蘭子は呆れたような顔で乙女を見下ろし、ヤレヤレと首を振りながら答えた。
「お爺様と鏡卿がお待ちなの」
「黒棘先夜支路が!」
鏡卿は頭にあったが、夜支路のことは全くなかった乙女は思わず声を上げた。
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