色々な色

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無色透明と深淵(1)

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はてさて、この世は摩訶不思議。
この「色」の世界も、例に漏れず奇妙奇天烈なのでございます。

そんな色の世界にも、普遍の色が2つありました。その一つは深淵。漆黒の中の漆黒。
そんな深淵は、ある変わり者の色に想いを寄せておりました。それは、無色透明でございました。
同じ頃に生まれた色だったそれは、この世界の創造神が、ある時2つに分けて、生まれたのでした。
神は、気まぐれか、はたまたその人智の及ばぬその思考からか、己以外の創る世界を見たいと思った訳でした。
そうして、己の中の一つの形を取り出して、さらにそれを2つに分けました。
それが、この世界の始まり。普遍のもの達なのでありました。

漆黒には、「破壊と、死」を。
無色透明には、「造形と、生命の存在意義」を。


自我を最初に持ったのは漆黒で、気がつけば無色透明が自分の唯一なのだと確信に似た直感がありました。
それは、日頃何を考えているか分からないと言われている無色透明には、最初は意味の理解できないものでしたが、時が経つに連れ、仲間も増え、無色透明の中に、言うならば母親にも似た気持ちが生まれると同時に、漆黒からの想いを理解しました。また、一方で、それを受け入れられないとも直感に似た、何とも形容し難い苦い想いを感じました。

守らなければ。 
皆を慈しみ育てたい。

無色透明は、自然にそう考えるようになっておりました。
それ以来、無色透明は存在を薄めながらも、寄らず離れず、皆を見守ってきたのでした。そう、深淵以外には。元は一つの己達が一つに戻れば、愛しい者たちはどこかへ消えてしまう。
無色透明であればこそ、それだけは、容赦ならなかった。



一方、深淵は愛してやまない無色透明の側に降り立つと、紳士的に声をかけた。
「愛しい無色透明。全て順調かい?」
熱い視線が交わったあと、すぐにフイッと逸らされてしまう。
「調子いいよ。君の方は?何だか最近忙しいみたいね」
珍しく気にした様子を見せる透明に、深淵は気を良くした様だった。
頭の上に口づけると、そっと抱きしめた。
『君と会うと全て癒やされるよ。』
透明の質問には、否定も肯定もせず、相変わらず、何を聞いても、透明にとっては聞きたくない言葉が返ってくる。
"彼の期待には答えられない"、その考えに悩まされる位には、彼の気持ちは理解している。己も、同じ"引力"で惹かれるものとして。

二人はお互い惹かれつつも、理解するからこそ、それ以上は距離を取り、情愛を含めたやり取りをする。

え?何それ?分からない?
分かるはずです、だって、貴方の側にも居ますもの!
数々色と、唯一無二の存在が。


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