3 / 6
無色透明と深淵(1)
しおりを挟む
はてさて、この世は摩訶不思議。
この「色」の世界も、例に漏れず奇妙奇天烈なのでございます。
そんな色の世界にも、普遍の色が2つありました。その一つは深淵。漆黒の中の漆黒。
そんな深淵は、ある変わり者の色に想いを寄せておりました。それは、無色透明でございました。
同じ頃に生まれた色だったそれは、この世界の創造神が、ある時2つに分けて、生まれたのでした。
神は、気まぐれか、はたまたその人智の及ばぬその思考からか、己以外の創る世界を見たいと思った訳でした。
そうして、己の中の一つの形を取り出して、さらにそれを2つに分けました。
それが、この世界の始まり。普遍のもの達なのでありました。
漆黒には、「破壊と、死」を。
無色透明には、「造形と、生命の存在意義」を。
自我を最初に持ったのは漆黒で、気がつけば無色透明が自分の唯一なのだと確信に似た直感がありました。
それは、日頃何を考えているか分からないと言われている無色透明には、最初は意味の理解できないものでしたが、時が経つに連れ、仲間も増え、無色透明の中に、言うならば母親にも似た気持ちが生まれると同時に、漆黒からの想いを理解しました。また、一方で、それを受け入れられないとも直感に似た、何とも形容し難い苦い想いを感じました。
守らなければ。
皆を慈しみ育てたい。
無色透明は、自然にそう考えるようになっておりました。
それ以来、無色透明は存在を薄めながらも、寄らず離れず、皆を見守ってきたのでした。そう、深淵以外には。元は一つの己達が一つに戻れば、愛しい者たちはどこかへ消えてしまう。
無色透明であればこそ、それだけは、容赦ならなかった。
一方、深淵は愛してやまない無色透明の側に降り立つと、紳士的に声をかけた。
「愛しい無色透明。全て順調かい?」
熱い視線が交わったあと、すぐにフイッと逸らされてしまう。
「調子いいよ。君の方は?何だか最近忙しいみたいね」
珍しく気にした様子を見せる透明に、深淵は気を良くした様だった。
頭の上に口づけると、そっと抱きしめた。
『君と会うと全て癒やされるよ。』
透明の質問には、否定も肯定もせず、相変わらず、何を聞いても、透明にとっては聞きたくない言葉が返ってくる。
"彼の期待には答えられない"、その考えに悩まされる位には、彼の気持ちは理解している。己も、同じ"引力"で惹かれるものとして。
二人はお互い惹かれつつも、理解するからこそ、それ以上は距離を取り、情愛を含めたやり取りをする。
え?何それ?分からない?
分かるはずです、だって、貴方の側にも居ますもの!
数々色と、唯一無二の存在が。
この「色」の世界も、例に漏れず奇妙奇天烈なのでございます。
そんな色の世界にも、普遍の色が2つありました。その一つは深淵。漆黒の中の漆黒。
そんな深淵は、ある変わり者の色に想いを寄せておりました。それは、無色透明でございました。
同じ頃に生まれた色だったそれは、この世界の創造神が、ある時2つに分けて、生まれたのでした。
神は、気まぐれか、はたまたその人智の及ばぬその思考からか、己以外の創る世界を見たいと思った訳でした。
そうして、己の中の一つの形を取り出して、さらにそれを2つに分けました。
それが、この世界の始まり。普遍のもの達なのでありました。
漆黒には、「破壊と、死」を。
無色透明には、「造形と、生命の存在意義」を。
自我を最初に持ったのは漆黒で、気がつけば無色透明が自分の唯一なのだと確信に似た直感がありました。
それは、日頃何を考えているか分からないと言われている無色透明には、最初は意味の理解できないものでしたが、時が経つに連れ、仲間も増え、無色透明の中に、言うならば母親にも似た気持ちが生まれると同時に、漆黒からの想いを理解しました。また、一方で、それを受け入れられないとも直感に似た、何とも形容し難い苦い想いを感じました。
守らなければ。
皆を慈しみ育てたい。
無色透明は、自然にそう考えるようになっておりました。
それ以来、無色透明は存在を薄めながらも、寄らず離れず、皆を見守ってきたのでした。そう、深淵以外には。元は一つの己達が一つに戻れば、愛しい者たちはどこかへ消えてしまう。
無色透明であればこそ、それだけは、容赦ならなかった。
一方、深淵は愛してやまない無色透明の側に降り立つと、紳士的に声をかけた。
「愛しい無色透明。全て順調かい?」
熱い視線が交わったあと、すぐにフイッと逸らされてしまう。
「調子いいよ。君の方は?何だか最近忙しいみたいね」
珍しく気にした様子を見せる透明に、深淵は気を良くした様だった。
頭の上に口づけると、そっと抱きしめた。
『君と会うと全て癒やされるよ。』
透明の質問には、否定も肯定もせず、相変わらず、何を聞いても、透明にとっては聞きたくない言葉が返ってくる。
"彼の期待には答えられない"、その考えに悩まされる位には、彼の気持ちは理解している。己も、同じ"引力"で惹かれるものとして。
二人はお互い惹かれつつも、理解するからこそ、それ以上は距離を取り、情愛を含めたやり取りをする。
え?何それ?分からない?
分かるはずです、だって、貴方の側にも居ますもの!
数々色と、唯一無二の存在が。
0
あなたにおすすめの小説
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
理想の王妃様
青空一夏
児童書・童話
公爵令嬢イライザはフィリップ第一王子とうまれたときから婚約している。
王子は幼いときから、面倒なことはイザベルにやらせていた。
王になっても、それは変わらず‥‥側妃とわがまま遊び放題!
で、そんな二人がどーなったか?
ざまぁ?ありです。
お気楽にお読みください。
悪女の死んだ国
神々廻
児童書・童話
ある日、民から恨まれていた悪女が死んだ。しかし、悪女がいなくなってからすぐに国は植民地になってしまった。実は悪女は民を1番に考えていた。
悪女は何を思い生きたのか。悪女は後世に何を残したのか.........
2話完結 1/14に2話の内容を増やしました
独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。
猫菜こん
児童書・童話
小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。
中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!
そう意気込んでいたのに……。
「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」
私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。
巻き込まれ体質の不憫な中学生
ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主
咲城和凜(さきしろかりん)
×
圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良
和凜以外に容赦がない
天狼絆那(てんろうきずな)
些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。
彼曰く、私に一目惚れしたらしく……?
「おい、俺の和凜に何しやがる。」
「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」
「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」
王道で溺愛、甘すぎる恋物語。
最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる