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第二十三章 海辺での争奪戦(ルーカス/ミランダルート)
241.始動する思惑
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「……と言う事だ。リヴァディアへの救援派兵の件、準備が整い次第出立せよ」
部屋の中央に置かれた豪奢な長椅子。
その肘掛にもたれ掛かりながらも、次々と指示を出す一人の男。
少し落ち着かないのだろうか。
肘掛に添えられた左手は、なぜか小刻みに震えている様にも見受けられる。
ただ、男はその様子を誰にも悟られたくは無いのであろう。
最初は自身の右手で押さえつけてはみたものの、結局はトガの端を使い、肘掛ごと覆い隠してしまった。
「はっ、畏まりました、早速準備致します。出立は明後日……いや、明日の夜には必ず」
指示を受けた青年は、片膝を付き、深々と頭を垂れる。
「うむ。出立前の挨拶は無用じゃ。行けっ」
「はっ」
青年は頭を垂れたままの姿勢で立ち上がると、そのまま後退る様にして部屋の出口へと向かう。
本来であれば、ドア付近にいる使用人がドアの開閉を行うものなのだが、この時は内々の話……と言う事で既に人払いがされており、ドアの前には誰もいない。
青年は自ら流麗な手つきでドアを開けると、そのまま静かに退出して行った。
――パタン。
出入口のドアが完全に閉まった事を確認した後、長椅子の後ろに立つ男が、改めて口を開いた。
「アゲロス様。アエティオス准将は、手元に残しておいた方が良かったのでは?」
「ふっ、確かアエティオスはサロスのイチ推であったな。しかし、もう時間が無い。皇子様は大変ご立腹だ。それに、一度事を初めてしまっては、連絡の付けようもない。臨機応変と言う意味では、ヤツ以上の適任者はおるまい」
「はっ。確かにその通りにございますな。そうしますと、懸案のルキウス将軍は如何致しましょう?」
尚も彼は冷静に、アゲロスに対して判断を促して来る。
「うぅぅむ。ルキウスは先代からの上席大将であるからな。一筋縄では行くまい」
「で、ございますな。既に探りを入れてはおりますが、ご同意いただける見込みは少ないかと」
まるで他人事の様な言い回しではあるが、それが彼の言い方なのであろう。
アゲロスの方も、全く気にする素振りは無い。
と言うよりも、こうやってアゲロスに対して逐次疑問を投げかける事で、アゲロス自身の考えを整理して行く……と言う、二人の間での長年にわたって行われている儀式の様なもの、と言えるのかもしれない。
「うぅぅむ。……サロスよ。何か面白い話はあるか?」
「はっ。そう言えば、昨日到着しました南方大陸からの手紙に、またしても獣人達に不穏な動きがあるとの一報がございました」
「現在の総監であるガッルス将軍では些か心許のうございますな。彼の御仁は、略奪は得意ではございますが、説得等には不向き。既に城塞都市も出来上がりつつある中、余計な争いは避けつつ、そろそろ共存共栄の道を模索するのが良策かとは思います」
静かに頷きながら、話を聞くアゲロス。
そのうち、彼はテーブルに置いてあったワイングラスを摘まみ上げると、その香りを楽しむかの様に、自身の鼻先へと近付けて行く。
「うむ。良い香りじゃ。若いワインの爽やかな香りも楽しいが、年代物のワインの持つ奥深い香りも素晴らしい。適材適所、それぞれ使い道があり、それぞれ、楽しめると言う事じゃのぉ……」
「うむ。面白い話であった」
「サロス。早速ルキウスを呼んで参れ。南方大陸総監を交代させる。南方大陸城塞都市は、マロネイア家の生命線じゃ。更なる発展には、現地住民との深い絆が必要となろう。その様な事が出来るのは、ルキウスをおいて他におらん」
「はっ、アゲロス様のご慧眼、感服仕りました。それでは早速ルキウス将軍をお呼びしましょう。また、もう一点よろしいでしょうか?」
「うむ。何じゃ。申して見よ」
サロスはアゲロスの持つワイングラスへと、新しいワインを注ぎ入れながら話し始めた。
「この度、私が不在の際に、アゲロス様が何者かに襲われると言う事態がございました。これは忌々しき問題にございます。既に屋敷内全域に緊急事態を宣言し、防備を固めている所にございます」
「うむ。それで」
折角問題の一つが片付く目途が立ち、先程からの機嫌も収まりかけたアゲロスであったが、またもや不機嫌な表情に。
それもそのはず、アゲロスにしてみれば、、自身の命が狙われるなど、全く笑えない話題ではある。
「しかし、先程のお話しの通り、リヴァディアへの救援、更には、南方大陸への遠征など、費えも兵も不足しております。ここは如何でしょう。エレトリア評議会お呼び、帝国元老院の方へ、今年の年貢免除と傭兵の募集について、ご裁可頂ける様上申されてみては……」
次第にワインを飲む手が止まり、サロスの話をゆっくりと脳内で反芻し始めるアゲロス。
やがて、彼はワイングラスを元に位置へと戻すと、大きく息を吐き出した。
「うぅぅむ。仕方あるまいのぉ。『高貴なる者の義務』は果たさねばならぬ。そうじゃ。ワシは帝国貴族であり、エレトリア上席評議の一人である。帝国元老院からの命令を遂行する為には、費えも人手も必要じゃ。そうじゃ、そうじゃ。これは決してマロネイア家の為では無い。帝国の為、ひいては帝国人民の為でもある。そうじゃのぉ。サロスよ」
「えぇ、もちろんでございます。常に公益を第一とされる、アゲロス様ならではのご発想にございますな」
「うむ。そうであろう、そうであろう。それでは早速、この話進めてくれ」
アゲロスは満足そうに頷きながら、羽毛が詰め込まれたクッションの間にその身を沈めて行く。
「はっ。畏まりました。それでは引き続きルキウス将軍を……っと、あぁ、いや。その前にイリニ家政婦長を呼びましょうか。戦士にも休息は必要でございますからな」
そんなサロスからの進言に、アゲロスは口角を上げて頷き返した。
「あぁ、そうだな。ルキウスを呼ぶのは、その後でも構わんな」
「はっ、御意に」
サロスは、恭しく一礼しながらも、自身の想いを巡らし始めた。
後はイリニ家政婦長に任せておけば良い。
彼女であれば、既に何人かは見繕っている事だろう。抜かりは無いはずだ。
やるべき事は多い。しかし、時間は不足している。
本来であれば、自分の右腕として、是非とも欲しい人材ではある。
こんな、奥女中の束ねを行う様な器では無いのである。『紅の女剣士』と言う二つ名は伊達では無いのだ。
しかし、まぁ、物は考え様である。
彼女がいるからこそ、自分は安心してアゲロス様のお傍を離れる事が出来るのだ。
自分なりに納得できる答えを導き出したサロス。
彼は、すぐそこにいるであろうイリニ家政婦長に声を掛ける為、廊下へと向かうドアノブへ、そっと手を伸ばした。
部屋の中央に置かれた豪奢な長椅子。
その肘掛にもたれ掛かりながらも、次々と指示を出す一人の男。
少し落ち着かないのだろうか。
肘掛に添えられた左手は、なぜか小刻みに震えている様にも見受けられる。
ただ、男はその様子を誰にも悟られたくは無いのであろう。
最初は自身の右手で押さえつけてはみたものの、結局はトガの端を使い、肘掛ごと覆い隠してしまった。
「はっ、畏まりました、早速準備致します。出立は明後日……いや、明日の夜には必ず」
指示を受けた青年は、片膝を付き、深々と頭を垂れる。
「うむ。出立前の挨拶は無用じゃ。行けっ」
「はっ」
青年は頭を垂れたままの姿勢で立ち上がると、そのまま後退る様にして部屋の出口へと向かう。
本来であれば、ドア付近にいる使用人がドアの開閉を行うものなのだが、この時は内々の話……と言う事で既に人払いがされており、ドアの前には誰もいない。
青年は自ら流麗な手つきでドアを開けると、そのまま静かに退出して行った。
――パタン。
出入口のドアが完全に閉まった事を確認した後、長椅子の後ろに立つ男が、改めて口を開いた。
「アゲロス様。アエティオス准将は、手元に残しておいた方が良かったのでは?」
「ふっ、確かアエティオスはサロスのイチ推であったな。しかし、もう時間が無い。皇子様は大変ご立腹だ。それに、一度事を初めてしまっては、連絡の付けようもない。臨機応変と言う意味では、ヤツ以上の適任者はおるまい」
「はっ。確かにその通りにございますな。そうしますと、懸案のルキウス将軍は如何致しましょう?」
尚も彼は冷静に、アゲロスに対して判断を促して来る。
「うぅぅむ。ルキウスは先代からの上席大将であるからな。一筋縄では行くまい」
「で、ございますな。既に探りを入れてはおりますが、ご同意いただける見込みは少ないかと」
まるで他人事の様な言い回しではあるが、それが彼の言い方なのであろう。
アゲロスの方も、全く気にする素振りは無い。
と言うよりも、こうやってアゲロスに対して逐次疑問を投げかける事で、アゲロス自身の考えを整理して行く……と言う、二人の間での長年にわたって行われている儀式の様なもの、と言えるのかもしれない。
「うぅぅむ。……サロスよ。何か面白い話はあるか?」
「はっ。そう言えば、昨日到着しました南方大陸からの手紙に、またしても獣人達に不穏な動きがあるとの一報がございました」
「現在の総監であるガッルス将軍では些か心許のうございますな。彼の御仁は、略奪は得意ではございますが、説得等には不向き。既に城塞都市も出来上がりつつある中、余計な争いは避けつつ、そろそろ共存共栄の道を模索するのが良策かとは思います」
静かに頷きながら、話を聞くアゲロス。
そのうち、彼はテーブルに置いてあったワイングラスを摘まみ上げると、その香りを楽しむかの様に、自身の鼻先へと近付けて行く。
「うむ。良い香りじゃ。若いワインの爽やかな香りも楽しいが、年代物のワインの持つ奥深い香りも素晴らしい。適材適所、それぞれ使い道があり、それぞれ、楽しめると言う事じゃのぉ……」
「うむ。面白い話であった」
「サロス。早速ルキウスを呼んで参れ。南方大陸総監を交代させる。南方大陸城塞都市は、マロネイア家の生命線じゃ。更なる発展には、現地住民との深い絆が必要となろう。その様な事が出来るのは、ルキウスをおいて他におらん」
「はっ、アゲロス様のご慧眼、感服仕りました。それでは早速ルキウス将軍をお呼びしましょう。また、もう一点よろしいでしょうか?」
「うむ。何じゃ。申して見よ」
サロスはアゲロスの持つワイングラスへと、新しいワインを注ぎ入れながら話し始めた。
「この度、私が不在の際に、アゲロス様が何者かに襲われると言う事態がございました。これは忌々しき問題にございます。既に屋敷内全域に緊急事態を宣言し、防備を固めている所にございます」
「うむ。それで」
折角問題の一つが片付く目途が立ち、先程からの機嫌も収まりかけたアゲロスであったが、またもや不機嫌な表情に。
それもそのはず、アゲロスにしてみれば、、自身の命が狙われるなど、全く笑えない話題ではある。
「しかし、先程のお話しの通り、リヴァディアへの救援、更には、南方大陸への遠征など、費えも兵も不足しております。ここは如何でしょう。エレトリア評議会お呼び、帝国元老院の方へ、今年の年貢免除と傭兵の募集について、ご裁可頂ける様上申されてみては……」
次第にワインを飲む手が止まり、サロスの話をゆっくりと脳内で反芻し始めるアゲロス。
やがて、彼はワイングラスを元に位置へと戻すと、大きく息を吐き出した。
「うぅぅむ。仕方あるまいのぉ。『高貴なる者の義務』は果たさねばならぬ。そうじゃ。ワシは帝国貴族であり、エレトリア上席評議の一人である。帝国元老院からの命令を遂行する為には、費えも人手も必要じゃ。そうじゃ、そうじゃ。これは決してマロネイア家の為では無い。帝国の為、ひいては帝国人民の為でもある。そうじゃのぉ。サロスよ」
「えぇ、もちろんでございます。常に公益を第一とされる、アゲロス様ならではのご発想にございますな」
「うむ。そうであろう、そうであろう。それでは早速、この話進めてくれ」
アゲロスは満足そうに頷きながら、羽毛が詰め込まれたクッションの間にその身を沈めて行く。
「はっ。畏まりました。それでは引き続きルキウス将軍を……っと、あぁ、いや。その前にイリニ家政婦長を呼びましょうか。戦士にも休息は必要でございますからな」
そんなサロスからの進言に、アゲロスは口角を上げて頷き返した。
「あぁ、そうだな。ルキウスを呼ぶのは、その後でも構わんな」
「はっ、御意に」
サロスは、恭しく一礼しながらも、自身の想いを巡らし始めた。
後はイリニ家政婦長に任せておけば良い。
彼女であれば、既に何人かは見繕っている事だろう。抜かりは無いはずだ。
やるべき事は多い。しかし、時間は不足している。
本来であれば、自分の右腕として、是非とも欲しい人材ではある。
こんな、奥女中の束ねを行う様な器では無いのである。『紅の女剣士』と言う二つ名は伊達では無いのだ。
しかし、まぁ、物は考え様である。
彼女がいるからこそ、自分は安心してアゲロス様のお傍を離れる事が出来るのだ。
自分なりに納得できる答えを導き出したサロス。
彼は、すぐそこにいるであろうイリニ家政婦長に声を掛ける為、廊下へと向かうドアノブへ、そっと手を伸ばした。
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【AIの使用について】
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