【R18】マッチングアプリで弊社社長とマッチングされました!?

玄野クロ(星屑灯)

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私の大切な人

愛しきキミと一緒に_1


 本当に、つい先日まで『結婚なんてずっと先のお話で、したいとは漠然と考えていてもどこか自分とはまだ無縁の話』だと、ゆあは思っていた。それなのに、今の自分は驚くほどハイスペックの男性と、政略でも計算でもなんでもなく結婚している。誰もが憧れるような夢物語を、知らないうちに引き寄せて抱き締めていたのだ。自分から手を伸ばしただけではなく、相手も手を伸ばしお互いの手を握って離さなかった。それだけのことと言ってしまえばそれだけのことなのに、得たものはほかのなによりも誰よりも大きいものだった。
 優しい目と声で話すハルトを見ていると、胸の奥からじんわりと温かいものがこみあげてきて、それが心にめいっぱい広がっていくことが良くわかる。それを感じると『あぁ、この人と一緒にいることができて本当に良かった』と、何度でも噛み締めることができた。

「……ゆあ?」
「……え?」
「どうしたの? なにかあった?」
「あっ、ううん! ちょっと、考え事してただけ」
「もしかして、急に不安になったり?」
「そうじゃないよ! ……なんだか、今こうしてここにいることが不思議で……なんて言ったら、ハルトさん怒る……?」
「どうしてそう思うの?」
「え、っと……その、上手く言えないんだけど……。ちょっとふわふわして、浮かれてるって言うのかな、だからこそ実感がわかないって言うか。でも、ハルトさんが私の旦那さんだっていうのは紛れもない事実で、当たり前なんだけどそうだから目の前にいるんだけど……。今日会った人たちに結婚の報告して、それが披露宴で私はウェディングドレス着ていて、ハルトさんも当然タキシードで。……ううう、ダメ、自分でも良くわからなくなってきちゃった……」
「ふふっ。ゆあらしいんじゃない?」
「私らしい?」
「そう。ゆあらしい。……悪い意味じゃないよ。僕は、そんなゆあが好きなんだから」
「ハルトさん……」
「嫌でも実感はわいてくるよ。だってこれから、ずっと一緒にいるんだから。歳をとって、おじいちゃんおばあちゃんになるまで。ずっと、ずっと」
「……うん」

 愛おしそうにハルトはゆあの髪を撫でた。連日の忙しさと、目まぐるしく変わる環境に疲れたのだろう。そして、気持ちがしっかりとまだ追いついていない。それならば、自分がゆあをしっかりと支えて現実だと見せてやれば良い。安心できるまで、何度でも、いつまでも。そう思いながら動かすハルトの指先は、ゆっくりと熱を帯びていった。

「……やっぱり、ウェディングドレスでもカラードレスでも、どちらか片方だけでも着て来られなかったのは勿体なかったかな」
「もう一度着る楽しみがあるから、体重と体型油断しないようにしなきゃ」
「そうだよね、ゆあはそっちだよね」
「……あれ、違ったかな? だって、せっかくのドレスなんだよ? もう一度あの姿でハルトさんの隣を歩けるんだから。……綺麗って、可愛いって思ってもらいたいじゃん?」
「それはそれで嬉しいよ。でもね。……男なら思う人も多いんじゃないかな」
「なにを?」
「自分のために着飾った相手を、脱がせてみたいと思うの」
「えっ!?」

 頭を撫でることをやめ、ハルトはゆあを抱えてベッドへと向かう。ぽかんと口を開けたまま、ゆあはただ運ばれていく。ドサリと音を立ててベッドへと運ばれたあと、ゆあの見ている前でハルトは着ていた服を脱ぎ始めた。

「……男の人のそういう気持ち、私にはまだわからないかも……」
「わからなくても良いよ? ただ、ゆあには隠し事するつもりはないから、僕の全部を見て欲しいとは思っているけど。……こんな姿も含めてね」

 そう言って平常心を保つフリをしながら少し恥ずかしそうに笑うハルトを見て、ゆあは胸の奥をキュッと掴まれたような感覚を覚えた。今までも何度か感じていたこの感覚。甘酸っぱくてくすぐったいその感覚は、その度にゆあの中の『ハルトを好き』という気持ちを簡単に大きくしていった。

「……好きだもん。まだ、私の知らないハルトさんがいたとしても」
「……本当に?」

 ハルトがベッドに体重をかけると、先ほどよりも大きく軋む音が聞こえた。2人しかいないベッドルームに、ハルトの声と少しの沈黙が響く。

「……うん」

 そう答えて、ゆあは沈黙を破った。その気持ちに偽りはない。ハルトはいつでもゆあを助け、支えてくれた。だから、その気持ちに応えたい。そんな大層なものではなかったとしても、知らない一面を知ることをマイナスではなくプラスだと考えたかった。大袈裟でも良い、逆に、ちっぽけでもいい。

「僕と結婚したことをゆあが後悔しないように、僕はこれからも頑張るから。胸を張って『ゆあの夫です』って言えるように」
「今でも十分なのでは……?」
「そう? ……それなら嬉しいなぁ」

 無邪気に笑うハルトは、そのままゆあを抱き締めた。頭では色々考えていても、いざ言葉にしようとするとなにも浮かばない。誤魔化すわけではないが、今のそんな気持ちを表現するのに最適だと思ったからだ。そんなハルトの気持ちを知ってか知らずか、少し間をおいてゆあも抱き締め返した。
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