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ハイカブリ(同居人×女主/王子×女主/複数/媚薬/歪/二穴)
始まりの始まり_4
しおりを挟む継母の剥いてくれた林檎は、とても甘くて時々酸っぱくて美味しかった。ランスとシアは、『今まで自分達がどのように過ごしていたか』『普段フレリアは何をしていて、どんな女性だったか』を丁寧に教えてくれた。みんなで食べた継母お手製の夕食は、ほっぺたが落ちそうになるくらい、私の口にあっていた。
──とても、とてもとても、この世界は居心地が良い。まだ、来て一人も経っていないが、ノイはそう感じていた。
目を覚ました時には気が付かなかったが、石鹸の良い匂いのするふかふかの布団と枕、綺麗に掃除されている部屋、種類分けして掛けられたクローゼットの中身、ピカピカに磨かれたドレッサーの鏡、どれもフレリアの丁寧な性格が現れている。きっと、素敵な女性なのだろう。
"……それにしても、あの結婚の約束、気になるのよね……"
ランスとシアは、丁寧に説明をしてくれた、が、一番気になっていた部分については何も触れなかった。あの時、冗談めいた言い方ではあったし、シアしか聞いてはいない。重要そうな話ではなさそうだったから、特に話す必要はないと判断されたのだろうか。
"……聞いてみる?"
シアは思い立つと、ゆっくりと部屋から出て行った。皆もう眠っているかもしれない。ゆっくりと、廊下を歩く。シアとランスの部屋は、明かりが点っていない。もう眠ったのかと思ったが、階段下から明かりが漏れていた。ハッキリはしないが何やら、話し声も聞こえる。
"……あれ、下にいるのかな?"
床板が鳴らぬよう、注意を払って階段へと近付く。すると、話し声も少しずつ分かるようになってきた。この声はシアとランスだ。
「……しっかし、フレリアが記憶喪失か……」
「驚きましたね。何も覚えていないだなんて」
「まぁ、他に異常がないなら良いけどよ。あの王子さえ家に来なけりゃ……」
「……記憶がないことが分かってしまったら、都合の良い話を捏造して、連れて行きかねませんからね」
「だよなぁ。まぁ、渡さねぇけどよ」
「同感です。私達のフレリアですからね」
「だな。俺達のフレリアだ」
"俺達の……フレリア……?"
二人の口から出た台詞にノイは驚いた。
「……そろそろ寝ますか」
「そうだな、明日もあの王子が来たら追い返さなきゃならねぇし」
"や……やばい……!"
ノイは自分の部屋へと急いで戻った。それでも、足音を立てないことを忘れることなく。ゆっくりとドアを閉め、布団へと潜り込む。ドクドクと落ち着かない心臓を両手で押さえ、出来るだけ落ち着いた呼吸をした。
コンコン──。
"えっあっ……寝てます寝てます……!"
ギュッと目を瞑り、ドアへと背を向ける。
ギィィ──。
「フレリア……」
「眠ってしまったかな?」
ドアを開け、部屋に入ってきたのはランスとシアだった。
"寝てる……! 寝てるんです……!"
バレないように、と、必死に祈る。今寝たフリをしているのだ、ここで寝たフリがバレてしまったら、何故そんなことをと思われるに違いない。
止まったと思っていた足音がまた鳴る。音は一瞬遠ざかり、また近づいて来た。背中を向けていたからか、二人とも顔の向いている方へ来たようだった。
「今日は疲れたんだろ。ゆっくり寝かせてやろうぜ」
「そうですね。おやすみなさい、フレリア」
「おやすみフレリア」
シアとランスはおやすみの挨拶を口にすると、交互にキスをした。──フレリアの唇に。
「私達も寝ましょう」
「そうだな」
シアとランスは、フレリアの部屋を後にした。
"な……あああ……!? 口!? 口なの!?"
思わぬ形で二人の放った【俺達のフレリア】の意味を理解したノイ。恐らく、間違ってはいないだろう。
頭の中でグルグルと、二人のことを考えながら朝を迎えるのだった。
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