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三話
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目を開けた瞬間、飛び込んできたのは無骨な天井だった。自分が牢に入れられている事よりもまず生きていたことに驚きを隠せない。
てっきりあの場で斬り捨てられたと思っていたのだが。
足を見る、鎖で繋がれていた。
手を見る、手枷が邪魔で動けそうにない。
身体を見る、怪我をしていたらしい箇所には丁寧な包帯が巻かれきっちり治療が施されていた。
なんだこのちぐはぐな感じは。
捕まえるなら捕まえるだけにしろ。治療するにしてもぞんざいに扱えばいいものを。どう見ても捕虜に対する扱いじゃない、敵は一体何を考えてるんだ?
「起きたのか」
声のする方に顔だけ向ければ最後俺と戦ったあの男が立っていた。あの戦場で纏っていた服とは違い軍服をアレンジしたのであろう貴族服。やはり上位階級の人間だったらしい。
「口は聞けるか? 飲み物を持ってきた、ほら」
差し出されたのは陶器に入れられた水。戸惑いつつも喉が乾いていたことにようやく気づく。しかし素直に受け取ることは出来なくて顔を背けるだけで何も返せなかった。
「強がるなよ。何か口にしねぇと持たねぇぞ、毒なんか入れてねぇから」
「毒など今更効かない」
もう何度となく口にしてきた。そう答えれば男は苦虫を噛み潰したような顔で俺を見る、やめろそれ。
いつまでも強情を張っていれば焦れたのか男は俺の頬を掴み、無理やり飲まそうとしてくる。必死の抵抗も虚しく男の手から注がれた水が喉へと伝っていった。無理やりこじ開けられた口元から垂れてた水が気持ち悪い。
「んっ、ンン」
「大人しくしろ。よしほらごっくんって飲み込んでみろよいい子だから」
誰がいい子だ。戦場の死神って呼ばれた俺がどうして幼子みたいな介抱を受けないとならないのか。飲み込んだ後ようやく自由になった口で叫んだ。
「貴様っ!!」
「足りたか? 飯も用意してんだ、今食わせてやるからな」
「要らん!!」
結局また無理やり食べさせられそうになったので大人しく手枷をしながらも何とか出された分を食べきった。
「よしよしよく出来ました」
「ぶっ殺す」
この拘束具さえなければ今すぐ喉元を掻っ切ってやるのに!!
「可愛くねぇなお前さん、顔はそこそこいいのに勿体ねぇ」
「そんな戯言を述べるために俺を生かしたのか?」
「そう焦んなよ。お前さんを生かしたのは察してる通りエレイナの情報を吐かせるためだ、その為にも死なれちゃ困るんでな」
だからといってこうも世話を焼く必要が何処にある?
そんな俺の疑問が顔に出ていたのか男は心底愉快そうに笑った。
「死神の坊ちゃんはノアって言うんだろ? 調べさせてもらったぜ」
名前を知られたぐらいどうという事は無い。だというのに男が名前を呼ぶ物言いがあまりにも懐かしそうに、そして切なそうだったのでたじろいでしまう。
「ノア、ノア・カーライトか」
「何のつもりだ」
頭を撫でられた。ゴツゴツした男の手だ。親にだってされた事ないのに一体何を思ってこんなことするんだろう。
明らかに不自然な男の行動を咎めようとした時、牢屋の外から物音がした。
「アーノルド辺境伯、そろそろお時間になります」
「.......ちっ。じゃあなノアちゃん、また来る」
「二度と来るな」
男はひらひらと手を振って聞いてもない様子だ。あの飄々とした態度、気に入らない。何がノアちゃんだ、女子供を呼ぶみたいに俺の名前を呼ぶな馬鹿。
そういえばあいつ、アーノルド辺境伯って呼ばれていなかったか?
敵国ゾルディアに狂犬と名高い戦闘狂の貴族がいると耳にしたことがある、確かそいつの名前が.......。
セオ、アーノルドだったか。
てっきりあの場で斬り捨てられたと思っていたのだが。
足を見る、鎖で繋がれていた。
手を見る、手枷が邪魔で動けそうにない。
身体を見る、怪我をしていたらしい箇所には丁寧な包帯が巻かれきっちり治療が施されていた。
なんだこのちぐはぐな感じは。
捕まえるなら捕まえるだけにしろ。治療するにしてもぞんざいに扱えばいいものを。どう見ても捕虜に対する扱いじゃない、敵は一体何を考えてるんだ?
「起きたのか」
声のする方に顔だけ向ければ最後俺と戦ったあの男が立っていた。あの戦場で纏っていた服とは違い軍服をアレンジしたのであろう貴族服。やはり上位階級の人間だったらしい。
「口は聞けるか? 飲み物を持ってきた、ほら」
差し出されたのは陶器に入れられた水。戸惑いつつも喉が乾いていたことにようやく気づく。しかし素直に受け取ることは出来なくて顔を背けるだけで何も返せなかった。
「強がるなよ。何か口にしねぇと持たねぇぞ、毒なんか入れてねぇから」
「毒など今更効かない」
もう何度となく口にしてきた。そう答えれば男は苦虫を噛み潰したような顔で俺を見る、やめろそれ。
いつまでも強情を張っていれば焦れたのか男は俺の頬を掴み、無理やり飲まそうとしてくる。必死の抵抗も虚しく男の手から注がれた水が喉へと伝っていった。無理やりこじ開けられた口元から垂れてた水が気持ち悪い。
「んっ、ンン」
「大人しくしろ。よしほらごっくんって飲み込んでみろよいい子だから」
誰がいい子だ。戦場の死神って呼ばれた俺がどうして幼子みたいな介抱を受けないとならないのか。飲み込んだ後ようやく自由になった口で叫んだ。
「貴様っ!!」
「足りたか? 飯も用意してんだ、今食わせてやるからな」
「要らん!!」
結局また無理やり食べさせられそうになったので大人しく手枷をしながらも何とか出された分を食べきった。
「よしよしよく出来ました」
「ぶっ殺す」
この拘束具さえなければ今すぐ喉元を掻っ切ってやるのに!!
「可愛くねぇなお前さん、顔はそこそこいいのに勿体ねぇ」
「そんな戯言を述べるために俺を生かしたのか?」
「そう焦んなよ。お前さんを生かしたのは察してる通りエレイナの情報を吐かせるためだ、その為にも死なれちゃ困るんでな」
だからといってこうも世話を焼く必要が何処にある?
そんな俺の疑問が顔に出ていたのか男は心底愉快そうに笑った。
「死神の坊ちゃんはノアって言うんだろ? 調べさせてもらったぜ」
名前を知られたぐらいどうという事は無い。だというのに男が名前を呼ぶ物言いがあまりにも懐かしそうに、そして切なそうだったのでたじろいでしまう。
「ノア、ノア・カーライトか」
「何のつもりだ」
頭を撫でられた。ゴツゴツした男の手だ。親にだってされた事ないのに一体何を思ってこんなことするんだろう。
明らかに不自然な男の行動を咎めようとした時、牢屋の外から物音がした。
「アーノルド辺境伯、そろそろお時間になります」
「.......ちっ。じゃあなノアちゃん、また来る」
「二度と来るな」
男はひらひらと手を振って聞いてもない様子だ。あの飄々とした態度、気に入らない。何がノアちゃんだ、女子供を呼ぶみたいに俺の名前を呼ぶな馬鹿。
そういえばあいつ、アーノルド辺境伯って呼ばれていなかったか?
敵国ゾルディアに狂犬と名高い戦闘狂の貴族がいると耳にしたことがある、確かそいつの名前が.......。
セオ、アーノルドだったか。
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