お嬢様と少年執事は死を招く

リオール

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第六話 少女と狼犬

14、※グロ注意

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※グロ注意
 
 
「ぎゃあああ!やめて、やめてくれえええ!」
「ひい!お、お助けください、お助けを!」
「やめてくれ、俺には家族が!子供が……!!」
「逃げろ!化け物だ、逃げろおお!!」

 叫んで逃げ惑う使用人達。腰が抜けて泣き叫ぶ者。鋤や鍬を構えてかかってくる者。ブツブツと呟き続ける気の触れた者。
 ──無言で横たわる屍の数々。

 屋敷内は今や阿鼻叫喚の地獄絵図となっていた。

 その中を、穢れなき私が優雅に歩みを進める。

 泣き喚く者に向けて手を横に薙ぎ払った。それだけでその者の首は床へと落ちる。ゴトンという音が小気味よい。

 クワを振りかぶってきた者は嘲りの目を向けてやる。
 そして難なくクワを避けた後──その腕を掴み、引きちぎった!

 悲鳴を上げて床を転げまわる男。
 ああなんて……

「なんて脆いのかしら。まるで人形みたいね」

 人形のように簡単に手がもげてしまうなんてね。いえ、もしかしたら本当に人形なのかも?

「確かめてみましょ」

 そう言って、私は男の逆の手を掴んで──引きちぎった。
 ああ、やっぱり簡単に壊れる。

「あなた、人形でしょ?」

 確認するように、右足を引きちぎった。当然のように左足も。
 簡単にブチッブチッと切れてしまう手足。ああ、やはりこれは人形だわ。

 あれも人形。
 私はそばで床に蹲るメイドの腕も引っ張ってみた。

ブチッ

「ひぎい!」

 変な悲鳴を上げる人形ね。

「人形がそんな汚い声を出したら駄目よ」

 不快に思って、その口に手を突っ込んだ。

「あが──!?」
「人形はしゃべっちゃ駄目」

ブチイッ!!

 舌を引き抜いた。そうすると人形は悶絶しながらも黙り込んだ。そうよ、人形は話さない方がいいわ。

 静かになった人形に興味を失った私は、廊下をまた進む。

 これも人形。
 あれも人形。
 次々と現れる人形を壊し続けて、ひたすら歩いた。

 そして一階へ降りて進むうちに、ようやくその人に出会えた。探し求めたその人を、ようやく私は見つけたのだ。

「お姉様」
「ひい!!」

 真里亜が、そこに居た。数人の使用人に囲まれて、目に涙を溜めた姉が。ガタガタ震えながら、私を見ていたのだ。

 そんな顔しないでよお姉様。立った二人きりの姉妹でしょう?

 だからねえ、お姉様。

「遊びましょうよ、お姉様」
「いや!来るな!来るな化け物!!」
「──酷いわ、そんな言い方しないで」

 傷ついたわ、私とても傷ついたわ。
 ねえ怒ったのよ私。とても怒ってるのよ。

 だからお姉様、私と遊んでよ。

 姉を守ろうと飛び掛かってくる人形をまた潰す。
 血潮が飛び散る中で、姉はとても綺麗な朱に染まっていた。
 私は汚れない手を伸ばす。

ブチュッ
グチュッ

 人形が足元でどんどん潰れていく。それを気にすることなく私は歩みを進めた。

 紙のように白くなった姉の肌に、血の赤は良く似合う。

 その頬に私は手を伸ばした。

「ひ……あ……」

 そっとその頬を撫でる。
 ──とても、冷たい。
 きっとこれは姉の心の冷たさだ。冷酷な姉には体温なんてないんだ。それはまるで人形のように──

「お姉様まで人形なんて!」

 突然沸いた怒りにまかせ、私は思い切り爪を立てた!

「あひい!」

 醜い悲鳴を上げて姉が飛びのいた。

 私の爪に残る姉の皮膚。
 抉れた頬の姉。
 流れる血が、とても美しかった。

 ああ、もっと──

「もっと、その血を見せて、お姉様」

 私と同じものが流れる、その血を。

 もつれる足を必死に動かして逃げようとする姉を、私は掴まえた。その腕をガッと掴む。

「ひい!は、離して!助けて!」
「遊びましょうよ、お姉様!」

 いつもみたいに!
 私をいつもいたぶって遊んでいたじゃない!
 だから私もそうやって遊びたいのよ!
 お姉様で遊ばせてよ!

 口に手を伸ばし。

「ふひ!?」
「お姉様の歯、可愛いわね」

 ブチッ!

「ほごお!?」

 ブチッブチッ!

 気持ちいいくらいに歯が抜ける。少し力を入れただけで、姉の歯が──全て、抜けた。
 それらをしげしげと眺めて
「なんだ、大して綺麗じゃなかったわ」
 すぐに興味を失って捨てた。

 歯は綺麗じゃなかった。じゃあその舌はどうかしら?

 いつもいつも私に酷い言葉を浴びせた、その口の内部……舌は、綺麗かしら。

 ガッと口を掴んで舌を引っこ抜いた。

「あああああ!!」

 汚い悲鳴。
 手に乗せて見た舌は、先ほどの使用人と変わらなかった。ちょっと小さいくらい。

「──面白くない」

 それもベッと床に投げ捨てた。

 面白くない、面白くないわ。
 お姉様は私を虐めていつも楽しそうだったというのに。
 どうして私は楽しくないのかしら?

 床でピクピク痙攣してる姉の指を持つ。

「ひ、は……」

 まだ意識がある姉が何か言ってるけど、気にせずにその指を──折った。ペキッと。

「──────!!!!」

 全ての指を折ったら、ビクビク震えてのけぞって……姉は動かなくなった。気絶したのだろうか?

「いやだお姉様、気絶しちゃ何も見えないじゃない。見ないなら……要らないわよね?」

 要らない物は撤去するに限る。

 私はそう言って、姉の瞼をこじ開けて。
 その眼球を奪うのだった……。



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