婚約者とその浮気相手の令嬢がウザイのでキレることにしました

リオール

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 それは最終宣告。
 だって『それ』を私は行使したくなかったから。

 だけど仕方ないじゃないか。二人は一線を越えたのだから。
 私を誘拐し、悪女となじり、全ての責任から逃れようとしたのだから。

 罰は必要。それを理解しないお馬鹿さんには。

 切れていいと思うんです。

「み、ミライッサ……?」

 珍しく敏感に不穏な空気を感じ取ったボルドランが一歩後ずさる。

「ふん、ハッタリも大概にしなさいよ。切れるですって?切れてどうなんのよ?なんにも出来ないくせに!」

 理解してない大馬鹿ポリアナは叫ぶや否や、私の髪を掴んで引っ張って来た。

「──っ……!」

 その痛みに声にならない悲鳴が出る。

「あっはっは!いい気味!ほら、ほら、切れてみなさいよ!切れて何か出来るんならね!」
「──馬鹿ね……」

 痛みに涙が滲んでくるのが分かった。

 ああ。
 発動する。
 『あれ』が。
 私の涙に反応するのを感じて。

「本当に馬鹿ね」

 私はもう一度言った。

「ブチ切れたわ……」

 そう言って、私は静かに涙を流すのだった。

 ポリアナの笑い声が響き渡る。
 優越感に満ちた笑い声が。

 室内に響き渡るポリアナの笑い声。
 けれどそれをかき消すかのように、強い眩い光が全てを照らし出したのは、その瞬間のこと!

 そうして──

 それは顕現した……




※ ※ ※




「な、何よこれ!まぶし──!!」
「ちょおっとおおお!何も見えないじゃないの~!?」
「何だこれは、一体何が起きてるんだ!」

 ポリアナにオネエにボルドラン。三人の叫ぶ声を聞きながら。

 私は解放感を味わっていた。
 常に近くに存在を感じながら、けれど認めたくない存在。
 大切で愛おしくて仕方ない、けれどその愛を表現する事を許されない存在。

 忌むべき存在。
 けれど愛しい存在。

 そんな相反する感情を持つ存在。

 未だ眩い光に包まれながら、けれど私の目は確かにその存在を認めて手を伸ばしたのだった。

 そう、解放された手を。
 それによって解放された手を伸ばす。

「ベルヒト──」
「ああ、ミライッサ」

 伸ばした手は確かに掴まれる。

 その瞬間、光は消えて部屋は元の姿を現した。

「な、なんだあ……?」

 ようやく視界が戻った事に目をしばたたかせながら。目をこすりながら、ボルドランがこちらを見た。

 途端、その目が驚愕に広げられる。

「な、なんだお前は!?」
「ボル……?って──えええ!なにこのイケメン!」

 驚くボルドランの言葉につられて、やはり目をこすりながらこちらを見たポリアナが。
 同じく目を見開いて驚愕の声を上げるのだった。

 そう、誰もが認めるイケメンが突如現れたのだ。
 空よりも青い長髪をなびかせ、金の瞳をギラリと輝かせた存在。
 整った顔立ちは──ちょっと整いすぎて恐いくらいだ。

 そんなイケメンが私を腕に抱きながら。
 その場に降臨したのだった。

 イケメンの美しい唇が動く。

「貴様ら──」
「ぎゃああああ!超タイプぅぅぅぅ!!!!」

 が、それは阻まれた!
 オネエによって!

 ドーンとオネエは突き飛ばしてこっちに突進してきた!え、何を突き飛ばしたかって?椅子から壁の一部に変わったやつです、突き飛ばされて壁の一部になりました、おめでとう。

 ってそれどころじゃないわ!壁人間なんか今どうでもいいわ!

「ひいいい!」
「お兄さんどちらの方ぁ!?お名前は!?お住まいは!?好みはあぁぁ!?!?!?」

 いいやあああ!オネエパワー恐いわ!顔近づけるな、すり寄るな、匂いを嗅ぐなああああ!!



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