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しおりを挟む「私はミライッサ一筋だ」
無口なくせに口を開けばこういうこと言ってますが精霊王です。
「昔からずっと愛してる」
「うん、もう何世代前の前世か分からないので、私にはもう恋慕の情ないけどね?」
親愛の情ならありますがね。
「どういうこと?」
私達の会話の意味が理解出来ないポリアナが、ドスンと壁にもたれて額を押さえる。考えても理解できまい。ところでそのもたれた壁が呻いたよ。めり込んでる二人、出してあげなくていいの?あ、無視でいく?さいで。
「伯爵家では滅多に女性が生まれないんだけどね。生まれたら、それ即ち初代女王の生まれ変わりなのですよ」
「はあ!?何それ!意味わかんない!」
「いや~私も最初聞いた時は分かんなかったねえ。だって初代女王とか言われても記憶ないしね」
でも何とな~く懐かしいような感じはあった。
そして何よりベルヒトの執着が凄い。
「ミライッサ……」
ほらきた。
またピトッとくっ付いてくるんだもんよ。姿見せるといっつもこうだ。だから嫌なんだ、ベルヒト出すの。
開いた口が塞がらず、ただただ食い入るように見入っていたポリアナ。
ベルヒトはそんな彼女をギロッと睨みつけた。ポリアナは思わず後ずさりかけたが、残念ながら背後は壁。壁と言うか壁に埋もれたボルドラン。逃げ場は無かった。
「お前、ミライッサ泣かした。許さない」
精霊ってのはあまり人語を話さないんだろうね。話し方が微妙に変だが、明確な怒りだけは分かった。
それはポリアナも感じたのだろう。
「ひ……!」
小さな悲鳴が喉をついた。
泣かした……そう、ベルヒトは私が泣いたら現れるのだ。そのせいで子供の頃はやたらと出没して面倒だったけど。
精霊王なんてホイホイ呼び出していいもんじゃないからね。純粋な王家にしろ我が伯爵家現当主の父や次期当主の変態兄ですら、呼び出すことは叶わない。
だってのに、私が泣くとヒョコっと現れるわけだから。
精霊王も随分ややこしい性格をしてると言えるだろう。
だが、それでも現在唯一精霊王を呼び出せる存在である私。王家がそれを重宝しないわけはない。
とはいえ王家と伯爵家はけして婚姻関係は結ばない。血縁だからじゃあない。もう遥か昔すぎてどれだけ同じ血があるのか怪しいものだから、それは問題ないのだけど。
もし病などで王家が滅んだとしても、伯爵家が居れば精霊王は守護し続けてくれる。絶対に王家とは別の家でなければならないのだ。ちなみに王家に女性が生まれても、それは初代女王の生まれ変わりではない。なので精霊王はむしろ王家より我が伯爵家を大事にしてる……ようだ。
だから我が家は伯爵という、程々の目立たない地位に有り続けたのだ。ただ、久々に生まれた初代女王の生まれ変わりの私を、下手な家に嫁がせるわけにはいかないと思われてしまったのが運のつき。
年齢近くてまだ婚約者が居なかったのが……結局侯爵家三男のボルドランとなってしまったわけだ。年齢差など気にせず最初からハリーにしてくれてたら良かったのになあ。
まあボルドランは色々と可哀そうな事になってしまったなと同情はする。
だがポリアナにはしない。
自分のためにボルドランを利用した様子がうかがえて気に食わない。ボルドランに愛情は皆無だが、それなりに情はあったから。ちょっとだけど。ほんのちょぴっとだけどね。ちょぴ~~~っとだけどね!
「まあそういうわけです。潔く精霊王からのお仕置き受けてください」
「は!?へ!?お、お仕置きって!?」
蒼白な顔で私と精霊王の顔を交互に見るポリアナ。
そんな彼女に向けて、ベルヒトが手をかざす。
「お仕置きはお仕置きだよ。ごしゅ~しょ~さま~」
私の言葉と同時に力が発動するのを感じ。
爆音が周囲に響き渡るのだった……。
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