ぶりっ子男好き聖女ヒロインが大嫌いなので悪役令嬢やり遂げます!

リオール

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17、悪役令嬢の入るスキがない!

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 え、なんでベルシュ様立ち上がった?

 不意に立ち上がった王太子にギョッとなる。
 彼は結構平和主義なので、もしかして母親を止めに行くんだろうか?まさか王太子も王妃の餌食に?

 なんてハラハラしていたら。

「母上、タッチ!」
「っしゃ!」

 ……まて、これ王家のやることか。
 王太子と王妃がハイタッチするのって王族らしい行為なんでしょうか!?
 王妃が「っしゃ!」とか言っていいの!?

 私が言うなってセリフだけど、敢えて言ってみた。

 いやだって、なんなのこの状況。

 まって王太子、そこ別にリングじゃない。ロープ無い。何を跨ぐフリしてるのかアンナ分かんない。何してんのこの親子、王妃もそこロープ無いから!リング出てないから。無いから。何度も言うけどリング無いから!

 そうして王妃がリングアウト、王太子がリングインらしき謎の行動の後。
 王太子は未だ横たわる王に近付いた。見下ろす形になるけど、それはまだ寝てる王が悪いんだよね、うん。

「父上……」
「べ、ベルシュ……お前ならわしの気持ちを分かって……」
「せーーーーーーーーーーーい!」
「ぶおっほおぉぉ!!!!」

 入ったー!入りました、エルボードロップ!!!!
 これは立てない、国王立てない!きまったか!?これはきまったかー!!??

 ……は!どこからともなくマイク出てきて思わず実況しかけたわ!

 順応早い自分にビックリだ。まさか普段穏やかな王太子が!

 てか国王大丈夫かあれ。白目むいてない?

「ねえテリス王子、あれ止めなくていいの?」

 今更だけど。もう王気絶してっけど。
 同じく呆然と事の成り行きを見ていたテリスに一応聞いてみた。

 が。

「なぜだ?普通の夫婦喧嘩と親子喧嘩ではないか。何を止める必要がある?それより問題は僕たちが結婚とかいうふざけた話のことで……」

 予想外の返事ー!この光景は気にしないってか!?
 え、まさかこれ王族の日常なの?これが夫婦喧嘩で親子喧嘩なの?マジで?

「何を言ってるのだ、普通だろ?母上は昔から何かあると父上にあれをやってたぞ。やられると分かってていつも変なことしてる父上も父上だが。僕と兄上の喧嘩もあれが常だし、幼い妹たちも最近は随分と上達して……」
「まってください、ちょっとまって、お願いまって、衝撃の事実に頭ついてかない!!」

 ほんとまって、ぶっ飛んだ話に混乱、パニックよ!

 そうか、王妃様の影響で子供も……というか王がやってる『変なこと』ってなんだ、それが一番気になるわ!国王夫妻ってラブラブって話じゃなかったっけ?そうかこれが夫婦の会話か。ってんなわけあるかーい!幼い王女たちに悪影響じゃないのこれ?王族は常に狙われる危険な立場だから強くならなければ?そうですかそうですか、護身術ですねこれ!……それでいいのか!?

 ──駄目だ、突っ込むとこ多すぎてさすがの私もキャパオーバーよ。誰か水ちょうだい。飲むんじゃない、頭にかけて冷やしたい。

 頭から湯気が出そうな状態の私に対し、冷静な王族に呆然。そこに冷静に立ち上がった王太子がぶりっ子を見た。ぶりっ子の存在忘れてたわ。私以上に呆然というかアゴ外れてんじゃない?ってくらい口開いてるけど。

「ミサキ、すまないが父上に回復魔法を頼む」

 あ、治癒させるんだ。まさか回復したところで追い打ちとかじゃないでしょうね。そんなガクブルな展開になったら、ちょっと王太子を見る目が変わってしまうわ。もう十分変わったけど。この一家怖い。

「ふえ!?あ、は、はひ~!」

 口がちゃんと閉じなくて変な返事になってるよ。

 ぶりっ子はハッと我に返ったようで返ってない、危ない足取りで横たわる王に近付いて治癒を開始した。王治すならテリスの傷も治してやりなよ、マジ鬼。

「──ぶっは!は!?へ!?な、何事だ!?」

 あ、生きてた、王が生き返った。うん、さすが聖女(候補)、治癒の力は大したものだ。だからテリスを…以下略。

 ガバリと起き上がった王の手を取り、王太子はそっと自分の胸に手を当てた。

「父上、分かっていただけましたか?」

 何をだ。エルボードロップで何が分かるんだ。

「私はアンナの事を心から愛してます。彼女以外考えられない。もし彼女がこの城を去るというなら僕も一緒に行く。平民になるというなら僕もなる。地獄に落ちるなら僕も一緒に落ちる」

 地獄とか言わないで。

「僕はそれくらいアンナの事を愛してるんです」

 初耳です。すみません、それは初耳です。そして私には王太子への愛ないんですけど。ここ重要。愛ない。愛ないのごめん。

「むう……しかしだな、おそらくミサキは聖女でほぼ確定で……」
「あ!じゃあじゃあ、ぼく……私が王となってミサキと結婚なんてどうでしょうか!?」

 シーン……

 おい誰か何か言ってあげなよ。王すらも冷たい目で見るとかテリスかわいそ!

 テリスがハイハーイ!ってな感じで挙手して出された提案は、私以外全員からの氷の目で即却下された。おい聖女、お前も氷の目かよ!いじけてテリスが床に指で渦巻き書いてるじゃないか!

「とにかく、まだミサキが聖女と決まったわけではありませんから。決まったらどうするかまた考えるでいいんじゃないですか?私はアンナと結婚しますけど」

 おっふ、すごい熱烈ですね。おっふまさかの熱烈求愛にビックリですわ。

 心の中では突っ込んでたけど、ずっと黙り込んでいた私。
 そんな私を王太子は見やって。とっても優しい笑みを向けてきた。

「というわけだから、アンナ。これからも宜しくね」

 ニ~ッコリと。
 これまで癒しと思ってたその笑みを。

 私は初めて黒いと思ってしまったのだった。

 
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