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47、悪役令嬢と聖女-3
しおりを挟む「────!」
あ~
「────!────!?」
そうか~
「────!!!」
なるほどね~。
私は周囲の雑音が一切耳に入ってこない状況で、全てを理解していた。
そうかそうか、こういう事か。
この世界を作った原作者は──神はそう来たか。
理解して、私は視線を前に向けた。
「──というわけで、聖女暗殺の罪により、公爵令嬢アンナシェリを生涯投獄とする!」
「馬鹿な!!!!」
焦った声で反論するのはベルシュ様だ。
王の力をもってしても、その判決を覆す事のできない。
重大な罪を私は犯した──ということだそうです。
あの日。
ミサキは姿を消した。
国中をくまなく探したが見つからず。
出た結論は──誰かが暗殺して、遺体を消した、というものだった。
いやそこは元の世界に戻ったんだ、とかじゃないの!?
って思ったんだけど。異世界との行き来は不可能。全ては一方通行、なんだそうな。
つまりミサキはこちらの世界に来れても、元の世界に戻る事は出来ない。だから元の世界に戻ったってのはありえない話。
ではどこへ消えたか?
出た結論が、そういうことらしい。
そして真っ先に疑われたのが私ってわけだ。
まあ……そうなるよねえ。
最後に一緒に居たのは私。私の部屋。それは誰もが知る事実。
公爵家に泊まったのは、ベルシュ様ですら知ってる事実だ。ゾルゼンスも。
それと……私とミサキの仲が悪いって報告も上がったらしい。
裁判に王家の力は及ばない。それは国家とは別のものだから。
どれだけベルシュ様が反論しようとも。
ゾルゼンスが異を唱えようとも。
それはけして覆る事のない結果となった。
「くそ!映像記録魔法を施しておけば──!!」
歯噛みして蒼白な顔で悔しがるのはゾルゼンスだ。確かにそうね。でもレディの寝室を盗撮はまずいと思いますので、そこは記録してなくて良かったです。撮ってるよとか言われたらビックリだわ。
それでも何とか必死に食い下がる二人を尻目に、私はどこか他人事のように成り行きを見守っていた。
う~ん、と首を捻る。
これは……どういう事なんだろう?
思い通りにならなかったから?
ゲームを完全に無視した進行に、神が怒ったのか?そして全て終わらせようとしたのだろうか?
ミサキをこの世界から消して。
私も消す。
つまりはリセット?
全てやり直すつもりなんだろうか。
製作者は──神はそんな暴挙に出たってことだろうか?
そんなことしてどうなるの?
時間が戻ったりするんだろうか?
それとも、上手くいかなかった腹いせ───?
とにもかくにも私の理解の範疇を超えた事。
考えても分からないんじゃあ仕方ない。
現実を受け入れよう。
それが私の出した結論だった。
全てやり遂げた。聖女たるミサキは、もう居ない。居た所でなにも出来ない。私が無力化させるのに成功したから。
この世界は原作を脱した。
元よりデスエンド覚悟で挑んだこの勝負。私の勝ちってことでいいんだ。だから投獄くらい大目に見てあげるよ。
ねえ神様。
私、厄介な奴だったでしょ?
天井を仰いで。
私はニカッと笑ったのだった。
「────ん?」
見つめていた天井に。
何か、点が見えるような……?
いや、天井より下?何も無い空間……に、黒い点?
それまで無かったはずの黒い点。それが急に現れて。
それはどんどん広がって点ではなく、穴となり。
そして。
「────ぬあ!?」
最初に手が見えた。広がった穴から、前に突き出された手が出てきて。
次いで、黒い頭が現れた。
そして一気に全身が出て来て────
「えええええ!!??」
それは勢いよく落ちてきたのだった──私の上に!
ドッシーン!
ベタな効果音が似合う状況で、私は意味が分からず重みに耐えていた。
こ、この重みは……!
先日も感じたのと同じ重みに、私は全てを理解した。
今、私の背に乗ってるやつは、やつは……!
「あーもう!なんでいっつも下にいるかなあ!?あんたってあたしのクッションに成りたいわけ!?」
ああ、聞き覚えのある──ありすぎる声に頭痛がしてきた。
「たくもう、あんた胸ないし大したクッション性能ないんだから。いちいち下に居るんじゃないわよ!」
このふざけた憎まれ口も懐かしい。
いや、というかだな。
私はギリっと手に力を入れて。
渾身の力を持って体を起こす!
「ふんぬう!!」
「きゃあ!?」
当然、上に乗ってるやつは落ちるわけだ。ざまあみろ!
「重いわ!あんた太ったんじゃないの!?」
立ち上がって、下に転がってる存在を睨みつける。
すると、その言葉にすぐに反応してそいつも立ち上がって睨みつけてきた。
「なあんですってえ!?この体のどこが太ってるのよ!出るとこ出て引っ込むとこ引っ込んだ完璧ボディを!」
「は!確かに出るとこ出てるよな、この辺とか!」
「ちょっとお腹触んじゃないわよ!少しばかり向こうの世界に戻ったもんで、お菓子食べすぎちゃったのよ!見てなさい、こんなのすぐに引っ込めるんだから!あんたこそ相変わらず全身も胸も貧相ね!」
「うっさいわ!こちとら食べても太らない体質なんじゃい!悔しかったらダイエットせずに貧相体型保ってみろ!どうせお腹以外も、見えないとこにいっぱいお肉ついてんだろうが!?」
「なあんですってえ!?」
「なによ!?」
ギリギリと睨み合ってると。
呆れたような、安堵したような。そんな苦笑が聞こえた。
「やれやれ……きみたちは変わらないねえ」
「騒がしい奴らだね、まったく。まあアンナはこうでなくちゃだけど」
「ふん……投獄されたら魔の国に掻っ攫おうと思っておったのに……計画が台無しだ」
見ると、ベルシュ様にゾルゼンス、ケアミスが居た。
言葉とは裏腹に、優しい笑みを浮かべた三人が。
「きゃあ!相変わらず皆様イケメンで!出迎えてくださったのですか?ミサキ嬉しい!」
「おいこら、まずは私に謝れぶりミサキ!」
「ぶりミサキ言うな、馬鹿アンナ!」
どうしてこうなったか分からない。
けれどミサキは元の世界に戻り。
そしてまたこちらの世界に戻ってきたのだ。
ぎゃいのぎゃいのと私達が言い合ってる後ろで、ベルシュ様が裁判長と神殿の長に歩み寄っていた。
「というわけだ。アンナは無罪、でいいな?」
「「は、はい……」」
事がうまく呑み込めない二人に、裁判を見守っていた観衆はただ呆然とするばかり。
そんな中で私達の声だけが響くのだった。
「くらえ、アンナスペシャル!」
「ふぎゃあああ!!??」
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