ぶりっ子男好き聖女ヒロインが大嫌いなので悪役令嬢やり遂げます!

リオール

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もう一つのエンド~ぶりっこ聖女のお話~(1)

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 トントントンと、テーブルを指で叩く。

 頬杖をつきながら、大きな欠伸が一つ。

 窓の外はとってもいい天気な青空が広がってるのが見えた。

 今日も今日とて国は平和です。





 ──つまり、退屈ってことよ。





「聖女様~、隣町からヘルプ要請来てますよ~」
「妖精?」
「多分『ようせい』違いだと思いますが、助けてくれって言ってきてるんです」
「ヘルプミーか」
「そうそう、助けてミサキ~!って。ほうれん草持って行きますか?」
「いらないわよ!マッチョになってどうすんのよ!あたしはこのナイスなバディのままでいいのよ!」
「へ~へ~そうですか」

 生意気な口をきく小僧は、司祭見習いのボウル。転がしてやろうか!!

 この憎たらしい口調!
 どうにもあの女を思い出すのよね。

 あの女……私がこんな神殿などという、退屈な場所で日々を過ごす羽目になった元凶!

 悪役令嬢アンナシェリ!!

「あ~思い出したらムカついてきた。ちょっと気分転換行ってくるわ」
「え、隣町には行かないんですか?」
「急を要するの?」
「いえ、おじいさんがギックリ腰になったから治して、だそうです」
「んなの、見習い司祭のあんたでも治せるでしょうが!?」
「え~めんどくさい!」

 ふざけんなよ!

 ますますアンナを思い出して、私は神殿を飛び出した。どうせ誰かが行くだろう。

 基本そうなんだ。別に聖女の私が出る必要もない事ばっかり。そんなの対処してたら自分の時間が全然無いっての!──まあ暇を持て余してたんだけど。

 明日は子供達への福祉サービスイベントがあるから。
 遊びに出るなら今日のうち!

 そう考えて、私は呪文を唱えて空へと飛び立つのだった。

 目的地は勿論──公爵家屋敷だ。




※ ※ ※




「退屈なんですけどぉ!?」

 バーンッ!!と音も高らかに扉を開ければ。

 ビックリ眼でコチラを見る女が一人。

 言わずもがな、この部屋の主──アンナシェリだ。

 よく見ると、一人じゃなかった。その腕に抱かれた小さな存在に目をやる。

「授乳中か」
「授乳中だよ出てけ」
「別にいいじゃない、もう終わりなんでしょ?」
「女同士でもデリカシーとかプライバシーとか色々守れ」
「ふん、そっち向いとくからとっととその無い胸を仕舞いなさいよ」
「おま……いつか殺す、絶対殺す」
「それ聞き飽きた」
「お前をいつかなぶりものにしてやるわ!」
「それはちょっと怖い!」

 ぎゃいのぎゃいの言ってるうちに身なりを整えたらしいアンナの声が聞こえてきた。

「は~い、私の可愛い坊や。今日はいい天気だからお外行きましょっか~?」
「キモイわ」
「お前に言われたかねーわ」

 その豹変ぶり凄いわね!?

「というか、もう服着たならそっち向いていいの?」
「良くない、そのまま帰れ」
「帰るか!」

 叫んでンバッと背後を振り返る。

 そこには。

「やだ……天使」

 アンナの事じゃないわよ。あれは悪魔だから。

 天使なのは、アンナの腕に抱かれてキョトンとした目でこちらを見てる赤子。

 そう、アンナは子供を産んで里帰りしてきてるのだ。
 『あの人』と結ばれたアンナは、もうこの公爵家の人間では無いのだけど。里帰りしてきてると聞いてたからね。

「くそう、可愛い……」
「なんだそれ」

 アンナの事は嫌いだが。赤子には何の罪もない。

 そっと顔を覗き込めば、ウトウト眠そうにしてる赤ちゃん。お腹が満たされて、眠くなってきたのだろう。

「不思議なもんよねえ」
「何が?」
「アンナがあの人と結婚して子供産んで……どんな子なのかと思えば、うまいこと二人が融合された顔してるんだもの」
「そうね、それは私も思った」
「──まあ、9割旦那さんの方だけど。良かったねえ、母親に似なくて」
「よし帰れすぐ帰れ今すぐ帰れ」
「え~せめてご飯くらい食べさせてよ」
「ふざけんなよ貴様あ!!」

 起きる起きる、赤ん坊が起きちゃうわよ。
 それはアンナも思ったのか、ハッとなって慌てて口を押さえた。

 が、赤子はよっぽど眠かったのか。
 全く気にしないで熟睡に入った。

 は~~~~……と、二人して大きな溜め息をついた。

「……ベッドに寝かしたら?」
「う~ん、背中スイッチが発動しなきゃいいんだけど」
「何それ」
「赤ちゃんにはね、背中にスイッチがあるのよ。なぜかベッドに寝かすと泣き出すという恐ろしい……」
「なんじゃそりゃ」
「まああんたもそのうち分かる日が……来ない方が平和だな」
「ちょっとそれどういう意味よ!?」

 それはつまりアレか、私には一生独身でいろっていうあれか!?

 叫んだら、赤ん坊がモゾっと動いて。

 二人して血の気が引いた。

 が、そのまま眠り続けて。

 また二人して、大きな溜め息をつくのだった。


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