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もう一つのエンド~ぶりっこ聖女のお話~(2)
しおりを挟む「で。何しに来たのよこの野郎」
「ご挨拶だわね、この野郎」
「とっと帰れよこの野郎」
「お腹が空いたんだよこの野郎」
話が進まないんだよこの野郎!
アンナと会うといっつもこうだ!このノリ、何とかならないの!?
……とは言え、嫁いでからのアンナと会う機会は激減したわけだけど。
「ち、仕方ないわね。私もお腹空いてるし……嫌だけど一緒に食べる?嫌だけど嫌だけど」
「何度も言うな」
渋々と言いながらも、ご飯を用意してくれるのよねえ。ふ、チョロいわ。
「今チョロいとか思ったでしょ?」
「思ってません、これっぽっちも思ってません」
お前はエスパーか!と声に出さずに突っ込んでおく。
そうして通された食堂で。
すぐに用意された料理にパクつく女が二人。
微妙に向かい合わせにならないように、椅子の位置がずらされてるのは何でよ。会話しにくいんですけど!?
「ん~美味しい!」
「神殿の料理は美味しくないの?」
「質素重視だからね。量が少ない。味はまあまあ」
「ふうん。どうでもいいけど食べたら帰りなさいよ」
「やだ」
「なんでやねん」
そこで私は食べるのをやめ、ナイフとフォークを置く。あ、片付けないでよ、まだ食べるんだから!
そして、ダンッ!と握りこぶしをテーブルにぶつけた。
「退屈なのよ!」
「えええ……」
「もうね、退屈で死にそう!」
「死んじゃえば?」
「死ぬか!モノの例えよ!」
「なんでよ、やる事ないの?」
「あるわよ、あるけど……!」
毎日毎日。
普通に司祭たちが治せる程度の怪我やら何やらを、見てくれ診てくれ、そして話を聞いてくれ……。
「雑草抜きをしてたら指切ったって、もうそんなの消毒で済ませよ!」
「ほうほう」
「更にもう二度と雑草生えてこないようにしてくれとか……出来るかい!」
「出来ないのか」
「夫婦喧嘩が激しくなって腕折ったとか、もうそれ訴訟レベルだから!」
「うわ、それ恐いな」
「なのに、仲直りしてラブラブなんです~早くエッチしたいから怪我治してください~とか……知るかあ!死ねボケええぇ!!!」
「うわ、恐っ」
最後のその「恐っ」は私か馬鹿夫婦、どっちに向けて言ったんだ。いや、聞かないでおくけど。
ふと見れば、アンナが顔を手で押さえてプルプル震えてる。
「あんたねえ!笑ってんじゃないわよ!そもそも誰のせいでこうなってると思ってんのよ!?」
全てはあたしを神殿に追いやったあんたのせいでしょうが!?
叫んだら、アンナが手を外してこちらを見てきた。
何それ、真っ赤な顔して涙目になって。って、笑いこらえるのに必死ね、あんた!?
「何笑ってんのよ!?」
「い、いやあ……気の毒だなあと思って」
「全然そう思ってるように聞こえないんですけど!?」
怒って言えば、「いやいやそんな事ないよ」と否定してきたけど。嘘くさいのよあんたは!
そう言えば、ようやく笑いを収めたアンナが私を見る。
「いやほんと、馬鹿にしてるつもりはないよ、感心してるんだから」
「どこがよ!?」
ちっとも、これっぽっちもそう思ってないでしょ!?
「ほんとだよ。だってさ」
何よ。
「ぶりミサキ、ちゃんと仕事してるってことなんでしょ?」
「はあ?そりゃまあ……」
神殿に居る以上はねえ。聖女なんだし。
そりゃやるでしょ。
そう思って首を傾げたらば。
「いや、こんなに真面目にやると思ってなかったのよねえ、私は。どうせすぐに音を上げて逃げ出すと思ってたんだもの」
「そ……」
それは。確かに。
私は別に閉じ込められてるわけでもないし。こうやって自由に出かけられる。
のだが。
神殿所属と決まった時点で、なぜか逃げようとしたこと無いのよね。
言われるまで気付きもしなかった。不思議。
「意外に今の生活気に入ってんじゃない?」
「そ……そうなのかしら……」
「そうそう」
言われて。グラスを手に取って喉を潤して。
考える。
「今の生活を、気に入ってる……」
そうなのかな?だから逃げようとしないのかな?
「まあそうね、それはあるのかも……」
退屈だとは思う。
聖女の仕事は疲れるとも思う。
でも。
今の生活も、悪くないのかもしれない。
「でも!」
「ん?」
「恋はしたい!」
「えええ……今の流れでそうくるか」
「だって女の子だもん!」
「女の子って、20歳はもう女の子って年でも……」
「お姉さまだもの!」
「いやなんか違うと思う」
「ごちゃごちゃうっさいわあ!ちょっとアンナ、誰かいい男紹介しなさいよ!」
「なんで私!?」
「かつて私の恋愛を散々邪魔した責任をとれえぇぇ!!」
このまま生涯独身とかなったら、末代まで祟ってやるわあぁ!!
「い~やあぁぁぁ!」
公爵邸に、アンナの叫びが響き渡るのであった。
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