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もう一つのエンド~ぶりっこ聖女のお話~(7)
しおりを挟む『えええっと、ミサキ──……さま!?どうしたんですか!?』
「ちょっと待てこら、段々『様』が付くまでが長くなってるのはどういう事よ!?」
「言いたくないんだろ、頑張って言ってるんだから許したげな」
「アンナは黙らっしゃい!」
「ひどい!ミサキちゃんがひどい!」
「ミサキ言うな!いやいいんだ、ミサキで合ってるんだ!」
「まともに呼ぶとそういう反応になるのな、ぶりミサキ」
「ぶりミサキって言う……あれ、合ってる?合ってないわ!もおおお!!」
話が進まない!アンナの横やりが全てを邪魔する!
「ええい、アンナは無視だ無視!ちょっとボウル!今、暇?暇よね?暇で暇で仕方なくってミサキちゃんに会いたくて仕方ないでしょ!?」
「いえ、全く、全然、少しもちょっとも、欠片も思い出しても居ませんでしたが?」
「──うん、あんた帰ったら覚悟しなさいよ」
「見習いとはいえ、さすが神官。嘘は駄目絶対」
「アンナうるさい」
「あだっ」
一刀のもとにアンナを黙らせる。言葉通りに手刀をくらわす形で。
「でだね、ボウルきゅん」
『え、きも……うえっほん!ゲホンゴホン!」
「今キモイって言った?キモイって言いかけなかった?ちょっと泣いてもいい?」
「胸は貸さないわよ」
「アンナのツルペタ胸に用はない」
「ツルペタちゃうわ!母乳のおかげでそれなりにそれなりだわ!」
『……お二人とも何の話をしてるんですか。もう通信切っていいですか?』
「切らないで!いい、ボウル!?暇なんだからちょっとこっちに来なさい!あたしの付き人でしょ!助手でしょ!手伝いにきなさい!」
『え~でも……』
「来なかったらモヒカンカットにするからね!」
プツン。
言うだけ言って通信切ってやったわ!
「うわ~ブラック企業だ、パワハラだ~」
「お黙り!こうなったら12歳でもいいからメンズを招集しない事には、やる気スイッチが入んないのよ!」
「どんな仕様だ、そのスイッチは」
「イケメン仕様よ!」
私のブレる事無いイケメンへの渇望は留まることを知らなかった。
んで。
一通り村を見回って、警戒ポイントを調べて。
でもって夕飯食べて。お風呂入って。
「さあ寝るか」
「ちょっとアンナ、なんで寝ようとしてんのよ!」
早々に寝所に向かおうとしたアンナの首根っこを引っ掴んだ。何ちゃっかりパジャマに着替えてんだ貴様。どっから持ってきたのよそれ。
「なんでって、これからは聖女の領分でしょ?私がやる事無いもの」
「あるし!」
「なに?」
「怖いからあたしの側にいることよ!」
「それ私じゃなくても良くね!?」
むしろ村人のメンズに側に居て貰いなさいよ!
そう言われたけど……いやまあ確かにそうなんだけど。
小さな村の若い男性衆が、頑張って武装して見張りを立ててるのだ。
だが、小さな村だけに人数も限られている。
そんな中で、私のそばに居なさいって言うのもなんか憚られるのよね。
「くそうボウルめ、まだか……」
こんな事なら飛んで迎えに行けば良かった。
今更ながらの後悔は、さすがにいつ魔物がやって来るかも分からない状況では、もう実行する事も出来ない。
「たく、仕方ないわねえ……」
ブツブツ言いながらもアンナは着替えて憑いて来てくれるようだった。……何か字がおかしいな、付いてくる憑いてくる……アンナならどっちでもいけるか。
「私はお化けか。帰るわよ」
「今夜は帰さない」
「それイケメンに言われたい台詞」
「アンナには旦那がいるでしょ!あたしが言われたいわよ!」
ぎゃいのぎゃいの言いながら村を歩くと目立つなあ。ちらちら見られてる……。
見れば老人・女性・子供はみんな家に入ってるようで、外で見張りや見回りをしてるのは大人の男性ばかりだった。まあ当然だけど。
松明を絶やすことなく、パチパチと火の爆ぜる音だけが夜の静けさの中に響いた。
人は居るのに。
誰も言葉を発する事はない。
知らず私にも緊張感が湧いてきた。
「さあて」
ギュッと、長い黒髪を髪紐で縛り上げて。
目を閉じて、集中する。そうすると、自分の中にある聖力をハッキリと感じた。
ゆっくりと目を開き、村の外へと目をやって……感じる、闇に蠢く気配……そちらを向いてスッと手を伸ばす。
「来るなら来なさい。──聖女様が直々に相手してあげるわ」
そうして、私は確かに聖女の笑みを浮かべるのだった。
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