引退したオジサン勇者に子供ができました。いきなり「パパ」と言われても!?

リオール

文字の大きさ
12 / 44
第二章〜娘との旅路

8、

しおりを挟む
 
 よっこらせと御者の息子とおぼしき成人男性を、馬に乗せる。心なしか馬が心配そうにしている様子から、確かに間違いなく御者の息子なのだろう。
 落ちないように紐で縛ってから、さてととシャティアを振り返る。

「歩けるか?」
「うん」

 別に怪我してないもんな。とはいえ、結構な距離だ。俺だけなら早く行けるが、子供の足だと時間がかかるな。
 面倒だなと思っていたら、「私に乗る?」という声が。
 見れば魔族の女が自分を指さしていた。

「え、いや、そりゃ乗りたいけど、こんな真っ昼間のそれも外で? それ以前に子供の前ではちと刺激が……いでえっ!!」

 美女に「私に乗る?」とか言われたら、そりゃ想像するよな。想像するよなあ!?
 思わずモジモジしながら言ったら女に殴られた。「キモイ!」の言葉つきで。なんで!?

 涙目になって頭をさすっていたら、ふと視線を感じて下を見……たら、すっごい冷たい目でシャティアが睨んでいたから、慌てて上を見ました、まる。

「そういう意味じゃないわよ、このスケベ親父!」
「スケ……じゃあどういう意味だよ!?」
「こういう意味よ!」

 そんなに怒らんでも、と理不尽に不満を漏らせば、目の前で妖艶な美女が姿を変えた。その途中のグロさは置いておくとして、完成系は見るも感動、あっという間に目の前には美しき白馬が一頭。「黒い馬じゃないんだな」と言えば、「私は白が好きなの」と馬がしゃべる。さいで。

「すげえな……魔族って全員変身できるのか?」
「稀にだけど居るわよ。ウサギなんかに変身できる子も居るわ」
「そりゃ可愛いけど……意味あるのか?」
「空腹時に人間の家に行って、可愛い子ぶりっ子したら、野菜が貰えたってさ」
「魔族のプライドよ」
「プライドより食べ物でしょ」

 そりゃそうですけどね。なんか真面目に話してるけど、内容はすっごいくだらねえなと思っていたら、シャティアの体が浮いた。ギョッとしていたら、スッと馬になった魔族の背に乗る。

「ああ、その『乗る』ね」
「どの『乗る』を想像したのよ」
「……ご想像にお任せします」

 これ以上いったら墓穴を掘りそうで、そこは濁す。でもいいよな、白馬にまたがる美少女とか。シャティアは黙っていれば文句なしに美少女なんだよ。さすが俺の遺伝子。母親候補二人も美人だもんなあ。

「俺も乗っていい? 白馬の王子様を実演して……」
「歩け」

 言って、白馬はカッポカッポと歩き出した。待って冗談、嘘だから乗せて。
 しかし俺を無視して白馬は早足で歩き、御者のオッサンの馬もなぜか早足。
 その後を「待ってくれよおお!」と半泣き状態で追いかける俺であった。40歳に全力疾走はキツイ!!!!

 街に着く頃には、苦しくて俺の顔面崩壊してた。

「ぜはー! ぜはー!」
「うっわ、汗だくのオッサンキモイ」
「ぜはー! み、みず……」
「ミミズなら土の中に」

 そういうのいいから! 白馬はしゃべらず黙ってろ、そして頼むから水くれ!
 声にならぬ悲鳴を上げたら、シャティアが水筒を渡してくれた。俺の娘、マジ天使!

「……って、一口しか残ってないし!」
「飲んじゃった」

 訂正、俺の娘、マジ小悪魔。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

処理中です...