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しおりを挟む「す、素晴らしい……!」
「は?」
しばらく呆けていたテルディスだったが。
ハッと我に返ったように叫んで。
「素晴らしいぞ、リーナ!」
「きゃあ!?」
逃げる間もなく、私の両腕を掴むのだった!
「そうか、聖女か、リーナは本物の聖女……数百年ぶりに、本物の聖女が……素晴らしい、素晴らしいぞ!」
「何を……」
「これで私の地位も安泰だ!お前を妃にすれば国だけではない、世界を……そうだ、この世界全てを我が手中に収めることが出来るだろう!!」
「はあ!?」
「むー!?」
私とロアラの叫びが重なった。
何を、何を言ってるのだこの男は……。
言うに事欠いて、私を妃に?まだそんな馬鹿げたことを言うのか!!
頭に血が上りそうになったその時だった。
「……リーナから汚い手を離せ、クズ野郎」
低い声がその場を支配した。
その直後。
ゴキリと嫌な音が響いて。
「うっぎゃああああああ!?」
テルディスの悲鳴が響き渡るのだった。
「腕が!私の腕がああ!」
スピニスが力を振るったのだ。
何も無い空中に手をかざしただけで、テルディスの両腕の骨は無残にも砕け散ったのだ。
「大丈夫かい、リーナ?」
「ええスピニス。ありがとう……」
慌てた様子で私に駆け寄って来たスピニスが心配そうに顔を覗き込んで。ギュッと抱きしめてくれた。
ああ、気持ち悪い男に触られた箇所が、浄化されていくようだ……。
「もう治さなくていいからね?」
「もちろん」
スピニスの言葉にニッコリと笑みをかえした。
バンッ!!
その時だった。不意に、扉が開いたのだ。
「あ、結界解いたんだった」
何でもないようにスピニスが言う。そう、私も感知して分かっていたけれど、結界はとうに無くなっていたのだ。
そうすれば当然響く、テルディス達の悲鳴。
当たり前のように、城内を警護してる騎士たちが大慌てで入って来たのだ。
「テルディス様、何事ですか!?……って、なんだこれは!?」
本当に何事だ!?というように、部屋の中の光景に青ざめる騎士たち。
その目がテルディスと聖女の状況を確認し。
そして私とスピニスへと視線が集中した。
「貴様は……追放された魔女!?なぜここに!?そして貴様は──」
「殺せ!侵入者だ!」
状況が理解出来ない騎士に向かって、テルディスが叫んだ。それが合図。
よく分からなくても主君の命に従うが騎士。
彼らは純粋に騎士だった。
考えるより先に抜き放たれる無数の剣。
彼らは間髪置かずに斬りかかって来た──!
「やれやれ」
だがそれだけ。
スピニスがため息をつく、それだけ。
それだけで全ては終わった。
壁から生えた蔦がその剣を絡めとり、騎士を絡めとり。
「うわあああ!?」
あっという間に、騎士たちもまた、ロアラと同じ状況に──即ちグルグル巻きにされてしまったのだった。
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