妹は聖女に、追放された私は魔女になりました

リオール

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 視線を戻せば、涙を流しながら呆然とするロアラが目に入った。

「あ、あ……お父様、お母様……そんな……」

 私はそんな彼女を眼下に見下ろす。

「可哀そうなロアラ、憐れな妹」

 そう言えば、キッと射抜くような目を向けてきた。

「こ、の……魔女!よくも、よくも……!」

 呪うような目だ。実際私を呪い殺したいくらいに憎いんだろう。
 でも彼女は何か勘違いしてるようだ。その間違いを私は正してあげなければいけない。それが姉としての務め。

「ロアラ、よく考えなさい。どうしてこうなったと思う?全てはお父様の不義理が始まりかもしれない。それでも私は耐えた。貴方達の行いを必死に耐えたわ。けれど全てを破滅させたのは誰?破滅のキッカケを作ったのは誰?……貴女でしょ、ロアラ」

 忘れてもらっては困るというもの。
 私を魔女として追放したのはロアラとテルディスの策略によるものだ。

 私は王太子妃として平穏に暮らせたらそれで良かったのに。

 何もかもを私から奪おうとしたロアラが。
 目先の欲しか見えなかったテルディスが。

 元凶は彼らだという事を理解してるのだろうか。

「ふっざけんな!この糞女……!」

 どうやら理解できてないようだ。

 その台詞が、どれだけ私の、民衆の神経を逆なでするかを。全く分かってないロアラに、私は苦笑するしかない。

 当然のように。
 ロアラは民衆に囲まれた。

「この糞アマ!聖女様になんて口ききやがる!」
「そうだ、謝れ!」
「これ以上魔女様の逆鱗に触れるような事言ったら承知しないよ!」
「いや、この女はもう駄目だ。これ以上下手な事言って魔女様が滅亡を祈っちまったら取り返しがつかねえ」

 完全に目が座ってる連中に囲まれて、流石のロアラの顔も青ざめる。

「な、何を……」

 これから何が起こるのか。
 その身に何が起きるのか。

 分かっているのか居ないのか。
 だが、その青ざめた顔が何かを察してる事を意味する。

 ジリジリと血眼になった人々が近づくのに恐怖し。

「て、テルディス!」

 救いを求めるのは、唯一同じ立場の存在。

 だがそこにテルディスは居なかった。
 そこには威厳も何もなくなった、ただの年老いた男──国王ただ一人。

 それも民衆の怒りの矛先が向けられて、虫の息だ。

 テルディスは!?と周囲に視線を巡らせるもその姿はどこにもなかった。

「ああそう言えば、テルディスは先ほどロープに繋がれた状態でどこかへ引きずられて行きましたよ。察するに市中引き回しといったところでしょうか」

 民衆の叫びで聞こえてなかったようだが、ちょっと前に視界の隅にそれが見えたのを思い出した。

「──ひ!」

 喉の奥から引きつるような悲鳴を上げて、ロアラはその場にへたり込んだ。

 そしてようやく己の立場が理解出来たのだろう。

 溢れる涙、そして涎。

「あ、ああ……助け……」

 鋤や鍬に包丁、木の棒まで……各々用意できるギリギリ武器と呼べる物を持った、民衆を目の前にして。
 ロアラが出来るのは、最後の望みへの懇願だけだった。

 ロアラは血走った目で私を見上げた。ボロボロと涙しながら。

「助け……助けてお姉さま!私が悪かったわ、ごめんなさい、ごめんなさい!謝るから……だから助けてよお姉さま!」

 数年とはいえ共に暮らした存在。
 半分とは言え血を分けた妹。

 それが涙ながらに助命を懇願する。

 その様を見ても、私の胸には──

「凄いわ、何も感じない」

 何の感情も生まれはしなかった。

 可哀そうになんて思わない。
 けれどいい気味とも思わない。

 ただただ無、だ。

「ロアラ、私は貴女に何も感じないわ」

 聖女の自分も。
 魔女としての自分も。

「何も感じないということは、この世界に貴女は要らない存在だってことね」

 不要な存在。
 先ほどの両親同様に。

「貴女は要らないの、ロアラ」

 だからさよなら。

 最後の一言を告げると同時。

 もう何も言えずに見開いた目を呆然と向けていたロアラ。

 それに振り下ろされる鍬。

 そして。

 少しの騒動の後、静寂は訪れたのだ。

 全てが終わった静寂が。

「ああ、終わった……そして始まるわ」

 私の呟きと同時に。

 ずっと黙って側に居てくれた存在が。
 魔王スピニスが。

 私をそっと抱きしめてくれた──


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