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40、一度は言ってみたい、そんなセリフ
しおりを挟む「とりあえず降ろしていただけませんかね」
「嫌だと言ったら?」
「暴れます」
ビチビチッと打ち上げられた魚のごとく、暴れるよ!
と暴れる準備に入ろうとしたらアッサリ降ろされた。あら素直。
「願いを聞いてやったのだから、今度は我の願いを聞け」
お前が勝手にお姫様抱っこするから、降ろせと言っただけだろうが。
なのに「降ろせ」というのが私の願い事で、聞いて「やった」とかどうなのよ。
「どうせ魔王に願うなら、もっと壮大スペクタクルな願いをする」
「たとえば?」
「え」
まさか聞かれるとは思ってなかったわ。
う~ん、なんだろうな……
しばし考えて、あ、と思いついたことを言ってみる。
「まずはヘルンドルにはまともになって欲しい?」
「私はまともだ!超絶まともだ!」
「メンテリオスには主人を敬う心を持って欲しい?」
「これ以上ないってくらい敬ってますけど」
「ムサシムには二度とマッチョになって欲しくない?」
「あの肉体美を理解できないと!」
三者三様に願い事に対してツッコミしてくんなよ。
あとメンテリオス、お前絶対敬ってないから。私のこと主人とすら思ってないだろうが。
「あ、あとチェイシーくらいの胸欲しい」
「あっても邪魔なだけよ」
冷静即答のチェイシー。
それ持ってる者だけが言える台詞だから!
「あっても邪魔なだけ、とか一度でいいから言ってみたい!」
これが最大級の願いなんじゃないだろうか!!!!
「控えめなのも悪くないと思うぞ」
フォローしてるつもりか。
それフォローしてるつもりか貴様!
魔王の分際で、ジロジロ人の胸見るんじゃねえ!
「魔王滅びろ」
「なぜだ」
どうせこんな願い事かなうわけないんだ、え~え~分かってますよそんなこたあ。
「随分やさぐれてるな」
「そりゃナインズなもんで」
前世の私も胸が無く。
そういえば胸の無い女子同士で「ナインズ同盟」組んでたっけな。コミュ障な私の唯一の同士だったわ、あれ。
「ふむ……肉体変化も出来なくはないが」
「え、出来るの?」
「最優先は他の願い事だな」
「いや、最優先はナインズの永遠の夢を……」
「というわけで、貴様らは消えろ」
「話聞けや!!!!」
サラッと肉体変化できるとか言ってんのに、話をそらすな!
私の願いを聞いてよ、そこの魔法使い!
「我は魔王であって魔法使いではない」
「どっちでもいいわ!」
血管切れそうに必死な私を「うわあ、引くほど本気で胸欲しがってるわ、あの子……」とか白い目で見るのやめてチェイシー。その胸に縋りついて泣きたくなるから!
そのままがいいですわよ~とシュリエッタ様やアミュキューラが言ってくれるけど。嫌だい嫌だい!せめて夏だけでも大きくなりたいやい!
と半泣きになってる私を尻目に。
魔王と残念イケメントリオ(と命名しよう)は臨戦態勢に入っていた。。
なんだろうこれ。
別に私は奴らを滅ぼせと願ってはいないんだが。
話ずれてない?
ピリッと緊張の空気がその場を支配した。
その時。
「あ、本気でバトルするなら私が黙ってはいないからね」
緊張感をものともせず。
ニコニコと優し気な笑顔で発言したのはキュリアス様だった。
が、その場にいる誰もが理解した。
問題起こしたら、即座にキュリアス様が出てくると。
本気の──おそらくこの場に居る誰も敵わない実力の持ち主である、キュリアス様の怒りの鉄拳が飛んでくると。
野生動物的直感で、全員が理解した。
そしてフッと緊張感が消失する。
魔王を含めた男四人が、王太子キュリアスに屈したのである。
──キュリアス様、やっべえ!
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