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第一部
47、僕だってお役に立ちましゅよ!? ※アーサー視点
しおりを挟む「メリッサ様とノンナリエの行き先が分かりました」
部屋に入ってきた執事のアラスは、言って「ザカルディアです」と続けた。
それに対して返事をする者はいない。室内に嫌な沈黙が横たわる。
ややあって、クラウド伯父上が「ザカルディア……」と、小さな声で言う。
ラウルド父ちゃんも難しい顔をしている。
でも二人はそれ以上何も言わずに、また沈黙だけが流れた。
なので俺は首をかしげながら「ザカルディアって?」と聞く。すると二人は同時に俺のことを見るが、その顔はやっぱり難しい顔つきだ。
「ザカルディアってのはね……」
ラウルド父ちゃんが重たい口を開いて説明してくれた。
「人間世界の最果ての地、人の世界の終わり、魔への入口……色々呼び名があるけれど、つまるところは魔族の世界との境界にある村なんだ」
「ま、魔族!?」
色々とファンタジー展開に驚きの連続だったが、ついに魔族も出たか!
目を丸くする俺に、ラウルド父ちゃんは深々とため息をついた。
額に手を当てて天井を仰ぎ見るクラウド伯父上もまた、ため息つきたい気分なのだろうな。
「どうしてメリッサママは、しょんなところに連れて行かれたんでしゅか?」
「そりゃまあ、そんな村が安全地帯なはずないだろう?」
ラウルド父ちゃんに困った顔を向けられて、俺は首をかしげる。
「そりゃ魔族との境界なんて、危ないと思いましゅけど……いわゆる国境警備隊とかは? パパもしょーいったお仕事なんれしょ?」
「パパは魔族ではなく、人……隣国相手なんだけどね。まあ我が国は、防衛に力を入れているから、そう言ったことは基本国から派遣された貴族や騎士がやる。でもどこの国もそうとは限らないんだよ」
「ん? ザカルディアって、違う国なの?」
まったくといってよいほど、この世界の地理に詳しくない俺。ちなみに前世でも日本地図は全然頭に入ってませんでした。自分が住む県と北海道沖縄くらいしか分からん。
「隣国なんてもんじゃないよ、我が国からいくつもの国を経た、かなり遠い場所。まさに最果ての地だよ」
「しょんな遠くに、こんな短時間で移動しちゃの?」
「そりゃまあ、ノンナリエには闇魔法使いがいるからなあ。なにか裏手段使ったんじゃなかろうか」
「にゃるほど……」
あの闇魔法は、どこへでも自由に行き来できるのだろうか? だとしたら非常に厄介だ。どこでもドアレベルではないか。だがきっと色々制限もあるのだろうな、そんな都合のいい魔法や道具がゴロゴロしてたら、この世界はとっくに混乱に陥っているはずだから。
とりあえず、ノンナリエはずるい手を使えるが、こちらはそうもいかないということは分かった。
「パパたちも移動をショートカットできりゅの?」
「しょーとかっと? 瞬間移動のことかい? うーん、さすがにそんな高等魔法を使える存在はいないなあ」
移動魔法自体は、いにしえより伝え聞くらしいが、現代で使いこなせる者は居ないと聞く。つまりあの闇魔法使いは、現代において規格外ってわけだ。
また厄介な相手がいるものだ。
「じゃあ、早く出発しないと大変でしゅよね?」
「そうだな。すぐに出立の準備をしよう」
「え、兄さんは仕事があるだろう? 俺が行くよ」
「ラウルドのほうが重要な仕事があるだろ。もう休暇も終わりのはずだ、お前はムッシュールディに戻れ」
「しかし!」
「私は大丈夫だ。緊急の仕事は全て指示を出したり終わらせた、急ぎでないものもこの先一ヶ月分のしごとは終えた。お前が気にすることはない、私がメリッサを助けに向かう」
困った顔のラウルド父ちゃん。
だがクラウド伯父上の決意は固い。そもそも彼のメリッサに対する思いの強さを考えれば、行くなとは誰も言えないだろう。
そしてラウルド父ちゃんの仕事もまた、大事なものであることは父ちゃん自身よく理解している。
つまりは、メリッサの救出に向かえるのはクラウド伯父だけってこと。
苦い顔をしながら、また深々とため息をつき、ラウルド父ちゃんはまっすぐにクラウド伯父を見た。
「分かりました。義姉上のこと、頼みます」
「言われずとも」
ガッシと握手する二人。う~ん、兄弟っていいよなあ。
ちょっと感動しつつ、俺は手を挙げた。
「僕も一緒に行きましゅ!」
「「お前はダメだ」」
仲良く兄弟でハモんなよ!
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