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しおりを挟む「やらんぞ」
「何をですか」
「バルバラはお前にはやらんぞ」
「父親でもないくせに」
「父親が許しても私が許さん。バルバラの幸せは私が守る!」
伯父様あぁぁ!ななな、何を言ってるんですか!
そんなにオーバン様に顔近づけて睨みきかさなくていいですから!
私の恋心に気付いてしまったのかもしれませんが、余計なことしなくていいですから!
何よりオーバン様に失礼です!
これは私の勝手な恋心。片想い。
婚約者が居なくても引く手あまたなオーバン様が、私なぞを相手にするはずがないことは百も承知!
恥ずかしいからやめてぇぇ……!
そんな私の心の叫びなどお構いなしに、伯父様は念押しするのだった。
「絶対!やらん!」
その言葉に対してのオーバン様の反応はといえば……ニヤリと笑みを浮かべただけだった。その表情の意味するところはなんですか!?
知りたいような知りたくないような。恋って難しいなと痛感したのでした。
※ ※ ※
「騎士団の若手で良ければ、警備隊の訓練をお手伝いさせていただきますよ」
「唐突な話の振りだな」
「このままではいつまでも帰れないと思ったまでです」
いきなりの話の転換に呆気にとられてしまったが、そうだ、オーバン様は仕事で来られたのだ、邪魔してはいけない。
先ほどの『俺も協力させて欲しい。貴女の名誉回復を』て発言は気になるところだけど、まずはお仕事を進めていただこう。
私は一歩引いて、おとなしく話を聞くのだった。
伯父様も用件は早く済ませようと思ったのか、おもむろにオーバン様が差し出した書類に目を通すのだった。
「そうだな。とっとと終わらせて帰れ」
「白紙にしてもいいんですよ」
「冗談だ」
「目がマジでしたけどね」
「冗談だ。冗談と書いてマジと読むのだ」
「そんな読み方ありません」
なんだろうなあ。
イケメン騎士に50近くのナイスミドルな公爵。
二人並んでる姿は眼福ものなのに。
会話が物凄く残念なのはなぜだ。
「これがその若手のリストか?」
「ええ、白騎士団を始め、赤青からも数名。日替わりで担当します」
「期間は?」
「状況によりますが、とりあえず一ヶ月」
「一ヶ月でうちの警備隊を強化できるか?」
「我が王国騎士団を舐めて貰っては困ります」
「そんな汚い事はせん」
「若手とは言っても厳しい試験を突破した精鋭です。彼らが本気で稽古をつければ、そこらの野盗・魔物など相手にならないくらいの強者揃いな警備隊が出来上がりますよ」
サラッと伯父様のボケをかわすなあ。騎士だけに防御力高いってか。
ボーッと聞きながらそんな事を考えていたけど。
内容を理解して、黙ってられないのが仕事女の悲しい性なのです。
「警備隊の強化ですか?」
つい口に出てしまった。
伯父様とオーバン様がこちらを見る。
あ、お仕事の邪魔をしてしまった、と慌てて口を押さえるも、出てしまったものを引っ込める事はもう出来なかった。
「ご、ごめんなさい」
「いや構わんよ。バルバラ、気になるのか?」
伯父様が優しく言ってくださったので、申し訳なく思いながらも私は思ってる事を問うた。
「王国騎士団の方が、警備隊強化をしてくださるんですか?」
そんな制度があるとは知らなかった。
正直、我が侯爵領土内の警備隊も心もとないのが現状だったのだ。費用はかかるが、外部からでももう少し実力のある者を雇った方がいいのだろうかと悩んでいたのだ。
「強化したいのですか?」
オーバン様の問いに、私は力強く頷いた。
「以前視察の時に……もう少し、強化が必要と感じました。特に大きな街で。今のままでは領民は不安だと思ったんです」
でもどうすれば良いのか……そんなに予算を回せるわけでもない。だが放置するわけにもいかない。ではどの財源から回せば良いか……考えても妙案が浮かばず困り果てていたのだった。
そう言えば、少し驚いた顔で見られてしまった。なんだろう、おかしなこと言ったかな?
「令嬢自ら視察に行かれてるのですか?」
「え、そうですけど」
それが何か?
首を傾げて問えば、暫しの沈黙の後。
フッとまた笑みを浮かべるのだった。──あまり私の心臓に刺激与えないでいただけますか、萌え死にます。
「本来はこういった事はしてないのですが、最近平和なのと──」
「なのと?」
「──公爵があまりにしつこいので鬱陶しくなったから、仕方なくなんです」
「鬱陶しいって!!」
最後の叫びは当然伯父様です。また泣いて鼻水流す伯父様を無視し、オーバン様は私の目の前に立つのだった。
「?」
「見学してみますか?」
「え?」
何だろうと見上げる私に、そうオーバン様は提案する。
「一度我が騎士団の訓練風景をご覧になればいい。その上で、そちらの領地の警備隊に訓練させるかお考えになってはいかがでしょうか?」
その提案に、否やがあろうか。
父と姉をどうにかしなければと思いつつも。
結局領地の事を第一に考えてしまう自分は、本当に仕事人間だと内心ため息をつく。
それでもオーバン様と一緒に行動できる事を、ただ単純に嬉しく思うのだった。
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