姉は私を虐げたい。私は姉を●●したい

リオール

文字の大きさ
11 / 16

10、私は姉が恐ろしい

しおりを挟む
 
 
 スタスタと姉が近づいてくる。
 その顔は無表情で、美しいからこそ逆にゾッとする。

 言葉を失って、その冷たい美しさに見入ってしまう。

 スッとその顔が近づいてきた。私の目の前に、氷のような美しさを持った姉の顔。

「私が何をしてると思うの?」
「で、ですから、私への嫌がらせの指示を……」
「私が?お前への嫌がらせの指示を?」
「……お姉様の指示、なのですか?」

 そうとしか考えられない。
 けれど、そうでないと信じたい。

 私の心は混乱していた。

 そんな私の心を見透かすようにジッと私を無言で見つめた後。
 フッと顔を離して、姉は笑みを浮かべた。

「なるほどねえ……お前は嫌がらせを受けてるのね」

 まるで知らなかったとでも言うような言い草だ。
 私は信じても良いのだろうか。

 そう、思った瞬間。

 ニタリと姉の顔が歪んだ笑みを浮かべた。

「良かったわねえ」
「──!!」

 その言葉に私は絶句する。

 良かった?
 何が?
 私が虐められてる事が?

「お姉様……」
「姉を疑うなんて失礼な妹だこと。腹が立つわ、出て行って頂戴」

 どう見ても楽しそうに、愉快気に笑い続けながら。
 けれど有無を言わさず姉は私を部屋から追い出すのだった。

 バタンと乱暴に閉められた扉。
 ただただ私は呆然とそれを見つめることしか出来なかった。



* * *



「マリナが君を虐めてると勘違いして責めたんだって?」

 翌日。
 実に数ヶ月ぶりに会った王太子は、会うや否やそう言って来るのだった。

 その顔は不機嫌さに彩られていた。

 突然の屋敷への訪問。
 嬉しくて浮足立っていた気分は、あっという間に地の底に沈む。

「ルーカス様、それは……」
「その怪我は?階段から落ちたんだって?」
「え、あ、はい……」

 説明しようと口を開いたが、それを遮るように問われた。それに答えないわけにもいかない。

「まさか突き落とされたとか言うんじゃないよね?」
「それは……」

 実際、誰かに押されたのだ。それは間違いない。
 だが誰かが見ていたという証言はない。少なくとも、犯人グループ以外の誰かがあそこにいたと思えない。姉はそんなヘマをしないだろう。

「マリナがやったと?」
「分かりません」

 違います。
 そう言うべきなのかもしれない。

 だけど、私は思わず言ってしまった。分かりませんと。それはつまり、姉かもしれないと思ってる事を示唆するものだ。

 その言葉に、ますます王太子の目が細められ、険しい目つきになる。

 ……ルーカス様の、こんな恐い顔を私は見たことが無かった。

 ほとんど会えなかった一年。
 そしてこの一ヶ月。

 彼にどういった心境の変化があったのか。

 考える事が恐ろしかった。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

近すぎて見えない物

あんど もあ
ファンタジー
エルリック王子と一夜を共にした男爵令嬢。エルリックの婚約者シルビアが、優しく彼女に言った一言とは。

そのご令嬢、婚約破棄されました。

玉響なつめ
恋愛
学校内で呼び出されたアルシャンティ・バーナード侯爵令嬢は婚約者の姿を見て「きたな」と思った。 婚約者であるレオナルド・ディルファはただ頭を下げ、「すまない」といった。 その傍らには見るも愛らしい男爵令嬢の姿がある。 よくある婚約破棄の、一幕。 ※小説家になろう にも掲載しています。

私は私で幸せになりますので

あんど もあ
ファンタジー
子爵家令嬢オーレリーの両親は、六歳年下の可憐で病弱なクラリスにかかりっきりだった。 ある日、クラリスが「オーレリーが池に落ちる夢を見た」と予言をした。 それから三年。今日オーレリーは、クラリスの予言に従い、北の果ての領地に住む伯爵令息と結婚する。 最後にオーレリーが皆に告げた真実とは。

ここへ何をしに来たの?

恋愛
フェルマ王立学園での卒業記念パーティ。 「クリストフ・グランジュ様!」 凛とした声が響き渡り……。 ※小説になろう、カクヨム、pixivにも同じものを投稿しています。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】ご安心を、問題ありません。

るるらら
恋愛
婚約破棄されてしまった。 はい、何も問題ありません。 ------------ 公爵家の娘さんと王子様の話。 オマケ以降は旦那さんとの話。

処理中です...