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裏4-3、国にざまぁ(3)
「ひ!」
一瞬で怯むモリア。情けない。あと王太子、モリアの背に隠れるなよ。どんだけ情けないんだ。
だが王太子と違ってまだ威厳を保つ人物が一人。
「待て、シュタウトの王子よ!息子の言う事はもっともだ、このような狼藉が許されると思うてか!?」
国王だった。
王は言葉を続ける。
「これは個人の問題ではない、王家──いや、国の問題ぞ!もし今その娘を連れ去るつもりなら、私は騎士団に命じてそなたを止める。命奪ってもな!もし逃げおおせたとしても……我が国はシュタウトに戦を仕掛けるぞ!!」
それでもいいのか!
至極もっともな意見だ。
この場において、誰よりも場違いで問題行動を起こしてるのは──アーロン王子だから。
だからこそ、王の叫びが部屋をビリビリと震わせ、この場に居る者全てを震撼させた。
戦争。
もしそうなれば、互いにただでは済まない。
それ程のリスクを冒してまで、私を連れ出す理由なんて……きっと無い。
私は慌ててその手を振りほどこうとした。だって戦争なんて。罪の無い人々が大勢死んでしまう。
正直ボランジュ国に関してはどうでもいいけれど、シュタウトはそうもいかない。何も知らない国の人を不幸にするなんて……そんなの耐えられない。
だから私は振りほどこうとしたんだ。
だけど、それは拒まれる。
強い力で王子に手を握られて。
まるで逃げようとするのが分かっていたかのようなタイミングで、強く。
「戦だって?」
そして冷たい声で、静かにアーロン王子は言う。
「構わないさ、別に戦になったって。こんな腐りきった国、滅ぼしてやる」
「──は!随分と強気な発言だな!だが光の神に祝福された我が国が負けると思うてか!」
「シュタウトも闇の神に祝福されてるさ」
「笑わせるな!光あってこその闇!光に闇が勝てるものか!!」
「さてどうかな?」
あくまで光の国が強いと信じて疑わない国王。
だがアーロン王子は余裕な態度を崩さなかった。
そして目をそばにいた人物に──司祭へと向けるのだった。
ビクリと司祭の体が震える。
それを可笑しそうに目を細めて見て。
そして王子は問う。
「神殿では、神の声が聞こえなくなってどれくらいだ?」
「──!!」
その言葉に。
皆が固まった。
「な、何を……」
「神の声が聞こえなくなったのだろう?いつからだ?」
光の神殿には、神の声が聞こえる者が数名居る。そしてその声こそがこの国が祝福されてる証。
だが……
「き、聞こえなくなっただと?」
呟くように問うたのは、父だった。居たっけ、忘れてたわ。
「おい司祭!今のは本当か!?いや……そんなわけない!そんなわけないのだろう!?」
神の声が聞こえなくなる。
それはつまり、神の祝福が無くなった事の証となる。
神に見捨てられた事になってしまうのだ。
そんな事があっていいわけがない。
そんな事が許されるはずもない。
「司祭!答えよ!」
王の問い詰めに、ビクリと体を震わせた司祭だが。
真っ青な顔のまま俯き、ボソボソと消え入りそうな声を絞り出すのだった。
「……き、聞こえなくなりました……」
「は!?なんだと!?」
「もう何年も!神の声を聞いた者はおりません!!!!」
やけくそのように司祭は叫び。
ガックリと床に崩れ落ちるのだった。
「そんな馬鹿な!」
「本当なのです。最後に聞いたのはもう何年も前のこと……」
「最後の言葉はなんだったのだ!?」
「たしか……『終わりだ』だったかと……」
「なんだと!?なぜそれを報告しなかった!!」
「何が終わりなのか分からなかったのです!た、大した事では無いと思っていたら、それきりお声を聞く事がなく……けれどもしかしたら神の気まぐれなのではないかと。またいつかお聞かせいただけると信じて我ら……!!」
「この愚か者があ!!」
王が司祭を殴る音が響く。嫌な音だ。
「王よ、神の声が聞こえなくなったということは、まさか……!」
「うろたえるな!まだそうと決まったわけではない!」
公爵家当主の父と。
国王。
この国のトップに座する二人は蒼白になりながらも、まだ望みを捨てては居なかった。
王はギッとアーロン王子を睨みつけた。
「神の声が聞こえないからなんだ!この国は未だに豊かで潤っている!そして何より美しい髪色の者が生まれ続けているではないか!!」
確かにそうだ。
神の声が聞こえなくなって数年。
だけどこの国は衰える事を知らない。
光り輝いている。
だが、王の言葉に対して、またも王子は鼻で笑うのだった。
「そうだな。だがもう終わりだ。事の始まりは恐らく、大昔の王女監禁。だが……全ての終わりのきっかけはきっとミレナ嬢だったのだろうな」
「私?」
突然出た私の名前にギョッとする。
全ての終わりが私のせい?
私そんな大それたことした覚え無いのですが……?
驚いて王子の顔を見れば、優しい目でこちらを見ていた。いや照れるな。──って、それどころじゃないし。
「闇の国の王女を虐げ、その血を濃く受け継いだミレナ嬢を虐げ……闇の神の怒りを買った」
「そんなもの……!光の神に祝福された我が国にとって大した事では……!!」
「大したことなんだよ」
まだ理解出来ないのか。
そう言いたげな顔で、アーロン王子は言葉を続けた。
「司祭よ、お前は知ってるだろう?光の神と闇の神の関係を」
その言葉に、声をかけられた司祭はビクリと体を震わせた。
二つの神の関係性?
対となる神様達はとても仲が良い……とかなのかしら?
そう思って首を傾げたら、司祭は小さな声で告げた。
「二人の神は……恋仲であること、ですか……?」
その言葉に、皆が息を呑んだ。
仲がいいとかいうレベルじゃないね!
まさかの恋仲!
神様に性別あるの?疑問に思うとこそこじゃないか?
「そうだ。闇の神はこの国の仕打ちに大層心を痛めておられる。そしてそんな神の姿を見て、光の神は激怒したのだ。そしてついに祝福を止めると告げたのだ」
それが最後の言葉『終わりだ』というものですか。
「この数年は、まだ祝福の名残でもってたようだが……良かったな、遂に本当の終わりがくるぞ」
「何を言って……」
何の事を言ってるのだろう。
そう思った王の問いかけは最後まで出なかった。
ドオオオオオンッッッ!!!!!!
耳をつんざくような轟音と共に、揺れる建物。パラパラと天井から粉が降って来た。
何事かとギョッとする私達を尻目に、アーロン王子はニヤリと笑う。
そして言った。
「ああ……終わりが始まったようだな」
そう、静かに言った。
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