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1、僕ちんとか言う奴には制裁一択です
しおりを挟む「あ~頭痛い。なんだかお腹も痛いなあ。おやおやあ、熱まで出てきたんじゃなかろうか。あー駄目だ、今日はもう駄目。体調が絶不調なので、今日は休むことにしよう」
そう言って、我がアンドラシュール国の第一王子にして、次期国王となる王太子ビョルン様は立ち上がった。
そのまま執務室を出ようとするので、私──アリーナ・クリアフェル公爵令嬢は慌てて王太子を追いかけた。
「お待ちくださいませ、ビョルン様! 昨日もそう言って執務をこなさずお休みになられたではありませんか。このままでは書類の山が片付かず、国政が滞ってしまいます」
「そんな大層なもんでもないだろ。どうせ重要な案件は全て父上が処理されているのだ。僕に回って来る事案など、急がずとも困るものではないさ」
「そんなことで次期国王が務まるとお思いで? 確かに早急に対処すべき案件は国王様が処理なさっておられますが、ビョルン様に回って来る案件も、どれも重要なものばかり。国民からの要望が集まっているのです。早急に目をお通しになって対応を……」
とんでもないことを言って執務を放棄しようとする王太子に、私が顔をしかめて進言すると、王太子はもっと顔をしかめた。まるで苦い物でも食べているかのように。
「だって僕は体調がすぐれないんだ、仕方ないだろう?」
「昨日もそうおっしゃってましたよね」
「知っているだろう? 僕が病弱であることを」
「……初耳です」
あなた昔も今も超健康優良児で有名ですやん。風邪も逃げ出す王子って言われてたの忘れましたか、そうですか。都合のいい記憶力ですこと。
顔が青ざめているとかならまだしも、ツヤツヤの血色いい肌でニコニコしながら言うことではない。
せめて苦しそうな演技くらいしろ。
「僕の病弱を見抜けないなんて、とんだ無能な聖女もいたものだ」
そう言って、私を小ばかにしたように見下してせせら笑う。
「……体調不良とおっしゃる割には、随分とお元気そうで」
つまりは口が達者ですねと言いたい。
それが伝わったのか知らないが、途端に顔をしかめて「あー喉がイガイガする~」とか言ってゲホゲホ咳き込む王太子。うっそくさ!
「とにかく、早くご自身のお席にお戻りになって、執務をこなしてください。もう数日同じことの繰り返しで、期限に余裕のあった案件が切羽詰まってきております」
「じゃあアリーナがやってくれよ」
「……はい?」
「キミは聖女なんだから、それくらい出来るだろう?」
「聖女の能力に、執務をこなすというものはありませんが」
「固いこと言わないでさあ。ちゃちゃっとやってくれたらいいんだから」
「ですから、ビョルン様がちゃちゃっとやってしまえば宜しいのでは?」
「無理」
「いやなんで」
「僕ちん熱出てるから」
時間の無駄としか言いようのない押し問答のすえ、最後に王太子がニヤニヤ笑いながら、額に手を当てて私に顔を近づけてきたので。
結果、王太子の執務室内に、ビタンとかベチンとか変な音が響いたのであった。あと、王太子の「へぶうっ!」という、これはまごうことなき醜い声が響いた。
ええ、そうです。
気持ちが悪すぎて思わずビンタくらわしました。
聖母のごとく皆を愛すべき聖女である私が、婚約者である王太子の頬に思い切りビンタ。
さて、これからどうなるんだろうか。
とりあえずスッキリしたとだけ言っておこう。
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