21 / 27
20、
しおりを挟む「エドのやつ、婚約を解消するつもりみたいだよ」
「え?」
あれから数日。
不気味なくらいに平和な日々が続いていた。
王子が真実を知ってる事を、妹は知らない。相変わらず王子の追っかけをしてるらしいが、王子は相変わらず苦笑いしながら適当にあしらってると聞いた。
私はそんな二人に極力近づかないようにするのも……これも相変わらずだ。
変わった事と言えば、やたらとアンドリュー様に絡まれる事だろうか。
絡まれるというか何と言うか……気が付けばいつも居るような?
今日も今日とて、図書室に本を返却に来て、ついでに何か面白い物をまた借りようか……と思っていたら現れた。どこで私の姿を見かけたんだろう?「アイラ嬢に聞いたんだよ」私の考えを読むようなこと言わないでほしい。
「そう警戒するなって。別に取って食おうってわけじゃないんだから」
「先ほどの話は本当ですか?」
「さらっと話題変えるなあ」
ここは図書室ですよ、お静かに願います。そう軽く睨むもどこ吹く風。
公爵令息とは思えない飄々とした彼は、少し苦手だ。
私は本を借りるのを諦めて、図書室を後にする。当然のようにアンドリュー様は付いてくるのだけど。
「それで?」
「ん?」
「エドワード様の話です!」
貴方は何を話しに来たんですか!
そう言えば、あはは~と笑われてしまった。疲れるので、とりあえず話すまで黙っておこう。
黙って彼を見やると、諦めたように本題へと入る。
「真実を知ってからエドのやつあれこれ考えてたみたいだけど。ようやく決心したみたいだな」
「決心……」
「そ、キミの妹との婚約を解消するってことを」
「そ、うですか……」
「いったん解消して、冷静に自分の気持ちを見つめ直したいんだってさ」
婚約解消。
それをメリッサは素直に受け入れるだろうか?否、絶対に
「ひと悶着あるだろうなあ」
私と同じ考えのアンドリュー様がゲッソリした顔で言うのだった。
それには私も同意する。
「まずはメリッサに話すから、二人きりにしてほしいって言われたんだけど……大丈夫かな~」
「そ……」
それは大丈夫なのだろうか?内容が内容だけに、我が伯爵家やましてや王宮では話しにくいと思ったのかもしれないけど。二人きりにして本当に大丈夫だろうか。
あのメリッサだ。下手すれば王子に危害を加えかねない。
「まあ大丈夫だよ、エドは強いし。もう溺れるようなヘマするような奴じゃないから安心しな」
「はあ……」
何をどう安心して良いのか分からないけれど。
私には成り行きを見守る事しか出来ない。下手に手を出せば、メリッサの怒りを買う事は明白だったから。
妹とはいえ、可愛いと愛情を持ってるとはいえ。
流石に最近の彼女は手に余る。もう仲の良かったあの頃には戻れないのだろうか。
小さく溜め息をついて、そして隣の人物に声をかけた。
「どこまで付いてくるんですか?」
「え?」
「アンドリュー様の教室はここでしょう?」
話してるうちに教室に着いたが、一向に入ろうとしない彼。それどころか私の教室まで付いてきそうな勢いだ。
「なんで?俺と話したくない?」
「なぜそうなるんですか」
「いや、俺だから?」
それは何処から生まれる自信なのだろう。
なぜか懐かれてしまった厄介な相手に溜め息を漏らした時だった。
「フィリアぁぁっ!!!!」
突然名前を呼ばれて。
声の主を見なくても分かるくらいに聞きなれたその声に、頭痛を覚えてしまった。
ゆっくりと振り返る。
「メリッサ……」
見なくても分かる。
見たくもない。
けれど無視も出来ない私は、振り返った先でそれを見た。
予想を遥かに凌駕する、恐ろしい形相の妹を。
63
あなたにおすすめの小説
最後に一つだけ。あなたの未来を壊す方法を教えてあげる
椿谷あずる
恋愛
婚約者カインの口から、一方的に別れを告げられたルーミア。
その隣では、彼が庇う女、アメリが怯える素振りを見せながら、こっそりと勝者の微笑みを浮かべていた。
──ああ、なるほど。私は、最初から負ける役だったのね。
全てを悟ったルーミアは、静かに微笑み、淡々と婚約破棄を受け入れる。
だが、その背中を向ける間際、彼女はふと立ち止まり、振り返った。
「……ねえ、最後に一つだけ。教えてあげるわ」
その一言が、すべての運命を覆すとも知らずに。
裏切られた彼女は、微笑みながらすべてを奪い返す──これは、華麗なる逆転劇の始まり。
【完結】恋を失くした伯爵令息に、赤い糸を結んで
白雨 音
恋愛
伯爵令嬢のシュゼットは、舞踏会で初恋の人リアムと再会する。
ずっと会いたかった人…心躍らせるも、抱える秘密により、名乗り出る事は出来無かった。
程なくして、彼に美しい婚約者がいる事を知り、諦めようとするが…
思わぬ事に、彼の婚約者の座が転がり込んで来た。
喜ぶシュゼットとは反対に、彼の心は元婚約者にあった___
※視点:シュゼットのみ一人称(表記の無いものはシュゼット視点です)
異世界、架空の国(※魔法要素はありません)《完結しました》
婚約者が他の令嬢に微笑む時、私は惚れ薬を使った
葵 すみれ
恋愛
ポリーヌはある日、婚約者が見知らぬ令嬢と二人きりでいるところを見てしまう。
しかも、彼は見たことがないような微笑みを令嬢に向けていた。
いつも自分には冷たい彼の柔らかい態度に、ポリーヌは愕然とする。
そして、親が決めた婚約ではあったが、いつの間にか彼に恋心を抱いていたことに気づく。
落ち込むポリーヌに、妹がこれを使えと惚れ薬を渡してきた。
迷ったあげく、婚約者に惚れ薬を使うと、彼の態度は一転して溺愛してくるように。
偽りの愛とは知りながらも、ポリーヌは幸福に酔う。
しかし幸せの狭間で、惚れ薬で彼の心を縛っているのだと罪悪感を抱くポリーヌ。
悩んだ末に、惚れ薬の効果を打ち消す薬をもらうことを決意するが……。
※小説家になろうにも掲載しています
婚約破棄寸前、私に何をお望みですか?
みこと。
恋愛
男爵令嬢マチルダが現れてから、王子ベイジルとセシリアの仲はこじれるばかり。
婚約破棄も時間の問題かと危ぶまれる中、ある日王宮から、公爵家のセシリアに呼び出しがかかる。
なんとベイジルが王家の禁術を用い、過去の自分と精神を入れ替えたという。
(つまり今目の前にいる十八歳の王子の中身は、八歳の、私と仲が良かった頃の殿下?)
ベイジルの真意とは。そしてセシリアとの関係はどうなる?
※他サイトにも掲載しています。
「華がない」と婚約破棄された私が、王家主催の舞踏会で人気です。
百谷シカ
恋愛
「君には『華』というものがない。そんな妻は必要ない」
いるんだかいないんだかわからない、存在感のない私。
ニネヴィー伯爵令嬢ローズマリー・ボイスは婚約を破棄された。
「無難な妻を選んだつもりが、こうも無能な娘を生むとは」
父も私を見放し、母は意気消沈。
唯一の望みは、年末に控えた王家主催の舞踏会。
第1王子フランシス殿下と第2王子ピーター殿下の花嫁選びが行われる。
高望みはしない。
でも多くの貴族が集う舞踏会にはチャンスがある……はず。
「これで結果を出せなければお前を修道院に入れて離婚する」
父は無慈悲で母は絶望。
そんな私の推薦人となったのは、ゼント伯爵ジョシュア・ロス卿だった。
「ローズマリー、君は可愛い。君は君であれば完璧なんだ」
メルー侯爵令息でもありピーター殿下の親友でもあるゼント伯爵。
彼は私に勇気をくれた。希望をくれた。
初めて私自身を見て、褒めてくれる人だった。
3ヶ月の準備期間を経て迎える王家主催の舞踏会。
華がないという理由で婚約破棄された私は、私のままだった。
でも最有力候補と噂されたレーテルカルノ伯爵令嬢と共に注目の的。
そして親友が推薦した花嫁候補にピーター殿下はとても好意的だった。
でも、私の心は……
===================
(他「エブリスタ」様に投稿)
私の感情が行方不明になったのは、母を亡くした悲しみと別け隔てない婚約者の優しさからだと思っていましたが、ある人の殺意が強かったようです
珠宮さくら
恋愛
ヴィルジ国に生まれたアデライードは、行き交う街の人たちの笑顔を見て元気になるような王女だったが、そんな彼女が笑わなくなったのは、大切な人を亡くしてからだった。
そんな彼女と婚約したのは、この国で将来を有望視されている子息で誰にでも優しくて別け隔てのない人だったのだが、彼の想い人は別にいたのをアデライードは知っていた。
でも、どうにも何もする気が起きずにいた。その原因が、他にちゃんとあったこアデライードが知るまでが大変だった。
姉に婚約破棄されるのは時間の問題のように言われ、私は大好きな婚約者と幼なじみの応援をしようとしたのですが、覚悟しきれませんでした
珠宮さくら
恋愛
リュシエンヌ・サヴィニーは、伯爵家に生まれ、幼い頃から愛らしい少女だった。男の子の初恋を軒並み奪うような罪作りな一面もあったが、本人にその自覚は全くなかった。
それを目撃してばかりいたのは、リュシエンヌの幼なじみだったが、彼女とは親友だとリュシエンヌは思っていた。
そんな彼女を疎ましく思って嫌っていたのが、リュシエンヌの姉だったが、妹は姉を嫌うことはなかったのだが……。
愛するひとの幸せのためなら、涙を隠して身を引いてみせる。それが女というものでございます。殿下、後生ですから私のことを忘れないでくださいませ。
石河 翠
恋愛
プリムローズは、卒業を控えた第二王子ジョシュアに学園の七不思議について尋ねられた。
七不思議には恋愛成就のお呪い的なものも含まれている。きっと好きなひとに告白するつもりなのだ。そう推測したプリムローズは、涙を隠し調査への協力を申し出た。
しかし彼が本当に調べたかったのは、卒業パーティーで王族が婚約を破棄する理由だった。断罪劇はやり返され必ず元サヤにおさまるのに、繰り返される茶番。
実は恒例の断罪劇には、とある真実が隠されていて……。
愛するひとの幸せを望み生贄になることを笑って受け入れたヒロインと、ヒロインのために途絶えた魔術を復活させた一途なヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID25663244)をお借りしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる