31 / 35
櫻花荘に吹く風~201号室の夢~ (31)
しおりを挟む初体験の時だって、こんなにドキドキしたか、俺? いや、してないはずだ。
部屋の前まで進んだ足音が、扉の前で止まった。躊躇うような一瞬の間に、緊張もピークに達する。
「ぁ……お、遅くなってごめん」
「いやっ、全然、大丈夫!」
布団の上に正座の状態で、一体何が大丈夫分からないような返答を返した俺に、まーくんがくすりと微笑んでくれた。
「良くん、もしかして緊張してる?」
「ぅ……バレバレ?」
「あはは、そっか……良くんも緊張してるんだ……」
「まーくん?」
「僕だけが緊張してるんじゃなくて、ちょっとホッとした」
そう口にしたまーくんが、俺の隣にすとんと腰を下ろした。
はにかむように笑うその表情が、目茶苦茶可愛かった。
足を崩して胡坐を掻いた俺の横から、湯上りの清潔な香りが漂ってくる。
「まーくん――最終確認、していい?」
「え?」
「今ならまだ、俺、我慢する……だけど、始めちゃったら俺、止めてあげられる自信無いからさ」
「――我慢なんて、しなくていいよ。その、ちゃんと、洗ってきたし……」
恥ずかしそうに告げる声が耳に届いた瞬間、俺の中で何かがぷつりと、弾けた。
気付いた時には、彼の身体を押し倒しながら、柔らかな唇の感触を味わっていた。
自分でもがっつき過ぎだと思うのに、急いている気を落ち着ける術を見付けられないまま、細身の身体を布団へと縫い止めていた。
「んっ、んぅーっ」
「あ、ごめ……ごめん、まーくん!」
「は……っ、ビックリ、した……」
二度目のキスはとても甘美で、触れ合った唇から全身を駆け巡る歓喜に、俺の中心はあっという間に育ってしまった。
慌てたまーくんが俺の背中をタップしなければ、きっとこのまま突っ走っていたに違いないと思うほど、余裕の無い自分がそこにいた。
「どっかぶつけた? 大丈夫?」
「大丈夫……だけど……逃げたりしないから、そんなに焦らないでよ」
「ごめんっ」
「こういう経験には疎いから、上手く出来ないと思うけど……僕はどうすればいい? どうすれば、良くんに喜んでもらえるのかな?」
「まーくん……」
呟いたまーくんが、目元を赤らめながら視線を逸らす。俺のTシャツの背を掴む彼の手が、小刻みに震えている。 その事が、焦っていた自分の心に、ほんの少しのブレーキを掛けてくれた。
「ビックリさせてごめん。今日は全部、俺にさせて? まーくんはただ、感じてくれればそれで十分だから」
「でもそれじゃ――」
「ずっとまーくんを抱きたかったんだ……俺も男の経験って無いから、下手かもしんないけど、頑張るからさ。だからまーくんは、気持ち良かったら気持ち良いって、ちゃんと教えて? それだけでいいから」
「良くん……分かった」
頷きを返してくれたまーくんの、俺のTシャツを掴んでいた手が離れ、そのままゆっくりと首を引き寄せるように伸ばされた。
逆らわずに身を任せれば、俺の肩口に鼻先を埋めたまーくんが、震える声を出した。
「僕は男だから、柔らかくも無いし、おっぱいも無いから……無理だったら、ちゃんと無理って言ってね」
きゅっとしがみ付いて来るまーくんが、愛おしい。
そんな心配なんて皆無だって事を、どう言ったら分かってもらえるだろうか。俺ならさっきからずっと、どうしようもない位、雄の本能と戦っているというのに。
だってもう既に俺の分身は硬く滾ってその存在を示し、続く行為に対する期待から、下着を濡らし始めているほどだ。
「……ッ!」
「分かる? 俺ね、まーくん抱き締めてるだけで、もうこんな状態なんだよ……言ったろ? ずっと抱きたかったんだって」
萎える心配なんてするだけ無駄だと、存在を誇示する昂ぶりを、彼の太腿へ擦り付ける。その感触に驚いたのか、一瞬身を竦ませたまーくんは、それでも小さく首を縦に振って応じてくれた。
「好きだよ、まーくん……」
「僕も、好き」
身を起こした俺は、やり直しとばかりにゆっくりとまーくんへ覆い被さった。
緊張に身を硬くする彼の額へ、瞼へ、鼻先へ、頬へ……順に優しくくちづけながら、少しでも緊張が解れるようにと、彼の髪を優しく梳いていく。
風呂上りで幾分湿ったままの髪からは、シャンプーの良い香りが漂ってくる。その匂いにくらくらしながら、三度目となる優しいキスを交わした。
「少し、唇開けて?」
「……ん、っ」
促しに薄っすらと出来た隙間から挿し込んだ舌で、奥まった場所に隠れている彼の舌を絡め取る。
キスに慣れていない彼が、おずおずと俺の動きに応えてくれる。一生懸命な彼の不慣れだと丸分かりな行為が、尚も俺を煽る。
「……っ、は……ん」
必死に呼吸を繰り返す彼の口腔を舌先で擽れば、それに合わせるように、鼻から抜け出た甘い声が、俺の耳を侵して行く。
まーくんの反応を窺いながら、歯列を辿り、口腔内を余すところ無く味わう。
唇の端から零れた唾液が、顎へと伝い落ちて行くのを眺めつつ、擦り合せた舌を吸い上げ、甘噛みしてやる。
その度にピクリと身を震わせる彼のTシャツ越しに手の平を滑らせ、身体のラインをなぞる内に、徐々にまーくんの身体からは緊張が解けて行った。
「っ、まーくん……」
「ふぁ――ぁ、っん」
俺の声に向けられた瞳は快楽に蕩け、やばい位の色気を放っている。
こくりと小さく喉を鳴らし、荒い呼吸を繰り返している彼の首筋から耳朶へと、徐々に唇を這わせていく。
「ぁ、あっ、りょ……く……ぁっ、や…」
「嫌? 気持ち良くない?」
耳朶にやんわりと歯を立てながら、身体のラインを辿っていた手の平を、彼の胸へと移動する。
ツンと尖った感触に手を止め、転がすように、押し潰すように可愛がってやれば、まーくんがむずがるように頭を振った。
「おっぱい尖ってる……気持ちいいんだろ?」
「ひっ、ああっあ、良くんっ」
「どうしたの? 本当に嫌?」
指先で捏ね繰り回し、ソフトに引っ掻く。
途端に大きく背を逸らしたまーくんから、切羽詰った声が上がった。先ほどまでとは違う彼の様子に、どうしたものかと顔を起こす。そんな俺の目に飛び込んで来たのは、瞳を潤ませるまーくんの、脅えたような表情だった。
「そんなに嫌だった? やめる?」
「違、違う……だって、こんなの……こんなとこ……僕、変だよね?」
キスの余韻なのか、興奮からなのか。困惑気味に瞳を揺らしながら、少し舌足らずに告げる彼が、愛おしくて仕方が無い。
「何で? おっぱい感じるの、怖い?」
「だっ、て……男、なのに……」
「男だって感じても良いじゃん? 俺はまーくんが気持ちいいところ、いっぱい知りたいよ? 感じてるとこ、いっぱい見たい」
「良……あっ」
「ほら、すっげ可愛い……小さいのに、ちゃんと尖って、もっと弄って欲しいって、俺の事誘ってる」
不安そうな彼のTシャツを剥ぎ取り、両胸の尖りを上から見下ろす。
腰を跨ぐ格好で見下ろした彼は、羞恥にその身体を薄桃色に染めていて、それが本当に綺麗で。
「変じゃない? こんなとこ、感じて……良くん、嫌にならない?」
ああ、やっぱりそうか。心の中でそっと思う。
さっきも彼は、自分と女の身体を比べるような事を言っていた。嫌がる態度も、不安げな様子も、全てが俺の反応を怖がっての事。
「嫌なわけ無いじゃん、全部食い尽くしたいくらいだ」
「ひぁっ……ん、ぅ――」
視界に飛び込んでくる、可愛らしい尖り。他の部分よりもほんの少し濃い色をしたその突起が、俺を誘っていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる