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01 : 婚約破棄ですか?
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「レイナ=クラウン!お前とはもうやっていけん!婚約を破棄させてもらう!!」
「はぁ……」
私の部屋で、そんな言葉が響き渡る。
酒を片手に声を荒げている小太りの男、アグル=セファリッド様はーー恥ずかしながら、私の婚約者です。
いや、今しがた婚約破棄を言い渡されたので「元」と言った方がいいんでしょうか。
「別に構いませんが……。一応、理由だけでも聞いてよろしいですか?」
「理由なんて決まっているだろう!貴族である俺とお前とでは、身分の差が違いすぎるからだ!お前と婚約してしまっては我が一族の恥だよ!」
どうだ、と言わんばかりに顎を上げると、手に持っていた酒を全て飲み干す。
確かにセファリッド家は、この街ではそこそこの名を馳せる貴族の一つではありますが……。
アグル様、「君の姿に見惚れてしまったよ……」とかなんとか言って、街を歩く私に婚約を申し込んだのはあなたでなくて?
しかし、他人の揚げ足を取らないのが淑女の嗜み。
ここは素直に引き下がっておきましょう。
「了解いたしました。では私は明日のうちにはお暇させていただきますので」
「はっ、決断が早いのだけはお前の良いところだな。どうだ?どうせ金なんて無いんだろう、実家までの馬車代くらいは出してやるが?」
懐から銅貨2枚を取り出して私の足元に投げる。
欲しければ拾え、ということでしょうか。
「有難いお言葉ですがアグル様、私にはもう1人婚約を申し込まれている方がございまして。その方に迎えに来ていただくので、そのお金は結構です」
「……ふん。つまらん奴だ。」
投げ捨てた銅貨を踏みしめて、どすどすと扉に近づく。そして扉を開けると、こちらを振り返って。
「後悔するなよレイナ。泣いて土下座でもしたら復縁を考えてやるよ」
「……それはどうも」
「チッ」
私が返事するや否や、無遠慮に扉を閉めてどこかに行ってしまわれました。
さて、アグル様と離縁したわけですし。
あの方を頼ると致しますか。
早速、事の顛末を書いて迎えを頼んだ手紙を、伝書鳩の足にくくりつけて窓に放ちます。
……あの方を頼ることは、極力したく無かったのですが。
「セイン皇子……」
ーーこの時、誰も知る由はなかったのです。セイン皇子の怒りによって、セファリッド家が没落してしまう事を。
「はぁ……」
私の部屋で、そんな言葉が響き渡る。
酒を片手に声を荒げている小太りの男、アグル=セファリッド様はーー恥ずかしながら、私の婚約者です。
いや、今しがた婚約破棄を言い渡されたので「元」と言った方がいいんでしょうか。
「別に構いませんが……。一応、理由だけでも聞いてよろしいですか?」
「理由なんて決まっているだろう!貴族である俺とお前とでは、身分の差が違いすぎるからだ!お前と婚約してしまっては我が一族の恥だよ!」
どうだ、と言わんばかりに顎を上げると、手に持っていた酒を全て飲み干す。
確かにセファリッド家は、この街ではそこそこの名を馳せる貴族の一つではありますが……。
アグル様、「君の姿に見惚れてしまったよ……」とかなんとか言って、街を歩く私に婚約を申し込んだのはあなたでなくて?
しかし、他人の揚げ足を取らないのが淑女の嗜み。
ここは素直に引き下がっておきましょう。
「了解いたしました。では私は明日のうちにはお暇させていただきますので」
「はっ、決断が早いのだけはお前の良いところだな。どうだ?どうせ金なんて無いんだろう、実家までの馬車代くらいは出してやるが?」
懐から銅貨2枚を取り出して私の足元に投げる。
欲しければ拾え、ということでしょうか。
「有難いお言葉ですがアグル様、私にはもう1人婚約を申し込まれている方がございまして。その方に迎えに来ていただくので、そのお金は結構です」
「……ふん。つまらん奴だ。」
投げ捨てた銅貨を踏みしめて、どすどすと扉に近づく。そして扉を開けると、こちらを振り返って。
「後悔するなよレイナ。泣いて土下座でもしたら復縁を考えてやるよ」
「……それはどうも」
「チッ」
私が返事するや否や、無遠慮に扉を閉めてどこかに行ってしまわれました。
さて、アグル様と離縁したわけですし。
あの方を頼ると致しますか。
早速、事の顛末を書いて迎えを頼んだ手紙を、伝書鳩の足にくくりつけて窓に放ちます。
……あの方を頼ることは、極力したく無かったのですが。
「セイン皇子……」
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