3 / 4
03 : セイン皇子
しおりを挟む
その後、ノームに呼ばれて玄関先へ向かったところ。
長い金髪に凛々しく清廉な顔つき、さらにスラッとした長身というあまりにもオーバースペックな男性ーーセイン=ギルフォード様が退屈そうな表情で立っておられました。
そして私を確認するや否や、パッと顔を輝かせて。
「レイナ!!迎えに来たぞ!!」
屋敷に響くくらいの大声で、そう叫んだのでした。
「セイン様、声が大きいです……」
「おっとすまん。なにせレイナからの久々の手紙だったからな、ついテンションが上がってしまった。今日はデルトルト辺境伯との会談があったがすっぽかしてきたくらいだ!」
「それは是非行ってあげてください!」
皇子と辺境伯の会談なんて重大な事より私の迎えを優先させてしまったのに罪悪感を覚えますが、当の本人は軽快に笑っています。
そう、私がセイン皇子を頼りたく無かった理由。
それは彼があまりにも過保護だからです。
庶民と皇子とでは余りにも身分が釣り合わないのも理由の一つなのですが、この過保護っぷりというのが尋常ではなく。
今回のような会談の中止などまだマシな方です。
1番酷かったのは、私がまだ幼かった頃……と、これを語るのはまた後の方にいたしましょうか。長くなってしまいます。
私が回想に耽っている間に、いつの間にかアグル様が珍しく身なりを整えて玄関まで来ていました。
セイン様の服と比べると、かなり粗末に見えてしまうものですが。
「せ、セイン皇子!お初めにかかります、私、セファリッド家が長男、アグル=セファリッドと申します!この度は当家にお越しいただき誠に……」
「ああ、君がアグルか。私のレイナの『元』婚約者だね?」
ちょっと待ってくださいセイン皇子。
まだ私は貴方のものではありませんが?
それに元だけ強調して言っているのも、なにか嫉妬のようなものを感じますが……。
「レイナから話は聞いているよ。婚約を破棄したんだってね?それも君の方から」
「は、はい、そうでございますが……」
ふぅん、と畏まっているアグル様を一瞥すると、私の方に手を伸ばして。
「さあ行こうレイナ。どうぞ、手を取って」
素敵すぎる笑顔で、そう微笑みました。
庶民の出であるこんな私が……と気遅れはあるものの、差し出された手を取ります。
「ええ、セイン皇子」
余りにも過保護すぎるセイン様だけど。
でも、アグル様の元を離れてセイン様の元へ行くと思うと、やっぱりほっとする自分がいるのを感じます。
こうして私は、セファリッド家の屋敷を出たのでした。
長い金髪に凛々しく清廉な顔つき、さらにスラッとした長身というあまりにもオーバースペックな男性ーーセイン=ギルフォード様が退屈そうな表情で立っておられました。
そして私を確認するや否や、パッと顔を輝かせて。
「レイナ!!迎えに来たぞ!!」
屋敷に響くくらいの大声で、そう叫んだのでした。
「セイン様、声が大きいです……」
「おっとすまん。なにせレイナからの久々の手紙だったからな、ついテンションが上がってしまった。今日はデルトルト辺境伯との会談があったがすっぽかしてきたくらいだ!」
「それは是非行ってあげてください!」
皇子と辺境伯の会談なんて重大な事より私の迎えを優先させてしまったのに罪悪感を覚えますが、当の本人は軽快に笑っています。
そう、私がセイン皇子を頼りたく無かった理由。
それは彼があまりにも過保護だからです。
庶民と皇子とでは余りにも身分が釣り合わないのも理由の一つなのですが、この過保護っぷりというのが尋常ではなく。
今回のような会談の中止などまだマシな方です。
1番酷かったのは、私がまだ幼かった頃……と、これを語るのはまた後の方にいたしましょうか。長くなってしまいます。
私が回想に耽っている間に、いつの間にかアグル様が珍しく身なりを整えて玄関まで来ていました。
セイン様の服と比べると、かなり粗末に見えてしまうものですが。
「せ、セイン皇子!お初めにかかります、私、セファリッド家が長男、アグル=セファリッドと申します!この度は当家にお越しいただき誠に……」
「ああ、君がアグルか。私のレイナの『元』婚約者だね?」
ちょっと待ってくださいセイン皇子。
まだ私は貴方のものではありませんが?
それに元だけ強調して言っているのも、なにか嫉妬のようなものを感じますが……。
「レイナから話は聞いているよ。婚約を破棄したんだってね?それも君の方から」
「は、はい、そうでございますが……」
ふぅん、と畏まっているアグル様を一瞥すると、私の方に手を伸ばして。
「さあ行こうレイナ。どうぞ、手を取って」
素敵すぎる笑顔で、そう微笑みました。
庶民の出であるこんな私が……と気遅れはあるものの、差し出された手を取ります。
「ええ、セイン皇子」
余りにも過保護すぎるセイン様だけど。
でも、アグル様の元を離れてセイン様の元へ行くと思うと、やっぱりほっとする自分がいるのを感じます。
こうして私は、セファリッド家の屋敷を出たのでした。
0
あなたにおすすめの小説
ある愚かな婚約破棄の結末
オレンジ方解石
恋愛
セドリック王子から婚約破棄を宣言されたアデライド。
王子の愚かさに頭を抱えるが、周囲は一斉に「アデライドが悪い」と王子の味方をして…………。
※一応ジャンルを『恋愛』に設定してありますが、甘さ控えめです。
後悔などありません。あなたのことは愛していないので。
あかぎ
恋愛
「お前とは婚約破棄する」
婚約者の突然の宣言に、レイラは言葉を失った。
理由は見知らぬ女ジェシカへのいじめ。
証拠と称される手紙も差し出されたが、筆跡は明らかに自分のものではない。
初対面の相手に嫉妬して傷つけただなど、理不尽にもほどがある。
だが、トールは疑いを信じ込み、ジェシカと共にレイラを糾弾する。
静かに溜息をついたレイラは、彼の目を見据えて言った。
「私、あなたのことなんて全然好きじゃないの」
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
諦めた令嬢と悩んでばかりの元婚約者
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
愛しい恋人ができた僕は、婚約者アリシアに一方的な婚約破棄を申し出る。
どんな態度をとられても仕方がないと覚悟していた。
だが、アリシアの態度は僕の想像もしていなかったものだった。
短編。全6話。
※女性たちの心情描写はありません。
彼女たちはどう考えてこういう行動をしたんだろう?
と、考えていただくようなお話になっております。
※本作は、私の頭のストレッチ作品第一弾のため感想欄は開けておりません。
(投稿中は。最終話投稿後に開けることを考えております)
※1/14 完結しました。
感想欄を開けさせていただきます。
様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。
ただ、皆様に楽しんでいただける場であって欲しいと思いますので、
いただいた感想をを非承認とさせていただく場合がございます。
申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。
もちろん、私は全て読ませていただきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる