いつも馬鹿にされていた私だけど頑張ってざまぁしていたら、伝説を作ってしまいました

いちごの華

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魔法世界にて

4 父の苦悩 side バルト

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オレはバルト・ベンゼント。この実力主義の世界で、光栄にも騎士団長を拝命している。
魔導師長である妻のシーラとの間に5人も子供が授かり、幸せの絶頂いる。
まあ、オレの子供であるからなのかそれなりにクセがつよ・・・ウォッホン、個性的だ。

まず、長男のキルラ。
オレと同じ顔をしているが、とにかく喋らない。寡黙と言うと聞こえはいいが、それにしても喋らない。
次期騎士団長と言われているが、それじゃあ、的確な指示も出せないし団員との信頼関係が結べない。
だがな、喋らないからなのか、かなり慎重だ。そして、物事をじっくりと考えている。
浅はかに考えて、規律を乱すようでは団長には相応しくないからな。そこは、いいところだ。
  
キルラの双子の妹の長女であるセリーネ。
キルラが喋らない分、セリーネが喋る。もう、とにかく喋る。
喋っているからなのか、口では勝てない。口喧嘩になると、セリーネが圧勝する。しかも、思っていることもズバズバ言うもんだから、魔導師との間がギクシャクしている。それでは、次期宮廷魔法師長とはいえない。
それでも、ただ喋っているだけでなく、的確なアドバイスをしているようだ。うむ、しっかりと人を見ているんだな。いいことだ。

次男のアルム。
アルムは、その、バ、いや、頭が残念な子でな。そのかわりと言っていいのか身体能力が高い。いわゆる、「脳筋」だ。
家庭教師の勉強から、隙あれば脱走する。どうして、そこはオレに似てしまったんだ!!まあ、仕方がない。
でも、脱走する先は我が家の庭にある森にいる。森にいるからなのか、サバイバル術は抜群だ。身一つで森に放り込んでも、10年くらいは余裕で生き延びるだろう。いい・・・ことか。

三男のクルト。
クルトは、まあ、不思議な子だな。そして、びっくりするくらいにたくさん食べる。あの小さな身体に、大人の3倍分の量が入っているんだろう?それでも、太らない体質だからセリーネが「キイイイイィィー!!」と金切り声をあげていた。
あんなに食べていても、アルムに負けないくらいに、すばしっこい。
別に問題児ではない。たくさん食べること以外は。たまに、我が家の食料庫に侵入して、全ての食料を食らい尽くしてしまったことがあったけど・・・。でも、いっぱい食べることはいいことだ。

そして、末の娘のマリーヌ!
我が家の天使。いや、あの可愛らしさは言葉にできない!!「とうさま!!」と言ってパタパタと走り寄ってくる姿。愛らしい。天使の歌声のような美しい声は、ベンゼント家の癒し。あの喋らないキルラも天使の前だと、別人!?と思ってしまうくらいに喋る。だから、過保護になってしまうのは仕方がない。
可愛い可愛いマリーヌ。
マリーヌが生まれてきた時は昨日のようだ。
産婆がマリーヌを取り上げたときに、「天使、天使だ。ああ、なんて素晴らしいこと。もう、この世に心残りはございません」と涙を流していた。

愛されているマリーヌだが、時々思い詰めたような顔をする。
赤ちゃんの時だって、夜泣きはあまりしなかったし、ハイハイするのはとても早かった。
4歳の今だって、遊び盛りはずだが本を読んでいる。
賢い子なのだろうと思っていた。


あの日までは。


あの日は、青空が澄んでいた日だった。
朝食を食べていたらマリーヌが来て、お外にいきたいと首をコテン、とかしげて上目遣いでうるうるとさせて言った。
うっ、かわいい・・・!首コテン、上目遣い&お目々うるうるはずるい!
イエスしか言えなくなってしまうだろお!!!!

「あ、ああ。けど、お庭までだ。敷地の外には出ないように。まだマリーヌには危ないからな」
と言ったら、顔をパアアアアと満面の笑顔で
「うん!ありがと!とおさま、だいすき!」
と言われた。
くぅううう、可愛すぎるぅぅ。


ーー数時間後。昼食の時間が近づいてきた。
そろそろマリーヌを迎えに行くか、と思っていたら

「ーーっ!!!!!」
巨大な魔力反応がした。場所は・・・屋敷うちの庭!?
庭には、マリーヌが!!いや、待て。魔力反応これは、魔力マナの暴走だ!
魔力マナの暴走は、周囲を巻き込んでしまうため下手すれば死に至る。
無事でいてくれ!!!

扉をぶっ飛ばし、侍従の「旦那様!?どちらに行かれるのです!?お待ちくだ・・・」という声を無視して、全力で走った。


庭の方に行くと、魔力マナの暴走の正体が・・・

ふわりと見覚えのある髪が舞う。そこには、マリーヌがいた。

・・・ん!?マリーヌ!?
マリーヌはまだ4歳だ。魔力マナの暴走は、魔力を使い始める7歳に多い。

いや、そんなはずでは・・・。しかし、魔力の残滓がマリーヌから漂っている。いや、怪我はないだろうか!?


「マリーヌ!大丈夫か!?」

慌てて駆け寄って、愛娘の肩に手を置いて、怪我がないかを確認する。
怪我がなかったことにホッとして、マリーヌの目を見る。うん、魔力マナが落ち着いている。
しかし、何があったのか聞かなくてはな?

「何をしたのか、じっくりと話しようじゃないか?」

何かを感じとったのか、雨の中で震えてる子犬のようになってしまった。








ーーーーーーーー







「じゃあね!だいすきだよ!とうさま!」

パタンと閉まる扉を見て、ふと外を見たら日が沈みきっていた。
昼食前から話していたから、だいぶお腹がすいた。ソファーに、ドカリと身を投げ出すようにして座った。ソファーからキシッという音がした。ふぅとため息をついて、頭をガシガシと掻きむしった。

・・・情報が多すぎる!!
マリーヌは転生の術のようなもので『リーナ』が『マリーヌ』として生まれ変わって、とある方からこの世界にある精霊様の『コア』を集めるように命令された。
コア』は、《不滅の森》にある。とても危険な場所にある。回収した後、その仕事に関わった人の記憶を消す。
一つ気になったのは、『リーナ』の時の様子の話の時に、一瞬だがマリーヌの目が昏く濁っていた。話から推測すると、『リーナ』は差別される対象で普通の人がやりたがらない、また暗殺者のような「汚れ仕事」のようなことをしていたのだろう。あの濁った目は、裏の社会で生きていた者のような感じがした。おそらく、傀儡人形のように使われていたのだろう。

そう考えると、心が苦しい。話すにもかなり勇気があっただろうに。
オレは、マリーヌにどうすればいいのだろうか。
いや、余計なことを考えた。オレはオレなりに、マリーヌを愛するんだ。今まで以上に。
この世界にいる間は、笑ってほしい。

でも、早く回収をしたいって言う感じがした。あの様子だと、明日にも行きそうな感じだ。
・・・先程の魔法。《防音結界シャットエリア》だったか?あの魔法は。だから、マリーヌの話が事実味を帯びる。
ここでは、魔法を使うには精霊様のお力を借りる。借りるためには、詠唱が必要。頭の中で具体的にイメージをする。ろうそくを灯すくらいの火、とかな。
しかし、マリーヌの魔法は詠唱がなかった。

これは、知られたら面倒なことになる。もし、面倒なことになったらあの子の笑顔が消えてしまう。
父としてあの子の笑顔を守ろう。
笑顔のほうが、かわいいよなぁ。天使を守るぞ!!

そうなると、昼の方も言わない方がいいか。
しかし、屋敷の方でも噂になっている。
うーん、どうしたものか。

コンコン、ノックの音がした。
「何だ?」
「夕餉をお持ちしました」
という侍女の声がする。

考えていたって、なかなか出てこないもんだ。メシを食って考えよう。
「ああ、入れ」

目の前にある、テーブルに夕餉が並ばれていく。
おっ、今日はステーキか。

失礼いたしました、という侍女の声を聞いてからナイフとフォークを持って食べ始めた。
ふと壁に掛かっている5体の精霊様が描かれている絵を見ていたら、思いついた。

コンコン
「旦那様、入りますよ?」という侍従の声が聞こえたような気がしたが、今はそれ所じゃなかった。
「失礼しま・・・」
「そうか!その考えがあったな!!よし、その方針で行くぞ!!」
「えっ!?何のことですか??旦那様ー!!」
と、またもや主人に無視された侍従の叫びがこだました。
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