《SSTG》『セハザ《no1》-(3)-』

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第2章 - Sec 2

Sec 2 - 第15話

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 ―――――ちょっとしたさわぎがあった、と――――――そこの衆目しゅうもくまぎれ込んでいた遠目とおめの視線が。
その小さなめごとへ、そばの仲間と目配めくばせして、彼らがまた目を向けていた。

「あいつら元気有りあまってんのかな、」
「知り合いだって?マシュテッド、」
「いや、あいつらとは話したことはないよ。トレーニングで見かけたぐらいかな」
話しながら向こうへまた目をやる彼らは、ただ少し退屈たいくつな時間をごしているだけだ。
顔を上げた1人が手持ても無沙汰ぶさたに、椅子いすやテーブルに置いていた手をはなしたり。
「なんだ?なんかあったのか?」
仲間と会話してひまをつぶしをしていた1人や、飲み物のボトルのラベルから顔を上げたり、テーブルのふちかっていた身体を起こして向こうをのぞき込んだり。
「俺らとそう変わらないよな?なあセイガ、」
1人は、テーブルのスポーツドリンクを手に取ってのど一口ひとくち湿しめらす。
「あれ、なんだよ?なぁ?」
「『C』の奴らじゃねぇかな、それっぽい格好かっこうだしさ、」
「やっぱそう?」
「プチあばれたのか?」
「そんな感じか?」
「『C』の知り合いなんているヤツいる?」
「いるか?この中に、」
外組そとぐみより、内部組ないぶぐみのヤツの方が知ってるんじゃねぇの?」
「なぁなぁ、やりったらどっちが勝つと思う?」
「ルールは?」
「とうぜん、フルでの殲滅せんめつ戦、ち合いつったらそれだろ?」
「『C』の奴らって、おりつきなんだな。」
「『C』はち合いは素人しろうとって聞いたじゃんか?」
「なら余裕よゆうじゃん?」
「ガーニィ、お前もなんか知らんの?」
「あん?」
そこで別の話を仲間としてたガーニィが、こっちへり返っていた。
「ここって、いろんなことが起きて楽しい」
近づいてくる間にもい笑顔をしてるが。
「人が多くてワクワクすのはわかる、」
「で、あいつらって?」
「見た事はあるな。でも、あいつらあんなになかわるかったかなぁ、」
「んなの緊張きんちょうしてるからだろ、わかるわかる、」
って、セイガの横のデンが1人で納得なっとくしたふううなずいていた。
それを見た彼らは少し顔を見合わせたりするわけだが。
「それでも『優秀ゆうしゅうな奴らの、』なんだろ?『C』の奴らの、」
実戦投入じっせんとうにゅう試験テストって話だぜ、きっと」
「マジで?」
うわさだろ?どっかで聞いたよ」
「テストなんか、ここじゃあみんな、いつもやってるじゃんかさぁ、」
「あいつら、戦闘せんとうのプロじゃないんじゃなかった?」
訓練くんれんは受けてるらしい。」
「へぇー」
「マッシュ、てんのか?」
「なんだよ、そのび方、」
「どう思ってんだよ?『B』の顔としてくらべたくなるじゃんか、」
「なんだそれ?俺が?」
「『機動系』は花形はながただしな」

「・・そういう言い方は好きじゃないな、」

「なんで?」
「そういうもんじゃね、」

一目いちもくかれやすいってのは確かだけどな、」
一目いちもくっつったら、あのクロってやつ―――――

―――――『3分。3分後だ、ツアーの説明せつめいを始める。それまで・・・』
ぎゃくに待ちくたびれてんだよ、」
ぁやく始めろよぉおぉおおー」
大柄おおがらの男たちがふとい声で、子供こどものように野次やじる彼らもいるようだ。
大人おとなしく待ってろ、つってるだろ。3分以内には始める、本当だ』

知り合い同士のノリなのか、よくはわからないが。
罵声ばせいとかこわくね?俺もあいつらんとこ行かなきゃだ、」
ガーニィが少しわざとらしくブルっとふるえて、クルっときびすを返した。
「『クロ』ってヤツがなんだ?」

び止められたガーニィが、顔だけで。
「クロ、あぁ、あいつ、『C』内ではちょっと注目ちゅうもくされてる1人って聞いた、」
「マジか、」
「それ以上いじょうはよく知らん、っじゃ、」
「そういう情報じょうほう、ワクワクする、」
それを聞いて、にっと笑って見せたガーニィがちょっと急いで、小走りにはなれて行くわけで。

「クロ?」
「あいつか?」
「あの女、クロ、」
「ぁあ、かみみじかいほう?」
「でも、あいつってこの前のトレーニングじゃ、運動面うんどうめんは大したこと無さそうだってさ?」
「見たのか?」
「前の合同訓練ごうどうくんれんで。ちょっとだけ、まず『機動系きどうけい』じゃねぇな、」
「あ、『金色きんいろ』のヤツか」
「金色?」
「なんだそれ?」
「マシュテッド、見たのか?」
訓練くんれんわりに、ちょっと人だかりができてたんだ、」
「戦えんのか?」
「さあ?」
「そんなのわかんねぇし、」
「そもそも、それをたしかめに来てんだろ?ここに、」
「それな、」
「だ、」
「俺らだってそうだしな」
「ははは、だな。」
「いま笑ってるやつ余裕よゆう認定にんていした、」
「『果たして、ご馳走メインを『C』に取られてしまうのかぁあ・・・?』」
「なんだそれ、へへ、」
「ヤベェ、そーなったら姉御アネゴにどやされる、」
「お、デンたちんとこの担当たんとう、かなりきびしいって――――――

――――――――ぁぁあ・・?お前らの仕事だろうがぁあよぉおおぉ・・・」
地響じひびきのような声が突然とつぜんひびいたのだから。
ビクッとふるえた彼らは、周りをきょろきょろ見回していた―――――――

――――――――うゎぉ?」
「なんだ?・・?・・」
大きなはらからの声に周りが反応はんのうする、そんな中をガーニィも小走こばしりの間に、びくっとしていたのだが。

「バークの野郎やろう相変あいかわらず声がでけぇ、」
周りから聞こえた舌打したうちついでの文句もんくにピンと来て、ちょっと目をらす。
「バーク・・?・・・」
ガーニィが人知れず、にっと笑って、その声がした向こうをのぞこうとしつつ。
「ガーニィ、」
「どこ行ってたんだよ、」
すぐそこにいた仲間たちに呼ばれたので。
「もう始まるってよ」
「おー、・・あ。あっちにマシュテッドとかロアジュたちがいるぞー」
「知ってるよ、」
仕方しかたなく、かるいステップでくるっと仲間の彼らへと合流ごうりゅうする――――――


 ――――――――お前らに言ったんだぜぇ、おい・・」
・・・ねめつける様な低音ていおんの声で彼は、中年のいかつい顔を、少し無精ぶしょう髭面ひげづらで、むさくるしい印象の顔をゆがめてすごむ・・・。
「つったってなぁ、こいつが勝手に・・」
「ぁああぁ、めんどくせぇ・・、マージュ、やれよ・・・」
「ぁあん?」
ばれた彼女、大柄おおがら筋骨隆々きんこつりゅうりゅうのマージュは、めんどくさげに不機嫌ふきげんそうに、その椅子にこしかけているまま、大きくかたを動かして不満ふまんを見せた。
「おい、聞けよ」
「『めんどくせぇ』が本音ほんねだろ、先にれてるぞ、」
「うるせぇ、ゴドー、」
ゴドーに横柄おうへいな大きな図体ずうたいの彼は、ぶっきらぼうなしゃがれ声が独特どくとくひびきでもある。
無関係むかんけいな周囲の彼らも、顔見知かおみしりだが、れたはずのその大きな声の抑揚よくように、たまに振り返るくらいだ。

「ヤダよ。あたしの仕事じゃねぇっつってんだろ、バーク。」

マージュは、ふとくてたくましいあしを組み、椅子いすの上でそのタンクトップの腕にり上がる上腕筋じょうわんきんを動かし、くちはこぶ黒い『ライスボール』、黒い海苔のりかれた、『オニギリ』とも言うんだったか、それをかじった。
中身は白くてやわらかい米粒こめつぶ甘味あまみさえ感じる米がまっている、その中には塩漬しおづけのさかなあじのペーストらしきものが入っていて、独特どくとくの香りもわるくはない。

「リーダーの俺が言ってんだぞっ・・」
バークが不満ふまん懇願こんがんしているようだが。
「そりゃ信頼しんらいだろ、」
「ぶっ、信頼しんらい、」
「笑うんじゃねえぇえよ、ゴドー。・・はぁ~、俺はめぐまれねぇなぁ、部下になぁ、ぜんぜんなぁあ・・・」
バークが大きな図体ずうたいでため息をく、そのさまがわざとらしいのだが、そのやる気をくした目線は『そこ』にめられていた。

さっきから言い合っている彼らの横で、マージュの横で、大柄おおがらな彼らにかこまれていても、気にもめずに腰掛こしかけてオニギリを頬張ほおばっている、特に小柄こがらなロヌマがいる。
というか、食べていてご機嫌きげんな様子は、話もぜんぜん聞いちゃいないようだ。
さっき、どこからかそのオニギリを持ってもどってきてから、美味おいしそうに口にめ込んでいる。
連れ帰ってきたゴドーとシンに話を聞いていたので大体わかったが、ちなみに、マージュがかじっている『それ』も、ロヌマが持ってきたヤツを半分はんぶんコしたものである。
それは、シンたちに『食いぎだ』と言われたからだが。
「そもそもゴドーの所為せいなんだろ・・?」
マージュがそう、言ってきた。。
「おぉおっと、マージュおまえぇ、」
「ゴドーっ!」
甲高かんだかい声のロヌマが急に、とりあえず元気にごはんつぶを飛ばしたが、みんなの注目を集めるくらい邪魔じゃましてきたのは、ただ、反射的はんしゃてきに名前に反応しただけのようで、口元をぬぐうロヌマは、話の内容をやっぱりそんなに聞いちゃいないと思う。
「・・あぁん?どういうことだ?」
もうそんなものもれてきているバークがゴドーへ、ジロりとまゆせれば、ゴドーは顔をそむけて、ちゅういてるゴミでもさがしに、目があらぬ方へおよいでいた。
「・・・・」
「・・っ・・・」
それでも、バークとバッチリ目が合ってしまったゴドーが、あわててつくろうようだ。
「ちげーよ、ちげーよ、俺だけの所為せいって言うなよな?」
「あぁん?」
てよ、その言い方も良くねぇな。だってそうだろ?おかしなうわさを流す連中れんちゅうなんてのはそこらじゅうにいるんだぞ?そりゃあ俺も注意ちゅういしようとはしたんだけどな・・言うだろ?『冗談じょうだんに受けたヤツが、バカを見る』ってな?・・・・な?」
歯を見せてウィンクするゴドーが、言い切れていなかったそれを。
「あぁぁんだとぉお・・・?」
バークが、やはり低音ていおんひびかせた・・・はらめ込んだ衝撃しょうげきを、次の瞬間しゅんかんにまでそなえて・・。
「そりゃあ・・、そうだよなぁ・・・、」
低くてでかい声のバークが、心底しんそこ、ため息のように・・納得なっとくしたようだ。
「・・はぁ?」
マージュが、食べながら見てた顔をしかめていたが。
「だろぉ?」
ゴドーとバークがわかり合ったようだ、笑みを見せてジェスチャーで指をビっとお互いに差し合い通じ合った。
『お前、なかなか言うじゃねぇか』とでもつたえ合ったようだ。
「んなわけねーだろ、」
マージュが文句もんくを言っていたが。
「おぉい、ロヌマぁああ・・!!あそんでんじゃねぇぞぉ・・!」
それは聞こえないのか、バークがロヌマをはらそこからふるわせるように𠮟しかっていた。
「はぁ・・、」
それでマージュがあたまいたそうなため息をいた、・・オニギリをその口に全部押し込んだが。
「ふゎあ・・?」
ちょっとおくれて気が付いたロヌマが、口を大きく開けたまま、バークたちにきょとんとしてた。
「勝手にどっかに行くんじゃねぇえぇよぉお、お前はよお?しかもさっきから食ってばっかりだろうがよぉお・・」
「ふぁあ、ッフん・・っ・・」
モグっと、それでも、言われながらも食べたロヌマがオニギリをモグモグしながら、バークを。
「聞ぃけえよおぉおお、」
バークが文句もんくだが。
「しかもお前、似合にあってなかったぜ、ロヌマ。あのいびりキャラ、はっはぁ、イかした悪役あくやくぽかったぜ、」
ゴドーがすでに調子が戻って、ニヤっと、悪戯いたずらげに親指上げサムズアップをロヌマへ見せてた。
「ふぁがー・・・なぬっ!」
ロヌマがオニギリを食べようとして、驚愕きょうがくしてた。
「ぁ、くやクっ・・!っ・・?」
「あぁ?なんだぁ?どうしたぁ?」
「ぶははっ、」
バークが不思議ふしぎそうで、ゴドーはロヌマを笑ってたが。
「ははぁ~ん・・?カマしにでも行ったのかぁ?」
バークは自分で納得なっとくしたようだ。
「ロヌマ・・、オレたちゃめられたら終わりの稼業かぎょうだぜ?・・前も言ったかぁ?いいか・・?戦いってのはなぁ・・・?」
「あくやくじゃないぞぉ!・・・!」
「『ハッタリが大事なんだぜぇっ』、聞けよ、俺の話をよぉお、」
「ったく。ロヌマ、いい加減かげんおぼえな。こいつらはわるい奴らだ、って。」
「・・ふぁぐっ、」
って、ロヌマが返事へんじなのか、それよりも、オニギリをかじっているけれど。

「お前ら静かにしてろ、もう始まるって言ってんだろ。特にバーク、ったくよ」
ステージの上から注意された、スピーカーはとおってないが。
「あん?おぉっと、すいやせん、」
「ロヌマもな、」
「オう!」
「・・声が大きいんだよ、お前らは」
「いやーすいやせん、なんつっても、部下にめぐまれないもんでぇ、へっへっへ・・」
「ナニなすりつけようとしてんだよ、」
「本当の事だろうがよお、」
「ぁああぁんん?」
「ったく、お前らはいっつも・・」
「あたしはなんもしてないんだけどねぇ、」
眉間みけんしわせて頭をくマージュは、明らかに不満ふまんそうな、とばっちりなのだが。

ついでに、横を見れば近くに立っているシンは、相変あいかわらず、別に表情ひょうじょういのだが。

マージュはり曲げたあしの上で、頬杖ほおづえいて。
「はぁ・・っ、ったく・・・。」

・・横目のはしに見えた、自然しぜん視界しかいに入るロヌマが、オニギリを全部頬張ほおばった、ご機嫌きげんな様子だ。

「・・にしても、あんた、いつになくテンション高いね、」
「むふーっ・・!」
「なにかあったのかぃ、」
そんなロヌマに、少しはつられたマージュもほんの少しばかりか、口端こうたんを上げていた。

「おいマージュ、ロヌマをあまやかすんじゃねぇえぞ」
「あんたらだろ・・!」
「ぁあん?どこがだ??」

――――――動きがあったのに気が付いて、その顔を上げた。
振り返るマージュも、気が付く。
ロヌマが笑う、そのステージへ向ける横顔よこがおから・・目をはなす――――――――


 ―――――あー、アぁァ・・・。・・・・・いけるか?ちゃんと通じてる。あぁ、OKだ。ごほん。・・さて、全員集まってるな。』

そうして、ステージの上で全ての彼らの注目ちゅうもくを少なからずあつめていた彼が、一歩進み出た。

「とっくに集まってるからな、」
「お前らを待ってやってたんだろうが、」
周りはれたもののようで、すかさず野次やじなどが飛んで来てるが。
その動きに他に気が付き始める彼らが、次第しだい注目ちゅうもくをさらに集めていく。

『――――あぁ。あぁ、言いたいことはわかる。もう始めるとするか』

――――――ぉー、やっと始まるっっぽいってよ、ラッド
―――――ぉぁー、やっとだなぁ?めっちゃ待たされたよなぁ?バッキバキだろ?ロアジュ?
―――――――ん?ああ、・・どういう意味いみだ?
―――――わかるだろ?待ちすぎて身体がバッキバキ。なぁ?フィジー?
――――あは、それはあるかも、


「今日はただの立食りっしょくパーティーじゃなかったのかよ?」
「はは、」
会場にいるほぼ全ての人が、仲間へ声をかけ、前に立つ彼の動きへ注意ちゅういを向けていく。
『あー。納得なっとくしていない奴らもいそうな気がするんで、いちおう理由りゆうを言わせてもらうとだな。
こっちで機材きざい関係のトラブルがあったわけだ、』

―――――ぅわ、も、もう始まるって、
―――――――・・・緊張きんちょうだ、
―――――そう、き、緊張きんちょうね。うん、楽しまないとね、・・楽しもう、楽しもう、
―――――うん、
――――はい、

『・・の要件ようけんが無いとか、プログラムが禁止きんしされてるとか、俺にもくわしいことはわからんが、用意よういしてきたものがそのまま使えなかったらしい。
まあその、なんだ。
作業さぎょうしてくれた専門家エンジニアたちには感謝かんしゃをしたい。』

――――――・・っはっハぁ・・、はっハぁ・・・
――――・・・?・・どうした?
――――――――緊張きんちょうしてるんだろ。
―――――――ばっか、してねぇえよ・・っ
―――――お前に言ったわけじゃ・・お前もか?ミモ?
――――――――――・・・してねぇけどな?ルガリ?大丈夫か?なにしてんだ?
――――はぁ・・・だるぃ・・深呼吸しんこきゅう・・・

『話が長くなりそうだ。お前たちを待たせたら何が起きるかわからないから、もう始めるぞ。』
「自分から始めたんだろうがよ、」
「はやくしろよー」

―――お、あれ見ろよ、隊長たいちょうたちがいるっぞぅ、セイガ、
―――――現役げんえきの人たちばっかりだ
―――――――やっぱりヤベぇメンツだ
―――――おいデン、手ぇるとこじゃないだろ、目ぇつけられないか・・?
――――――姉御あねごたおされるぞ

―――――やっぱ、マジでなるべく目立ちたくねぇな・・・
――――なに言ってんだよ、ガーニィ、
―――俺らが普通にやってても目立つわけないだろ
――――それな、
―――――――それな、

『じゃあ、まずは紹介しょうかいから・・・』
前置まえおきが長くねぇか?」
おそいんだよ、もったいつけやがってー」
『ぁあん?』
「もう始めていいんじゃねぇかー、」
「そうだぞ、おっそいぞー」
「おそいんだよ、」

―――――――オっそいゾぉーー!
―――――うおいバッカ、ヤめろロヌマ、だまれ、本気ほんきっかんじゃねえ。シン、こいつの口をふさいどけよお、
――――――だっはっは、
――――笑ってんじゃないよ、ゴドー。シン、しっかりつかまえときな、

『バークたちの声が、よく聞こえるな?』
って、集まった人たちからは笑いがれてたり、何のことかわからずに周りを見回した人たちもいるが。

『ごほん・・・。
さて。

 これは俺たちの、『EAU』の新しいこころみの1つでもある。
特別とくべつなものになることを期待きたいしている。
・・スペシャルなトレーニングだ。
はじめてなので、俺たちも慎重しんちょうになっている。』

落ち着いてつたえたその声で、その場の誰もが口を閉じていく。
彼らそれぞれがステージの上を、『EAU』たちが立つそこを見上げていた。
表情が動いて、わずかに何かがかんで、それらはなにかにえて。
それすらわずかににじみ出した者もいる。

『・・真面目まじめに話すのは良くないか?』
って。
・・笑う人達がいて、誰かが手をたたく。
そうすると、拍手はくしゅえる。
大きくなってくると、指笛ゆびぶえらす人もいた。

それらを受け取った彼は、くしゃっと、みじかく笑顔を見せて、一呼吸ひとこきゅうを置いた。

 ――――――雰囲気ふんいき、だな」
って、となり拍手はくしゅも送っていたガイが、言って寄越よこした。
ガイは、そんなノリが気に入ってるようで、笑ってるけど。

彼らをながめていたミリアが、横目にそんなガイを見たけれど。
それから、サンドイッチをまた小さく、はむっと食べて、モグモグする。

「そうか?スベってんじゃね?」
って、そばでケイジが、ひねくれたようなことを言ってる、ななめに立っているし。
まあ、ちょっと意地悪いじわるく笑ってるのも、ケイジのいつものことだ。

そのななうしろのリースをちょっとのぞけば、特にこれといった感情かんじょうは持ち合わせていないようだけど。
少しまたたくような仕草しぐさで、周りの人たちの様子と状況じょうきょう平和へいわながめているようだ。
ただの我関われかんせず、かもしれないけど。

「楽しそうじゃんか?なあ?」
またガイに聞かれたミリアは、振り返って目が合ったので、肩を軽くすくめておいた。
ガイが微妙びみょうな顔で、同じくらいにすくめて返してきたけど。

紹介しょうかいるかどうか考えたが、』

それから、スピーカーをとおした声に反射的はんしゃてきに、ミリアはステージの彼らを見上げた。
・・サンドイッチを、小さな口ではむっと食べて。

不慣ふなれなヤツらもいるんだ。やはり顔だけでも紹介しょうかいしておこう。
今回、帯同たいどうしたエンジニアの人たちだ。
ここにいない人もいるが、うらでいろいろやってくれている。
そして『EAU』の、ある意味、もっとこわいボスたちだ、』

彼が大きく手で示すのは、少し後ろにひかえていたり、はしにいる責任者せきにんしゃらしき人たちで。
『ちょっとは愛想あいそを見せてくださいよ、』
言われたからか、中には演技えんぎぶったようなれいをして見せたりする人もいたり。
手を上げて挨拶あいさつにする人がいる中で。
知っている人、アイフェリアさんの姿すがたもあった。
アイフェリアさんは、小さく手を上げて見せたようで、少し苦笑にがわらいしているようにも見えた。
急に言われたから、戸惑とまどったのかもしれない。
その他にも何人か知っている。

『みんなやさしい隊長たいちょうさんたちだ。
顔をおぼえておけよ?』

――――――ミリアは、サンドイッチをのどを小さくらして、飲み込んだ。

・・・・それから。
少し大きくいきを、って。
むねを、少しふくらませた。


『EAU』にいるかぎり、忘れてはいけない顔だ。

さて、挨拶あいさつわりだ。
始めよう。


―――――しずかな、むねの中に、鼓動こどうが聞こえた、ような――――――
・・ふぅ・・・と、長く。

ミリアが、息を、ゆっくりといていく。
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