《SSTG》『セハザ《no1》-(3)-』

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第2章 - Sec 2

Sec 2 - 第21話

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 『全員あつまっているのか?・・なぜだろう?』
画面向こうのアイフェリアさんがそう、そばの誰かへ目線めせんおくっていた。
それはこちらへの問いかけなのか、それとも、疑問ぎもんを口にしただけなのか・・?と、どちらとも取れた。
ただ、そのとき彼女がを引いてはなれたので、向こうの部屋の景色けしきが少しひろがって見えた。
そこは自分たちが今いる部屋とているけど、たぶん別の場所だろう。

置かれている機械きかい備品びひんなどは同じ物のようだけど。
画面がめんの中で見切みきれる人の顔ぶれは当然とうぜん、『Class - A』の人たちで、こちらを気にせずにスタッフの人たちと話していたりする。
その中には模擬戦もぎせんで使う『ID-Sシミュレータ用デバイス』のライフル小銃などもうつっている。

アイフェリアさんは、わざわざこちらの部屋へや連絡れんらくを取ってきたらしい。
今も誰かと画面を調整ちょうせいしつつ、こちらの様子をうかがうようだけど。
なにか指示しじつたえに来たのだろうか。

こういうときよく思う、『EAU』はまだ軍部ぐんぶよりはゆる雰囲気ふんいきなんだけれど。
軍部ぐんぶに置きえると、上官じょうかんから直接ちょくせつ連絡れんらくが来ている状況じょうきょうなので、とりあえず、背筋せすじはなるべくただした方がいいんだろう。

そういえば、さっきのアイフェリアさんの質問しつもんには誰かが答えるだろう、とミリアは思っていたけれど。

さっきからだれ返事へんじをしていないのに気付いて、ちょっと周りを見たら、みんなは落ち着かない様子みたいだ。
一番前に立っている『C』の彼らさえ、顔を見合わせてソワソワしたりしていた。

『・・聞こえている・・な・・・?』
って、ちょっと一瞬いっしゅんだけノイズが走ったように、音がれたみたいだけど、アイフェリアさんはやっぱり懸念けねんしながらこっちを見ているみたいだ。
『はい、つながってますよ』
アイフェリアさんの方で、たぶん画面外がめんがいの誰かが話す声も聞こえた。
あらためて見るアイフェリアさんの格好かっこうは、自分たちと同じ、ブカっとしたツナギのような特殊とくしゅな『それ』だ。
首回くびまわりなどのえりかげ隙間すきま保護防具ガードの一部が見える。
『大丈夫、映ってます、』
こちら側のスタッフの人も答えてた。
彼はつながっているはしっこの操作装置コンソール調整ちょうせいしていたらしく、それから、その大きめのモニタへ見やすいようにうつえてくれた。
もう1人、手でモニタをずらしたりして角度かくど調整ちょうせいしてくれていたスタッフの人も確認かくにんを取ってた。
そんな中で、こっちのチームの人たちは仲間と話しているようだったけど、まだ戸惑とまどいやおどろきがのこっているようだ。

『聞こえているか?君たち、』
まあ、急に向こうから通信つうしんが来たのだから、しょうがないとは思うけど・・・って、そういえば。
こっちがわはまだ指揮官リーダーをちゃんと決めてないんだった。
それはつまり、上官じょうかんとの連絡れんらくなど、こういう状況じょうきょうで、代表だいひょうして話す人がまだ決まってないということだ。

「・・ぉぁ、」
「おれいっちゃうぜ?」
って、戸惑とまどいの残ってる彼らの中で。
「これ?ちゃんと聞こえてまぁーすっ?」
一番前ではっきりと『C』の彼、ミリュモ ・ ル・ サラマンが大きな声で答えてた・・・。
『・・聞こえてるな?』
「はい、聞こえてます」
そばのマイヤーも答えていたし。
『そうか。・・そうかたくしなくていい。様子を見ようとしただけだ。準備じゅんびがある者は気にせず続けてくれ。』

彼女の言葉通りに『気にしない』というのも、ちょっと抵抗ていこうがあるけれど。
それより、彼らが話すそのかんもミリアは、モニタの向こうへまたちょっと気を取られていた。
画面がめんうつる『A』の彼らは、そのほとんどの体格たいかくが良い。
彼らは自分たちと同じ格好かっこうで、すでに準備じゅんびませて待ち時間を過ごしているのかと思うけれど、それから金属きんぞくの――――機具きぐにつけた人が、アイフェリアさんの後ろを一瞬いっしゅん横切よこぎったのが・・・ん・・?――――――

「――――――なんか用?っすかぁ?こっちゼッサンしゃべってたんだけどー??」
って、ミリュモが近くで、不機嫌ふきげんそうに言っていたけれど。
って、・・気が付けば、周りが少しピリッとしているのか。
彼へ目線めせんを送る人たちも、そのくだけた言い方がちょっと、気になったんだと思う。

『そちらがとどこおりなく準備じゅんびできているかを確認かくにんしたかった。邪魔じゃまをしたか。』
でも、りんとしているアイフェリアさんは、気にしていないようだ。
かすかに口元がんだ・・のかは、見間違みまちがいかもしれないけど。

「ぜんぜんっ問題もんだいねーっす、なあ?」
「ぁ?ぁー、うっす、そう。そうっす。」
デンの口がうまく動いていないみたいだ。
彼、さっきまでりゅうちょうに自己紹介じこしょうかいとか、ってしゃべっていたけれど、今は周りのみんなへ目をおよがせつつで。

それはへん雰囲気ふんいきを感じる、ミリアも周りの様子をまた見つつ。
アイフェリアさんの方を見れば―――ただ―――彼女の背後はいごうつった、気になるシルエットを思い出した。

たまに画面から見切みきれるだれかが各自かくじ支度したく中だったり、誰か、屈強くっきょうな彼らがライフルを手に取って、ツナギを着たスタッフの人たちとうごく中で・・誰か―――――その身体からだ一部いちぶに、機械的メカニカルな『白い装甲そうこう』の一部いちぶを|けている人がいたりする。

あれは『装甲そうこう』だ―――――
体をおお形状けいじょうに、動きを補助ほじょするよう緻密ちみつに動く機械きかい
自分にとって見慣みなれないものなので、ちょっと一瞬、なんなのかわからなかった。

「・・ん?」
って、ミリアはちょっと、思わず怪訝けげんに、ちょっとまゆひそめ、小さく音をらして。
ちょっと、またたいたけど。

「ん?」
隣のガイが気が付いたみたいで、見上げたミリアと目が合った。

――――――『・・正直、時間がしくてね。』
って、アイフェリアさんたちと彼らで話を続けているけれど。

『何度もかすかたちになるが。周囲しゅうい指示しじしたがってくれ。問題があるようなら、遠慮えんりょなくスタッフに相談そうだんを・・・』

「こっちゃ問題ねーっす、そっちよゆーなんっすか?」
やっぱりミリュモの発言はつげんは、ちょっと目立っているけれど。
『こちらも問題は無いよ。では、彼らにしたがってくれ。』
そんな言い方でもアイフェリアさんはやっぱり気にしたふうでもない。
本当に時間が無いのかもしれないけど。

そう、それはいいんだけど。
いや、良くは無いけど。
それより。
アイフェリアさんたちが身に着けている、支給しきゅうされたばかりの新品しんぴん装備そうびも自分たちと同じものだけど―――――その後ろにまっている、彼の――――――しっかりとした体にまと機械きかい装甲そうこう部品パーツ、あれはやっぱり――――――『外骨格デバイスパワードスーツ』だ――――――

―――――あれ、」
「あれ?」
「え?・・え?」
何かに気が付いた誰かと誰かの声がかさなっているかもしれない。
「・・あれ?」
「・・・ぅえ、ぉお・・・?・・」
「ん・・・?・・」
そばの人たちがちょっとざわめいてきてた。

「あれ、ほんとか?」
って、つぶやとなりのガイも、もう気が付いてるようだ。

もしかして、怪我けが防止用ぼうしよう防具ガードだとか・・・。
アレは、普通に動いているけれど。
・・いや、そんな単純たんじゅんそうなものじゃなさそう・・・よね?

「あれ『パワードスーツ』じゃん?」
だれかが大きめの声で、はっきり言っていた。


 ―――――そもそも、戦闘用せんとうようの『外骨格デバイスパワードスーツ』はあまり一般的いっぱんてきじゃない。
なぜなら、いまだにいろいろな問題をかかえているのもあるし、一番の理由は『コストが高い』からと聞いたことがある。

――――たしか、人型ひとがた利便性りべんせいなどを追求ついきゅうする装甲そうこうのそれらは、軍部ぐんぶでも特殊とくしゅ環境下かんきょうかでの使用しようだったり、試験運用しけんうんようされた話も聞いたことはある。
―――――それらが『EAU』の最新装備さいしんそうびとして使われていても不思議ふしぎではないのかもしれないけれど・・・でも、とてもとっても、『違和感いわかん』がある。

目の前の、あの『外骨格デバイスパワードスーツ』は、金属的メタリック赤色あかいろ基調きちょうに、鈍色にびいろとでデザインされている。
顔まで全身ぜんしんをカバーする人型ひとがた装甲そうこうの、全体的ぜんたいてきにも頑丈がんじょうそうでかたそうな骨組ほねぐみがわずかに見える部分も、彼が歩く動きに合わせて駆動くどうしていて。
・・たぶん、動力どうりょくを使っている、アクティブタイプか・・?・・・私は、そんなにくわしいわけじゃないんだけれど。
余計よけい部品ぶひん装備そうび付属ふぞくしていない、素体そたいに近いのか・・・。
・・・あと、どこかで見たことがあるような見た目だ。

――――――「かっこぇ・・、」
って、つぶやくようなのが聞こえたのは、いつの間にか、『C』の、彼、一番しずかな感じの・・・ガリナ・エルポ、彼がちょっと前に出てきていた。
その『外骨格デバイスパワードスーツ』へ向けてる横顔は、目がかがやいているかもしれない。
なんだか、最初さいしょ印象いんしょうよりも少年しょうねんっぽい。

まあたしかに、あんなすごそうな物がきゅうあらわれたら、だれだって気になるだろう。
『向こうのやつらっすか?』
って、みんなが前のめりになってる中で、その映像えいぞうの向こうから外骨格デバイスパワードスーツでフルフェイスの彼が、こちらへ近づいてきていた。
機械メカおもそうなその装甲そうこうかたまりの、『気まぐれ』みたいだ。
――――――「えぇ、ずっりぃっ、」
って、ちょっと、誰かの大きな声で、ぴくっとしたミリアだけど。

『ん・・・?、・・・』
って、話していたアイフェリアさんも彼らの反応はんのうに気がついたのか、後ろを見てから、なにか言おうとしたようで。
『これは・・、』
『ぉいおい、のんきか?』
って、でも、前へ出てきただれか、大きなおじさんの顔がこっちの画面をのぞき込んできた。
あそんでていいのかぁあ?』
からかうような、ちょっとわるい言い方だけれど。
『お前ら、隊長の邪魔じゃまをするんじゃない。』
って、はらわれるような。
そんな、画面の向こうのやり取りの中で、ちょっと人が集まってきてる感じがしていた。
『へっへっへ、』
急にあらわれた彼らが悪戯いたずらわらってはなれれば。
アイフェリアさんのクールな口元くちもとからの、ほんのちょっと苦笑にがわらいがうつったかもしれない。

「あれって『パワードスーツ』?ってやつ?」
「ってぇ、あっち本気すぎ?」
それより、こっちのチームが、ちょっと気持ちがいてるみたいだけど。

そう、でも、『外骨格デバイスパワードスーツ』は、たぶん、『EAU』では現場げんばでの使用しようの話は聞いたことがない。
それを実戦じっせん形式けいしき模擬戦もぎせんで使うっていうことは――――そういうことなんだろうか・・・?
そういえば、とおい話だけど、対特能戦たいとくせん目標もくひょうとした外骨格デバイスパワードスーツ研究けんきゅうがあるって聞いたことがある。
それらは、いくつかの企業きぎょうのニュースだったと思うけど―――――
「え、マジであんなのとやんのか?俺たち?」
って、誰かが言った―――――だから、ブルっ・・と―――――――おなかおくふるえた―――――
彼らの言う通りだとしたら。

一瞬いっしゅん想像そうぞうして。
もし、私たちの相手あいてが、彼らで―――――――

「ずりぃ、」
ミリュモが、そう。
「ずっけぇえのっ、」
って、大きな声で言っていた。
『これは・・』
アイフェリアさんがそう、何かを言おうとしてた・・・――――――
『ぉおおううぉおうおう!!ちびってんのかぁああ?ガキどもぉお!!だぁっははっはっは!!』
って。
急な、豪快ごうかいな大きな声に、ミリアもちょっとピクっとしてたけど。
しかも、あれがバークさんの声だとすぐわかってしまうくらい特徴とくちょうがある。
――――――あと、アイフェリアさんも『その声』の大きさにちょっと小さくビクっとしたのも見えてたけど。

『おいバーク、』
『うるせぇぞ、』
バークさんが向こうの見えないところで文句もんくを言われているようだ。

「・・うわ」
こっちがわの誰かは、ちょっと引いてるかもしれない。

『どぅわっはっはっは!』
って次に、どこからか甲高かんだか特徴的とくちょうてきな笑い声、ロヌマのっぽいのも聞こえてきた。

『おい、お前ら、あっち行ってろ・・、』
『なんだなんだ?こそこそ話してあやしいぜぇええ?』
『おい、バーク・・』
さわぐのが好きそうな人たちが、こっちを見つけてってきているんだと思う。
マジメに追い払いたい彼らも迷惑めいわくそうで、でも、ふと苦笑にがわらいが出てしまうようだ。

『・・こちらも、せわしないな、』
アイフェリアさんがそうつぶやいたけど。
その横顔はクールで、やっぱり、かすかにやわらいだ、一瞬いっしゅん苦笑にがわらいみたいだ。
『各自、しっかり準備を進めてくれ。』
そして、こちらへ、彼女はすぐに冷静れいせいに伝えてくる。
『周囲の指示しじしたが説明せつめいを受けてくれ。ここは『彼ら』の領分りょうぶんであるから――――――』

おれを、」
――――って、『C』の、ディーが。
「『約束やくそく』を、」
彼がアイフェリアさんへ、・・急に。
言葉は足りないけど、何を言いたいのかは分かった気がする。
さっき話していたれいの『約束やくそく』の話なんだと思う。
推挙すいきょするという、アレ―――――『C』の彼らが、『Class - A』へ推挙すいきょされたいというような『約束』。
ディーが、口を開いてまだ何かを言おうと。
『・・ああ、わかってる。』
でも、彼を見つめたアイフェリアさんが、それにこたえていた。
「ぜってぇ負けねぇ・・」
ディーの、イラつくようなけわしい横顔と。
きたねぇのっ!」
ミリュモが非難ひなんしていたけれど。
それは、まあ。
外骨格デバイスパワードスーツ存在そんざいは、かなり大きいから。

『・・・ああ、』
アイフェリアさんは、彼らの様子を見ていて。
それから、静かに口を開いた。

我々われわれが手をくことは、けっして無い』
って・・・。
・・そう。
本気ほんきなのか、そのトーンはおもみがしたように。
アイフェリアさんの、りんとした表情ひょうじょうは、物静ものしずかだったけれど。

『このさいだ。1つ教えておこう、君たちに。』
―――――ただ、彼女の表情ひょうじょうから、みはえた。

『『EAU』にはけっして、『特能力者とくのうりょくしゃ』が必要ひつようなわけではない。
特能力者とくのうりょくしゃ始末しまつするのに、けっして『それ』が必要なわけではないのだから。』

――――って。
「はぁあぁー??」
不満ふまん怪訝けげんな、ミリュモの耳障みみざわりな声と。
少し、ざわっとした彼らの・・・。
『そこのバカそうなヤツはわかってなさそうだな、』
って、横から、言ってくるその人も、アイフェリアさんの近くで。
「はぁあんっ・・??!」
『お前らは何をしても俺達にはかなわねぇってことだよっ!』
って。
『だはぁはっは!!』
って、後ろの周りの人たちも笑っている。

・・・彼らが軽口かるくちを言ってきている、っていうのはわかるけれど。
・・ただ、こっち側のチームの人たちはというと、だいぶ静かになったような。
「・・・こっちに『A』とか・・・らねぇんだけどよ・・・、マジで、」
・・って、彼、ディーが苛立いらだったように。
ミリアがちょっとのぞくと、こっちへ、親指おやゆび適当てきとうに、ディーがゆびしてきたのと目が合った。

ミリアは、またたいたけど。
・・えっと。

「うは、きっつ、」
って、面白おもしろがってる、向こうのミリュモだ。
こっちも、彼らと同じチームではあるんだけれど。
つのに、やっぱいらねぇって、『A』なんかっ、」
って、ミリュモはとくに言い方が、挑発ちょうはつをするような、だ。
・・ミリアがちらっと見る、『C』の、マイヤーやガリナ・エルポも口を開かず、その横顔はアイフェリアさんたちを見つめている。
周りの他の彼らは、微妙びみょう反応はんのうで、こっちへ向けてる顔は、何か言いたいことがありそうな雰囲気ふんいきも感じたが。
―――――そんな中で、私を見ているディーの目に、気が付く――――するどい、くろい目―――――その感じ、どこかで見た――――――

――――しずかに、ミリアは、その―――――

―――――君たちも納得なっとくしたと思ったが。』
アイフェリアさんの声に、気が付いたミリアは彼女へ顔を戻した。
「・・・、」
ディーが、そのままだまるようで。
「えぇっ?もう終わりかよー?」
ミリュモがおどろいていた、なぜか残念ざんねんそうだけど。

『・・そうか、』
アイフェリアさんは何かを思案しあんしているような、でも。

『C』の彼らは目を合わせない。
ディーはそっぽを向いているし、マイヤーはそんな彼を見ていたが。

各人かくじん、いろいろ思うところがあるだろうが。
・・さて、楽しい時間が始まる。』

そう、それで話は終わりみたいだ。
まあ、こっちとしても、今さらそんなことを言われても、って感じだし。
―――――ミリアがもう一度、ちらっと横目で見る彼ら、『C』の人たち、それ以外いがいの彼らも、おもい思いの横顔を、その表情ひょうじょうたちが、もうアイフェリアさんたちへ向けられている。

作戦さくせんは君たちがめればいい。納得なっとくのいく形で』
アイフェリアさんの、冷静れいせいな声をみんながしずかに聞いている。

―――――『隊長たいちょう順番じゅんばんてますよ、』
『ああ、』
向こうでばれたアイフェリアさんは。
『なおさら無駄むだ話をしている時間は無いな。君たちもいそげよ。』
『チャンスがるぞ?』
横から茶々ちゃちゃはいるけれど。

『だが約束やくそくは守る。』
って、アイフェリアさんのしずかな声に――――――
『君たちが、挑戦チャレンジするチャンスはつねに開いておく。』
―――――それは、つめたさと、かろやかさもあるようなひびき・・・。

響きニュアンス、ちょっと変わってきてないか・・?」
って、隣のガイがぼそっとつぶやく。
それに、その横顔はこっちへ、ちょっとニヤっとした。

『それじゃあ時間だ』

アイフェリアさんは・・わずかに口元くちもとやわらかくしたのか。
『さっさと準備じゅんびをしよう。』

―――――ちょっと、ピリっとする―――――アイフェリアさんのわずかな表情にも。
ミリアは口をきゅっと、閉じた。

「・・お・・・?」
周りの、ぴく・・っと彼らの表情も強張こわばったのかもしれない・・・。

『そういうわけだ、せいぜいがんばれよっ』
って、向こうの、周りの彼らが。
『俺はぜんっぜんっ期待きたいしてねーからな・・っ、ドベからやり直せよ!』
って、アイフェリアさんの周りから言ってきた。
『地べたにいずり回してやっからなぁあ!!ってえぇやるぜぇええ、』
って、たちわる呂律ろれつのバークさんが急に画面へ顔を近づけてきた、きたなくベロを出したり、存在感そんざいかんのすごいわるい顔をしている、モニタの向こうで。
「うわ・・、」
近くで誰かが、また引いてるようだ。

『フぅぅうぉおーっ!』
って、アイフェリアさんたちの後ろから、彼らの中でとても興奮こうふんしているような、ハイテンションな、一際ひときわ小さいフルフェイスの機械マシンの人が、飛び込んで突進とっしんしてきた。
『ぶふぉお?いてぇっ?』
バークさんがよこぱらにタックルを受けたようで、ちょっと『くの』にがってた。
『ぶはっはっは、』
でも、周りでは笑いが起きたみたいだ。
『カかってこぉイぁあァァーー!!』
興奮こうふんめやまない、わぁっ、ってあばれるその『小さいの』は、こっちを威嚇いかくしているのか両手りょうてを上げたりで、ていうか、その声はフルフェイスでくぐもっているけど、甲高かんだかたけびのような声は聞きおぼえのある。
『おい、こいつをあっちへれてけ、ゴドー、シン、ついでにバークも、』
彼らの中でとても小さいので、ぎゃくにかなりわかりやすい。
そしたら、後ろから大きなシンさんが手で軽々かるがると『ロヌマ』を、というか、その小さな機械人ロボットマンを持ち上げていく、さっき見たような光景こうけいだ。

『もう切ってくれ、』
アイフェリアさんが冷静れいせいに言ってた。
『はい、』
なるべく無感情むかんじょうに言ったようだけど、彼らのノリがあまり好きじゃないのかもしれない、というか、ちょっといやそうな顔かもしれない。
―――――『面白い話してたねぇ?アイフェ、あんたもなかなか言うじゃないかぁ、』
って、ニヤニヤしてる大きな女の人がアイフェリアさんの所に来てからんでるし。
『マージュ、あんまりあおってやんなや。むしろこうををあおるのがせいなるマナー礼儀だぜ―――――』
準備じゅんびいそげってさああぁ――――――』

パッ、と画面が―――――例のOSの青いタイトルロゴ入りのものに、画面が切り替わってた。

最後さいごに、アイフェリアさんのちょっと微妙びみょう横顔よこがお、ちょっとまいったような顔が一瞬いっしゅんだけ見切みきれたし―――――
それから、バークさんたちの言い合ってるような顔も一瞬映ってたけど―――――

通信つうしんわる』
そう、こっちで通信つうしんをコントロールしていた彼が冷静れいせいつたえてた。

―――――えっと・・・。
なんだか、いろいろあった気がしたけれど。
ミリアが、みんなの顔を見回すことを思いついたとき。

「なんだあいつらっ?」
って、ミリュモが。
「あいつらめまくりだったよなぁあぁ!?」
ミリュモがおこってたけど、もう通信つうしんが終わったあとだ。

「っんだっ!性格せいかくくさってんのかっ?マジでっ!」
地団駄じたんだでもみそうなおこってるミリュモが言うのは、どっちもどっちなんじゃないか、とは思うミリアだけども。
「やべぇな、『A』、」
「あれが『A』なのか?やべぇな?」
「けっこうな?」
なんだか、ことなるヤバさを感じているような他の人たちみたいだけれども。
「ずいぶん自由じゆうなんだね?」
「ね、もっとかたいのかと思ってた」
って、『C』以外の彼らも、仲間なかまへそれぞれ話しているようだ。
められてんじゃねーの?」
「俺ら、完全かんぜんめられてんのな、」
「なめやがってぇえ・・・!」
なんだか、こっちへけられる、いくつかの目線めせんがちょっと『アレ』な気がしなくもない。
絶対ぜったいに『とばっちり』だけれども、おもにバークさんとかの所為せいの。
同じ『Class - A』だからって、私たちが言ったわけじゃないわけで。

まあ、彼らにかこまれた最後さいごのアイフェリアさんは、手でちょっと頭痛ずつうでもおさえていた感じだったのは、ちょっと印象的いんしょうてきだ。

正直しょうじきに言えば、俺は今からでも、ちょっとくらい手をいてもらえればいいと思っている、」
「やめとけって、デン。あいつらに殺されるぞ」
「ほら、こっち見た、」
なんて、悪戯いたずらっぽいデンたちがミリュモたちに、ギラギラににらまれているけれど。

「へっへっへ、」
「おまえら・・っ・・」
「んじゃ、マジな話、しようぜ。」
って、デンが。
「どうやってつ?」
デンがそう、飄々ひょうひょうと、堂々どうどうと。

だから、彼らは一瞬いっしゅんだまった。

・・そして、デンのそばの彼が、無言むごんで歩き出していた。
「リーダーは後で決めようぜ、」
そう言ってデンも、彼を追いかけるように歩き出した。
「もしくはいいアイディアを持ってるヤツが決める。お、それがいいかもな。それまでに準備じゅんびしよーぜ。なんかいろいろやることがあるみたいだし。チャンスを自分からつぶすわけにゃいかねぇしなぁ、」
そんなふう飄々ひょうひょうと、この場からはなれる彼はみんなへ、というより、ひとごとのようだった。

それを皮切かわきりに、他の人たちも顔を見合わせるまでもなく、仲間なかまたちとはじめた。

・・さっきまで何かでめていた気もしたけど。
彼らはわすれたように、気持ちが少しは切り替わったのかもしれない。

「・・お前ら、余計よけいな事すんなよ?」
って。
わざわざ彼、ミリュモはこっちへ指差ゆびさしまでしてきた。

彼ら、マイヤーや・・ディーの。
彼らのつよ視線しせんも、ミリアは受け止めていた。

「ぁあん?」
・・・って?
ミリアのそばで、おなかからの声がして。
ちょっとまたたくミリアが。
振り返ったらケイジがちょっと、にらかえしてたようだ。
「・・あぁ?」
それに気が付いたようなディーも、なんだか同じ。
「ぁあん?」
「・・・あ?」
ミリュモとか、ちょっと近寄ちかよっていく彼ら、・・・なんか、
たがいに脊髄反射せきずいはんしゃみたいだけど。
ほうっておけば、めんどくさいことになりそうだな、とミリアは直感ちょっかんにでも思ったけど。
「おいおい、」
って、素早すばやくガイの背中せなかがミリアをして。
そして、ケイジのかたつかんでくれてた。
「ぅっ、ぐぇ、」
それも、ほんとにしっかりと、ケイジの体幹たいかんがるくらいちかられてくれたようだ。

「ディー、やることあるだろ、」
向こうのディーも、マイヤーに呼ばれてた。

そんな様子ようすを見ていたミリアは。
もしかしたら、ケイジと彼らは気が合いそうな、とこころの中でちょっとばかり思いつつ。

向こうのミリュモが、いてこっちに何とも言えない顔を向けてた、のを見つけてたけど。
それがどんな気持ちなのか、よくわからないので、見なかったことにした。
たぶん、敵愾心てきがいしんなのかな、とは思うけど。

「よし、戻るか、」
ガイが、いつの間にかケイジの肩にうでまわしてむように、きずって行ってた。
はなせっ、」
いやがってるケイジでも、ガイからは簡単かんたんげられないようだった。

ミリアも、その後ろを追って。
「・・『新人しんじん』なら俺らとそう変わらねぇだろうし・・、」
仕方しかたねぇな・・・、」
向こうから聞こえた、『C』の彼らの声は、好き勝手に言っているみたいだ。
歩き出していたミリアは、耳に入ったその会話かいわ一瞥いちべつしたけれど。

彼らはまた、他の人たちに声をかけたらしく。
「・・っ・・・まえら、」
「置いてくぞー」
「あ、おいっ、」

まためるような――――そんな彼らを横目に、近くで歩くリースがこっちを、ぼうっとした感じで見ているのに気が付いた。
ずっとしずかなリースは相変あいかわらずで、さっきのやり取りにも、きっと何も考えてないんだろうな、って思う。

ミリアはちょっと、肩から大きめに息を吸って・・いた。
ためいきのようになって。
肩のちからが小さくけてた。
いつの間にか、ちょっとちからはいっていたのかもしれない。

「まあ、『度胸どきょう』はありそうだな、」
って、ガイがケイジへ言ってた。
ケイジはやっとはなれられたようで、ちょっといやそうな横顔よこがおも見えた。

「あいつらなんなんだよ?なぁ?」
悪態あくたいっぽくケイジがこっちへ言ってくるから。
・・一呼吸ひとこきゅう、ちょっと考えたようなミリアは、上を見たような。
「まぁ、どうでもいいけどね、」
ミリアは端的たんてきに言って。
ほんとに気にしていない様子で、すぐ前を歩くケイジたちへ、歩調ほちょうを合わせるようにしていた。

準備じゅんびが多そうだ、」
そんなガイの視線しせんの先は向こう、動き出し始めた機械きかい金属きんぞくたるおとに。
気が付けば、はなれた場所ばしょからこちらを見守みまもっていたスタッフの彼らが、手を上げて呼び込んでいく。
あしっ・・!』
彼らの指示しじおうじて、他のチームの彼らも素直すなおしたがっているようだ。

気が付けば、大きくて広い部屋へやに、機械きかい駆動くどうする音と金属きんぞくのぶつかる音がひびいた。

それは、この場所と設備せつびが動き始めた音で。
それらにちょっと意識いしきせて歩くミリアも、その先で待っていたアライさんたち、スタッフの彼らが手を上げていたのを見つけたから。

―――――小走こばしりにっていくミリアの。
そんな後ろを、ガイも、ケイジたちも、それぞれの足取あしどりでっていった。
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