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第2章 - Sec 2
Sec 2 - 第21話
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『全員集まっているのか?・・なぜだろう?』
画面向こうのアイフェリアさんがそう、傍の誰かへ目線を送っていた。
それはこちらへの問いかけなのか、それとも、疑問を口にしただけなのか・・?と、どちらとも取れた。
ただ、そのとき彼女が身を引いて離れたので、向こうの部屋の景色が少し広がって見えた。
そこは自分たちが今いる部屋と似ているけど、たぶん別の場所だろう。
置かれている機械や備品などは同じ物のようだけど。
画面の中で見切れる人の顔ぶれは当然、『Class - A』の人たちで、こちらを気にせずにスタッフの人たちと話していたりする。
その中には模擬戦で使う『ID-S』のライフルなども映っている。
アイフェリアさんは、わざわざこちらの部屋へ連絡を取ってきたらしい。
今も誰かと画面を調整しつつ、こちらの様子を窺うようだけど。
なにか指示を伝えに来たのだろうか。
こういうときよく思う、『EAU』はまだ軍部よりは緩い雰囲気なんだけれど。
軍部に置き換えると、上官から直接の連絡が来ている状況なので、とりあえず、背筋はなるべく正した方がいいんだろう。
そういえば、さっきのアイフェリアさんの質問には誰かが答えるだろう、とミリアは思っていたけれど。
さっきから誰も返事をしていないのに気付いて、ちょっと周りを見たら、みんなは落ち着かない様子みたいだ。
一番前に立っている『C』の彼らさえ、顔を見合わせてソワソワしたりしていた。
『・・聞こえている・・な・・・?』
って、ちょっと一瞬だけノイズが走ったように、音が割れたみたいだけど、アイフェリアさんはやっぱり懸念しながらこっちを見ているみたいだ。
『はい、繋がってますよ』
アイフェリアさんの方で、たぶん画面外の誰かが話す声も聞こえた。
改めて見るアイフェリアさんの格好は、自分たちと同じ、ブカっとしたツナギのような特殊な『それ』だ。
首回りなどの襟の陰や隙間に保護防具の一部が見える。
『大丈夫、映ってます、』
こちら側のスタッフの人も答えてた。
彼は繋がっている端っこの操作装置で調整していたらしく、それから、その大きめのモニタへ見やすいように移し替えてくれた。
もう1人、手でモニタをずらしたりして角度を調整してくれていたスタッフの人も確認を取ってた。
そんな中で、こっちのチームの人たちは仲間と話しているようだったけど、まだ戸惑いや驚きが残っているようだ。
『聞こえているか?君たち、』
まあ、急に向こうから通信が来たのだから、しょうがないとは思うけど・・・って、そういえば。
こっち側はまだ指揮官をちゃんと決めてないんだった。
それはつまり、上官との連絡など、こういう状況で、代表して話す人がまだ決まってないということだ。
「・・ぉぁ、」
「おれいっちゃうぜ?」
って、戸惑いの残ってる彼らの中で。
「これ?ちゃんと聞こえてまぁーすっ?」
一番前ではっきりと『C』の彼、ミリュモ ・ ル・ サラマンが大きな声で答えてた・・・。
『・・聞こえてるな?』
「はい、聞こえてます」
傍のマイヤーも答えていたし。
『そうか。・・そう固くしなくていい。様子を見ようとしただけだ。準備がある者は気にせず続けてくれ。』
彼女の言葉通りに『気にしない』というのも、ちょっと抵抗があるけれど。
それより、彼らが話すその間もミリアは、モニタの向こうへまたちょっと気を取られていた。
画面に映る『A』の彼らは、そのほとんどの体格が良い。
彼らは自分たちと同じ格好で、すでに準備を済ませて待ち時間を過ごしているのかと思うけれど、それから金属の――――機具を身につけた人が、アイフェリアさんの後ろを一瞬横切ったのが・・・ん・・?――――――
「――――――なんか用?っすかぁ?こっちゼッサン喋ってたんだけどー??」
って、ミリュモが近くで、不機嫌そうに言っていたけれど。
って、・・気が付けば、周りが少しピリッとしているのか。
彼へ目線を送る人たちも、その砕けた言い方がちょっと、気になったんだと思う。
『そちらが滞りなく準備できているかを確認したかった。邪魔をしたか。』
でも、凛としているアイフェリアさんは、気にしていないようだ。
かすかに口元が笑んだ・・のかは、見間違いかもしれないけど。
「ぜんぜんっ問題ねーっす、なあ?」
「ぁ?ぁー、うっす、そう。そうっす。」
デンの口がうまく動いていないみたいだ。
彼、さっきまで流ちょうに自己紹介とか、って喋っていたけれど、今は周りのみんなへ目を泳がせつつで。
それは変な雰囲気を感じる、ミリアも周りの様子をまた見つつ。
アイフェリアさんの方を見れば―――ただ―――彼女の背後に映った、気になる人を思い出した。
たまに画面から見切れる誰かが各自で支度中だったり、誰か、屈強な彼らがライフルを手に取って、ツナギを着たスタッフの人たちと動く中で・・誰か―――――その身体の一部に、機械的な『白い装甲』の一部を|着けている人がいたりする。
あれは『装甲』だ―――――
体を覆う形状に、動きを補助するよう緻密に動く機械。
自分にとって見慣れないものなので、ちょっと一瞬、なんなのかわからなかった。
「・・ん?」
って、ミリアはちょっと、思わず怪訝に、ちょっと眉を顰め、小さく音を漏らして。
ちょっと、瞬いたけど。
「ん?」
隣のガイが気が付いたみたいで、見上げたミリアと目が合った。
――――――『・・正直、時間が惜しくてね。』
って、アイフェリアさんたちと彼らで話を続けているけれど。
『何度も急かす形になるが。周囲の指示に従ってくれ。問題があるようなら、遠慮なくスタッフに相談を・・・』
「こっちゃ問題ねーっす、そっちよゆーなんっすか?」
やっぱりミリュモの発言は、ちょっと目立っているけれど。
『こちらも問題は無いよ。では、彼らに従ってくれ。』
そんな言い方でもアイフェリアさんはやっぱり気にした風でもない。
本当に時間が無いのかもしれないけど。
そう、それはいいんだけど。
いや、良くは無いけど。
それより。
アイフェリアさんたちが身に着けている、支給されたばかりの新品の装備も自分たちと同じものだけど―――――その後ろに立ち止まっている、彼の――――――しっかりとした体に纏う機械装甲の部品、あれはやっぱり――――――『外骨格デバイス』だ――――――
―――――あれ、」
「あれ?」
「え?・・え?」
何かに気が付いた誰かと誰かの声が重なっているかもしれない。
「・・あれ?」
「・・・ぅえ、ぉお・・・?・・」
「ん・・・?・・」
傍の人たちがちょっとざわめいてきてた。
「あれ、ほんとか?」
って、呟く隣のガイも、もう気が付いてるようだ。
もしかして、怪我防止用の防具だとか・・・。
アレは、普通に動いているけれど。
・・いや、そんな単純そうなものじゃなさそう・・・よね?
「あれ『パワードスーツ』じゃん?」
誰かが大きめの声で、はっきり言っていた。
―――――そもそも、戦闘用の『外骨格デバイス』はあまり一般的じゃない。
なぜなら、未だにいろいろな問題を抱えているのもあるし、一番の理由は『コストが高い』からと聞いたことがある。
――――たしか、人型に利便性などを追求する装甲のそれらは、軍部でも特殊な環境下での使用だったり、試験運用された話も聞いたことはある。
―――――それらが『EAU』の最新装備として使われていても不思議ではないのかもしれないけれど・・・でも、とてもとっても、『違和感』がある。
目の前の、あの『外骨格デバイス』は、金属的な赤色を基調に、鈍色とでデザインされている。
顔まで全身をカバーする人型装甲の、全体的にも頑丈そうで硬そうな骨組みが僅かに見える部分も、彼が歩く動きに合わせて駆動していて。
・・たぶん、動力を使っている、アクティブ型か・・?・・・私は、そんなに詳しいわけじゃないんだけれど。
余計な部品や装備も付属していない、素体に近いのか・・・。
・・・あと、どこかで見たことがあるような見た目だ。
――――――「かっこぇ・・、」
って、呟くようなのが聞こえたのは、いつの間にか、『C』の、彼、一番静かな感じの・・・ガリナ・エルポ、彼がちょっと前に出てきていた。
その『外骨格デバイス』へ向けてる横顔は、目が輝いているかもしれない。
なんだか、最初の印象よりも少年っぽい。
まあたしかに、あんな凄そうな物が急に現れたら、誰だって気になるだろう。
『向こうのやつらっすか?』
って、みんなが前のめりになってる中で、その映像の向こうから外骨格デバイスでフルフェイスの彼が、こちらへ近づいてきていた。
機械が重そうなその装甲の塊の、『気まぐれ』みたいだ。
――――――「えぇ、ずっりぃっ、」
って、ちょっと、誰かの大きな声で、ぴくっとしたミリアだけど。
『ん・・・?、・・・』
って、話していたアイフェリアさんも彼らの反応に気がついたのか、後ろを見てから、なにか言おうとしたようで。
『これは・・、』
『ぉいおい、のんきか?』
って、でも、前へ出てきた誰か、大きなおじさんの顔がこっちの画面を覗き込んできた。
『遊んでていいのかぁあ?』
からかうような、ちょっと悪い言い方だけれど。
『お前ら、隊長の邪魔をするんじゃない。』
って、追い払われるような。
そんな、画面の向こうのやり取りの中で、ちょっと人が集まってきてる感じがしていた。
『へっへっへ、』
急に現れた彼らが悪戯に笑って離れれば。
アイフェリアさんのクールな口元からの、ほんのちょっと苦笑いが映ったかもしれない。
「あれって『パワードスーツ』?ってやつ?」
「ってぇ、あっち本気すぎ?」
それより、こっちのチームが、ちょっと気持ちが引いてるみたいだけど。
そう、でも、『外骨格デバイス』は、たぶん、『EAU』では現場での使用の話は聞いたことがない。
それを実戦形式の模擬戦で使うっていうことは――――そういうことなんだろうか・・・?
そういえば、遠い話だけど、対特能戦を目標とした外骨格デバイスの研究があるって聞いたことがある。
それらは、いくつかの企業のニュースだったと思うけど―――――
「え、マジであんなのとやんのか?俺たち?」
って、誰かが言った―――――だから、ブルっ・・と―――――――お腹の奥が震えた―――――
彼らの言う通りだとしたら。
一瞬、想像して。
もし、私たちの相手が、彼らで―――――――
「ずりぃ、」
ミリュモが、そう。
「ずっけぇえのっ、」
って、大きな声で言っていた。
『これは・・』
アイフェリアさんがそう、何かを言おうとしてた・・・――――――
『ぉおおううぉおうおう!!ちびってんのかぁああ?ガキどもぉお!!だぁっははっはっは!!』
って。
急な、豪快な大きな声に、ミリアもちょっとピクっとしてたけど。
しかも、あれがバークさんの声だとすぐわかってしまうくらい特徴がある。
――――――あと、アイフェリアさんも『その声』の大きさにちょっと小さくビクっとしたのも見えてたけど。
『おいバーク、』
『うるせぇぞ、』
バークさんが向こうの見えないところで文句を言われているようだ。
「・・うわ」
こっち側の誰かは、ちょっと引いてるかもしれない。
『どぅわっはっはっは!』
って次に、どこからか甲高い特徴的な笑い声、ロヌマのっぽいのも聞こえてきた。
『おい、お前ら、あっち行ってろ・・、』
『なんだなんだ?こそこそ話して怪しいぜぇええ?』
『おい、バーク・・』
騒ぐのが好きそうな人たちが、こっちを見つけて寄ってきているんだと思う。
マジメに追い払いたい彼らも迷惑そうで、でも、ふと苦笑いが出てしまうようだ。
『・・こちらも、せわしないな、』
アイフェリアさんがそう呟いたけど。
その横顔はクールで、やっぱり、かすかに和らいだ、一瞬の苦笑いみたいだ。
『各自、しっかり準備を進めてくれ。』
そして、こちらへ、彼女はすぐに冷静に伝えてくる。
『周囲の指示に従い説明を受けてくれ。ここは『彼ら』の領分であるから――――――』
「俺を、」
――――って、『C』の、ディーが。
「『約束』を、」
彼がアイフェリアさんへ、・・急に。
言葉は足りないけど、何を言いたいのかは分かった気がする。
さっき話していた例の『約束』の話なんだと思う。
推挙するという、アレ―――――『C』の彼らが、『Class - A』へ推挙されたいというような『約束』。
ディーが、口を開いてまだ何かを言おうと。
『・・ああ、わかってる。』
でも、彼を見つめたアイフェリアさんが、それに応えていた。
「ぜってぇ負けねぇ・・」
ディーの、イラつくような険しい横顔と。
「汚ねぇのっ!」
ミリュモが非難していたけれど。
それは、まあ。
外骨格デバイスの存在は、かなり大きいから。
『・・・ああ、』
アイフェリアさんは、彼らの様子を見ていて。
それから、静かに口を開いた。
『我々が手を抜くことは、決して無い』
って・・・。
・・そう。
本気なのか、そのトーンは重みが増したように。
アイフェリアさんの、凛とした表情は、物静かだったけれど。
『この際だ。1つ教えておこう、君たちに。』
―――――ただ、彼女の表情から、笑みは消えた。
『『EAU』には決して、『特能力者』が必要なわけではない。
特能力者を始末するのに、決して『それ』が必要なわけではないのだから。』
――――って。
「はぁあぁー??」
不満で怪訝な、ミリュモの耳障りな声と。
少し、ざわっとした彼らの・・・。
『そこのバカそうなヤツはわかってなさそうだな、』
って、横から、言ってくるその人も、アイフェリアさんの近くで。
「はぁあんっ・・??!」
『お前らは何をしても俺達には敵わねぇってことだよっ!』
って。
『だはぁはっは!!』
って、後ろの周りの人たちも笑っている。
・・・彼らが軽口を言ってきている、っていうのはわかるけれど。
・・ただ、こっち側のチームの人たちはというと、だいぶ静かになったような。
「・・・こっちに『A』とか・・・要らねぇんだけどよ・・・、マジで、」
・・って、彼、ディーが苛立ったように。
ミリアがちょっと覗くと、こっちへ、親指で適当に、ディーが指を差してきたのと目が合った。
ミリアは、瞬いたけど。
・・えっと。
「うは、きっつ、」
って、面白がってる、向こうのミリュモだ。
こっちも、彼らと同じチームではあるんだけれど。
「勝つのに、やっぱいらねぇって、『A』なんかっ、」
って、ミリュモは特に言い方が、挑発をするような、だ。
・・ミリアがちらっと見る、『C』の、マイヤーやガリナ・エルポも口を開かず、その横顔はアイフェリアさんたちを見つめている。
周りの他の彼らは、微妙な反応で、こっちへ向けてる顔は、何か言いたいことがありそうな雰囲気も感じたが。
―――――そんな中で、私を見ているディーの目に、気が付く――――鋭い、黒い目―――――その感じ、どこかで見た――――――
――――静かに、ミリアは、その―――――
―――――君たちも納得したと思ったが。』
アイフェリアさんの声に、気が付いたミリアは彼女へ顔を戻した。
「・・・、」
ディーが、そのまま黙るようで。
「えぇっ?もう終わりかよー?」
ミリュモが驚いていた、なぜか残念そうだけど。
『・・そうか、』
アイフェリアさんは何かを思案しているような、でも。
『C』の彼らは目を合わせない。
ディーはそっぽを向いているし、マイヤーはそんな彼を見ていたが。
『各人、いろいろ思うところがあるだろうが。
・・さて、楽しい時間が始まる。』
そう、それで話は終わりみたいだ。
まあ、こっちとしても、今さらそんなことを言われても、って感じだし。
―――――ミリアがもう一度、ちらっと横目で見る彼ら、『C』の人たち、それ以外の彼らも、思い思いの横顔を、その表情たちが、もうアイフェリアさんたちへ向けられている。
『作戦は君たちが決めればいい。納得のいく形で』
アイフェリアさんの、冷静な声をみんなが静かに聞いている。
―――――『隊長、順番来てますよ、』
『ああ、』
向こうで呼ばれたアイフェリアさんは。
『なおさら無駄話をしている時間は無いな。君たちも急げよ。』
『チャンスが減るぞ?』
横から茶々も入るけれど。
『だが約束は守る。』
って、アイフェリアさんの静かな声に――――――
『君たちが、挑戦するチャンスは常に開いておく。』
―――――それは、冷たさと、軽やかさもあるような響き・・・。
「響き、ちょっと変わってきてないか・・?」
って、隣のガイがぼそっと呟く。
それに、その横顔はこっちへ、ちょっとニヤっとした。
『それじゃあ時間だ』
アイフェリアさんは・・わずかに口元を柔らかくしたのか。
『さっさと準備をしよう。』
―――――ちょっと、ピリっとする―――――アイフェリアさんのわずかな表情にも。
ミリアは口をきゅっと、閉じた。
「・・お・・・?」
周りの、ぴく・・っと彼らの表情も強張ったのかもしれない・・・。
『そういうわけだ、せいぜいがんばれよっ』
って、向こうの、周りの彼らが。
『俺はぜんっぜんっ期待してねーからな・・っ、ドベからやり直せよ!』
って、アイフェリアさんの周りから言ってきた。
『地べたに這いずり回してやっからなぁあ!!ってえぇやるぜぇええ、』
って、質の悪い呂律のバークさんが急に画面へ顔を近づけてきた、汚くベロを出したり、存在感のすごい悪い顔をしている、モニタの向こうで。
「うわ・・、」
近くで誰かが、また引いてるようだ。
『フぅぅうぉおーっ!』
って、アイフェリアさんたちの後ろから、彼らの中でとても興奮しているような、ハイテンションな、一際小さいフルフェイスの機械の人が、飛び込んで突進してきた。
『ぶふぉお?いてぇっ?』
バークさんが横っ腹にタックルを受けたようで、ちょっと『くの字』に曲がってた。
『ぶはっはっは、』
でも、周りでは笑いが起きたみたいだ。
『カかってこぉイぁあァァーー!!』
興奮冷めやまない、わぁっ、って暴れるその『小さいの』は、こっちを威嚇しているのか両手を上げたりで、ていうか、その声はフルフェイスでくぐもっているけど、甲高い雄たけびのような声は聞き覚えのある。
『おい、こいつをあっちへ連れてけ、ゴドー、シン、ついでにバークも、』
彼らの中でとても小さいので、逆にかなりわかりやすい。
そしたら、後ろから大きなシンさんが手で軽々と『ロヌマ』を、というか、その小さな機械人を持ち上げていく、さっき見たような光景だ。
『もう切ってくれ、』
アイフェリアさんが冷静に言ってた。
『はい、』
なるべく無感情に言ったようだけど、彼らのノリがあまり好きじゃないのかもしれない、というか、ちょっと嫌そうな顔かもしれない。
―――――『面白い話してたねぇ?アイフェ、あんたもなかなか言うじゃないかぁ、』
って、ニヤニヤしてる大きな女の人がアイフェリアさんの所に来て絡んでるし。
『マージュ、あんまり煽ってやんなや。むしろ向こうをを煽るのが聖なるマナーだぜ―――――』
『準備を急げってさああぁ――――――』
パッ、と画面が―――――例のOSの青いタイトルロゴ入りのものに、画面が切り替わってた。
最後に、アイフェリアさんのちょっと微妙な横顔、ちょっと参ったような顔が一瞬だけ見切れたし―――――
それから、バークさんたちの言い合ってるような顔も一瞬映ってたけど―――――
『通信終わる』
そう、こっちで通信をコントロールしていた彼が冷静に伝えてた。
―――――えっと・・・。
なんだか、いろいろあった気がしたけれど。
ミリアが、みんなの顔を見回すことを思いついたとき。
「なんだあいつらっ?」
って、ミリュモが。
「あいつら舐めまくりだったよなぁあぁ!?」
ミリュモが怒ってたけど、もう通信が終わった後だ。
「っんだっ!性格腐ってんのかっ?マジでっ!」
地団駄でも踏みそうな怒ってるミリュモが言うのは、どっちもどっちなんじゃないか、とは思うミリアだけども。
「やべぇな、『A』、」
「あれが『A』なのか?やべぇな?」
「けっこうな?」
なんだか、異なるヤバさを感じているような他の人たちみたいだけれども。
「ずいぶん自由なんだね?」
「ね、もっと固いのかと思ってた」
って、『C』以外の彼らも、仲間へそれぞれ話しているようだ。
「舐められてんじゃねーの?」
「俺ら、完全に舐められてんのな、」
「なめやがってぇえ・・・!」
なんだか、こっちへ向けられる、いくつかの目線がちょっと『アレ』な気がしなくもない。
絶対に『とばっちり』だけれども、主にバークさんとかの所為の。
同じ『Class - A』だからって、私たちが言ったわけじゃないわけで。
まあ、彼らに囲まれた最後のアイフェリアさんは、手でちょっと頭痛でも抑えていた感じだったのは、ちょっと印象的だ。
「正直に言えば、俺は今からでも、ちょっとくらい手を抜いてもらえればいいと思っている、」
「やめとけって、デン。あいつらに殺されるぞ」
「ほら、こっち見た、」
なんて、悪戯っぽいデンたちがミリュモたちに、ギラギラに睨まれているけれど。
「へっへっへ、」
「おまえら・・っ・・」
「んじゃ、マジな話、しようぜ。」
って、デンが。
「どうやって勝つ?」
デンがそう、飄々と、堂々と。
だから、彼らは一瞬、押し黙った。
・・そして、デンの傍の彼が、無言で歩き出していた。
「リーダーは後で決めようぜ、」
そう言ってデンも、彼を追いかけるように歩き出した。
「もしくはいいアイディアを持ってるヤツが決める。お、それがいいかもな。それまでに準備しよーぜ。なんかいろいろやることがあるみたいだし。チャンスを自分から潰すわけにゃいかねぇしなぁ、」
そんな風に飄々と、この場から離れる彼はみんなへ、というより、独り言のようだった。
それを皮切りに、他の人たちも顔を見合わせるまでもなく、仲間たちと散り始めた。
・・さっきまで何かで揉めていた気もしたけど。
彼らは忘れたように、気持ちが少しは切り替わったのかもしれない。
「・・お前ら、余計な事すんなよ?」
って。
わざわざ彼、ミリュモはこっちへ指差しまでしてきた。
彼ら、マイヤーや・・ディーの。
彼らの強い視線も、ミリアは受け止めていた。
「ぁあん?」
・・・って?
ミリアの傍で、お腹からの声がして。
ちょっと瞬くミリアが。
振り返ったらケイジがちょっと、睨み返してたようだ。
「・・あぁ?」
それに気が付いたようなディーも、なんだか同じ。
「ぁあん?」
「・・・あ?」
ミリュモとか、ちょっと近寄っていく彼ら、・・・なんか、
お互いに脊髄反射みたいだけど。
放っておけば、めんどくさいことになりそうだな、とミリアは直感にでも思ったけど。
「おいおい、」
って、素早くガイの背中がミリアを追い越して。
そして、ケイジの肩を掴んでくれてた。
「ぅっ、ぐぇ、」
それも、ほんとにしっかりと、ケイジの体幹が曲がるくらい力を入れてくれたようだ。
「ディー、やることあるだろ、」
向こうのディーも、マイヤーに呼ばれてた。
そんな様子を見ていたミリアは。
もしかしたら、ケイジと彼らは気が合いそうな、と心の中でちょっとばかり思いつつ。
向こうのミリュモが、歯を剥いてこっちに何とも言えない顔を向けてた、のを見つけてたけど。
それがどんな気持ちなのか、よくわからないので、見なかったことにした。
たぶん、敵愾心なのかな、とは思うけど。
「よし、戻るか、」
ガイが、いつの間にかケイジの肩に腕を回して巻き込むように、引きずって行ってた。
「離せっ、」
嫌がってるケイジでも、ガイからは簡単に逃げられないようだった。
ミリアも、その後ろを追って。
「・・『新人』なら俺らとそう変わらねぇだろうし・・、」
「仕方ねぇな・・・、」
向こうから聞こえた、『C』の彼らの声は、好き勝手に言っているみたいだ。
歩き出していたミリアは、耳に入ったその会話へ一瞥したけれど。
彼らはまた、他の人たちに声をかけたらしく。
「・・っ・・・まえら、」
「置いてくぞー」
「あ、おいっ、」
また揉めるような――――そんな彼らを横目に、近くで歩くリースがこっちを、ぼうっとした感じで見ているのに気が付いた。
ずっと静かなリースは相変わらずで、さっきのやり取りにも、きっと何も考えてないんだろうな、って思う。
ミリアはちょっと、肩から大きめに息を吸って・・吐いた。
ため息のようになって。
肩の力が小さく抜けてた。
いつの間にか、ちょっと力が入っていたのかもしれない。
「まあ、『度胸』はありそうだな、」
って、ガイがケイジへ言ってた。
ケイジはやっと離れられたようで、ちょっと嫌そうな横顔も見えた。
「あいつらなんなんだよ?なぁ?」
悪態っぽくケイジがこっちへ言ってくるから。
・・一呼吸、ちょっと考えたようなミリアは、上を見たような。
「まぁ、どうでもいいけどね、」
ミリアは端的に言って。
ほんとに気にしていない様子で、すぐ前を歩くケイジたちへ、歩調を合わせるようにしていた。
「準備が多そうだ、」
そんなガイの視線の先は向こう、動き出し始めた機械と金属の当たる音に。
気が付けば、離れた場所からこちらを見守っていたスタッフの彼らが、手を上げて呼び込んでいく。
『駆け足っ・・!』
彼らの指示に応じて、他のチームの彼らも素直に従っているようだ。
気が付けば、大きくて広い部屋に、機械の駆動する音と金属のぶつかる音が響いた。
それは、この場所と設備が動き始めた音で。
それらにちょっと意識を寄せて歩くミリアも、その先で待っていたアライさんたち、スタッフの彼らが手を上げていたのを見つけたから。
―――――小走りに駆け寄っていくミリアの。
そんな後ろを、ガイも、ケイジたちも、それぞれの足取りで追っていった。
画面向こうのアイフェリアさんがそう、傍の誰かへ目線を送っていた。
それはこちらへの問いかけなのか、それとも、疑問を口にしただけなのか・・?と、どちらとも取れた。
ただ、そのとき彼女が身を引いて離れたので、向こうの部屋の景色が少し広がって見えた。
そこは自分たちが今いる部屋と似ているけど、たぶん別の場所だろう。
置かれている機械や備品などは同じ物のようだけど。
画面の中で見切れる人の顔ぶれは当然、『Class - A』の人たちで、こちらを気にせずにスタッフの人たちと話していたりする。
その中には模擬戦で使う『ID-S』のライフルなども映っている。
アイフェリアさんは、わざわざこちらの部屋へ連絡を取ってきたらしい。
今も誰かと画面を調整しつつ、こちらの様子を窺うようだけど。
なにか指示を伝えに来たのだろうか。
こういうときよく思う、『EAU』はまだ軍部よりは緩い雰囲気なんだけれど。
軍部に置き換えると、上官から直接の連絡が来ている状況なので、とりあえず、背筋はなるべく正した方がいいんだろう。
そういえば、さっきのアイフェリアさんの質問には誰かが答えるだろう、とミリアは思っていたけれど。
さっきから誰も返事をしていないのに気付いて、ちょっと周りを見たら、みんなは落ち着かない様子みたいだ。
一番前に立っている『C』の彼らさえ、顔を見合わせてソワソワしたりしていた。
『・・聞こえている・・な・・・?』
って、ちょっと一瞬だけノイズが走ったように、音が割れたみたいだけど、アイフェリアさんはやっぱり懸念しながらこっちを見ているみたいだ。
『はい、繋がってますよ』
アイフェリアさんの方で、たぶん画面外の誰かが話す声も聞こえた。
改めて見るアイフェリアさんの格好は、自分たちと同じ、ブカっとしたツナギのような特殊な『それ』だ。
首回りなどの襟の陰や隙間に保護防具の一部が見える。
『大丈夫、映ってます、』
こちら側のスタッフの人も答えてた。
彼は繋がっている端っこの操作装置で調整していたらしく、それから、その大きめのモニタへ見やすいように移し替えてくれた。
もう1人、手でモニタをずらしたりして角度を調整してくれていたスタッフの人も確認を取ってた。
そんな中で、こっちのチームの人たちは仲間と話しているようだったけど、まだ戸惑いや驚きが残っているようだ。
『聞こえているか?君たち、』
まあ、急に向こうから通信が来たのだから、しょうがないとは思うけど・・・って、そういえば。
こっち側はまだ指揮官をちゃんと決めてないんだった。
それはつまり、上官との連絡など、こういう状況で、代表して話す人がまだ決まってないということだ。
「・・ぉぁ、」
「おれいっちゃうぜ?」
って、戸惑いの残ってる彼らの中で。
「これ?ちゃんと聞こえてまぁーすっ?」
一番前ではっきりと『C』の彼、ミリュモ ・ ル・ サラマンが大きな声で答えてた・・・。
『・・聞こえてるな?』
「はい、聞こえてます」
傍のマイヤーも答えていたし。
『そうか。・・そう固くしなくていい。様子を見ようとしただけだ。準備がある者は気にせず続けてくれ。』
彼女の言葉通りに『気にしない』というのも、ちょっと抵抗があるけれど。
それより、彼らが話すその間もミリアは、モニタの向こうへまたちょっと気を取られていた。
画面に映る『A』の彼らは、そのほとんどの体格が良い。
彼らは自分たちと同じ格好で、すでに準備を済ませて待ち時間を過ごしているのかと思うけれど、それから金属の――――機具を身につけた人が、アイフェリアさんの後ろを一瞬横切ったのが・・・ん・・?――――――
「――――――なんか用?っすかぁ?こっちゼッサン喋ってたんだけどー??」
って、ミリュモが近くで、不機嫌そうに言っていたけれど。
って、・・気が付けば、周りが少しピリッとしているのか。
彼へ目線を送る人たちも、その砕けた言い方がちょっと、気になったんだと思う。
『そちらが滞りなく準備できているかを確認したかった。邪魔をしたか。』
でも、凛としているアイフェリアさんは、気にしていないようだ。
かすかに口元が笑んだ・・のかは、見間違いかもしれないけど。
「ぜんぜんっ問題ねーっす、なあ?」
「ぁ?ぁー、うっす、そう。そうっす。」
デンの口がうまく動いていないみたいだ。
彼、さっきまで流ちょうに自己紹介とか、って喋っていたけれど、今は周りのみんなへ目を泳がせつつで。
それは変な雰囲気を感じる、ミリアも周りの様子をまた見つつ。
アイフェリアさんの方を見れば―――ただ―――彼女の背後に映った、気になる人を思い出した。
たまに画面から見切れる誰かが各自で支度中だったり、誰か、屈強な彼らがライフルを手に取って、ツナギを着たスタッフの人たちと動く中で・・誰か―――――その身体の一部に、機械的な『白い装甲』の一部を|着けている人がいたりする。
あれは『装甲』だ―――――
体を覆う形状に、動きを補助するよう緻密に動く機械。
自分にとって見慣れないものなので、ちょっと一瞬、なんなのかわからなかった。
「・・ん?」
って、ミリアはちょっと、思わず怪訝に、ちょっと眉を顰め、小さく音を漏らして。
ちょっと、瞬いたけど。
「ん?」
隣のガイが気が付いたみたいで、見上げたミリアと目が合った。
――――――『・・正直、時間が惜しくてね。』
って、アイフェリアさんたちと彼らで話を続けているけれど。
『何度も急かす形になるが。周囲の指示に従ってくれ。問題があるようなら、遠慮なくスタッフに相談を・・・』
「こっちゃ問題ねーっす、そっちよゆーなんっすか?」
やっぱりミリュモの発言は、ちょっと目立っているけれど。
『こちらも問題は無いよ。では、彼らに従ってくれ。』
そんな言い方でもアイフェリアさんはやっぱり気にした風でもない。
本当に時間が無いのかもしれないけど。
そう、それはいいんだけど。
いや、良くは無いけど。
それより。
アイフェリアさんたちが身に着けている、支給されたばかりの新品の装備も自分たちと同じものだけど―――――その後ろに立ち止まっている、彼の――――――しっかりとした体に纏う機械装甲の部品、あれはやっぱり――――――『外骨格デバイス』だ――――――
―――――あれ、」
「あれ?」
「え?・・え?」
何かに気が付いた誰かと誰かの声が重なっているかもしれない。
「・・あれ?」
「・・・ぅえ、ぉお・・・?・・」
「ん・・・?・・」
傍の人たちがちょっとざわめいてきてた。
「あれ、ほんとか?」
って、呟く隣のガイも、もう気が付いてるようだ。
もしかして、怪我防止用の防具だとか・・・。
アレは、普通に動いているけれど。
・・いや、そんな単純そうなものじゃなさそう・・・よね?
「あれ『パワードスーツ』じゃん?」
誰かが大きめの声で、はっきり言っていた。
―――――そもそも、戦闘用の『外骨格デバイス』はあまり一般的じゃない。
なぜなら、未だにいろいろな問題を抱えているのもあるし、一番の理由は『コストが高い』からと聞いたことがある。
――――たしか、人型に利便性などを追求する装甲のそれらは、軍部でも特殊な環境下での使用だったり、試験運用された話も聞いたことはある。
―――――それらが『EAU』の最新装備として使われていても不思議ではないのかもしれないけれど・・・でも、とてもとっても、『違和感』がある。
目の前の、あの『外骨格デバイス』は、金属的な赤色を基調に、鈍色とでデザインされている。
顔まで全身をカバーする人型装甲の、全体的にも頑丈そうで硬そうな骨組みが僅かに見える部分も、彼が歩く動きに合わせて駆動していて。
・・たぶん、動力を使っている、アクティブ型か・・?・・・私は、そんなに詳しいわけじゃないんだけれど。
余計な部品や装備も付属していない、素体に近いのか・・・。
・・・あと、どこかで見たことがあるような見た目だ。
――――――「かっこぇ・・、」
って、呟くようなのが聞こえたのは、いつの間にか、『C』の、彼、一番静かな感じの・・・ガリナ・エルポ、彼がちょっと前に出てきていた。
その『外骨格デバイス』へ向けてる横顔は、目が輝いているかもしれない。
なんだか、最初の印象よりも少年っぽい。
まあたしかに、あんな凄そうな物が急に現れたら、誰だって気になるだろう。
『向こうのやつらっすか?』
って、みんなが前のめりになってる中で、その映像の向こうから外骨格デバイスでフルフェイスの彼が、こちらへ近づいてきていた。
機械が重そうなその装甲の塊の、『気まぐれ』みたいだ。
――――――「えぇ、ずっりぃっ、」
って、ちょっと、誰かの大きな声で、ぴくっとしたミリアだけど。
『ん・・・?、・・・』
って、話していたアイフェリアさんも彼らの反応に気がついたのか、後ろを見てから、なにか言おうとしたようで。
『これは・・、』
『ぉいおい、のんきか?』
って、でも、前へ出てきた誰か、大きなおじさんの顔がこっちの画面を覗き込んできた。
『遊んでていいのかぁあ?』
からかうような、ちょっと悪い言い方だけれど。
『お前ら、隊長の邪魔をするんじゃない。』
って、追い払われるような。
そんな、画面の向こうのやり取りの中で、ちょっと人が集まってきてる感じがしていた。
『へっへっへ、』
急に現れた彼らが悪戯に笑って離れれば。
アイフェリアさんのクールな口元からの、ほんのちょっと苦笑いが映ったかもしれない。
「あれって『パワードスーツ』?ってやつ?」
「ってぇ、あっち本気すぎ?」
それより、こっちのチームが、ちょっと気持ちが引いてるみたいだけど。
そう、でも、『外骨格デバイス』は、たぶん、『EAU』では現場での使用の話は聞いたことがない。
それを実戦形式の模擬戦で使うっていうことは――――そういうことなんだろうか・・・?
そういえば、遠い話だけど、対特能戦を目標とした外骨格デバイスの研究があるって聞いたことがある。
それらは、いくつかの企業のニュースだったと思うけど―――――
「え、マジであんなのとやんのか?俺たち?」
って、誰かが言った―――――だから、ブルっ・・と―――――――お腹の奥が震えた―――――
彼らの言う通りだとしたら。
一瞬、想像して。
もし、私たちの相手が、彼らで―――――――
「ずりぃ、」
ミリュモが、そう。
「ずっけぇえのっ、」
って、大きな声で言っていた。
『これは・・』
アイフェリアさんがそう、何かを言おうとしてた・・・――――――
『ぉおおううぉおうおう!!ちびってんのかぁああ?ガキどもぉお!!だぁっははっはっは!!』
って。
急な、豪快な大きな声に、ミリアもちょっとピクっとしてたけど。
しかも、あれがバークさんの声だとすぐわかってしまうくらい特徴がある。
――――――あと、アイフェリアさんも『その声』の大きさにちょっと小さくビクっとしたのも見えてたけど。
『おいバーク、』
『うるせぇぞ、』
バークさんが向こうの見えないところで文句を言われているようだ。
「・・うわ」
こっち側の誰かは、ちょっと引いてるかもしれない。
『どぅわっはっはっは!』
って次に、どこからか甲高い特徴的な笑い声、ロヌマのっぽいのも聞こえてきた。
『おい、お前ら、あっち行ってろ・・、』
『なんだなんだ?こそこそ話して怪しいぜぇええ?』
『おい、バーク・・』
騒ぐのが好きそうな人たちが、こっちを見つけて寄ってきているんだと思う。
マジメに追い払いたい彼らも迷惑そうで、でも、ふと苦笑いが出てしまうようだ。
『・・こちらも、せわしないな、』
アイフェリアさんがそう呟いたけど。
その横顔はクールで、やっぱり、かすかに和らいだ、一瞬の苦笑いみたいだ。
『各自、しっかり準備を進めてくれ。』
そして、こちらへ、彼女はすぐに冷静に伝えてくる。
『周囲の指示に従い説明を受けてくれ。ここは『彼ら』の領分であるから――――――』
「俺を、」
――――って、『C』の、ディーが。
「『約束』を、」
彼がアイフェリアさんへ、・・急に。
言葉は足りないけど、何を言いたいのかは分かった気がする。
さっき話していた例の『約束』の話なんだと思う。
推挙するという、アレ―――――『C』の彼らが、『Class - A』へ推挙されたいというような『約束』。
ディーが、口を開いてまだ何かを言おうと。
『・・ああ、わかってる。』
でも、彼を見つめたアイフェリアさんが、それに応えていた。
「ぜってぇ負けねぇ・・」
ディーの、イラつくような険しい横顔と。
「汚ねぇのっ!」
ミリュモが非難していたけれど。
それは、まあ。
外骨格デバイスの存在は、かなり大きいから。
『・・・ああ、』
アイフェリアさんは、彼らの様子を見ていて。
それから、静かに口を開いた。
『我々が手を抜くことは、決して無い』
って・・・。
・・そう。
本気なのか、そのトーンは重みが増したように。
アイフェリアさんの、凛とした表情は、物静かだったけれど。
『この際だ。1つ教えておこう、君たちに。』
―――――ただ、彼女の表情から、笑みは消えた。
『『EAU』には決して、『特能力者』が必要なわけではない。
特能力者を始末するのに、決して『それ』が必要なわけではないのだから。』
――――って。
「はぁあぁー??」
不満で怪訝な、ミリュモの耳障りな声と。
少し、ざわっとした彼らの・・・。
『そこのバカそうなヤツはわかってなさそうだな、』
って、横から、言ってくるその人も、アイフェリアさんの近くで。
「はぁあんっ・・??!」
『お前らは何をしても俺達には敵わねぇってことだよっ!』
って。
『だはぁはっは!!』
って、後ろの周りの人たちも笑っている。
・・・彼らが軽口を言ってきている、っていうのはわかるけれど。
・・ただ、こっち側のチームの人たちはというと、だいぶ静かになったような。
「・・・こっちに『A』とか・・・要らねぇんだけどよ・・・、マジで、」
・・って、彼、ディーが苛立ったように。
ミリアがちょっと覗くと、こっちへ、親指で適当に、ディーが指を差してきたのと目が合った。
ミリアは、瞬いたけど。
・・えっと。
「うは、きっつ、」
って、面白がってる、向こうのミリュモだ。
こっちも、彼らと同じチームではあるんだけれど。
「勝つのに、やっぱいらねぇって、『A』なんかっ、」
って、ミリュモは特に言い方が、挑発をするような、だ。
・・ミリアがちらっと見る、『C』の、マイヤーやガリナ・エルポも口を開かず、その横顔はアイフェリアさんたちを見つめている。
周りの他の彼らは、微妙な反応で、こっちへ向けてる顔は、何か言いたいことがありそうな雰囲気も感じたが。
―――――そんな中で、私を見ているディーの目に、気が付く――――鋭い、黒い目―――――その感じ、どこかで見た――――――
――――静かに、ミリアは、その―――――
―――――君たちも納得したと思ったが。』
アイフェリアさんの声に、気が付いたミリアは彼女へ顔を戻した。
「・・・、」
ディーが、そのまま黙るようで。
「えぇっ?もう終わりかよー?」
ミリュモが驚いていた、なぜか残念そうだけど。
『・・そうか、』
アイフェリアさんは何かを思案しているような、でも。
『C』の彼らは目を合わせない。
ディーはそっぽを向いているし、マイヤーはそんな彼を見ていたが。
『各人、いろいろ思うところがあるだろうが。
・・さて、楽しい時間が始まる。』
そう、それで話は終わりみたいだ。
まあ、こっちとしても、今さらそんなことを言われても、って感じだし。
―――――ミリアがもう一度、ちらっと横目で見る彼ら、『C』の人たち、それ以外の彼らも、思い思いの横顔を、その表情たちが、もうアイフェリアさんたちへ向けられている。
『作戦は君たちが決めればいい。納得のいく形で』
アイフェリアさんの、冷静な声をみんなが静かに聞いている。
―――――『隊長、順番来てますよ、』
『ああ、』
向こうで呼ばれたアイフェリアさんは。
『なおさら無駄話をしている時間は無いな。君たちも急げよ。』
『チャンスが減るぞ?』
横から茶々も入るけれど。
『だが約束は守る。』
って、アイフェリアさんの静かな声に――――――
『君たちが、挑戦するチャンスは常に開いておく。』
―――――それは、冷たさと、軽やかさもあるような響き・・・。
「響き、ちょっと変わってきてないか・・?」
って、隣のガイがぼそっと呟く。
それに、その横顔はこっちへ、ちょっとニヤっとした。
『それじゃあ時間だ』
アイフェリアさんは・・わずかに口元を柔らかくしたのか。
『さっさと準備をしよう。』
―――――ちょっと、ピリっとする―――――アイフェリアさんのわずかな表情にも。
ミリアは口をきゅっと、閉じた。
「・・お・・・?」
周りの、ぴく・・っと彼らの表情も強張ったのかもしれない・・・。
『そういうわけだ、せいぜいがんばれよっ』
って、向こうの、周りの彼らが。
『俺はぜんっぜんっ期待してねーからな・・っ、ドベからやり直せよ!』
って、アイフェリアさんの周りから言ってきた。
『地べたに這いずり回してやっからなぁあ!!ってえぇやるぜぇええ、』
って、質の悪い呂律のバークさんが急に画面へ顔を近づけてきた、汚くベロを出したり、存在感のすごい悪い顔をしている、モニタの向こうで。
「うわ・・、」
近くで誰かが、また引いてるようだ。
『フぅぅうぉおーっ!』
って、アイフェリアさんたちの後ろから、彼らの中でとても興奮しているような、ハイテンションな、一際小さいフルフェイスの機械の人が、飛び込んで突進してきた。
『ぶふぉお?いてぇっ?』
バークさんが横っ腹にタックルを受けたようで、ちょっと『くの字』に曲がってた。
『ぶはっはっは、』
でも、周りでは笑いが起きたみたいだ。
『カかってこぉイぁあァァーー!!』
興奮冷めやまない、わぁっ、って暴れるその『小さいの』は、こっちを威嚇しているのか両手を上げたりで、ていうか、その声はフルフェイスでくぐもっているけど、甲高い雄たけびのような声は聞き覚えのある。
『おい、こいつをあっちへ連れてけ、ゴドー、シン、ついでにバークも、』
彼らの中でとても小さいので、逆にかなりわかりやすい。
そしたら、後ろから大きなシンさんが手で軽々と『ロヌマ』を、というか、その小さな機械人を持ち上げていく、さっき見たような光景だ。
『もう切ってくれ、』
アイフェリアさんが冷静に言ってた。
『はい、』
なるべく無感情に言ったようだけど、彼らのノリがあまり好きじゃないのかもしれない、というか、ちょっと嫌そうな顔かもしれない。
―――――『面白い話してたねぇ?アイフェ、あんたもなかなか言うじゃないかぁ、』
って、ニヤニヤしてる大きな女の人がアイフェリアさんの所に来て絡んでるし。
『マージュ、あんまり煽ってやんなや。むしろ向こうをを煽るのが聖なるマナーだぜ―――――』
『準備を急げってさああぁ――――――』
パッ、と画面が―――――例のOSの青いタイトルロゴ入りのものに、画面が切り替わってた。
最後に、アイフェリアさんのちょっと微妙な横顔、ちょっと参ったような顔が一瞬だけ見切れたし―――――
それから、バークさんたちの言い合ってるような顔も一瞬映ってたけど―――――
『通信終わる』
そう、こっちで通信をコントロールしていた彼が冷静に伝えてた。
―――――えっと・・・。
なんだか、いろいろあった気がしたけれど。
ミリアが、みんなの顔を見回すことを思いついたとき。
「なんだあいつらっ?」
って、ミリュモが。
「あいつら舐めまくりだったよなぁあぁ!?」
ミリュモが怒ってたけど、もう通信が終わった後だ。
「っんだっ!性格腐ってんのかっ?マジでっ!」
地団駄でも踏みそうな怒ってるミリュモが言うのは、どっちもどっちなんじゃないか、とは思うミリアだけども。
「やべぇな、『A』、」
「あれが『A』なのか?やべぇな?」
「けっこうな?」
なんだか、異なるヤバさを感じているような他の人たちみたいだけれども。
「ずいぶん自由なんだね?」
「ね、もっと固いのかと思ってた」
って、『C』以外の彼らも、仲間へそれぞれ話しているようだ。
「舐められてんじゃねーの?」
「俺ら、完全に舐められてんのな、」
「なめやがってぇえ・・・!」
なんだか、こっちへ向けられる、いくつかの目線がちょっと『アレ』な気がしなくもない。
絶対に『とばっちり』だけれども、主にバークさんとかの所為の。
同じ『Class - A』だからって、私たちが言ったわけじゃないわけで。
まあ、彼らに囲まれた最後のアイフェリアさんは、手でちょっと頭痛でも抑えていた感じだったのは、ちょっと印象的だ。
「正直に言えば、俺は今からでも、ちょっとくらい手を抜いてもらえればいいと思っている、」
「やめとけって、デン。あいつらに殺されるぞ」
「ほら、こっち見た、」
なんて、悪戯っぽいデンたちがミリュモたちに、ギラギラに睨まれているけれど。
「へっへっへ、」
「おまえら・・っ・・」
「んじゃ、マジな話、しようぜ。」
って、デンが。
「どうやって勝つ?」
デンがそう、飄々と、堂々と。
だから、彼らは一瞬、押し黙った。
・・そして、デンの傍の彼が、無言で歩き出していた。
「リーダーは後で決めようぜ、」
そう言ってデンも、彼を追いかけるように歩き出した。
「もしくはいいアイディアを持ってるヤツが決める。お、それがいいかもな。それまでに準備しよーぜ。なんかいろいろやることがあるみたいだし。チャンスを自分から潰すわけにゃいかねぇしなぁ、」
そんな風に飄々と、この場から離れる彼はみんなへ、というより、独り言のようだった。
それを皮切りに、他の人たちも顔を見合わせるまでもなく、仲間たちと散り始めた。
・・さっきまで何かで揉めていた気もしたけど。
彼らは忘れたように、気持ちが少しは切り替わったのかもしれない。
「・・お前ら、余計な事すんなよ?」
って。
わざわざ彼、ミリュモはこっちへ指差しまでしてきた。
彼ら、マイヤーや・・ディーの。
彼らの強い視線も、ミリアは受け止めていた。
「ぁあん?」
・・・って?
ミリアの傍で、お腹からの声がして。
ちょっと瞬くミリアが。
振り返ったらケイジがちょっと、睨み返してたようだ。
「・・あぁ?」
それに気が付いたようなディーも、なんだか同じ。
「ぁあん?」
「・・・あ?」
ミリュモとか、ちょっと近寄っていく彼ら、・・・なんか、
お互いに脊髄反射みたいだけど。
放っておけば、めんどくさいことになりそうだな、とミリアは直感にでも思ったけど。
「おいおい、」
って、素早くガイの背中がミリアを追い越して。
そして、ケイジの肩を掴んでくれてた。
「ぅっ、ぐぇ、」
それも、ほんとにしっかりと、ケイジの体幹が曲がるくらい力を入れてくれたようだ。
「ディー、やることあるだろ、」
向こうのディーも、マイヤーに呼ばれてた。
そんな様子を見ていたミリアは。
もしかしたら、ケイジと彼らは気が合いそうな、と心の中でちょっとばかり思いつつ。
向こうのミリュモが、歯を剥いてこっちに何とも言えない顔を向けてた、のを見つけてたけど。
それがどんな気持ちなのか、よくわからないので、見なかったことにした。
たぶん、敵愾心なのかな、とは思うけど。
「よし、戻るか、」
ガイが、いつの間にかケイジの肩に腕を回して巻き込むように、引きずって行ってた。
「離せっ、」
嫌がってるケイジでも、ガイからは簡単に逃げられないようだった。
ミリアも、その後ろを追って。
「・・『新人』なら俺らとそう変わらねぇだろうし・・、」
「仕方ねぇな・・・、」
向こうから聞こえた、『C』の彼らの声は、好き勝手に言っているみたいだ。
歩き出していたミリアは、耳に入ったその会話へ一瞥したけれど。
彼らはまた、他の人たちに声をかけたらしく。
「・・っ・・・まえら、」
「置いてくぞー」
「あ、おいっ、」
また揉めるような――――そんな彼らを横目に、近くで歩くリースがこっちを、ぼうっとした感じで見ているのに気が付いた。
ずっと静かなリースは相変わらずで、さっきのやり取りにも、きっと何も考えてないんだろうな、って思う。
ミリアはちょっと、肩から大きめに息を吸って・・吐いた。
ため息のようになって。
肩の力が小さく抜けてた。
いつの間にか、ちょっと力が入っていたのかもしれない。
「まあ、『度胸』はありそうだな、」
って、ガイがケイジへ言ってた。
ケイジはやっと離れられたようで、ちょっと嫌そうな横顔も見えた。
「あいつらなんなんだよ?なぁ?」
悪態っぽくケイジがこっちへ言ってくるから。
・・一呼吸、ちょっと考えたようなミリアは、上を見たような。
「まぁ、どうでもいいけどね、」
ミリアは端的に言って。
ほんとに気にしていない様子で、すぐ前を歩くケイジたちへ、歩調を合わせるようにしていた。
「準備が多そうだ、」
そんなガイの視線の先は向こう、動き出し始めた機械と金属の当たる音に。
気が付けば、離れた場所からこちらを見守っていたスタッフの彼らが、手を上げて呼び込んでいく。
『駆け足っ・・!』
彼らの指示に応じて、他のチームの彼らも素直に従っているようだ。
気が付けば、大きくて広い部屋に、機械の駆動する音と金属のぶつかる音が響いた。
それは、この場所と設備が動き始めた音で。
それらにちょっと意識を寄せて歩くミリアも、その先で待っていたアライさんたち、スタッフの彼らが手を上げていたのを見つけたから。
―――――小走りに駆け寄っていくミリアの。
そんな後ろを、ガイも、ケイジたちも、それぞれの足取りで追っていった。
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