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第三話 裏
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やべえ。どうしよう。
これ、マジで無理だ。
なんでこんなにヌメッてんの、この噴水?まさか定期的に掃除してないの?嘘だろ?やべえ。すげえゾワゾワする。こういうヌメッとした感覚、ホント苦手なんだけど。
「シオン」
苦手な感覚に動揺していると、第二王子が躊躇いもなく噴水へと入って来た。マジか。勇者がおる。女生徒たちが悲鳴を上げる。こっちも悲鳴を上げたい。気持ち悪い感覚に気持ち悪い人が来てもう気持ち悪すぎる。そう思っていたのに。
「シオン、着替えよう。このまま帰ったら、家の人が心配してしまうからね」
水の中から抱き上げられる。
「シオン、大丈夫だよ、シオン。私が守る。私がシオンを守るから」
あなた様が頼りになることなど永遠に来ませんとのことよ勘違いヤロー様とか思ってすんませんでした。ごく稀に頼りになりそうなので認識改めます。絶対近付くな、から、呼んだときだけ近付いて良し、とします。それと今の台詞は聞かなかったことにします。
行動を見るとね、超イケメンなんだよ。自分が濡れることを厭わず、憐れな女生徒を助ける王子様。キュン死しちゃうかもね。だけど騙されてはいけない。
目が怖い。
いや、これ、結構重要よ?王子、シオンがドストライクなんだよ、恋愛において。これでこっちも王子が恋愛の意味で好きなら良かったんだけど。あ、婚約者のことを抜きにしてって意味だ。もう、シオン以外見えていないってカンジ。シオンが望めば何でもやる。いいとか悪いとかなく。いや、シオンが望んでいないのに暴走気味だ。マジ怖い。二人きりとかになったら襲われそう。普通のご令嬢だったら、恐怖しかないでしょ。
目的を果たさないといけないから、好意を持たれているのはいいんだけど。ただでさえ貞操の危機にさらされているのに、思わせぶりな行動をしたらお察しだろう。まあ、でも、なんだかんだ、貞操は守られるだろうけどね。
そんなことを思っていると、王子が婚約者に冷たい声を出す。
「私の態度にはご立派に講釈をたれるが、おまえのその態度こそどうなんだ」
婚約者が悔しさからか唇を噛んだ。王子が婚約者を見る目は、とても婚約者に対するものではない。何か言ってやりたいが、やはり目的を果たすために口を噤む。王子は婚約者を一瞥すると、それ以上何も言わずにシオンを連れて去る。
医務室へ着いて椅子に下ろされると、ゆっくり頭を撫でられた。
「シオン、着替えられる?」
「はい。助けていただき、ありがとう、ございました」
演じる必要のないほど勝手に弱々しい声が出る。ヌメヌメマジ怖い。王子より怖い。手にまだ感覚が残っている。思わず周囲五百mほど吹き飛ばしかけた。理性が本能に勝って良かった。と、思っていると。
「シオン」
王子に抱き締められた。
「で、ん、か」
どんだけ理性を試されるんだこれ。理性が危うすぎて危ういんですけど。
「シオン、大丈夫。もう、こんなことが起こらないよう対処する。だから、それが済んだら」
王子に間近で覗き込まれ、切なそうに見つめられるがしかし。なんかだんだん腹が立ってきた。何でこんなに我慢しなくちゃならねぇの。もういっそのことあああああいやいやいやいや。我慢我慢我慢我慢。
そんな空気を破ったのは、またしても護衛。もう、好き。
「殿下、シークワント伯爵家の迎えの方がお見えになりました」
て言うかもう来たの?まだ着替えてない。早くね?女生徒と揉めている時点で護衛の人が伯爵家の御者に報せてくれていたんだろうな。マジ優秀。王子はわざとらしく溜め息を吐いて、シオンを解放する。
「シオン。迎えが来たようだ。私は外に出るから、着替えたら、声をかけてね」
離れる際、ヤツが頬に唇を微かに触れさせやがった。消毒したい。
*つづく*
これ、マジで無理だ。
なんでこんなにヌメッてんの、この噴水?まさか定期的に掃除してないの?嘘だろ?やべえ。すげえゾワゾワする。こういうヌメッとした感覚、ホント苦手なんだけど。
「シオン」
苦手な感覚に動揺していると、第二王子が躊躇いもなく噴水へと入って来た。マジか。勇者がおる。女生徒たちが悲鳴を上げる。こっちも悲鳴を上げたい。気持ち悪い感覚に気持ち悪い人が来てもう気持ち悪すぎる。そう思っていたのに。
「シオン、着替えよう。このまま帰ったら、家の人が心配してしまうからね」
水の中から抱き上げられる。
「シオン、大丈夫だよ、シオン。私が守る。私がシオンを守るから」
あなた様が頼りになることなど永遠に来ませんとのことよ勘違いヤロー様とか思ってすんませんでした。ごく稀に頼りになりそうなので認識改めます。絶対近付くな、から、呼んだときだけ近付いて良し、とします。それと今の台詞は聞かなかったことにします。
行動を見るとね、超イケメンなんだよ。自分が濡れることを厭わず、憐れな女生徒を助ける王子様。キュン死しちゃうかもね。だけど騙されてはいけない。
目が怖い。
いや、これ、結構重要よ?王子、シオンがドストライクなんだよ、恋愛において。これでこっちも王子が恋愛の意味で好きなら良かったんだけど。あ、婚約者のことを抜きにしてって意味だ。もう、シオン以外見えていないってカンジ。シオンが望めば何でもやる。いいとか悪いとかなく。いや、シオンが望んでいないのに暴走気味だ。マジ怖い。二人きりとかになったら襲われそう。普通のご令嬢だったら、恐怖しかないでしょ。
目的を果たさないといけないから、好意を持たれているのはいいんだけど。ただでさえ貞操の危機にさらされているのに、思わせぶりな行動をしたらお察しだろう。まあ、でも、なんだかんだ、貞操は守られるだろうけどね。
そんなことを思っていると、王子が婚約者に冷たい声を出す。
「私の態度にはご立派に講釈をたれるが、おまえのその態度こそどうなんだ」
婚約者が悔しさからか唇を噛んだ。王子が婚約者を見る目は、とても婚約者に対するものではない。何か言ってやりたいが、やはり目的を果たすために口を噤む。王子は婚約者を一瞥すると、それ以上何も言わずにシオンを連れて去る。
医務室へ着いて椅子に下ろされると、ゆっくり頭を撫でられた。
「シオン、着替えられる?」
「はい。助けていただき、ありがとう、ございました」
演じる必要のないほど勝手に弱々しい声が出る。ヌメヌメマジ怖い。王子より怖い。手にまだ感覚が残っている。思わず周囲五百mほど吹き飛ばしかけた。理性が本能に勝って良かった。と、思っていると。
「シオン」
王子に抱き締められた。
「で、ん、か」
どんだけ理性を試されるんだこれ。理性が危うすぎて危ういんですけど。
「シオン、大丈夫。もう、こんなことが起こらないよう対処する。だから、それが済んだら」
王子に間近で覗き込まれ、切なそうに見つめられるがしかし。なんかだんだん腹が立ってきた。何でこんなに我慢しなくちゃならねぇの。もういっそのことあああああいやいやいやいや。我慢我慢我慢我慢。
そんな空気を破ったのは、またしても護衛。もう、好き。
「殿下、シークワント伯爵家の迎えの方がお見えになりました」
て言うかもう来たの?まだ着替えてない。早くね?女生徒と揉めている時点で護衛の人が伯爵家の御者に報せてくれていたんだろうな。マジ優秀。王子はわざとらしく溜め息を吐いて、シオンを解放する。
「シオン。迎えが来たようだ。私は外に出るから、着替えたら、声をかけてね」
離れる際、ヤツが頬に唇を微かに触れさせやがった。消毒したい。
*つづく*
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