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6.願い

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 唇を荒々しく貪る。歯列をなぞり、激しく舌を絡ませ吸い上げる。シャツのボタンを引き千切り、肩から落とす。両腕に引っかかっただけのシャツが、一層扇情的だ。片方の胸の頂を指で弄び、もう片方の手で腰を引き寄せ、愛液を溢れさせる部分に、剥き出しにした自身をグリグリと押しつけた。
 「ココに、オレを欲しいと言え。茉莉花」
 匡臣まさおみに、達しそうで達することの出来ない絶妙な加減を与えられ続け、茉莉花の理性は焼き切れた。
 「まさ、おみ、さまっ。欲し、まさおみ、さま」
 「ああ、いい子、だ、茉莉花」
 匡臣は容赦なく己を突き立てた。それだけで、茉莉花は声を出すことすら出来ずに達した。
 「はっ、最高だ、茉莉花っ」
 夢にまで見た茉莉花の味に、匡臣は酔う。処女の証が床にポタポタと落ちる。慣らしもしないでいきなり凶悪なモノを突き入れても、茉莉花の体は傷つくことはなかった。それほどまでに強力な媚薬であり、本当に限界まで耐えていたのだ。
 「ずっと、ずっと、永遠に犯してあげる。茉莉花」



 今が昼なのか夜なのか、わからない。
 壁に繋がれていたはずが、いつの間にかベッドに移動していた。左足には枷が嵌められ、鎖で繋がれていた。目覚めると、気を失うまで体を求められる。気を失っている間に、匡臣が甲斐甲斐しくお風呂に入れて、寝具を清潔な物に取り替え、抱き締めながら眠る。
 茉莉花は、匡臣が本当に自分を欲しかったのだと気付く。
 なぜ、自分なんかを欲するのか。
 目が覚めて、自分を抱き締めて眠る存在を見つめる。綺麗な人だと、初めて会ったときに思った。それは今も変わらない。こんなに綺麗で、金も地位もある人が、自分を欲する理由がわからなかった。
 「ん。起きたの、茉莉花」
 とろりと寝起きの目を向ける匡臣に、心臓が跳ねる。
 「財天院ざいてんいん様」
 「悪い子だ、茉莉花」
 一瞬で覚醒した匡臣が、茉莉花の上にのしかかる。
 「何度も言っている。名を呼べ、茉莉花」
 シーツに縫い付けるように両手を掴んで拘束する。
 「わからないのです」
 茉莉花の言葉に、匡臣は目を見開く。
 「あなた様が、私を求めてくださる理由が、わからないのです」
 匡臣は、脱衣所で打った媚薬がまだ効いていると思っていたようだ。最低でも一週間は効果が続くと言っていた。気を失い、昼夜がわからなくとも、三日程度しか経っていないだろうと見当はついている。だが、そんなものは、疾うに抜けている。それでも茉莉花は逃げずにここにいる。正直、この足枷も鎖も、なんの役にも立たない。簡単に逃げられる。それなのに、茉莉花は逃げずに大人しくしていた。
 しっかり目を見て話す茉莉花に、匡臣は薬が切れていることを知る。
 「薬、切れていたの」
 拘束していた両手の内、片方の力がフ、となくなる。
 「いいよ、殺しても」
 その言葉に、今度は茉莉花が目を見開いた。フワフワと優しく頬を撫でる匡臣の手は、何の恐れもない。むしろ、殺されることを望んでいるように思えた。
 「ほら、茉莉花」
 ゆっくり茉莉花に覆い被さると、深くくちづける。
 舌が優しく絡まる。噛み千切っていい。そう言っている。
 苦しそうに息を漏らす茉莉花に、匡臣は切なくなる。
 「なぜ殺さない?勘違いするよ、茉莉花」
 キミもオレを求めているんじゃないかって。
 「ああ、茉莉花を求める理由だったか」
 額に唇を落とす。瞼に、鼻に、頬に、顎に、首筋に。次々とキスの雨を降らせる。
 「わからない」
 鎖骨に舌を這わせる。喉を舐める。
 「わからないものは、説明できない、茉莉花」
 再び唇を塞ぐ。水音と茉莉花の弱々しい声だけが響く。
 「初めて茉莉花を見た瞬間から、欲しくて欲しくて堪らなかった」
 自身の唇を舐め、茉莉花の唇を親指でそっと撫でる。
 「おまえが手に入らないのなら」
 茉莉花の手を取り、自分の首へ導く。
 「せめておまえの手で殺してくれ」


 *つづく*

 次話は二人の出会いの話になります。2話あります。
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