美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛

らがまふぃん

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ばんがいへん

Dahlia ー前編ー

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 ケーシー伯爵家が、エル様たちに挨拶に訪れたときの話です。
 サブタイトルは、ケーシー家の受難、かも知れません。


*∽*∽*∽*∽*


 ケーシー家が緊張の面持ちで挨拶に訪れると、エリアストはいつも通り、アリスにピッタリと寄り添い、その頭にくちづけを落としているところだった。ケーシー伯たちは赤面しつつ、頭を下げる。デビュタント前の娘メリッサは、初対面で何の免疫もなかったために一拍遅れてしまったが、何とか家族に合わせる。
 「顔を上げろ」
 エリアストの言葉に、揃って頭を上げると、ギョッとした。デビュタント前で会ったことはないが、噂は出回っていた。ディレイガルド家の双子。当主のエリアストと瓜二つ。至宝の美貌が、この世に三つも存在する、と。噂は本当であった。
 「遠いところ、ご丁寧にありがとうございます。どうぞおかけくださいませ。今お茶を用意いたしますわ」
 滅多に話をすることのないアリスが、そう声をかけた。ケーシー家は驚きと共に、肩の力が抜けるのも感じていた。本当に、なんて凄まじい癒し効果のある声だろう。そして、何故か信じられないほど歓迎されているようだ。
 社交界に身を置く者なら知っている。エリアストが側にいるとき、必要時と挨拶以外、アリスに話をさせない。その声すら聞かせたくないからだ。挨拶すら許可をしないこともある。それが今、自分たちに必要でも挨拶でもない言葉を話しているのだ。茶会で会えば軽い世間話はするが、特別親しくしていたわけでもない。夜会でも挨拶はするが、談笑するようなこともなかった。本当に何故だろう。
 「お父様、お母様」
 ダリアが両親を呼ぶと、アリスは困ったように眉を下げた。
 「まあまあ、ディア。仕方のない子ですね。伺ってごらんなさい」
 苦笑しながらもアリスの許可を得ると、ダリアはケーシー家次男、デュイエの側に立つ。そして手を差し出した。
 「庭を歩きたいのです。エスコートしてくださらない」
 ケーシー家は口を開閉している。
 まさかまさか。ディレイガルド家はこの国の筆頭公爵家。自分たちからすれば、雲の上の存在。関わることなどないと思っていた。
 そこで気付く。アリスが普通に会話をしているのは、娘の未来の家族になるであろうからだと。

*~*~*~*~*

 それは、偶然だった。
 「ノア、大丈夫でしたか」
 イグルーシャ家が帰ってすぐ、応接間から出て来たノアに、アリスがそう声をかけた。
 「はい。何の問題もありません、母上。大丈夫です」
 微笑むノアに、アリスも微笑み返す。
 「中で父上がお待ちです。私たちはケーシー家が来るまで席を外しております」
 ノアの言葉に、アリスの隣にいたダリアも頷く。
 「わかりました。伯爵様方がいらしたら呼びに行きますね」
 「いいえ、大丈夫ですわ、お母様。馬車が見えたら参ります」
 ダリアの言葉にアリスが頷き、エリアストのもとへ行くのを見届けると、二人はサロンへ歩き出す。
 「子どもはもらえたのかしら」
 アリスをイグルーシャに会わせたくないエリアストの采配により、アリスの護衛役として側についていたダリアがそう尋ねる。ノアリアストは口の端を上げた。それだけでダリアには伝わる。そう、と頷くと、二人は無言でサロンへ歩いた。
 サロンから見える庭は素晴らしい。細部にまで手が行き届いた、華美ではないが、温かみのある優しい庭だ。遠くに見える道に、時々人や馬車が通る。それが、この庭にとてもよく似合っていた。
 暫くして、馬車が見えた。ケーシー家だ。距離があるのに、二人はそれがケーシー家の馬車であるとわかる。同時に立ち上がると、サロンを後にした。
 応接間への移動中、門に到着したケーシー家が馬車から降りる姿が見えて、足を止める。
 「玄関前まで乗り付けない。とても真面目な一家だと聞いているけれど、本当だ」
 「こういう人間ばかりなら楽ね」
 ノアリアストの言葉にダリアが溜め息をくと、ノアリアストが微かに笑う。
 「まったくだね」
 再び歩き出そうとして、二人は目を見開いた。
 「見つけた」
 「ああ、本当だ。凄いね、なるほど」
 ダリアの驚きの声に、ノアリアストが頷く。
 「あなたにもわかるの、ノア」
 ノアリアストの言葉にも、ダリアは驚く。
 「不思議な感覚だけれど、私にもわかるよ。ああ、ディアの唯一だって」
 「双子だからかしら」
 少し目を見開くダリアに、ノアリアストは言った。
 「おめでとう、ディア」
 唯一を見つけたダリアを、そう言ってノアリアストは抱き締めた。その背に手を回し、優しく応えるように、ダリアは軽く叩いた。
 「ありがとう、ノア。これが、お父様もお祖父様も言っていたことだったのね。一目見ればわかる、と」

*~*~*~*~*

 ケーシー伯は困惑している。
 自慢の子どもたちではあるが、筆頭公爵家が気に入る何かがあるほどとは思えなかった。
 からかわれて、いるのだろうか。
 「手を、取っては、くださらないのですか」
 ダリアの言葉にハッとした伯爵は、慌ててデュイエの背中を叩く。
 エリアストが、自分たちをからかうためにアリスを使うはずがない。アリスが普通に話をしている時点で、これは紛れもない、本気。
 「ご、ご令嬢をお待たせするな、デュイエ。ご令嬢、失礼いたしました」
 「し、失礼、いたしました」
 手袋をしているにもかかわらず、デュイエはゴシゴシとハンカチで手袋を拭くと、壊れ物でも扱うように、震える手でそっとダリアの指先に触れた。
 「デュイエ、と言うのですね。わたくしはダリア。ディアと、お呼びくださいませ」
 「ひえっ?!」
 何とも言えない声が出てしまった。


*後編につづく*
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