精霊の使い?いいえ、違います。

らがまふぃん

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 シーナ様付きになって早々、聞いてみた。
 「あの、シーナ様。もしかして、なのですが、精霊様が見えていらっしゃるのでしょうか」
 するとシーナ様は、目を丸くして、すぐに笑った。
 「素敵なお世話係を任命してくれて、その部分にだけはあの人たちに感謝ね」
 もう間もなく六歳になるとは言え、五歳児とは思えない流暢な話し方だった。それだけで、侯爵家でのシーナ様の評価に首を傾げたくなった。
 シーナ様は上二人の出涸らしだと、家族は愚か、使用人たちにまで嗤われていた。そんな使用人を、侯爵家の誰も咎めず、見て見ぬ振りをしている。それはシーナ様への対応はそれでいいと、侯爵家が認めているも同義だった。
 アビアント家は、三歳にもならないうちから教育に力を入れている。
 嫡男のユーリ様と長女のラーナ様が、シーナ様の歳の頃にどれほど優秀だったかは、来たばかりの自分は知らない。だが、せめて使用人たちは気付かないのだろうか。身近に幼い者がいない人たちばかりということはないだろう。自分たちの子どもや弟妹などは、どうだったのだ。少なくとも自分の周囲には、これほど優秀な子どもはいない。これが下位貴族と上位貴族の違いだとでも言うのだろうか。
 わからないながらも、実際シーナ様はこの侯爵家において、誰よりも軽んじられているのだ。アビアント侯爵家の正当な血を継ぐ令嬢であるというのに、使用人よりも下の扱いをされている。
 それなのにシーナ様は、家族から与えられるプレッシャーと、使用人からの嘲笑に一人堪え忍んでいた。

 というような精神の持ち主ではなかった。

 「あなたたちがその気なら、いいわ。お望み通り、何も出来ないおバカさんになって差し上げてよ!」

 誰もいない部屋で一人高笑いをする、シーナ様三歳の出来事だったという。
 なんとシーナ様は、他の者たちの前では、周りが言う通りの愚者を演じていたのだ。
 強い人だと思った。
 シーナ様に、自分の曾祖父が精霊の使いだったと告げると、嬉しそうに笑って話をねだってくれた。嬉しくて、祖母から聞いた話をたくさんした。
 ある日、また曾祖父の話をしていると、シーナ様が言った。
 「ねぇ、リイザ。あなたのひいお祖父さまのお名前、リィンカース?」
 とても驚いた。シーナ様から曾祖父の名前が出て来た。驚きながらも頷くと、シーナ様は焼き菓子の乗った皿を指しながら笑った。
 「ここにいる精霊が知っているみたい。リイザの話を聞いていて、リィンカースじゃないかって」
 「曾祖父をご存知のようでとても嬉しいですっ。ふふっ、何だか不思議ですね。精霊様を通してご先祖様のお話が出来るなんて」
 つい、年甲斐もなくはしゃいでしまう。
 それにしても、本当に凄い。精霊が見えるだけではなく、会話まで出来るほどの加護持ちだなんて。
 そう言えば、祖母の口から時々聞いていた。覚えている人ももうほとんどいないけれど、と。

 精霊王という存在。

 リイザは、そんな話を思い出していた。



*つづく*

次話、現在に戻ります。
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