6 / 24
5.
しおりを挟む
シーナ様付きになって早々、聞いてみた。
「あの、シーナ様。もしかして、なのですが、精霊様が見えていらっしゃるのでしょうか」
するとシーナ様は、目を丸くして、すぐに笑った。
「素敵なお世話係を任命してくれて、その部分にだけはあの人たちに感謝ね」
もう間もなく六歳になるとは言え、五歳児とは思えない流暢な話し方だった。それだけで、侯爵家でのシーナ様の評価に首を傾げたくなった。
シーナ様は上二人の出涸らしだと、家族は愚か、使用人たちにまで嗤われていた。そんな使用人を、侯爵家の誰も咎めず、見て見ぬ振りをしている。それはシーナ様への対応はそれでいいと、侯爵家が認めているも同義だった。
アビアント家は、三歳にもならないうちから教育に力を入れている。
嫡男のユーリ様と長女のラーナ様が、シーナ様の歳の頃にどれほど優秀だったかは、来たばかりの自分は知らない。だが、せめて使用人たちは気付かないのだろうか。身近に幼い者がいない人たちばかりということはないだろう。自分たちの子どもや弟妹などは、どうだったのだ。少なくとも自分の周囲には、これほど優秀な子どもはいない。これが下位貴族と上位貴族の違いだとでも言うのだろうか。
わからないながらも、実際シーナ様はこの侯爵家において、誰よりも軽んじられているのだ。アビアント侯爵家の正当な血を継ぐ令嬢であるというのに、使用人よりも下の扱いをされている。
それなのにシーナ様は、家族から与えられるプレッシャーと、使用人からの嘲笑に一人堪え忍んでいた。
というような精神の持ち主ではなかった。
「あなたたちがその気なら、いいわ。お望み通り、何も出来ないおバカさんになって差し上げてよ!」
誰もいない部屋で一人高笑いをする、シーナ様三歳の出来事だったという。
なんとシーナ様は、他の者たちの前では、周りが言う通りの愚者を演じていたのだ。
強い人だと思った。
シーナ様に、自分の曾祖父が精霊の使いだったと告げると、嬉しそうに笑って話をねだってくれた。嬉しくて、祖母から聞いた話をたくさんした。
ある日、また曾祖父の話をしていると、シーナ様が言った。
「ねぇ、リイザ。あなたのひいお祖父さまのお名前、リィンカース?」
とても驚いた。シーナ様から曾祖父の名前が出て来た。驚きながらも頷くと、シーナ様は焼き菓子の乗った皿を指しながら笑った。
「ここにいる精霊が知っているみたい。リイザの話を聞いていて、リィンカースじゃないかって」
「曾祖父をご存知のようでとても嬉しいですっ。ふふっ、何だか不思議ですね。精霊様を通してご先祖様のお話が出来るなんて」
つい、年甲斐もなくはしゃいでしまう。
それにしても、本当に凄い。精霊が見えるだけではなく、会話まで出来るほどの加護持ちだなんて。
そう言えば、祖母の口から時々聞いていた。覚えている人ももうほとんどいないけれど、と。
精霊王という存在。
リイザは、そんな話を思い出していた。
*つづく*
次話、現在に戻ります。
「あの、シーナ様。もしかして、なのですが、精霊様が見えていらっしゃるのでしょうか」
するとシーナ様は、目を丸くして、すぐに笑った。
「素敵なお世話係を任命してくれて、その部分にだけはあの人たちに感謝ね」
もう間もなく六歳になるとは言え、五歳児とは思えない流暢な話し方だった。それだけで、侯爵家でのシーナ様の評価に首を傾げたくなった。
シーナ様は上二人の出涸らしだと、家族は愚か、使用人たちにまで嗤われていた。そんな使用人を、侯爵家の誰も咎めず、見て見ぬ振りをしている。それはシーナ様への対応はそれでいいと、侯爵家が認めているも同義だった。
アビアント家は、三歳にもならないうちから教育に力を入れている。
嫡男のユーリ様と長女のラーナ様が、シーナ様の歳の頃にどれほど優秀だったかは、来たばかりの自分は知らない。だが、せめて使用人たちは気付かないのだろうか。身近に幼い者がいない人たちばかりということはないだろう。自分たちの子どもや弟妹などは、どうだったのだ。少なくとも自分の周囲には、これほど優秀な子どもはいない。これが下位貴族と上位貴族の違いだとでも言うのだろうか。
わからないながらも、実際シーナ様はこの侯爵家において、誰よりも軽んじられているのだ。アビアント侯爵家の正当な血を継ぐ令嬢であるというのに、使用人よりも下の扱いをされている。
それなのにシーナ様は、家族から与えられるプレッシャーと、使用人からの嘲笑に一人堪え忍んでいた。
というような精神の持ち主ではなかった。
「あなたたちがその気なら、いいわ。お望み通り、何も出来ないおバカさんになって差し上げてよ!」
誰もいない部屋で一人高笑いをする、シーナ様三歳の出来事だったという。
なんとシーナ様は、他の者たちの前では、周りが言う通りの愚者を演じていたのだ。
強い人だと思った。
シーナ様に、自分の曾祖父が精霊の使いだったと告げると、嬉しそうに笑って話をねだってくれた。嬉しくて、祖母から聞いた話をたくさんした。
ある日、また曾祖父の話をしていると、シーナ様が言った。
「ねぇ、リイザ。あなたのひいお祖父さまのお名前、リィンカース?」
とても驚いた。シーナ様から曾祖父の名前が出て来た。驚きながらも頷くと、シーナ様は焼き菓子の乗った皿を指しながら笑った。
「ここにいる精霊が知っているみたい。リイザの話を聞いていて、リィンカースじゃないかって」
「曾祖父をご存知のようでとても嬉しいですっ。ふふっ、何だか不思議ですね。精霊様を通してご先祖様のお話が出来るなんて」
つい、年甲斐もなくはしゃいでしまう。
それにしても、本当に凄い。精霊が見えるだけではなく、会話まで出来るほどの加護持ちだなんて。
そう言えば、祖母の口から時々聞いていた。覚えている人ももうほとんどいないけれど、と。
精霊王という存在。
リイザは、そんな話を思い出していた。
*つづく*
次話、現在に戻ります。
273
あなたにおすすめの小説
逆行転生って胎児から!?
章槻雅希
ファンタジー
冤罪によって処刑されたログス公爵令嬢シャンセ。母の命と引き換えに生まれた彼女は冷遇され、その膨大な魔力を国のために有効に利用する目的で王太子の婚約者として王家に縛られていた。家族に冷遇され王家に酷使された彼女は言われるままに動くマリオネットと化していた。
そんな彼女を疎んだ王太子による冤罪で彼女は処刑されたのだが、気づけば時を遡っていた。
そう、胎児にまで。
別の連載ものを書いてる最中にふと思いついて書いた1時間クオリティ。
長編予定にしていたけど、プロローグ的な部分を書いているつもりで、これだけでも短編として成り立つかなと、一先ずショートショートで投稿。長編化するなら、後半の国王・王妃とのあれこれは無くなる予定。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
魅了魔法の正しい使い方
章槻雅希
ファンタジー
公爵令嬢のジュリエンヌは年の離れた妹を見て、自分との扱いの差に愕然とした。家族との交流も薄く、厳しい教育を課される自分。一方妹は我が儘を許され常に母の傍にいて甘やかされている。自分は愛されていないのではないか。そう不安に思うジュリエンヌ。そして、妹が溺愛されるのはもしかしたら魅了魔法が関係しているのではと思いついたジュリエンヌは筆頭魔術師に相談する。すると──。
持参金が用意できない貧乏士族令嬢は、幼馴染に婚約解消を申し込み、家族のために冒険者になる。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
セントフェアファクス皇国徒士家、レイ家の長女ラナはどうしても持参金を用意できなかった。だから幼馴染のニコラに自分から婚約破棄を申し出た。しかし自分はともかく妹たちは幸せにしたたい。だから得意の槍術を生かして冒険者として生きていく決断をした。
冷たかった夫が別人のように豹変した
京佳
恋愛
常に無表情で表情を崩さない事で有名な公爵子息ジョゼフと政略結婚で結ばれた妻ケイティ。義務的に初夜を終わらせたジョゼフはその後ケイティに触れる事は無くなった。自分に無関心なジョゼフとの結婚生活に寂しさと不満を感じながらも簡単に離縁出来ないしがらみにケイティは全てを諦めていた。そんなある時、公爵家の裏庭に弱った雄猫が迷い込みケイティはその猫を保護して飼うことにした。
ざまぁ。ゆるゆる設定
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
素直になる魔法薬を飲まされて
青葉めいこ
ファンタジー
公爵令嬢であるわたくしと婚約者である王太子とのお茶会で、それは起こった。
王太子手ずから淹れたハーブティーを飲んだら本音しか言えなくなったのだ。
「わたくしよりも容姿や能力が劣るあなたが大嫌いですわ」
「王太子妃や王妃程度では、このわたくしに相応しくありませんわ」
わたくしといちゃつきたくて素直になる魔法薬を飲ませた王太子は、わたくしの素直な気持ちにショックを受ける。
婚約解消後、わたくしは、わたくしに相応しい所に行った。
小説家になろうにも投稿しています。
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる