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番外編
再会
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シーナとシスティアが、精霊界で再会したときの話です。
*∽*∽*∽*∽*
精霊の王から加護を与えられた者は、精霊の番と呼ばれます。
精霊の王は、永い永い生涯で、たったひとりの魂にしか加護を与えないからです。
精霊の王にも寿命はあります。人と比べれば、永遠にも思える時の中で、たったひとりを見つけるのです。
精霊の王は、番の幸せを願います。
番の幸せが、王の幸せ。
それは、不変のものなのです。
さて、精霊界にて邂逅を果たしたシーナとシスティア。
仲が良すぎる二人に、嫉妬の炎を燃やす人がいるのですが――。
*~*~*~*~*
「シーナ、元気にしていた?」
「元気元気!ティアこそ!相変わらず綺麗ねぇ!さすが私の親友!」
システィアに抱きつき、頬にキスをしようとしたら、伸びてきた手に邪魔をされた。
「む?何奴っ」
「久しいな、リュシーナ。だが、私のティアに勝手に触るな」
ムスッとした表情の精霊王ケイが、システィアの背後から手を伸ばし、シーナの頬をグイグイと押しやっていた。
「あら、いたの。相変わらずね、クロスケ」
邪魔をされたことに、シーナの愛くるしい目が若干据わった。
シーナとケイの視線が、バチバチと火花を散らしている幻覚が見える。
そこへ、のんびりとした声が間に入った。
「あら、知り合い?」
精霊女王レアだ。
その声に、シーナはコクリと頷いた。
「そうよ。前世の時の知り合いーって、あれ。そう言えばなんでここにいるの、クロスケ」
前世のケイは人間だった。その頃からケイは、システィアの前世であるルシスティーアを溺愛していた。
「私は精霊王になった」
ケイの言葉に、シーナはシスティアを見る。
「え?じゃあティアも精霊になっちゃうの?」
この時のシーナの発言は、ケイの執着を知っているが故のもの。精霊の王の番がどういうものか、知らない。ケイの幸せのために、システィアを精霊にすることはない。システィアが精霊となり、悠久の時を共に望んでくれるなら、これ以上の喜びはない。けれど、それを決めるのはシスティアなのだ。
まあ、システィアの幸せは、ケイの隣にあることもわかっているのだが。
「私が精霊王になっていることには驚かんのか」
「クロスケに興味なし。でもクロスケが精霊なら、絶対ティアを連れて行っちゃうでしょ。やっと会えたティアを連れて行かれるのはなあ」
腕を組んでうんうん唸るシーナを、ケイはジト目で見る。
「本当にティアにしか興味がないな」
「そんなことないわ。クロスケに興味がないだけよ」
あらやだ、心外、とでも言いたそうな口調だ。
「ティアを取られて悔しいだけだろ。嫉妬だな」
フフン、と勝ち誇った顔をするケイに、シーナはヤクザ顔負けの、アアン?という顔で反撃のようなそうでもないようなことを言う。
「そうですぅ。クロスケにティアを取られてその毛を全部むしり取ってやりたいけどティアがその毛も綺麗って言ってたから残してあげてるだけですぅ。ティアに感謝して下さーい」
ケイがパッと笑顔でシスティアを向く。
「ティア、私の髪、綺麗か?」
「ふふ。ええ、とても」
ニコニコと答えるシスティアを、可愛すぎて我慢が出来なくなったケイが、ぎゅうぎゅうと抱き締める。それに嫉妬をしたシーナがプリプリと怒りながら反論する。
「ティアの髪の方が綺麗だから。クロスケよりティアの方が綺麗だから。それにご覧よ、レアの髪を。真珠だよ、真珠。真珠のキラメキだよ」
「まあ、嬉しいわ、シーナ。シーナは全部愛らしくて食べちゃいたいくらいよ」
ケイはまったく聞いておらず、システィアもケイにすっぽり包まれて姿が見えなくなっており、レアは頬を染めてシーナを高い高いしながら、くるくる回った。
「そう言えば、ティアとクロスケって前世の繋がりがあるけど、レアと私にも何か繋がりってあったりする?何かレアといるとこう、なんて言うのかな。何か、胸があったかい?感じがするの」
レアから解放されると、ふと疑問に思ったことを聞いてみた。
「魂の状態だと、直近の前世の繋がりはよくわかるのだけど。そうね、シーナの何代か前の前世で、わたくしが人間だった頃、親子だったのよ」
「ほええええ。そう、だからかぁ」
胸の温かさを感じるように、シーナは嬉しそうに両手で胸を押さえた。
「わたくしたち王は、生涯ひとりにしか加護を与えないの。王が加護を与えた者を、番と呼ぶのよ。この“ひとり”というのは、魂を指すわ」
レアは、愛おしそうにシーナの髪を撫でる。
「んー、番が生まれ変わったら、必ず会えるわけではないの?前世で私、レアの加護をもらった覚えがないのだけれど?」
「そう。絶対ではないの。世界中に精霊たちはいるけれど、王の番がわかるわけではないわ。だから、わたくしたちは、自分で探すしかないの。この広い世界に生まれるはずの、大切な番を」
どこか寂しそうに告げるレアに、シーナは切なくなった。
「番は、精霊になるわけじゃないの?」
レアは首を振る。
「番は、選べるの。この先、人として生を歩むか、精霊となって、王と悠久の時を歩むか」
「私の前世たちは、人として歩んで来たって事ね」
シーナが頷くと、レアは微笑んだ。
「そう。わたくしたち王は、番の幸せがわたくしたちの幸せなの。だから、シーナも選ぶの。自分が幸せになる道を、選ぶのよ」
「そっかぁ。それなら、レアの幸せのためにも、私は幸せになる道をたくさん考えるわ!」
レアは嬉しそうに頷いた。
「それにしても、私たち親子だったって事は、本当に私は精霊の愛し子ってヤツね」
楽しそうに言うシーナに、レアは首を振った。
「いえ、違うわ。シーナはわたくしのお母様だったのよ」
「そうなのっ?」
目を丸くするシーナが可愛くて、レアは笑みが零れる。
「そう。だから、愛し子、と言うより、愛し親?」
「語呂悪っ。生きている時間を考えたら、愛し子でいいじゃない!」
辺りに楽しそうな笑い声が響く。
「さっきから聞いていれば、本当におまえは変わらんな」
いつの間にか側に来ていたケイが呆れたように、けれど、どこか安心したような口調でそう言った。
「変わらなすぎていつも通りになってしまったが、リュシーナ」
先程までの空気が鳴りを潜める。
少しだけ眉を寄せて、何かを考えているように、ジッとシーナを見た。
ケイのその様子に、シーナは何も言わず、ケイの次の言葉を待った。
「私は、おまえに、贖うことが、出来るだろうか」
やがて口にした言葉は重く、後悔が滲んでいた。
「何、改まって。クロスケ、私に何かしたの?」
けれどシーナは首を傾げる。
「あの国にいなければ、おまえは、おまえも、ティアも、死ぬことはなかった」
ルシスティーアの国を落とさなければ。そもそも父を止めることが出来ていたら。
ああすれば良かった、こうすることが出来たはずなのに。
後悔ばかりが押し寄せた。
懺悔の言葉に、シーナは悟る。
「ああ、そうか。ティアも、死んじゃったのか」
そっかあ、とシーナは空を見上げた。
「おまえが、命をかけて守ったティアをっ」
「クロスケ」
その先を言わせまいとするかのように、シーナはケイを遮った。
「どこにいたって、いつかは死ぬんだよ」
ひどく穏やかな目が、ケイを見ている。
それはそうだが、と反論しようと思ったケイが声を失うほど、その瞳は凪いでいた。
「大事なのは、どう生きて、どう死ぬか、だよ」
ケイの隣に立つシスティアを見て微笑む。
「私、ティアと一緒にいられて、すごく幸せだったの」
両手を胸にあて、思い出すように目を閉じる。
「私、ティアを守れたこと、誇りに思う」
そっと目を開けると、優しい眼差しでシスティアに語りかける。
「ティア。きっとティアは、大切な、何よりも大切な人を守ったんでしょ?」
「ええ。世界で一番愛している人を、守ったわ」
シーナは満足そうに頷いた。
「クロスケ。私たちの命は短かったかもしれない。でもね」
一旦言葉を切って、笑った。
「幸せだったのよ、クロスケ」
出会えて、よかった。
「はいっ、湿っぽい話は終わりっ」
少しすると、いつものシーナがパンパンと手を叩いて空気を祓う。
「とりあえず、再会を祝して乾杯するわよ!飲み物ないから円陣組もう!」
「乾杯って言わなかったか?」
「細かい男は嫌われるわよ!はい、これからもよろしく!えいっえいっおー!!」
「どんな再会の祝し方だ」
精霊たちも混じった笑い声が、広く響いた。
*~*~*~*~*
きっとこうしてこれからも、仲良く末永く暮らしていくのでしょうね。
*おしまい*
*∽*∽*∽*∽*
精霊の王から加護を与えられた者は、精霊の番と呼ばれます。
精霊の王は、永い永い生涯で、たったひとりの魂にしか加護を与えないからです。
精霊の王にも寿命はあります。人と比べれば、永遠にも思える時の中で、たったひとりを見つけるのです。
精霊の王は、番の幸せを願います。
番の幸せが、王の幸せ。
それは、不変のものなのです。
さて、精霊界にて邂逅を果たしたシーナとシスティア。
仲が良すぎる二人に、嫉妬の炎を燃やす人がいるのですが――。
*~*~*~*~*
「シーナ、元気にしていた?」
「元気元気!ティアこそ!相変わらず綺麗ねぇ!さすが私の親友!」
システィアに抱きつき、頬にキスをしようとしたら、伸びてきた手に邪魔をされた。
「む?何奴っ」
「久しいな、リュシーナ。だが、私のティアに勝手に触るな」
ムスッとした表情の精霊王ケイが、システィアの背後から手を伸ばし、シーナの頬をグイグイと押しやっていた。
「あら、いたの。相変わらずね、クロスケ」
邪魔をされたことに、シーナの愛くるしい目が若干据わった。
シーナとケイの視線が、バチバチと火花を散らしている幻覚が見える。
そこへ、のんびりとした声が間に入った。
「あら、知り合い?」
精霊女王レアだ。
その声に、シーナはコクリと頷いた。
「そうよ。前世の時の知り合いーって、あれ。そう言えばなんでここにいるの、クロスケ」
前世のケイは人間だった。その頃からケイは、システィアの前世であるルシスティーアを溺愛していた。
「私は精霊王になった」
ケイの言葉に、シーナはシスティアを見る。
「え?じゃあティアも精霊になっちゃうの?」
この時のシーナの発言は、ケイの執着を知っているが故のもの。精霊の王の番がどういうものか、知らない。ケイの幸せのために、システィアを精霊にすることはない。システィアが精霊となり、悠久の時を共に望んでくれるなら、これ以上の喜びはない。けれど、それを決めるのはシスティアなのだ。
まあ、システィアの幸せは、ケイの隣にあることもわかっているのだが。
「私が精霊王になっていることには驚かんのか」
「クロスケに興味なし。でもクロスケが精霊なら、絶対ティアを連れて行っちゃうでしょ。やっと会えたティアを連れて行かれるのはなあ」
腕を組んでうんうん唸るシーナを、ケイはジト目で見る。
「本当にティアにしか興味がないな」
「そんなことないわ。クロスケに興味がないだけよ」
あらやだ、心外、とでも言いたそうな口調だ。
「ティアを取られて悔しいだけだろ。嫉妬だな」
フフン、と勝ち誇った顔をするケイに、シーナはヤクザ顔負けの、アアン?という顔で反撃のようなそうでもないようなことを言う。
「そうですぅ。クロスケにティアを取られてその毛を全部むしり取ってやりたいけどティアがその毛も綺麗って言ってたから残してあげてるだけですぅ。ティアに感謝して下さーい」
ケイがパッと笑顔でシスティアを向く。
「ティア、私の髪、綺麗か?」
「ふふ。ええ、とても」
ニコニコと答えるシスティアを、可愛すぎて我慢が出来なくなったケイが、ぎゅうぎゅうと抱き締める。それに嫉妬をしたシーナがプリプリと怒りながら反論する。
「ティアの髪の方が綺麗だから。クロスケよりティアの方が綺麗だから。それにご覧よ、レアの髪を。真珠だよ、真珠。真珠のキラメキだよ」
「まあ、嬉しいわ、シーナ。シーナは全部愛らしくて食べちゃいたいくらいよ」
ケイはまったく聞いておらず、システィアもケイにすっぽり包まれて姿が見えなくなっており、レアは頬を染めてシーナを高い高いしながら、くるくる回った。
「そう言えば、ティアとクロスケって前世の繋がりがあるけど、レアと私にも何か繋がりってあったりする?何かレアといるとこう、なんて言うのかな。何か、胸があったかい?感じがするの」
レアから解放されると、ふと疑問に思ったことを聞いてみた。
「魂の状態だと、直近の前世の繋がりはよくわかるのだけど。そうね、シーナの何代か前の前世で、わたくしが人間だった頃、親子だったのよ」
「ほええええ。そう、だからかぁ」
胸の温かさを感じるように、シーナは嬉しそうに両手で胸を押さえた。
「わたくしたち王は、生涯ひとりにしか加護を与えないの。王が加護を与えた者を、番と呼ぶのよ。この“ひとり”というのは、魂を指すわ」
レアは、愛おしそうにシーナの髪を撫でる。
「んー、番が生まれ変わったら、必ず会えるわけではないの?前世で私、レアの加護をもらった覚えがないのだけれど?」
「そう。絶対ではないの。世界中に精霊たちはいるけれど、王の番がわかるわけではないわ。だから、わたくしたちは、自分で探すしかないの。この広い世界に生まれるはずの、大切な番を」
どこか寂しそうに告げるレアに、シーナは切なくなった。
「番は、精霊になるわけじゃないの?」
レアは首を振る。
「番は、選べるの。この先、人として生を歩むか、精霊となって、王と悠久の時を歩むか」
「私の前世たちは、人として歩んで来たって事ね」
シーナが頷くと、レアは微笑んだ。
「そう。わたくしたち王は、番の幸せがわたくしたちの幸せなの。だから、シーナも選ぶの。自分が幸せになる道を、選ぶのよ」
「そっかぁ。それなら、レアの幸せのためにも、私は幸せになる道をたくさん考えるわ!」
レアは嬉しそうに頷いた。
「それにしても、私たち親子だったって事は、本当に私は精霊の愛し子ってヤツね」
楽しそうに言うシーナに、レアは首を振った。
「いえ、違うわ。シーナはわたくしのお母様だったのよ」
「そうなのっ?」
目を丸くするシーナが可愛くて、レアは笑みが零れる。
「そう。だから、愛し子、と言うより、愛し親?」
「語呂悪っ。生きている時間を考えたら、愛し子でいいじゃない!」
辺りに楽しそうな笑い声が響く。
「さっきから聞いていれば、本当におまえは変わらんな」
いつの間にか側に来ていたケイが呆れたように、けれど、どこか安心したような口調でそう言った。
「変わらなすぎていつも通りになってしまったが、リュシーナ」
先程までの空気が鳴りを潜める。
少しだけ眉を寄せて、何かを考えているように、ジッとシーナを見た。
ケイのその様子に、シーナは何も言わず、ケイの次の言葉を待った。
「私は、おまえに、贖うことが、出来るだろうか」
やがて口にした言葉は重く、後悔が滲んでいた。
「何、改まって。クロスケ、私に何かしたの?」
けれどシーナは首を傾げる。
「あの国にいなければ、おまえは、おまえも、ティアも、死ぬことはなかった」
ルシスティーアの国を落とさなければ。そもそも父を止めることが出来ていたら。
ああすれば良かった、こうすることが出来たはずなのに。
後悔ばかりが押し寄せた。
懺悔の言葉に、シーナは悟る。
「ああ、そうか。ティアも、死んじゃったのか」
そっかあ、とシーナは空を見上げた。
「おまえが、命をかけて守ったティアをっ」
「クロスケ」
その先を言わせまいとするかのように、シーナはケイを遮った。
「どこにいたって、いつかは死ぬんだよ」
ひどく穏やかな目が、ケイを見ている。
それはそうだが、と反論しようと思ったケイが声を失うほど、その瞳は凪いでいた。
「大事なのは、どう生きて、どう死ぬか、だよ」
ケイの隣に立つシスティアを見て微笑む。
「私、ティアと一緒にいられて、すごく幸せだったの」
両手を胸にあて、思い出すように目を閉じる。
「私、ティアを守れたこと、誇りに思う」
そっと目を開けると、優しい眼差しでシスティアに語りかける。
「ティア。きっとティアは、大切な、何よりも大切な人を守ったんでしょ?」
「ええ。世界で一番愛している人を、守ったわ」
シーナは満足そうに頷いた。
「クロスケ。私たちの命は短かったかもしれない。でもね」
一旦言葉を切って、笑った。
「幸せだったのよ、クロスケ」
出会えて、よかった。
「はいっ、湿っぽい話は終わりっ」
少しすると、いつものシーナがパンパンと手を叩いて空気を祓う。
「とりあえず、再会を祝して乾杯するわよ!飲み物ないから円陣組もう!」
「乾杯って言わなかったか?」
「細かい男は嫌われるわよ!はい、これからもよろしく!えいっえいっおー!!」
「どんな再会の祝し方だ」
精霊たちも混じった笑い声が、広く響いた。
*~*~*~*~*
きっとこうしてこれからも、仲良く末永く暮らしていくのでしょうね。
*おしまい*
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