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52 ~影艶side~

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 若干性的表現を含みます。ご注意ください。


*~*~*~*~*


 今日は以前みたいに、二人きりで一日を過ごした。以前の日常が、とても幸せだったことは言うまでもない。その日常が、今では尊いものとなってしまった。
 自由を犠牲にしてまで嫌な人間たちと生活を共にする理由が、少しだけわかった。シラユキは、あの千年聖女に会いに行ったのだ。会ったこともない千年聖女を何故知っていたか、など、愚問だ。市井の噂などではない。間違いなく前世が絡んでいる。千年聖女が、前世のシラユキにどう絡んでいるかはわからないが。
 シラユキからは、千年聖女に、人間に手を出すな、と言われている。私に何かあったら困る、との心配からだが、千年聖女を自分の手でかたを付けたいということもあるからなのだろう。どんな理由であれ、シラユキの憂いが晴らせるなら、それでいい。
 王太子は、間違いなくシラユキに好意を抱いている。最初の懸念であった嗜虐思考もありそうだが、シラユキに対してそれを向けることはなさそうで安堵している。シラユキのためなら、どんなことも厭わないように感じる。それ故、シラユキ以外には油断ならない人間であることは間違いない。王太子の目にはシラユキしか映っていない。さぞ私が邪魔であろう。
 お互い様だ、王太子。
 今日のことだって、シラユキへの点数稼ぎだろう。それでもいい。シラユキが喜んでいることが大事だ。
 わかるか、王太子。
 自由時間を与えられたことだけに喜んでいたのではない。おまえ抜きで、私と二人きりで過ごせたことを喜んでいるのだ、シラユキは。
 おまえにシラユキは渡さん。
 私に包まれて、安心した寝顔を見せるシラユキ。その寝顔、私以外に見せてはダメだ。シラユキは私のもの。私もシラユキのもの。
 鼻先でそっと額にキスをして頬をペロリと舐めると、シラユキがふにゃりと笑った。
 愛しさが募る。
 私が人間になれたら。
 二つのかいなで、息が止まるほど抱き締めたい。指で優しく髪を撫で、その柔らかな頬を感じたい。細い首にくちづけし、甘く匂い立つ唇を堪能したい。
 私が人間になることを、シラユキが望んでくれたなら。
 シラユキ、おまえの全身に、余す所なくくちづけよう。爪先から髪の一本に至るまで、私という存在を刻みつけるように。
 その胸に舌を這わせ、私を受け入れるところで快楽を得られるようになったなら。優しく、けれど激しくおまえを求めたい。互いの体が溶けてひとつになれるほどに。
 シラユキ、私を求めてくれ。私と番いたいと、私以外いらないと、私だけをその目に映してくれ。
 ああ、獣の本能が目覚める。ダメだ、これ以上考えるな。シラユキを本当に穢してしまう。
 そんなことは赦さない。
 シラユキ、シラユキ。
 愛してる。
 愛している、シラユキ。
 おまえ以外、何もいらない。


*つづく*
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