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魔力を補充したら、大分体が楽になった。本当に魔力が枯渇しかけていたんだな。チートな何かが欲しかったぜ。転生者でもない兄がチート過ぎて何も言えねぇ。
「何か、いい案は思いついた?」
「魔法は、構築出来ました。ただ、影艶と殿下にかけた魔法も解除されてしまう恐れが」
もっと時間をかけられれば、もっと考えることは出来るんだけど、今はこれが最善かな。
「なるほど。では影艶殿が戻ったら発動出来るかい?そしてまた私たちにかけ直すことは?」
「どちらも可能です。解除された一瞬を狙われないことを祈ります」
神官長連れてくるとき、もしかしたら千年聖女もついてくるかも知れない。影艶の行くところシラユキあり、とか思って。まあ、影艶の足についてこられるとは思わないけど。何がどうなるかわからないからね。そう思っていたら、影艶が千年聖女を連れて現れた。千年聖女の隣には、握る短剣で今にも喉を突いて自害しそうな神官長。ホントにやることがイヤらしいんだよ、クソ女。
影艶は申し訳なさそうに項垂れている。影艶のせいではない。クソ女がクズ過ぎるだけ。
「ウェンリアイン様、ご機嫌よう。神獣、止まりなさい」
影艶が千年聖女の言葉に従う。クソムカつくな。マジでブッ殺す。
「やあサリュア。私は謹慎を言い渡していたはずだよ」
「いやですわ、ウェル様、そんなつまらないこと仰って。こちらへいらして、ウェル様。言うこと聞かないと、神官長がどうなるかしらね。ああ、私から三メートル以上離れても同じ結末よ。神官長と私、離れられないの」
それで影艶は攫ってこられなかった訳か。つくづく発想が気持ち悪ぃな、コイツ。
「私の愛称を呼ぶ許可を与えた覚えはない。不敬だよ、サリュア」
「いいえ、ウェル様。あなたは私に従うの。私を気が狂うほど求めるようになるわ。私に名を呼ばれることすら尊くなるの。私にそんな口もきけなくなる」
前から後ろからぞろぞろと鬼が集まってくる。
「ねえ、ウェル様。私を蔑ろにした分、冷たく、酷く扱ってあげる。靴にくちづけたって、足を舐めたって赦さないわ」
うげ。ヘンタイの思考だ。兄、笑っているけど笑ってないね。不快だよね。そうだよね。
「ねえ、ウェル様。酷い方。でも、私は心が広いから、そんなあなたでも愛しているわ。いつかあなたを赦してあげる。そして私があなたに飽きるまで、一番大事にしてあげる」
「そんな未来、御免被るよ、サリュア。不快で仕方がない」
千年聖女の顔が般若だ。
「そう。いいわ、ウェル様。あなたのせいで、聖女も神官もこの国からいなくなる。見るがいいわ!さあおまえたち!私のために死になさい!!」
集まった者たちが、手にしていた短剣を一斉に首や胸に突き立てようと動いた。
「ホントにクズだな」
解除魔法を発動させる。魔力の大部分を持って行かれるが、影艶と兄にかけ直す魔力はしっかり残す。光の粒子が降り注ぐ。操られていた者たちが倒れた。
「は?」
千年聖女が間抜けな声を出す。良かった。あらゆる状況を想定出来ないバカで。二人に魔法をかけ直す隙を突けるほどの頭がコイツになくて。でも、油断はしないよ。
「影艶、おいで」
駆け寄った影艶に、すかさず魔法をかける。
「殿下、来て」
屈んだ兄の額に、同じく魔法をかけた。
もう、ほとんど魔力はない。だから、この一撃で終わらせてやる。
やっと、邪魔な枷を精算できる。記憶に囚われずに済む。
私の左手がバチバチと放電する。雷で脳天を直撃させる。確実に、息の根を止める。
「あんた、ホントに、何者なの」
「おまえを殺す者だよ」
*つづく*
「何か、いい案は思いついた?」
「魔法は、構築出来ました。ただ、影艶と殿下にかけた魔法も解除されてしまう恐れが」
もっと時間をかけられれば、もっと考えることは出来るんだけど、今はこれが最善かな。
「なるほど。では影艶殿が戻ったら発動出来るかい?そしてまた私たちにかけ直すことは?」
「どちらも可能です。解除された一瞬を狙われないことを祈ります」
神官長連れてくるとき、もしかしたら千年聖女もついてくるかも知れない。影艶の行くところシラユキあり、とか思って。まあ、影艶の足についてこられるとは思わないけど。何がどうなるかわからないからね。そう思っていたら、影艶が千年聖女を連れて現れた。千年聖女の隣には、握る短剣で今にも喉を突いて自害しそうな神官長。ホントにやることがイヤらしいんだよ、クソ女。
影艶は申し訳なさそうに項垂れている。影艶のせいではない。クソ女がクズ過ぎるだけ。
「ウェンリアイン様、ご機嫌よう。神獣、止まりなさい」
影艶が千年聖女の言葉に従う。クソムカつくな。マジでブッ殺す。
「やあサリュア。私は謹慎を言い渡していたはずだよ」
「いやですわ、ウェル様、そんなつまらないこと仰って。こちらへいらして、ウェル様。言うこと聞かないと、神官長がどうなるかしらね。ああ、私から三メートル以上離れても同じ結末よ。神官長と私、離れられないの」
それで影艶は攫ってこられなかった訳か。つくづく発想が気持ち悪ぃな、コイツ。
「私の愛称を呼ぶ許可を与えた覚えはない。不敬だよ、サリュア」
「いいえ、ウェル様。あなたは私に従うの。私を気が狂うほど求めるようになるわ。私に名を呼ばれることすら尊くなるの。私にそんな口もきけなくなる」
前から後ろからぞろぞろと鬼が集まってくる。
「ねえ、ウェル様。私を蔑ろにした分、冷たく、酷く扱ってあげる。靴にくちづけたって、足を舐めたって赦さないわ」
うげ。ヘンタイの思考だ。兄、笑っているけど笑ってないね。不快だよね。そうだよね。
「ねえ、ウェル様。酷い方。でも、私は心が広いから、そんなあなたでも愛しているわ。いつかあなたを赦してあげる。そして私があなたに飽きるまで、一番大事にしてあげる」
「そんな未来、御免被るよ、サリュア。不快で仕方がない」
千年聖女の顔が般若だ。
「そう。いいわ、ウェル様。あなたのせいで、聖女も神官もこの国からいなくなる。見るがいいわ!さあおまえたち!私のために死になさい!!」
集まった者たちが、手にしていた短剣を一斉に首や胸に突き立てようと動いた。
「ホントにクズだな」
解除魔法を発動させる。魔力の大部分を持って行かれるが、影艶と兄にかけ直す魔力はしっかり残す。光の粒子が降り注ぐ。操られていた者たちが倒れた。
「は?」
千年聖女が間抜けな声を出す。良かった。あらゆる状況を想定出来ないバカで。二人に魔法をかけ直す隙を突けるほどの頭がコイツになくて。でも、油断はしないよ。
「影艶、おいで」
駆け寄った影艶に、すかさず魔法をかける。
「殿下、来て」
屈んだ兄の額に、同じく魔法をかけた。
もう、ほとんど魔力はない。だから、この一撃で終わらせてやる。
やっと、邪魔な枷を精算できる。記憶に囚われずに済む。
私の左手がバチバチと放電する。雷で脳天を直撃させる。確実に、息の根を止める。
「あんた、ホントに、何者なの」
「おまえを殺す者だよ」
*つづく*
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