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「話は聞いてい」
「シラユキちゃあああああん!あああああ無事で良かったあ!無事で良かったあああ!」
思いきり王妃様に抱き締められた。大きなお胸が私の顔を埋める。チチに埋もれて窒息するとか男のロマンだな。女の私でさえこのぼいんぼいんに幸せになる。それより王様の言葉を遮っていたけどいいのか。何かこう重苦しい雰囲気を醸して、ご苦労だった、的な、状況を説明しろ、的な何かがあるはずなんですけど。
「説明し」
「怪我は?怪我はない?なにかされなかった?痛いところは?」
ぼいんぼいんから解放される。あちこち私の体を触りながら涙目の王妃様。
王様の目が遠くを見つめている。
「王妃陛下。白雪のお陰でみんな無事です。直ソフィレアインたちも戻ります。先に報告をさせていただいてもよろしいでしょうか」
重鎮たちも集まっている。弟の誕生パーリーで、王妃様の友人枠で紹介されていた私が聖女候補であり、ブルーエイ侯爵の娘であると知り、少なからず衝撃を受けているようだ。パーリーの時は化粧していた上に着飾っていたからね。あの裁判の娘だと気付かなかったようだ。だが一番の衝撃は、こんなにくだけた王妃様に。いつも毅然とした姿しか見たことがないのだろう。友人にこんなにも気安いのだと知り、どこか微笑ましく思っているのかも知れない。
「ああ、そうね。そうだわ。聞きましょう」
右手に王妃様。左手に兄。
「王妃陛下」
「ウェルが離しなさい」
私の頭上で火花が散る。あらやだ。私のために争わないでー。
「白雪は報告があります」
「わたくしのところで報告しても問題ありません」
「白雪、私と一緒に報告したいよね」
「シラユキちゃん、わたくしの側で安心しながらお話ししたいわよね」
どちらを選んでも面倒なことになる。
「いつもはどうなのですか」
「普通はここで報告だよ」
勝ち誇ったような兄。王妃様が悔しそうに歯ぎしりをする。
「では報告が終わったら王妃様のところに行くのはダメですか」
折衷案だが、受け入れられるか。あ、めっちゃいい顔になったよ王妃様。
「もちろんよ!じゃあさっさと報告しちゃいましょう。シラユキちゃんの報告からね。サラッとでいいわよ。あとはウェルが報告するから」
なんでこんなに王妃様に気に入られているのだろう。娘が欲しかったと言ってはいたが、私のような愛想も何もない女子より、もっと愛くるしい娘さんの方が嬉しいのではないだろうか。まあ、好みなど人それぞれだけど。
兄も報告が終わると、私の隣に来た。おじさんたちは難しい顔をしている。
「魅了、魔法か」
「まさか、千年聖女様が」
「国家転覆を謀ったとされても仕方がない。通常であれば処刑だが」
「国民には何と説明する」
国民に、絶大な人気を誇る千年聖女。そんな千年聖女が起こした騒動に、重鎮たちは頭を抱えた。
「そも、サリュア様は何故そんなことをしたのだ」
千年聖女の本性を知っていても、彼らの疑問は尤もだ。ああ、本性を周囲に知られていないと思っているのは本人だけ。国民は騙せても、お腹に狸を飼っている黒貴族のおじさんたちは騙せません。
因みに千年聖女を何とかしたのは影艶ってことになっているよ。兄が白雪のお陰で無事って言ったのは、私が影艶にお願いしてくれたからってこと。
「白雪の神獣を欲しがったのですよ」
兄の言葉におじさんたちは渋い顔をした。
「神獣様に魅了魔法かけるための実験台となったわけか、神殿は」
「結局手に入らず癇癪を起こして全員を自害させようとした、と」
おじさんたちは、非常に重い溜め息を吐いた。
いくら類い稀なる魔法の使い手であっても、その能力に見合った精神を持ち合わせていないことが大問題だ。
「非常に残念だが、千年聖女は諦めよう」
誰かの言葉に、他のおじさんたちも仕方がないと頷く。
「陛下、ソフィレアイン殿下が戻り次第のご報告も伺ってからにはなりますが、ご決断をされる時かと」
全員が王様を見る。私も王様の方を見ようとして、兄が私を見ていることに気付く。
*つづく*
「シラユキちゃあああああん!あああああ無事で良かったあ!無事で良かったあああ!」
思いきり王妃様に抱き締められた。大きなお胸が私の顔を埋める。チチに埋もれて窒息するとか男のロマンだな。女の私でさえこのぼいんぼいんに幸せになる。それより王様の言葉を遮っていたけどいいのか。何かこう重苦しい雰囲気を醸して、ご苦労だった、的な、状況を説明しろ、的な何かがあるはずなんですけど。
「説明し」
「怪我は?怪我はない?なにかされなかった?痛いところは?」
ぼいんぼいんから解放される。あちこち私の体を触りながら涙目の王妃様。
王様の目が遠くを見つめている。
「王妃陛下。白雪のお陰でみんな無事です。直ソフィレアインたちも戻ります。先に報告をさせていただいてもよろしいでしょうか」
重鎮たちも集まっている。弟の誕生パーリーで、王妃様の友人枠で紹介されていた私が聖女候補であり、ブルーエイ侯爵の娘であると知り、少なからず衝撃を受けているようだ。パーリーの時は化粧していた上に着飾っていたからね。あの裁判の娘だと気付かなかったようだ。だが一番の衝撃は、こんなにくだけた王妃様に。いつも毅然とした姿しか見たことがないのだろう。友人にこんなにも気安いのだと知り、どこか微笑ましく思っているのかも知れない。
「ああ、そうね。そうだわ。聞きましょう」
右手に王妃様。左手に兄。
「王妃陛下」
「ウェルが離しなさい」
私の頭上で火花が散る。あらやだ。私のために争わないでー。
「白雪は報告があります」
「わたくしのところで報告しても問題ありません」
「白雪、私と一緒に報告したいよね」
「シラユキちゃん、わたくしの側で安心しながらお話ししたいわよね」
どちらを選んでも面倒なことになる。
「いつもはどうなのですか」
「普通はここで報告だよ」
勝ち誇ったような兄。王妃様が悔しそうに歯ぎしりをする。
「では報告が終わったら王妃様のところに行くのはダメですか」
折衷案だが、受け入れられるか。あ、めっちゃいい顔になったよ王妃様。
「もちろんよ!じゃあさっさと報告しちゃいましょう。シラユキちゃんの報告からね。サラッとでいいわよ。あとはウェルが報告するから」
なんでこんなに王妃様に気に入られているのだろう。娘が欲しかったと言ってはいたが、私のような愛想も何もない女子より、もっと愛くるしい娘さんの方が嬉しいのではないだろうか。まあ、好みなど人それぞれだけど。
兄も報告が終わると、私の隣に来た。おじさんたちは難しい顔をしている。
「魅了、魔法か」
「まさか、千年聖女様が」
「国家転覆を謀ったとされても仕方がない。通常であれば処刑だが」
「国民には何と説明する」
国民に、絶大な人気を誇る千年聖女。そんな千年聖女が起こした騒動に、重鎮たちは頭を抱えた。
「そも、サリュア様は何故そんなことをしたのだ」
千年聖女の本性を知っていても、彼らの疑問は尤もだ。ああ、本性を周囲に知られていないと思っているのは本人だけ。国民は騙せても、お腹に狸を飼っている黒貴族のおじさんたちは騙せません。
因みに千年聖女を何とかしたのは影艶ってことになっているよ。兄が白雪のお陰で無事って言ったのは、私が影艶にお願いしてくれたからってこと。
「白雪の神獣を欲しがったのですよ」
兄の言葉におじさんたちは渋い顔をした。
「神獣様に魅了魔法かけるための実験台となったわけか、神殿は」
「結局手に入らず癇癪を起こして全員を自害させようとした、と」
おじさんたちは、非常に重い溜め息を吐いた。
いくら類い稀なる魔法の使い手であっても、その能力に見合った精神を持ち合わせていないことが大問題だ。
「非常に残念だが、千年聖女は諦めよう」
誰かの言葉に、他のおじさんたちも仕方がないと頷く。
「陛下、ソフィレアイン殿下が戻り次第のご報告も伺ってからにはなりますが、ご決断をされる時かと」
全員が王様を見る。私も王様の方を見ようとして、兄が私を見ていることに気付く。
*つづく*
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